システムのモダナイゼーションの開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

モダナイゼーション後の保守・運用費用は、既存環境、移行方式、運用後の最適化によって変わり、最大60〜90%削減できるケースがあります。

削減幅を左右するのは、移行前の環境の状態、選ぶ移行方式、稼働後にどこまで最適化を続けるかの3点です。

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モダナイゼーションと保守・運用費用の関係(コストが問題になる理由)

レガシーシステム放置のコスト要因を、維持費の上昇、人材不足と属人化、投資余力の縮小の3枚のパネルで示した図。
費用負担と投資余力の関係を3つの観点から見渡せます。

費用を比べるときは、移行にかかる初期費用と、移行しなかった場合に払い続ける費用を並べて考えます。老朽化したシステムの保守費用は、放置しても年々上がる傾向があるため、放置した場合の費用も比較の一方に入れる必要があります。

保守費は、導入済みシステムを現状のまま維持するための費用です。一方、モダナイゼーションは、老朽化した基盤から脱却し、そのコスト構造自体を変える取り組みです。

レガシーシステム放置のコスト構造とIT予算の実態

経済産業省のDXレポートによれば、多くの企業でIT予算の8〜9割以上がレガシーシステムの維持管理費に充てられています(出典: 経済産業省「DXレポート」)。

  • 維持費の上昇:ハードウェアとソフトウェアの保守費用が高騰します。
  • 人材不足と属人化:技術者の高齢化や退職で知識が偏り、障害対応の工数と委託費用の増加につながります。
  • 投資余力の縮小:IT予算の多くが維持に回り、新しい価値を生む投資が難しくなっている状態で、モダナイゼーションを検討する最大のシグナルです。

担当者しか挙動を把握していない状態では、小さな障害でも対応に多くの工数がかかります。さらに、放置している間も費用は複利的に積み上がり、目に見える出費以上に負担が膨らんでいきます。

「2025年の崖」が示す放置コストのインパクト

経済産業省が警告する「2025年の崖」は、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したシステムを放置し、DXを進められない場合のリスクを指します。

  • 経済損失:2025年以降、日本経済全体のマクロ試算で年間最大12兆円(現在の約3倍)と見込まれています(出典: 経済産業省「DXレポート」)。
  • 企業への影響:保守費用の高騰、障害による機会損失、競合へのスピード劣後として表れる可能性があります。

そのため、保守・運用費用は目先の移行費用だけで比べず、今の延長で将来どこまで膨らむかも含めて判断します。

ポイント

判断の材料には、IT予算のうち維持に回っている割合を使うとよいでしょう。その割合が高いほど、新しい価値を生む投資に回せる余力が少ないことを示します。

移行前後のランニングコスト比較

クラウドネイティブ環境への移行は、運用にかかる費用の構造を変える手段です。続く2つの見出しでは、マネージドサービス化とメインフレーム脱却を方法別に取り上げます。

マネージドサービス化・サーバーレス化によるコスト削減効果

インフラとアプリを同時に刷新するリプラットフォームでは、データベースなどをAmazon RDSのようなマネージドサービスへ切り替えられます。その結果、保守運用の手間と費用を抑えられます。

  • マネージドサービス:バックアップやOSのパッチ適用など、定型作業の自動化が進みます。
  • サーバーレス(FaaS等):実行時間や回数に応じた完全従量課金を実現できる場合があります。

サーバーレス化に成功すると、インフラの常時稼働や監視が不要になり、大幅な削減が見込めます。従来のオンプレミスはピーク負荷に備えたサーバーが必要ですが、クラウドでは実際の利用量に近い費用にできます。

メインフレーム脱却によるコスト削減インパクト(60〜90%)

メインフレームからクラウドネイティブ環境へ移行すると、固有の高額なハードウェア保守費用や専門人材の人件費を最大60〜90%削減できるケースがあります。

電子部品メーカーは、IBMメインフレームからAWSクラウドのJava環境へ全面移行しました。段階的なリホストとリファクタリングを組み合わせ、運用コストを約50%削減しました。

一方、物流商社は、独自開発の老朽化したワークフローシステムをSaaSへ置き換えました。保守費用に加え、ペーパーレス化により、年間400万円の維持・業務経費を削減しました。

ポイント

削減効果を比べるときは、移行前後の費用を同じ項目で並べ、インフラ費用と人件費を分けて見ると、効果の出どころが分かりやすくなります。

アプローチ別に見るコスト削減効果と注意点

コスト削減効果の性質は、選ぶアプローチによって異なります。移すだけで済ませると、期待した削減効果が得られない場合があります。

リホストだけでは削減しきれない「クラウドリフトの罠」

オンプレミス環境をそのままクラウドへ移すリホスト(クラウドリフト)では、移行しただけで費用が減らず、増えるケースもあります。

ピーク負荷に備えた過剰なサイジングを引き継ぐと、使っていないリソースにも課金されます。そのため、クラウド利用費がかえって高騰することがあります。

リホストは移行期間を短くできる点で有効です。ただし、削減を主な目的にする場合は、移行後のリソース見直しとサイジング最適化も計画に含めます。

リファクタリング・リビルドで得られる長期的なコスト最適化

リファクタリングやリビルドは初期投資が大きい一方、長期的なコスト最適化に向いています。初期投資を回収するには、数年単位の視点が必要です。

マイクロサービス化すると、機能単位で個別に拡張・デプロイできます。そのため、負荷の高い機能にリソースを割き、ほかは最小限に抑える制御が可能になります。

コードの内部構造を整理すると、将来の機能追加や改修の工数が減り、中長期の保守費用の伸びを抑えられます。特に、業務の中核を担うシステムでは、長期的な判断が総保有コスト(TCO)の最小化につながります。

