SYSPRO導入のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

フルスクラッチ・オーダーメイド開発を選ぶのは、独自の業務そのものが競争力の源泉で、標準機能では吸収できない場合に絞るべきです。その前に、SYSPROの標準機能とカスタマイズで要件を満たせる範囲を確認しておく必要があります。

  • 初期投資:開発費用と導入期間を方式ごとに比べる
  • 適合範囲:SYSPROの標準機能と追加開発の差分を確認する
  • 長期負担:保守・改修・アップグレードの費用を見通す

SYSPRO導入の全体像については、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・SYSPRO導入の完全ガイド

フルスクラッチ・オーダーメイド開発とパッケージ導入の違い

フルスクラッチ開発は土台がなく、ERPパッケージは標準機能を土台にする違いを左右に示した図
標準機能の有無が、開発方式の出発点を分けます。

基幹システムの刷新では、自社専用のシステムをゼロから開発するか、ERPパッケージを導入するかで迷う企業が多くあります。SYSPROは、南アフリカ発のERPベンダー「SYSPRO(シスプロ)」が提供する、中堅製造業・流通業向けのERPパッケージです。

個別受注生産・見込み生産などの「ディスクリート製造(組立型製造)」と、配合・調合が絡む「プロセス製造」の両方を、単一ベンダー・単一製品で標準対応している点が特徴です。さらに、Web UI「SYSPRO Avanti」に代表される「シンプルさ・使いやすさ」を、製品哲学の中核に据えています。

フルスクラッチ開発は、標準機能という制約がないため、自社の業務プロセスに完全に適合したシステムを作れます。その反面、要件定義から設計・開発・テストまでを一から積み上げるため、費用・期間ともに大きな投資が必要です。そのため、中小・中堅企業にとっては非現実的な選択肢になりがちです。

これに対し、SYSPROのようなERPパッケージは、あらかじめ用意された標準機能を土台にして、開発期間と費用を抑えながら構築できます。この2つの違いは、「ゼロから作る」か「土台の上に必要な差分だけを作る」かという点にあります。

SYSPROでは、この土台自体がディスクリート製造とプロセス製造の両方を単一製品でカバーしています。このため、生産管理ロジックを一から設計せずに、組立型・配合型のどちらか、または両方にまたがる製造にも、必要な差分の調整で対応できます。

実際に検討する担当者からは、「どちらが自社に向いているのか」「両対応はフルスクラッチの代わりになり得るのか」といった疑問が数多く挙がります。また、「どのような場合にフルスクラッチが正当化されるのか」という疑問も挙がります。

フルスクラッチ開発の定義

フルスクラッチ開発(オーダーメイド開発)は、既製のパッケージソフトやSaaSを使わず、要件定義から画面設計、データベース設計、業務ロジックの実装まで、すべてを自社の要件に合わせて独自に開発する方式です。カスタマイズ性は極めて高く、標準機能では対応できない特殊な業務プロセスや、既存の設備・周辺システムとの複雑な連携要件があっても、理論上はすべて実現できます。

自社の製造プロセスが業界標準から大きく外れている場合、その特殊な業務ルールも自社の解釈に基づいて独自に実装することになります。一方で、この自由度の高さは、要件定義の精度がそのままシステムの品質を左右するという難しさも意味します。

パッケージ導入には標準機能というたたき台がありますが、フルスクラッチにはその土台がありません。土台がないぶん、要件定義の段階で見落としがあると、それがそのままシステムの欠陥として本番稼働後に表面化します。さらに、パッケージが持つ「業界標準に沿って作り込まれた実装」という安心感も得にくく、フルスクラッチ特有の負担といえます。

SYSPROのようなパッケージとの本質的な違い

SYSPROのようなERPパッケージとフルスクラッチ開発の本質的な違いは、「標準機能という土台の有無」と「保守・アップデートの責任分担」の2点にあります。フルスクラッチで開発したシステムは、保守・機能追加・セキュリティ対応のすべてを、自社(または委託先ベンダー)が継続的に担う必要があります。

