SAP導入コンサルとは?|考え方/特徴/仕組み/目的を解説

SAP導入を検討し始めると、ベンダー選定の基準づくりや、部門間の要件のすり合わせ、進捗管理の負荷など、実装作業そのものに入る前の段階で足踏みしてしまう企業が少なくありません。SAP導入コンサルとは、自社と実装ベンダーの間に立ち、ベンダー選定、要件整理、プロジェクト管理、稼働後の効果検証という意思決定・推進管理を第三者的な立場で支援するサービスです。

本記事では、SAP導入コンサルの基本的な考え方と、SAP導入そのものとの違い、担う4つの支援領域、ベンダー選定・要件整理・PMO・効果検証それぞれの仕組み、導入目的を順に解説します。SAP導入コンサルという言葉を初めて調べている担当者の方でも、自社に必要な支援かどうかを判断できるよう、実際のプロジェクトの流れに沿って整理します。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・SAP導入コンサルの完全ガイド

SAP導入コンサルとは何か?SAP導入との違い

SAP導入コンサルの位置づけを確認する担当者

SAP導入コンサルは、SAP S/4HANAなどのERPパッケージを自社に導入する際に、要件定義・モジュール設定・データ移行といった実装作業そのものを担うのではなく、その前段と横断部分にあたる意思決定と推進管理を支援する立場です。実装を担うSIerやベンダーとは異なる、発注側に近い視点を持つ点が特徴になります。

実装作業ではなく第三者的アドバイザリーという立場です

SAP導入というプロジェクト名で語られる作業には、要件定義、Fit to Standardによる設計、アドオン開発、データ移行、稼働判定までの実装工程そのものと、そこに至るまでのベンダー選定・要件整理・進捗管理という推進管理の両方が含まれます。SAP導入コンサルが担うのは後者であり、実際にシステムを組み上げていく開発作業には関与しません。この線引きを曖昧にしたまま依頼を始めると、「実装まで任せられると思っていたのに、選定支援だけだった」といった認識違いが起きやすくなります。

発注側に立つという性質上、特定のパッケージやベンダーの販売を目的としない中立的な評価軸を提供できることが、SAP導入コンサルに期待される価値の一つです。もっとも、コンサルティングファームによっては特定SIerグループに属している場合もあるため、中立性の程度は依頼前に確認しておく必要があります。社内に情報システム部門があっても、複数のSIerを横並びで評価した経験までは持っていないことが多く、その経験の差分をどう補うかという観点で依頼を検討する企業も見られます。

SAP導入(実装)とは補完関係にあります

SAP導入コンサルとSAP導入(実装)は対立する選択肢ではなく、多くの場合は補完関係にあります。SAP導入コンサルが上流のベンダー選定と要件整理を担い、選定されたSIerが実装工程を担い、SAP導入コンサルはそのままPMOとして進捗・リスク管理を継続する、という体制を組む企業も見られます。自社にすでにSIer選定の基準や社内の推進体制があるのか、それとも上流から第三者の視点を借りたいのかによって、依頼すべき範囲は変わってきます。

SAP導入コンサルが担う4つの支援領域

SAP導入コンサルが担う4つの支援領域

SAP導入コンサルの支援範囲は事業者によって幅がありますが、代表的な領域を整理すると、ベンダー選定支援、要件整理支援、PMOとしての推進管理、稼働後の効果検証という4つに分けられます。依頼を検討する際は、この4領域のうちどこを自社が必要としているのかを先に決めておくと、提案内容を評価しやすくなります。

意思決定を支える「選定」と「要件整理」

ベンダー選定支援は、RFP(提案依頼書)の作成、各社からの提案評価、選定基準の策定を担います。要件整理支援は、要件定義段階で業務側の要求をFit(標準機能で対応可能)かGap(アドオンが必要)かに仕分けるための材料を整理し、部門間の例外業務の洗い出しや調整を行います。どちらも、プロジェクトが本格的な実装工程に入る前の意思決定を支える役割です。

推進を支える「PMO」と「効果検証」

PMOは、実装が始まった後のプロジェクト進捗・品質・リスクの管理と、ステアリングコミッティの運営支援を担います。効果検証は、稼働後にKPIをモニタリングし、導入効果を測定したうえで追加の改善提案につなげる役割です。選定と要件整理が「入口」を支える支援なのに対し、PMOと効果検証は実装の「途中」から「後」までを支える支援という位置づけになります。

ベンダー選定支援とRFP作成の仕組み

ベンダー選定支援とRFP作成の流れ

ベンダー選定支援は、自社の要求事項をRFPという形式に落とし込み、複数の候補から適切な実装パートナーを選ぶまでの一連のプロセスを指します。ここでの精度が低いと、その後の実装工程そのものがぶれやすくなります。

