システム移行の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

システム移行は、現状把握と要件定義から、設計、データ移行の準備、移行リハーサルと本番切替、運用定着へと進みます。

特にデータ移行を伴う場合は、移行リハーサルとダウンタイム設計が成否を左右します。データ移行のリハーサルを軽視して、本番切替で深刻なトラブルに見舞われる事例も少なくありません。

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システム移行の全体像と種類

システム移行の対象を、基盤移行、データ移行、業務プロセスの再整備の3領域に分けた図。
サーバーの移設に限らず、業務プロセスまで対象を広げて捉えます。

システム移行とは、現行システムの業務とデータを、新しいシステム基盤へ安全に移し替える一連の取り組みを指します。サーバーの移設にとどまらず、データ移行、基盤移行、業務プロセスの再整備までを含む広い概念です。まずは、移行が指す範囲と代表的な手法の種類を押さえておきましょう。

システム移行とは何か(刷新・リプレイスとの違い)

システム移行は、既存の資産をできるだけ活かして新しい環境へ移すことに主眼があります。一方、モダナイゼーションやリプレイスは、システムそのものを近代化したり、別製品へ置き換えたりする取り組みを含みます。

移行の中心は、データと業務の連続性を保つことにあります。特に、ダウンタイムをいかに短くするかが大きなテーマとなります。

代表的な移行は、次の2つです。

  • 基盤移行:サーバーやインフラなど、環境そのものを移し替える
  • データ移行:旧システムに蓄積された膨大なレコードを、新しいデータモデルに合わせて変換し、投入する作業

たとえば、オンプレミスのサーバーをクラウドへ移す基盤移行では、ハードウェアの保守切れやコスト構造の見直しが動機になります。基盤移行とデータ移行のどちらの場合も、移行の対象と範囲を最初に明確に定義することが成功の前提です。

移行をきっかけに業務プロセスそのものを見直すケースも多く見られます。古いシステムに合わせて作り込まれた例外運用をそのまま引き継ぐと、新システムでも複雑さが残ります。そこで、移行を業務改善の好機と捉え、不要な機能やデータを思い切って廃止する判断も欠かせません。

移行手法の種類(7R・5類型と移行方式)

システム移行の手法は、クラウド移行で語られる「7R」や、モダナイゼーションの「5類型」として整理されることが一般的です。

代表的な手法は、環境だけを移すリホストと、構成を一部変えるリプラットフォームです。機能を保ってコードを書き直すリファクタリング、別製品に置き換えるリプレース、不要なシステムを廃止するリタイアもあります。これらは難易度もコストも大きく異なります。

中でも差が大きいのは、次の2つです。

  • リホスト:比較的短期間・低コストで実現しやすい反面、旧来の課題をそのまま持ち込む懸念がある
  • リファクタリング・リビルド:将来の拡張性を高められる一方、期間と費用は大きく膨らむ

手法を選ぶ際は、自社のシステムが抱える課題と投資余力を照らし合わせることが肝心です。

移行の進め方には、一度にすべてを切り替えるビッグバン方式と、段階的に移していく段階移行方式があります。ビッグバン方式は管理がシンプルな一方で、失敗時の影響が全体に及ぶリスクを抱えます。

データ量や業務の重要度が高い場合は、新旧システムを一定期間並行稼働させながら段階的に移す方式が安全とされています。

ポイント

移行の手法は、リホストのように短期間・低コストで済む方法と、リファクタリングのように期間と費用が大きく膨らむ方法とで差が大きいため、自社の課題と投資余力に照らして選びます。

システム移行の進め方と工程

システム移行の工程を、現状把握・要件定義・計画、設計・開発・データ移行準備、移行リハーサル・本番切替・運用定着の順に示す図。
本番切替の前にリハーサルを置き、運用定着までを一続きで捉えます。