技術トレンドの変化や新しい業務要件への対応も、その都度、追加開発として費用が発生します。一方、SYSPROのようなERPパッケージは、コア機能の保守・セキュリティパッチ・機能アップデートをベンダー側が継続的に提供します。自社が負う保守責任は、追加でカスタマイズした差分部分に限られます。

さらに、SYSPROは、カスタマイズを保持したままアップグレードできる設計思想を持つとされています。これが事実であれば、バージョンアップのたびにフルスクラッチに近い再構築が必要になるという、他のERPで起こりがちな問題を、一定程度回避できる可能性があります。

ポイント

判断の目安は、業務の独自性が競争力に直結する部分だけを個別に開発し、残りは標準機能とカスタマイズで賄えるかどうかです。

費用・期間・カスタマイズ性の比較

クラウド型(SaaS)、パッケージ導入、フルスクラッチ開発の初期費用目安を並べた3パネル図
初期費用の幅は、構築方式によって大きく異なります。

基幹システムの構築方式には、クラウド型(SaaS)、パッケージ導入、フルスクラッチ開発の3つがあります。それぞれ費用・期間・カスタマイズ性・ランニングコストの構造が大きく異なるため、3つを正しく比べたうえで自社に合う選択肢を選ぶことが、投資対効果を高める第一歩です。

SYSPRO固有の詳しい費用データは公開情報が限られています。そのため、ここでは海外の調査レポートの参考値と、中堅企業向けシステム全般の一般的な相場観を組み合わせ、断定を避けながら見ていきます。

海外の調査レポートでは、SYSPROの導入コストは基本的な財務・在庫管理の導入で3万ドル程度から、複数拠点の本格的な製造機能一式では50万ドル以上とされています。これは為替や海外市場を前提とした数値のため、国内での意思決定には、下記の国内相場観をベースに検討することをお勧めします。

3つの選択肢(クラウドSaaS・パッケージ・フルスクラッチ)の比較

汎用的なクラウド型(SaaS)は、初期費用が無料〜100万円程度と低く、導入期間も数週間〜3ヶ月程度で立ち上がります。ただし、カスタマイズ性は標準機能の範囲に限られる傾向があり、月額3万〜15万円程度のランニングコストが継続的に発生します。

中堅企業向けのパッケージ導入(SYSPROのようにクラウド型・オンプレミス型を選べる製品を含む)は、初期費用が無料〜1,000万円程度で、クラウドかオンプレミスかで大きく変わります。導入期間は数週間〜1年以内で、カスタマイズ性は標準機能とのフィット度次第です。ランニングコストは、年間保守費用(導入費用の5〜15%程度)か、クラウド型の月額サブスクリプション費用に収まる傾向があります。

フルスクラッチ開発は、初期費用が1,000万円〜数億円規模、導入期間は6ヶ月〜数年以上で、カスタマイズ性は極めて高い一方、保守・改修費が継続的に膨らみ続けます。SYSPROは、この3つの中ではパッケージ導入に分類されますが、フルスクラッチに近い個別最適感をパッケージの費用・期間で得ようとする位置にあります。

中長期のランニングコストで見た場合の違い

初期費用・導入期間だけでなく、中長期のランニングコストで比べると、3つの選択肢の違いはより明確になります。フルスクラッチ開発は、初期投資こそ大きいものの、保守や機能追加もすべて追加開発として費用が発生し続けるため、5年・10年で見ると累積コストが際限なく膨らむリスクがあります。

特にバージョンアップに相当する大規模改修では、その対応もすべて自社の追加開発として費用が発生し、フルスクラッチ特有の中長期リスクになります。一方、汎用的なクラウド型(SaaS)は、初期費用こそ抑えられますが、月額利用料が継続的に発生するため、長期利用を前提とすると累積コストがパッケージ買取型を上回ることがあります。

