システムリアーキテクチャのパッケージ/クラウド製品一覧

システムリアーキテクチャの基盤は、実行、通信制御、API管理、ワークフローの役割ごとに製品を選ぶと、自社の分割方針に合う構成を検討できます。

買い切りのパッケージより、クラウド型の製品を役割ごとに組み合わせる形が中心です。

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パッケージ型とクラウド型システムリアーキテクチャ基盤の違い

買い切り製品を自社サーバーに導入する形は、この領域では一般的ではありません。機能や料金を具体的に確認しやすいのは、むしろクラウド型の技術基盤です。

パッケージ型は自社構築と継続保守が論点

自社データセンター内にコンテナ基盤やサービスメッシュを個別に構築し、保守することも、理論上は可能です。ただし、Kubernetesやサービスメッシュの更新、セキュリティパッチ、可観測性まで、自社で継続する体制が必要になります。

クラウド型が中心になっている理由

クラウド型のコンテナ基盤、サービスメッシュ、APIゲートウェイでは、クラスター管理やパッチ適用をベンダーに任せられます。

マイクロサービス化で対象を広げるほど、運用するサービスの数も増えます。そのため、基盤の運用を委ねられるかどうかが、導入後の負荷を左右します。

ポイント

自社で基盤の更新、パッチ適用、可観測性まで継続する体制がない場合は、クラウド型の製品を中心に候補を考えるのが現実的です。

製品を比較するときの共通軸

製品比較で確認する分割方針、整合性、既存環境、運用基盤の4観点を並べた図。
4つの観点をそろえると、候補ごとの確認漏れを防げます。

製品が自社のアーキテクチャ設計に合うかは、分割方針と整合性の観点から比べると見極めやすくなります。既存環境との連携や運用基盤との統合も、比べる観点に含まれます。

自社の分割方針との適合性

分割方針に合う構成かを見るには、実行基盤だけでなく、各層の役割も合わせて確認します。

  • 分割方針との適合:必要な役割の製品を組み合わせられるか
  • 整合性確保:サービス間の分散トランザクションに対応できるか

DDDやイベントストーミングで見極めた境界づけられたコンテキストの数も、あわせて確認します。

既存モノリスの言語や基盤を踏まえたうえで、実行、通信制御、整合性確保を検討します。

運用性と既存基盤との連携

クラウド環境や運用の仕組みに合うかを見れば、導入後の負荷を見積もれます。

  • 既存環境との連携:認証やネットワーク設定を重複させないか
  • 運用基盤との統合:監視やログを既存の仕組みに統合できるか

AWS・Azure・Google Cloudを利用している企業は、利用中の基盤とネイティブに統合された製品を優先候補にできます。

複数クラウドやオンプレミス環境では、オープンソース起源の製品が柔軟性を保ちやすい場合もあります。また、発注側は障害通知の連携先や既存のインシデント対応フローも確認します。

ポイント

分割方針や整合性の観点で条件に合わない製品は、機能が多くても候補から外す判断もあり得ます。既存環境や運用基盤との連携も、比較に含めます。

システムリアーキテクチャを支える主要クラウド製品6選

主要クラウド製品をコンテナ実行基盤、サービスメッシュ、APIゲートウェイ、ワークフローオーケストレーションの4カテゴリに分けた図。
役割の異なる製品カテゴリを整理しています。

2026年7月時点で、現行の公式ページと対応内容を確認できた6製品を取り上げます。

製品は4つのカテゴリに分けています。その内訳は、コンテナ実行基盤、サービスメッシュ、APIゲートウェイ、ワークフローオーケストレーションです。掲載順は優劣を示すものではありません。

Red Hat OpenShift

Red Hat OpenShiftは、Kubernetesを核にしたコンテナ・マイクロサービス実行基盤です。

  • 複数クラウドに対応:AWS・Azure・Google Cloud・IBM Cloudなどで利用できます
  • 開発と近代化を支援:CI/CDワークフローやアプリケーションモダナイゼーションも扱えます

マネージド型は従量課金制で、セルフマネージド型には複数のエディションがあります。ただし、公式ページに具体的な金額はなく、料金は個別に確認する必要があります。

特定のクラウドへの依存を避けたい企業や、オンプレミスとクラウドを併用する企業の候補になります。

Amazon EKS(Elastic Kubernetes Service)

Amazon EKSはAWSのマネージドKubernetesサービスです。

  • クラスター管理:管理そのものをAWS側に任せられます
  • コンテナ運用:スケジューリング、可用性管理、動的スケーリングに対応します
  • AWSサービス連携:ネットワーク・セキュリティ・ストレージと統合できます