システム移行は、現状把握から本番切替・運用定着まで、複数の工程を順序立てて進めます。工程ごとに、決めること、作るもの、確かめることが異なります。特にデータ移行と基盤移行を伴うプロジェクトでは、移行リハーサルとダウンタイム設計が成否を左右します。

工程は大きく三つのフェーズに分けられ、フェーズごとに押さえるべきポイントがあります。

現状把握・要件定義・計画フェーズ

最初のフェーズでは、現行システムのアセスメント(現状調査)を行います。どのようなデータが、どの程度の量で、どのような構造で蓄積されているかを洗い出すことが出発点です。

長年運用されたシステムはドキュメントが失われていることも多く、ブラックボックス化した仕様を解析する作業が必要になる場合もあります。

計画フェーズで固めたいのは、次の2点です。

  • 移行方式とスケジュール:移行計画書にまとめ、体制やリスク対策も盛り込む
  • ダウンタイムの許容:どの時間帯に、どれだけ業務を止めてよいかを業務部門と早期に合意しておく

続いて、移行後にどの業務をどう実現したいのかという要件を定義します。ここで採りたいのが、パッケージやクラウドサービスの標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」の考え方です。

旧システムの例外運用をすべて再現しようとすると、開発が肥大化し、費用も期間も膨らみます。そのため、例外運用を残すかどうかは、早い段階で決めておきます。

経営層への説明では、初期コストの比較だけでなく移行後の運用コスト低減シミュレーションを示すと、投資判断を後押ししやすくなります。

設計・開発・データ移行準備フェーズ

このフェーズでは、新システムの設計と並行して、データ移行の具体的な設計を進めます。旧システムと新システムでデータ構造が異なる場合は、項目同士をどう対応づけるかをマッピング表にまとめます。

この段階では、次の2つの作業も欠かせません。

  • 技術的なハードル:文字コードの差異や外字、半角全角の揺れなど、見落とされがちな点を洗い出す
  • 基盤側の準備:基盤移行の場合は、新環境の構築、ネットワーク設定、セキュリティ設定をこの段階で整える

あわせて取り組みたいのがデータクレンジングです。旧システムには重複データや使われていないレコードが蓄積されていることが多く、そのまま移行すると新システムの品質を損ないます。

仕入先や得意先のマスタの名寄せ、過去履歴の整理といった地道な作業は、隠れたコストになりやすいです。そのため、工数を十分に見込んでおく必要があります。

開発が進んだら、移行ツールやスクリプトを使った移行プログラムを準備します。次の移行リハーサルに備えて、本番に近いテストデータを用意しておくことも、品質を高めるうえで欠かせません。

移行リハーサル・本番切替・運用定着フェーズ

本番切替の前に必ず実施したいのが移行リハーサルです。本番と同等の環境で実際にデータ移行を行い、所要時間、エラーの有無、移行後のデータ整合性を検証します。

リハーサルを複数回繰り返すことで、本番当日のダウンタイムを正確に見積もり、想定外のトラブルを事前に潰すことができます。

本番切替では、業務を止める静止点を設けてデータを確定させ、新システムへ移行します。本番切替で特に押さえたいのは、次の2点です。

  • 残高の合わせ込み:在庫や会計のように残高を扱う業務では、静止点での理論値と実際の値のズレを合わせ込む
  • 切り戻し手順:問題が起きた際に旧システムへ戻す手順を、作業の順序とあわせて切替手順書に明記する

切替後は、新旧を一定期間並行稼働させたり、初期サポート体制を手厚くしたりして運用を定着させます。「前のシステムではできた」という現場の声に丁寧に向き合う、いわゆるチェンジマネジメントも欠かせません。