従業員50〜100名規模の中堅企業の5年TCO(総所有コスト)の目安は、1,600万〜3,400万円とされています。この試算に、導入方式ごとの中長期コスト差を反映させることが重要です。SYSPROは、両対応による標準機能フィット率の高さでカスタマイズ費用の膨張を抑えつつ、カスタマイズを保持したままアップグレードできる設計で、再構築費用も抑えられる可能性があります。

ポイント

初期費用だけで比べず、5年・10年の累積コストや保守・改修費まで含めて試算することが判断の目安になります。

SYSPROが選ばれる理由

フルスクラッチ開発を検討していた企業がERPパッケージに切り替える場合も、最初からSYSPROを選ぶ場合も、理由にはいくつかの共通点があります。

とりわけ、両対応がフルスクラッチ的な柔軟性を代替する仕組みと、カスタマイズを保持したままアップグレードできる設計が、選定の決め手になるケースが多く見られます。ここでは、それぞれを順に見ていきます。

ディスクリート製造・プロセス製造の両対応がフルスクラッチ的な柔軟性を代替する仕組み

フルスクラッチ開発が選ばれる理由の一つに、「自社の製造プロセスが複数の製造形態にまたがっており、既存パッケージでは対応できない」という判断があります。SYSPROは、この要求の多くを、ディスクリート製造とプロセス製造の両方を単一ベンダー・単一製品として標準対応する設計思想で満たそうとする仕組みです。

多くのERPは片方の製造形態を中心に据え、もう一方は買収した別製品やアドオンで補っています。これに対しSYSPROは、同一のコードベース・データ基盤の中で両方をカバーしています。そのため、一部にプロセス製造的な工程がある組立型製造業や、業態多角化を見据える企業も、連携インターフェースを自社で開発せずに業務を完結できる可能性があります。

フルスクラッチで作り込んだ独自プログラムは、技術トレンドの変化に合わせて自社や委託先が改修し続ける必要があります。一方、SYSPROの標準機能はベンダーが継続的に機能強化を行うため、自社の保守負担は相対的に小さく抑えられる傾向があります。この「両対応による個別最適感」と「パッケージ的な保守性」の両立こそが、SYSPROが選ばれる理由の一つです。

カスタマイズを保持したままアップグレードできる設計が長期の保守負担を抑える仕組み

もう一つの理由は、カスタマイズを保持したままアップグレードできる設計思想(SYSPRO Customization Manager等)です。フルスクラッチでは、数年後の技術トレンドの変化や新しい業務要件のたびに、独自プログラムを改修し続けることになります。その改修コストは、長期的に見て初期開発費用を上回ることも珍しくありません。

パッケージ導入でも、多くのERPでは「カスタマイズを入れるとバージョンアップができなくなる」「バージョンアップのたびにカスタマイズを作り直す必要がある」という問題が起きやすいものです。この問題が、数年に一度のフルスクラッチに近い再構築を招く原因になります。一方、SYSPROは、この問題への対策を製品設計に組み込んでいるとされています。

これが事実であれば、初回導入時に一定のカスタマイズを加えても、将来のバージョンアップ時にそのカスタマイズを維持しやすいという特性を持つことになります。

ポイント

SYSPROを候補にするなら、自社の製造形態が標準機能にどこまで合うかと、バージョンアップ時にカスタマイズを保てるかを判断の目安にするとよいでしょう。

フルスクラッチが正当化される条件とミスマッチ事例

独自のビジネスモデル、特殊な製造プロセス、独自開発の設備・検査装置、模倣困難な独自システムを並べたチェックリスト図
独自性と標準機能での対応可否が、検討の焦点になります。

SYSPROのようなERPパッケージは多くの中堅製造業にとって現実的な選択肢ですが、フルスクラッチ開発が正当化されるケースも確かにあります。

フルスクラッチが正当化される典型的な理由の一つは、「自社の業務が特殊で、汎用パッケージの標準機能では業務が回らない」という判断です。ただし、この判断が本当に正しいかは、標準機能と自社の業務プロセスを突き合わせてみるまで分かりません。