RFP作成には企業規模に応じた期間が必要です

RFP作成そのものにかかる期間は、小規模で2〜4週間、中規模で1〜2か月、大規模になると2〜3か月程度が目安とされます。SAP導入コンサルは、現状の業務課題やシステム要件をヒアリングしながら、この期間内にベンダーが提案しやすい粒度までRFPを整理する役割を担います。要件を詰め切れないままRFPを送付してしまうと、各社から性格の異なる提案が返ってきて比較そのものが難しくなるため、初期段階の作り込みが選定全体の質を左右します。

3〜5社程度への送付と評価基準の策定を並行します

RFPの送付先は3〜5社程度が一般的とされ、ベンダー選定から契約までの全体は目安2〜3か月程度で進みます。SAP導入コンサルは、各社からの提案を同じ評価基準で採点できるよう、事前に評価項目と重みづけを策定し、価格だけでなく実績領域や体制の妥当性を含めて比較できる状態を整えます。営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られないよう、確認方法まで統一しておくことが、選定後の認識違いを防ぐうえで重要です。提案内容を点数化する際は、机上の実績紹介だけでなく、実際に類似規模のプロジェクトでどのような課題が生じ、どう対応したかという具体的な質疑を通じて、担当者の実務理解を見極めることも欠かせません。

要件定義段階の業務整理とFit&Gap判断支援の仕組み

要件定義段階の業務整理を行うチーム

SAP導入では、標準機能で対応できる部分(Fit)とアドオン開発が必要な部分(Gap)を判定するFit&Gap分析が中心的な工程になります。この判定自体はSAP導入経験を持つコンサルティングファームやSIerが行いますが、SAP導入コンサルは判定の材料となる業務側の情報を整理する役割を担います。

例外業務の洗い出しと部門間調整を担います

現場の業務には、標準的な手順とは別に、取引先固有の請求書式や、特定部門だけが行っている承認フローといった例外業務が積み重なっていることが少なくありません。SAP導入コンサルは、こうした例外業務を各部門へのヒアリングを通じて洗い出し、どこまでを標準機能に合わせられる業務として整理し、どこを特別な事情として実装側へ申し送るかを、部門間の意見が割れやすい場面も含めて調整します。この整理が甘いと、実装工程に入ってから「聞いていなかった要件」が次々と出てきて、スケジュールの遅延につながります。

PoCでは検証スコープの定義と適合率評価を支援します

SAP領域のPoC(概念実証)は、自社業務とSAP標準機能との適合性を短期間で検証するために行われ、期間の目安は2〜3か月程度とされます。SAP導入コンサルがPoCに関与する場合、実際のプロトタイプ構築やモックアップ作成そのものはSIerやベンダー側の作業であり、コンサルは(1)PoCで何を検証すべきかのスコープ定義、(2)Fit to Standardでの適合率評価、(3)検証結果に基づく本導入可否の判断支援、という立場に徹します。実装と評価の役割が入り混じると、検証結果への客観性が薄れやすくなるため、この線引きは依頼時に確認しておく価値があります。

PMOとして担う進捗・リスク管理の仕組み

PMOとして進捗・リスクを管理する担当者

実装工程が始まった後は、SAP導入コンサルはPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として、実装スケジュールの管理そのものではなく、複数のベンダー・部門が関わるプロジェクト全体を発注側の立場から俯瞰し、遅延やリスクの早期発見につなげる役割を担います。

マイルストーン管理と遅延リスクの早期検知を担います

SAP導入プロジェクトでは、SAP Activateのような標準導入方法論に沿って要件定義から本稼働までの工程が区切られますが、規模によって全体期間には幅があり、小規模で半年〜1年、中規模で1〜2年、大規模になると2〜3年程度が目安とされます。PMOとしてのSAP導入コンサルは、こうした各フェーズの節目(マイルストーン)ごとに進捗を確認し、遅延の兆候が出た段階でその原因がベンダー側の体制不足なのか、自社側の意思決定の遅れなのかを切り分け、早期の対応につなげます。

ステアリングコミッティの運営支援も担います

大規模なSAP導入プロジェクトでは、経営層や各部門の責任者が参加するステアリングコミッティを設け、重要な意思決定を行う体制が一般的です。SAP導入コンサルは、この会議体に向けた進捗報告資料の整理や、議論すべき論点の事前整理を支援し、経営層が実装の細部に立ち入らなくても適切な意思決定ができるよう橋渡しをします。PMOの月額相場は80万円〜200万円程度とされますが、SAPのような専門性の高い案件では150万円〜200万円を超えるケースも見られ、大規模プロジェクトでは月額150万円〜250万円を超える例も報告されています。

稼働後の効果検証とKPIモニタリングの仕組み

稼働後の効果検証とKPIモニタリングを行う会議

SAP本稼働はゴールではなく、そこから運用が安定期に入り、当初期待した効果が実現しているかを確認する工程が続きます。SAP導入コンサルは、この稼働後フェーズでも役割を持ち続けることがあります。