操作研修やマニュアル整備を通じて利用者の不安を取り除くことが、移行を本当の意味で成功させる最後の鍵となります。

ポイント

判断の目安は、移行リハーサルで所要時間とデータの整合性を確かめられているかです。ダウンタイムは、業務部門と早い段階で合意しておきます。

費用相場とコストの内訳

システム移行の費用を、人件費・工数、ランニングコスト、隠れコストの3層で整理した図。
移行時の費用に加えて、移行後や見積もりから漏れやすい費用も並びます。

システム移行の費用は、対象システムの規模や手法によって大きく変わります。小規模なら数百万円ですが、大規模な基幹システムの移行では、数千万円から2億円規模に達することもあります。

費用の全体像を把握するには、目に見える開発費だけでなく、見落とされがちな隠れコストも含めて考える必要があります。

人件費・工数と費用を左右する要因

システム移行の費用の大部分は、エンジニアやプロジェクトマネージャーの人件費で構成されます。費用は基本的に「人月単価×工数」で算出され、関わる技術者のスキルや作業期間が長くなるほど高くなります。

データ移行の難易度、システム間の連携数、移行方式の選択などが工数を大きく左右します。特に工数がかさむのは、次の2つのケースです。

  • データ量と構造:データ量が多く構造が複雑な場合、解析や検証に多くの工数がかかる
  • ブラックボックス化:ドキュメントが残っていないシステムでは、仕様の解析に工数が増える

並行稼働を長く設ける場合は、新旧両方のシステムを同時に維持する分だけ費用が重なります。費用を抑えるには、不要な機能やデータを廃止して移行対象そのものを減らす判断が有効です。

背景として、IPAの調査ではIT人材の不足が深刻化しており、2030年には最大で約79万人が不足すると試算されています。

優秀な技術者の確保が難しくなれば、人月単価の上昇という形で移行費用にも影響します。そのため、早めに計画を立て、適切なパートナーを確保しておくことが、コスト面でも合理的です。

初期費用以外のランニングコストと隠れコスト

移行後にも継続的に発生するランニングコストを、見落としてはいけません。主なものは、次の2つです。

  • クラウドの利用料:利用量に応じて、毎月サービス利用料が発生する
  • 保守と運用の費用:新たに採用したミドルウェアやライセンスの保守費、運用監視の体制維持にかかる費用

さらに注意したいのが隠れコストです。データクレンジングの作業工数、操作研修やマニュアル整備、並行稼働期間の二重運用コストなどは、初期見積もりから漏れやすい項目です。

コンテナやマイクロサービスといった新しい技術を採用する場合は、運用担当者の教育費用も発生します。

こうした費用を経営層に説明する際は、移行後にどれだけ運用コストが下がるかを示すシミュレーションが効果的です。たとえば、老朽サーバーの保守費や障害対応コストが削減できれば、数年単位で投資を回収できる見通しを立てられます。初期費用の大きさだけで判断せず、中長期の総保有コストで比べる視点を持つことが肝心です。

ポイント

費用は、初期費用だけで判断せず、データクレンジングや並行稼働の二重運用、運用コストの低減を含む総保有コストで比べます。

見積もりを取る際のポイントと発注の進め方

適切な見積もりを得るには、発注側の準備とベンダーとの関係づくりが欠かせません。要件が曖昧なまま依頼すると、各社の前提がばらつき、比較すらできなくなります。

要件の明確化、発注先の選び方、契約形態の使い分けは、いずれも各社の前提をそろえるうえで必要な準備です。

要件の明確化とRFP・仕様書の準備

見積もりの精度は、発注側が提示する情報の質に大きく左右されます。RFP(提案依頼書)には、移行の目的、対象のシステムとデータ、許容できるダウンタイムを書いておきましょう。

特に伝えたいのは、次の2点です。

  • データ量と連携先:工数に直結するため、できる限り具体的に伝える
  • 希望スケジュール:移行をいつまでに完了させたいかという希望

現状把握が不十分な段階では、いきなり開発までを一括で見積もるのは難しいものです。そのため、まずアセスメント(現状調査)だけを切り出して依頼し、その結果をもとに本格的な移行計画と見積もりを得る進め方が現実的です。段階を分けると、見えていないリスクも早い時点で把握できます。

