システムのモダナイゼーションの開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

システムのモダナイゼーションは、要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3段階で進めるのが一般的です。3段階を順に踏むことで、現場の混乱を抑えられます。

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システムのモダナイゼーションの全体像

システムのモダナイゼーションとは、老朽化・陳腐化した既存システムを最新の技術やアーキテクチャへ刷新する取り組みです。刷新だけでなく、業務プロセスの見直しやデータ活用基盤の整備も通じて企業の競争力を高めるもので、デジタル変革(DX)全体を進める包括的な改革です。

経済産業省の「DXレポート」は、2025年以降にレガシーシステムを放置すると、年間最大12兆円の経済損失が生じると予測しました。日本企業では、数十年前に作られたシステムが今も稼働を続けており、保守担当者の高齢化やブラックボックス化、セキュリティリスクが課題になっています。

さらに、経済産業省は2025年5月、「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を公表しました。同レポートでは、国を挙げてモダナイゼーションを進める姿勢が示されています。

モダナイゼーションの種類と代表的な手法

代表的な5つの手法は、既存システムを入れ替えるものから、コードの内部だけを改善するものまであります。刷新の範囲や目的に応じて使い分けます。

  • リプレース(Replace):既存システム全体を新システムに入れ替える方法。
  • リホスト(Rehost / Lift and Shift):アプリケーションをほぼそのままクラウドへ移すこと。
  • リプラットフォーム(Replatform):コアロジックを変えずに、基盤を刷新する。
  • リファクタリング(Refactor):機能を変えず、コードの内部構造を改善する。
  • リライト(Rewrite):現代的な言語やフレームワークで、既存システムを書き直す。

リプレースは、業務フローを抜本的に見直す場合や、優れたパッケージ製品がある場合に向いています。コストと期間は最も大きくなりますが、制約を完全に排除できる点が強みです。

リホストは、短期間・低コストで環境を刷新できる点が特徴です。データセンター費用の削減や保守からの脱却を優先する企業に選ばれています。

リプラットフォームは、データベースやランタイムなどの基盤が対象になります。リホストより効果が高く、リライトほど費用はかかりません。

リファクタリングは、開発言語を維持したまま技術的負債を解消し、保守性や開発効率を高めたい場合に有効です。リライトでは、古いCOBOLやVisual BasicをJava、Python、TypeScriptへ移すケースもあります。

手法は、技術的負債の深刻度、ビジネス上の変革ニーズ、使える期間と予算の3つの観点で判断します。判断の参考になるのが、AWSやGoogleが提唱する6Rフレームワークです。6RはRetain・Retire・Rehost・Replatform・Refactor・Repurchaseです。

実際には、システムごとに手法を使い分けるハイブリッド型を選ぶ場合も多くあります。

マイグレーションとの違いと使い分け

マイグレーション(システム移行)は、機能や内部構造を基本的に変えず、稼働環境を新しいサーバーやクラウドへ移すことです。つまり「環境の移動」であり、モダナイゼーションの手段の一つにあたります。

モダナイゼーションの目的はビジネス価値の向上で、技術刷新はその目的を実現するための手段です。

解決を目指すレガシーシステムの課題には、次のようなものがあります。

  • 技術的負債:保守や改修の負担が積み重なった状態。
  • ベンダー依存:開発ベンダーへの過度な依存。
  • データのサイロ化:データが分散し、活用しにくい状態。
  • クラウド連携:クラウド環境とつなぐことが難しい。
  • セキュリティ:リスクが増大する。

これらの課題すべてに向き合う方向性として、モダナイゼーションを位置づけます。実務では、まずマイグレーションでクラウドへ移し、その後に段階的な刷新を進める企業も多くあります。移行計画は、プロジェクトの優先度や予算規模に応じて柔軟に設計します。