月次・四半期レビューでKPIをモニタリングします

効果検証の中心は、導入前に設定したKPI(決算にかかる日数、手作業による突き合わせ件数、承認までのリードタイムなど)を月次または四半期ごとにモニタリングし、期待した効果が実現しているかを確認する作業です。KPIは導入前の要件定義段階で仮置きしたまま本稼働を迎えることも多く、実際の運用データが蓄積されてから改めて目標値を調整する場面も珍しくありません。SAP保守運用フェーズでは、何がいつ変わったかを追跡できないと、パフォーマンス低下時の原因特定が難しくなるとされ、変更管理の徹底が重要になります。SAP導入コンサルは、こうしたモニタリング体制そのものの設計と、実際のレビュー運営を支援します。

顧問契約型の伴走支援という契約形態もあります

稼働後フェーズの契約形態には、月額定額で継続的に相談・レビューを行う顧問契約型と、追加の改善提案ごとに成果物ベースで契約するプロジェクト型があります。どちらが適しているかは、継続的な伴走を必要とする頻度によって変わってきます。効果検証の結果、当初のFit&Gap判断そのものを見直す必要が出てくることもあり、その場合は改めて追加改善のスコープと料金を個別に取り決めることになります。

SAP導入コンサル導入前に確認しておきたいポイント

SAP導入コンサル活用前に確認するポイント

SAP導入コンサルを活用するかどうかは、プロジェクトの規模だけで決まるものではありません。社内にどこまでの推進体制があるか、契約形態としてどちらを選ぶか、実装ベンダーとの役割分担をどう線引きするかまで含めて整理しておくことで、依頼後のミスマッチを避けやすくなります。

社内に推進経験者がいない場合ほど価値が出やすくなります

過去に大規模ERP導入を経験した担当者が社内にいない場合、ベンダー選定の基準づくりや進捗管理のノウハウが不足しがちです。一方、社内に経験豊富なプロジェクトマネージャーがいて、選定基準もすでに整っている場合は、PMO部分の依頼を絞り込むか、そもそも依頼の必要性を見直す余地もあります。

パッケージ型と伴走型では取り決める項目が異なります

コンサルティングサービス自体の提供形態には、定型メニューで支援範囲があらかじめ決まっているパッケージ型と、個社の事情に合わせて都度設計するフルオーダーメイドの伴走型という区分があります。伴走型を選ぶ場合は、KPI設定、レビュー頻度、SLA、追加スコープが発生した際の料金算定方法まで、契約時に確認しておくことが望まれます。

実装ベンダーとの役割分担は契約前に文書化します

SAP導入コンサルと実装ベンダーの役割があいまいなまま進めると、問題が起きた際に「どちらの責任か」が不明確になりがちです。誰がどの成果物に責任を持つのか、PMOとしての報告先はどこか、Fit&Gap判定の最終決定権は誰にあるのかを、プロジェクト開始前に文書化しておくことが、後々のトラブルを防ぐうえで重要です。特に、実装ベンダー側にも独自のPMO機能が用意されている場合、SAP導入コンサルのPMOと役割が重複していないかを確認し、報告ラインを一本化しておくと、現場が二重に報告作業を求められる事態を避けやすくなります。

まとめ

SAP導入コンサルの要点をまとめる担当者

SAP導入コンサルは、SAP導入プロジェクトの実装作業そのものではなく、ベンダー選定、要件整理、PMOとしての進捗・リスク管理、稼働後の効果検証という4つの領域で、意思決定と推進管理を第三者的な立場から支援するサービスです。実装を担うSIerとは役割が異なり、両者は対立ではなく補完の関係にあります。

依頼範囲を4領域から逆算して決めます

ベンダー選定、要件整理、PMO、効果検証のどこに自社の課題が集中しているかを先に特定できれば、コンサルティングファームへ依頼する範囲もぶれにくくなります。すべてを一括で依頼する必要はなく、社内で対応できる部分は残し、不足する部分だけを補うという発想も選択肢になります。

現状の推進体制を可視化することから始めます

まずは、現在の社内にベンダー選定の基準や進捗管理の体制がどこまで整っているか、逆にどこで足踏みが起きやすいかを整理してください。SAP導入コンサルによる選定支援やPMOの後工程では、Fit&Gap判定で標準機能に吸収しきれなかった業務要件や、既存システムとの独自連携が課題として残ることもあります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、SAP導入コンサルによる選定・要件整理の後工程として、既存システムとの連携や独自業務に合わせた個別開発を支援しています。具体的な選定の進め方や評価軸はSAP導入コンサルの選定ポイント・選び方・種類で整理しています。

▼全体ガイドの記事
・SAP導入コンサルの完全ガイド

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。