ポイント

移行期間を優先するならリホスト、長期の最適化を狙うならリファクタリングやリビルドが向いています。削減を目的にする場合は、移行後のリソース見直しを計画に含めておくことが判断の目安になります。

移行後に欠かせないFinOps(クラウドコスト最適化)の実践

継続的モニタリングと最適化を中心に、利用状況の確認、不要なリソースの削減、インスタンスサイズの最適化を循環で示した図。
利用状況の確認が、次の費用見直しにつながる構成です。

クラウドネイティブ化やマイクロサービス化の削減効果は、移行直後より運用段階で表れます。そのため、稼働前の段階でFinOps(クラウドコスト最適化)、性能監視、運用自動化の計画を立てておきます。

稼働後6〜12ヶ月の継続的モニタリングと最適化

稼働後6〜12ヶ月は、利用状況を継続的に監視し、不要なリソースの削減やインスタンスサイズの最適化を行います。これにより、ランニングコストを適正化できます。

稼働直後は移行時の設定が残りやすく、実際のアクセス傾向やデータ量に基づく最適化は、その後に始まります。そこで、利用状況を可視化するダッシュボードを整備します。

ダッシュボードで想定外の費用増を早く検知できる仕組みを作ることが、稼働後のコスト管理の第一歩です。

コスト最適化を定着させる運用体制

FinOpsを定着させるには、コスト最適化を継続的に見直す体制が必要です。具体的には、エンジニアリング部門とコスト管理部門が、定期的にクラウド利用料を確認します。

予算超過の兆候を早く是正できる運用ルールを整えます。また、オンプレミス担当者へのリスキリング(再教育)も並行して進めます。

担当者がマネージドサービスやサーバーレスを理解しないまま従来型の運用を続けると、クラウドネイティブ化の効果を十分に引き出せません。

ポイント

移行直後は設定が残りやすいため、稼働後6〜12ヶ月は利用状況を見ながら費用を見直す体制を先に決めておくと、想定外の費用増を早く見つけやすくなります。

保守・運用費用を見誤らないためのポイント

見積もりで確認する費用の内訳として、インフラ費用、保守・運用委託費用、ライセンス費用をカードで示した図。
3項目をそろえて見ると、見積もり範囲を照合しやすくなります。

見積もりの段階で確認事項を押さえておくと、後から想定外の出費が生じるリスクを抑えられます。特に、費用の内訳と削減効果の測り方は、後で判断を誤らないための前提になります。

見積もり時に確認すべき費用の内訳

見積もりでは、費用を一つにまとめず、インフラ費用、保守・運用委託費用、ライセンス費用に分けて受け取ることが基本です。

  • インフラ費用:クラウド利用料の内訳。
  • 保守・運用委託費用:バグ修正、セキュリティアップデート、監視対応の範囲。
  • ライセンス費用:監視ツールやセキュリティツールなどの利用料。

アクセス数に応じて自動拡張する場合は、トラフィックの急増でクラウド利用料が跳ね上がるリスクがあります。そのため、費用上限や予算アラートを事前に設定しておきます。

移行直後の並行稼働中は、旧・新システム双方の保守費用が発生することがあります。二重の費用が続く期間によって、移行初年度の総額が変わります。

事例に学ぶコスト削減効果の測り方

削減効果は、移行前後の月額差だけで評価せず、障害対応の人件費や保守担当者の負担軽減も含めて測ります。さらに、機能追加のスピード向上も間接的な効果の一つです。

たとえば、運用費を約50%削減した事例や、SaaS化で年間400万円の経費を削減した事例があります。ただし、削減幅は業種や規模によって異なります。

効果を測る前提は、移行前のコストを正確に把握しておくことです。現状の費用構造を一つずつ洗い出しておくと、投資対効果を適切に評価できます。

ポイント

見積もりでは、インフラ費用、保守・運用委託費、ライセンス費用を分けて受け取り、アクセス増による費用上限を事前に決めておくかどうかが判断の基準になります。

まとめ

保守・運用費用は、放置したときの負担と移行後の削減効果を並べて比べると、判断しやすくなります。

多くの企業でIT予算の8〜9割以上が維持費に回るなかで、モダナイゼーションはコスト構造を変える経営判断です。技術投資にとどまりません。

マネージドサービス化やサーバーレス化は削減策の一つです。メインフレーム脱却では最大60〜90%削減の例がある一方、リホストだけでは費用が増える場合もあります。

稼働後6〜12ヶ月にわたるFinOpsの継続が、コスト最適化の鍵です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。