ポイント

手法に迷うときは、ビジネス価値の向上まで求めるかを先に決めます。環境の移動で足りるのか、刷新まで必要なのかを切り分けると判断しやすくなります。

システムのモダナイゼーションの進め方・工程・手順

要件定義・企画から設計・開発、テスト・リリースへ進むモダナイゼーションの3段階を示す図。
現状分析と優先順位付けが、最初の工程につながります。

一般的な進め方は、要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3段階です。一度に全システムを刷新すると、現場の混乱が大きくなります。そのため、現状分析と優先順位付けを経て、段階的に進めます。

小規模なパイロット案件は4〜6週間が目安です。一方、基幹システム全体の刷新では、6〜18ヶ月以上を見込みます。

要件定義・企画フェーズ

現状は、担当者への聞き取り、資料収集、ソースコードのスキャンで把握します。長年稼働するシステムでは、資料がない、または不備があるケースが多く、そのぶん仕様復元に時間がかかります。

NTTデータが推奨する「N字開発モデル」は、従来のV字開発モデルにIT企画と仕様復元を加えたもので、資料のない長年稼働するシステム特有の課題に対処します。

現状を把握したら、達成すべき目標を具体的なKPIで定義します。具体的なKPIがあれば、プロジェクトの成否を客観的に評価できます。

たとえば、クラウド移行でインフラ費を40%削減する目標や、ERP刷新で月次決算を5日から2日に短縮する目標があります。ゴールが曖昧なままだと、開発中にスコープが際限なく広がる「スコープクリープ」のリスクが高まります。

企画フェーズでは、経営層が現状と刷新計画を判断できるように、次の資料を用意します。

  • 現行システム調査報告書:As-Is分析の結果をまとめたもの。
  • 課題・リスク一覧:現状の問題とリスクを整理したもの。
  • 手法の選定根拠:採用する刷新方法について、その理由を示す。
  • 中長期ロードマップ:フェーズに分けた計画。
  • 概算予算・スケジュール:費用と予定の概算。

これらを経営層に示し、プロジェクトのGoサインを得ることが、企画フェーズのゴールです。

設計・開発フェーズ

設計では、新システムの構成とデータ移行計画を並行して作ります。技術選定は将来の拡張性やベンダーロックインに影響するため、その根拠を記録として残すことが大切です。現代のプロジェクトでは、次の技術が主流になっています。

  • アーキテクチャ:マイクロサービスの採用。
  • コンテナ化:DockerやKubernetesを活用する。
  • API設計:APIファーストの方針で進める。
  • クラウドネイティブ:クラウドに対応した設計パターンを使う。

開発では、アジャイル(スクラム)を採用するプロジェクトが増えています。アジャイル開発では、2〜4週間のスプリントで動くソフトウェアを作ります。短いスプリントを重ねることで、手戻りを減らし、現場ユーザーの意見を早く取り込めます。

一方、ウォーターフォール開発では、要件確定後、数ヶ月先まで動くものを確認できません。アジャイルでは2週間ごとに動く機能を確認でき、ビジネス側との認識のずれを早期に見つけられます。

刷新の進め方では、ストラングラーフィグパターンも有効です。ストラングラーフィグパターン(Strangler Fig Pattern)は、新機能から順に刷新し、旧システムを徐々に置き換える方法です。この名称は、イチジクの木が古い木を包み込む様子に由来します。

この手法では、置き換えを段階的に進めることで、リスクを分散して移行できます。

テスト・リリースフェーズ

テストは段階的に行います。単体、結合、システムの各テストを経て、最後にユーザー受入テスト(UAT)へ進みます。

検証とリリースでは、次のようなテストや運用準備を組み合わせます。

  • 動作比較:リグレッションテストで、新旧の動きを突き合わせる。
  • 並行稼働:1〜3ヶ月程度の運用を経て、完全に移行する。
  • 利用者支援:研修、マニュアル、ヘルプデスクの整備。
  • 段階的な切り替え:ブルーグリーンやカナリア方式を用いる。