見積書を受け取ったら、金額の総額だけでなく内訳の粒度を確認することが大切です。データ移行やテストの費用が含まれているかを確かめ、移行リハーサルや並行稼働の費用についても見ます。運用保守の範囲も、どこまで含まれるかを丁寧に見ます。

特に、安く見える見積もりほど、必要な工程が抜け落ちている可能性があるため注意が必要です。

複数社比較と発注先の選び方

発注先は金額だけでなく、技術力と実績を中心とした総合力で選びます。業務理解や体制も含めて見ます。

複数社から提案を受け、前提条件をそろえて比べることで、適正な相場感もつかめます。特に確かめたいのは、次の2つです。

  • 移行実績:同規模・同業種での移行実績の有無
  • トラブル対応:データ移行で起きたトラブルに対応してきた経験の豊富さ

あわせて確認したいのが、ベンダーロックインへの配慮です。特定のベンダーにしか保守できない状態になると、将来の改修や乗り換えの自由度が失われます。

ソースコードの著作権の帰属、設計ドキュメントの納品、運用権限の所在などを契約段階で明確にしておくと、長期的なリスクを抑えられます。

IPAの調査では、CDOやCIOといった専任役員を置く企業ほど、社内の状況が見えやすく、情報共有も円滑で、内製化も進み、システム刷新が順調に進む傾向が示されています。

発注側にも一定の知見を持つ体制を整え、ベンダー任せにしないことが成功率を高めます。また、コンサルティングから開発・運用まで一貫して伴走できるパートナーを選ぶと、フェーズ間の引き継ぎの取りこぼしも防げます。

契約形態の使い分けとリスク対策

システム移行では、フェーズごとに契約形態を使い分けるとリスクを抑えられます。要件が固まっていないアセスメントや要件定義の段階は、完成を約束しない準委任契約が適しています。

仕様が確定した開発・移行の段階では、作業の完成責任を負う請負契約にすることで、品質と納期を担保しやすくなります。

契約には、SLA(サービス水準合意)と、どこまでを誰が受け持つかを明確に盛り込む必要があります。ダウンタイムが発生した場合の対応、データ移行の検収基準、トラブル時の役割分担などを文書化しておくと、後のトラブルを未然に防げます。

移行プロジェクトで最も避けたいのは、データ移行の落とし穴による本番トラブルです。特に詰めておきたいのは、次の2点です。

  • 切り戻し条件:本番切替時に旧システムへ戻す条件を、双方で事前に合意する
  • リスク対応:移行リハーサルを契約の範囲に明記し、十分な検証期間を確保したうえで、問題発生時のエスカレーション手順を決めておく

事前の準備を丁寧に重ねることが、結果として成功に結びつきます。

ポイント

見積もりは総額より内訳で比べます。データ移行や移行リハーサルの費用が含まれているかが、判断の目安になります。

まとめ

現状把握から運用定着までの工程を、順に丁寧に進めることが成功の鍵です。特にデータ移行と基盤移行を伴うプロジェクトでは、ダウンタイム設計と並行稼働、複数回の移行リハーサルがトラブルを避けるうえで要になります。

費用面では、人件費や工数に加えて、隠れコストも見込みます。隠れコストには、データクレンジングや教育、二重運用などがあります。そのうえで、移行後の運用コスト低減も含めた総保有コストで判断しましょう。

発注では、RFPで要件を明確にし、複数社を比べたうえで、準委任と請負の使い分けやベンダーロックインの回避まで配慮すると、リスクを大きく減らせます。

IT人材不足が深刻化するなか、計画的なシステム移行は競争力を維持するうえで欠かせない取り組みです。本記事で紹介した進め方とポイントを踏まえ、自社に合う手法とパートナーを見極めながら、移行プロジェクトを着実に前進させましょう。

コンサルティングから開発・運用まで一貫して支援できる体制を活用すれば、移行にも安心して臨めます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。