フィット&ギャップ分析で標準機能とのフィット率が十分に高いと判明するケースもあります。そのとき、「フルスクラッチでなければ対応できない」と思い込んでいた要件の多くが、実は標準機能とカスタマイズの組み合わせで対応できたと分かることは少なくありません。

ここでは、その条件と、判断を誤った場合のミスマッチ事例を見ていきます。

フルスクラッチが正当化される条件

フルスクラッチ開発が正当化されるのは、既存パッケージでは吸収しきれない独自のビジネスモデルや特殊な業務プロセスが、自社の競争力の源泉になっている場合です。さらに、高額な投資に見合う投資回収が見込めることも条件になります。

具体的には、SYSPROが標準対応する製造形態のどちらにも当てはまらない極めて特殊な製造プロセスで、汎用パッケージの標準機能でも対応できる余地がほとんどない場合が該当します。また、独自開発の設備・検査装置と密接に連携し、その連携仕様が一般的なパッケージのAPIでは実現できない場合も該当します。

加えて、自社の製品・サービスの差別化要因として、模倣困難な独自システムを持つ必要がある場合も該当します。逆に言えば、これらに当てはまらない大多数の中堅製造業にとって、フルスクラッチは費用対効果の面で正当化しにくいといえます。そのため、両対応とカスタマイズ保持の設計を持つパッケージ導入が、より現実的な選択肢になります。

典型的なミスマッチ事例

典型的なミスマッチの1つ目は、フルスクラッチの過剰投資です。「自社の業務は特殊だから」という思い込みだけで踏み切ったものの、実際にはSYSPROのようなパッケージで大部分をカバーできる標準的な業務プロセスだったというケースです。この場合、初期費用1,000万円〜数億円の投資は、実は不要だったことになります。

2つ目は、クラウド型(SaaS)のコストミスマッチです。「月額費用が安いから」という理由だけで汎用クラウドSaaSを選んだものの、5年・10年の累積コストや将来の有償アップデート費用まで含めて試算すると、オンプレミス型のSYSPROを選んでいた方が安かったケースです。3つ目は、製造形態フィットのミスマッチです。

どちらの製造形態が主に必要かを確かめず、知名度や価格だけで選んだ結果、標準機能で対応できない範囲が広がり、追加カスタマイズが膨らんだ事例もあります。4つ目は、国内サポート体制の見誤りです。海外発のSYSPROでは、国内の正規パートナー体制、日本語対応、保守体制を確認しないまま契約すると、稼働後に想定外の遅延やコストが生じるおそれがあります。

ポイント

フルスクラッチを選ぶ前に、フィット&ギャップ分析で標準機能に吸収できない要件を洗い出し、国内のサポート体制も確かめることが判断の目安になります。

まとめ

ここまで、フルスクラッチ・オーダーメイド開発とパッケージ導入の違い、費用・期間・カスタマイズ性の比較、SYSPROが選ばれる理由、フルスクラッチが正当化される条件とミスマッチ事例を見てきました。

フルスクラッチ開発は、初期費用1,000万円〜数億円、期間6ヶ月〜数年以上を要します。カスタマイズ性は極めて高い反面、保守・改修費が継続的に膨らむという特徴があります。

これに対しSYSPROは、両対応による標準機能フィット率の高さと、カスタマイズを保持したままアップグレードできる設計思想を両立させています。そのため、フルスクラッチ的な個別最適感と、パッケージ的な保守性・コスト効率を兼ね備えた選択肢になっています。

フルスクラッチが正当化されるのは、既存パッケージでは吸収しきれない独自のビジネスモデルや特殊な業務プロセスが競争力の源泉で、高額投資の回収が見込める場合に限られます。それ以外の大多数の中堅製造業にとっては、パッケージ導入がより現実的です。

開発方式を検討する際は、自社の製造形態がSYSPROの標準機能にどこまで適合するかを見極めます。そのうえで、日本国内の正規パートナー体制やサポート範囲を確認し、導入実績が豊富なパートナーに相談することをお勧めします。

▼全体ガイドの記事
・SYSPRO導入の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。