特に、リライトやリファクタリングでは、外から見た動作が変わっていないことを示す必要があります。そのため、現行と新システムの動作を確かめるテストケースを、開発の早い段階から整備しておきます。

ブルーグリーンは、新旧の環境を並行して保ったまま切り替えます。一方、カナリアは一部のユーザーから段階的に移行します。これらの方式を使えば、リリースに伴うリスクを抑えられます。

並行稼働の期間は、新旧システムを照らし合わせる機会にもなります。運用を通じて、問題がないかを確かめます。

CI/CDは、継続的インテグレーションと継続的デリバリーを指します。テストやビルド、デプロイを自動化すると、改善を安全かつ速く進められます。

効果を長く保つには、リリース後の運用と改善の体制も、設計に含めておくことが欠かせません。

ポイント

次の工程へ進む前に、ゴールが曖昧になっていないかを確かめます。企画の段階で曖昧さを残すと、仕様変更や手戻りが増えるおそれがあります。

費用相場とコストの内訳

小規模、中規模、大規模のシステム刷新について、それぞれの開発費用目安を示す図。
対象規模が大きくなるほど、費用帯も上がります。

費用は、対象システムの規模や複雑さによって変わり、手法や開発体制でも違いが出ます。そのため、一律の金額は示せません。

業界相場と費用の構造を把握しておくと、予算計画や発注交渉を現実的に進められます。

人件費と工数:規模別の費用目安

開発費の大部分は人件費が占め、工数に単価を掛けて算出します。シニアエンジニアの月額単価は、150〜200万円程度が相場です。

総費用は、プロジェクトマネージャーや設計者を含むチーム全体の工数で決まり、案件の規模によって金額の幅が大きく変わります。

  • 小規模:100万〜500万円:部分的なリファクタリングや、単一の業務システムのクラウド移行。
  • 中規模:500万〜3,000万円:複数部門にまたがる業務システムの刷新や、ERPのモダナイゼーション。
  • 大規模:3,000万〜1億円以上:基幹システム全体のリプレースや、マイクロサービスへの全面移行。

開発期間は、小規模案件で1〜3ヶ月程度、中規模案件で3〜12ヶ月程度が目安です。さらに、大規模案件は12〜24ヶ月以上かかります。

ERPなどのパッケージ製品やクラウドサービスを使い、カスタマイズを抑える場合は、初期費用が1,000万〜3,000万円程度です。パッケージ製品を使う場合の期間は、6ヶ月〜1年程度が目安です。

フルスクラッチ(完全新規開発)は自由度が高い一方、費用と期間が大幅に増えます。そのため、予算を抑えたい場合は、パッケージ製品やSaaSを検討し、カスタマイズの範囲を絞るのが有効です。

初期費用以外のランニングコスト

刷新後も、クラウド利用料や保守・運用費など、継続してかかる費用が残ります。

  • クラウド利用料:月額数万〜数十万円。利用規模、リージョン、サービス構成によって変わります。
  • 保守・運用費:開発費の15〜20%/年が目安。
  • その他:ライセンス費やサポート契約費が必要になる。

クラウド移行後は、想定より費用がかかるという声も多くあります。オンプレミスではサーバー購入費が一括ですが、クラウドでは従量課金が毎月発生します。

移行後にコストを見直す取り組み(FinOps)も含めて中長期で試算すると、経営層への説明や予算の確保に役立ちます。

中小企業向けのIT導入補助金を使える場合もあります。ただし、費用要件を満たすかどうかは、事前に確認しておく必要があります。

ポイント

費用は規模や複雑さで変わるため、まず対象システムの規模と開発体制を整理します。相場と照らし合わせておくと、提示された見積もりの金額が妥当かを判断しやすくなります。

見積もりを取る際のポイント

発注先を比較する際の刷新実績、管理体制、完了後の支援、見積もり・提案の4観点を示す図。
4つの観点を並べると、金額以外の確認軸も見渡せます。

適切な見積もりを得るには、発注側の事前準備が欠かせません。情報が不足すると、ベンダーは精度の高い金額を出せません。準備を整えて依頼すれば、見積もりの精度が上がり、複数社の提案を正確に比較できます。

要件明確化と仕様書の準備

各社の見積もり条件をそろえるため、現行システムの状態と希望を次の資料にまとめます。

  • 現行システムの概要:システム構成図とデータフロー図を用意し、利用ユーザー数とトランザクション量を添える。
  • 課題・改善要望:現場へのヒアリング結果をまとめたもの。
  • To-Beのイメージ:実現したい状態を示す。
  • 優先機能・業務:重要度の高い対象を明らかにする。
  • スケジュール制約:年度末までの稼働が必須など、期限に関する条件。

レガシーシステムは、仕様書がない場合や、実際の動作と資料が異なる場合があります。その場合は、仕様復元(リバースエンジニアリング)を範囲に含める合意が必要です。

仕様復元は想定以上の工数になり、全体の20〜30%を占める場合もあります。そのため、見積もりに含まれているかを、必ず確かめてください。

複数社比較と発注先の選び方

発注先を比べるときは、3社以上に同じ条件で見積もりを依頼します。見ておきたい観点は次の4つです。

  • 刷新実績:自社に近い業種・規模・技術の実績があるか。課題理解やリスクへの助言も評価する。
  • 管理体制:PMの経験やメンバーの常駐を提案で確かめ、定例報告とエスカレーション経路も見ておく。
  • 完了後の支援:保守・運用・機能追加への支援体制を、契約前に明確にする。
  • 見積もり・提案:金額、提案内容、コミュニケーションの質を総合的に評価する。

注意すべきリスクと対策

刷新では、範囲の拡大、データの移行、現場の受け入れの3つで問題が起きやすいため、事前に対策を決めておく必要があります。

  • スコープ拡大:範囲を文書で定め、追加要望は別フェーズに回す。
  • データ移行:初期段階からデータを継続的に移し、リスクを減らす。
  • 現場の抵抗:利用者を巻き込み、UI試作品のレビューと早期研修を行う。

追加要望が続くと、当初の予算やスケジュールを大幅に超えることがあります。

長年稼働したシステムのデータには、重複や欠損、形式の不整合が残る場合があります。さらに、文字コードの問題も加わることがあり、整理や移行テストに想定外の工数がかかります。

操作性の変化への不安や、業務変更への反発は珍しくありません。利用者を早くから巻き込み、「自分たちのシステム」という意識を育てることが定着につながります。

ポイント

見積もりを比べる前に、各社へ同じ条件を渡せているかを確かめます。条件がそろわないまま金額だけで比べると、判断を誤るおそれがあります。

まとめ

モダナイゼーションは、レガシーシステムの技術的負債や業務の非効率、セキュリティリスクを解消し、DXを進めるための取り組みです。

「2025年の崖」が現実となった今、先送りのリスクは、取り組みに必要な費用や手間を確実に上回っています。

進め方は、現状把握・企画、設計・開発、テスト・リリースの3段階です。そのうえで、ビジネス目標、予算、予定に合わせて手法を選びます。

成功の鍵は、全体を一度に刷新せず、段階的に進めることです。費用は、小規模の100万〜500万円から、大規模の3,000万円以上まで幅があります。

初期費用だけでなく、リリース後の運用費も含めて中長期で試算します。また、仕様書や要件を社内で整理しておくことも大切です。

発注時は、刷新実績のある複数社に同条件で見積もりを依頼します。提案や支援体制を比べて、発注先を選びます。

riplaは、コンサルティングから開発、定着支援まで一貫してモダナイゼーションを支援します。何から始めるか迷う段階からでも相談できます。お気軽にお問い合わせください。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。