AWS上で基幹システムを動かしつつ、追加の認証基盤やネットワーク構成を増やさずにマイクロサービス化したい企業の候補になります。

料金は利用量に応じた課金体系です。ただし、具体的な金額の記載はなく、見積もりの際に確認します。

HashiCorp Consul

HashiCorp Consulはサービスメッシュ製品です。

  • 通信制御:サービス間通信の検出・暗号化・認可を担います
  • サービス管理:マルチクラウド、Kubernetes、VMをまたいで登録・監視できます
  • データセンター管理:複数拠点を統一して管理できます

サービス数が増えて通信経路の可視化や認可制御が複雑になった段階で、検討の候補に入ります。

オープンソース版と商用版があり、料金の具体額はページに記載されていません。

Kong Gateway

Kong Gatewayは、分割したマイクロサービスへのアクセスをまとめて管理するAPIゲートウェイです。

  • 複数プロトコル:REST・gRPC・GraphQL・WebSocket・Kafkaなどに対応します
  • 基盤との連携:Kubernetes Ingress Controllerと連携できます
  • 開発フローとの統合:宣言的設定でCI/CD・GitOpsに統合できます
  • API-first設計:OpenAPI仕様を先に決め、各サービスへの振り分けを管理したい場合に検討します

オープンソース版、自社管理の商用版、クラウドホスト版の3形態があり、料金は個別確認が必要です。

Temporal

Temporalは、マイクロサービス間のワークフローをコードで記述・実行する製品です。

  • 補償処理:公式に「Compensating Patterns (Saga)」を掲げています
  • 実行機能:自動リトライ、タイマー、状態の永続化に対応します
  • 複数言語に対応:Python・Go・TypeScript・Javaなどで使えます
  • 整合性確保:分散トランザクションが課題の企業で候補になります

複数サービスの処理失敗時に、補償処理(Sagaパターン)を複雑な自前実装なしで組み込めます。

セルフホスト(オープンソース)とTemporal Cloudがあり、公式に具体的な料金は記載されていません。

AWS Step Functions

AWS Step Functionsは、ワークフローオーケストレーションサービスです。

  • 構成:Lambda関数などを組み合わせ、サーバーレスなマイクロサービスを構築します
  • 設計・統合:ビジュアル画面で設計でき、220以上のAWSサービスと統合できます
  • 処理管理:エラー処理や状態管理を自動化できます

AWS中心のサーバーレス構成を検討する企業に向きます。

Temporalのような明示的な分散トランザクション保証の記載はありません。必要な整合性の程度に応じて使い分けます。また、料金もページ上に具体的な金額の記載はありません。

自社の課題別に候補を絞る方法

6製品を一斉に細部まで比べるより、いまつまずいている層を先に決めると、候補を絞りやすくなります。

主要システム全体の変更容易性を高めたい場合

主要なサブシステム全体をマイクロサービス化する全面型では、まずコンテナ実行基盤を中心に据えます。

候補はRed Hat OpenShiftまたはAmazon EKSです。サービス数が増えていくことに備えて、HashiCorp ConsulやKong Gatewayも組み合わせます。

ベンダー依存を避けるならOpenShift、AWSとの統合を重視するならEKSが出発点です。

特定領域の連携・整合性を強化したい場合

範囲限定型やAPI化先行型では、実行基盤全体を作り替える前に、対象領域のワークフローと整合性の確保が課題になることが多くなります。

複数サービス間の補償が必要ならTemporal、AWS中心のサーバーレス構成ならAWS Step Functionsが候補です。

API仕様を先に決めて外部連携を整理する場合は、Kong Gatewayを中心に検討します。

ポイント

まず、最優先の課題が実行基盤の刷新、通信の整理、整合性の確保のどれかを決めると、候補を絞り込めます。対象範囲が全体か特定領域かによっても、見るべき製品が変わります。

料金・契約前に確認すべきこと

紹介した6製品は、公式ページに具体的な金額がなく、従量課金や個別見積もりが前提になっています。

利用規模を伝えたうえで総保有コストを確認し、公開価格の有無はその判断の一部として扱います。

課金の対象と将来の規模

コンテナ基盤やAPIゲートウェイの見積もりでは、課金指標と将来規模を確認します。

  • 課金指標:クラスター数、ノード数、リクエスト数、データ転送量などが対象になる場合があります
  • 将来規模:サービス数が段階的に増える前提で、1年後・3年後のサービス数やトラフィック量を伝えて見積もります

サポート体制と契約形態

オープンソース起源の製品には、無償のコミュニティ版とサポート付きの商用版があるものも多くあります。

障害時に自社だけでは解決できない場合に備えて、商用サポートの対応時間を確認します。また、問い合わせ窓口の言語や契約に含まれる範囲も事前に把握しておくと、本番稼働後の不安を減らせます。

ポイント

紹介した6製品は公式ページに具体的な金額がないため、利用規模と将来のサービス数を伝えて見積もりを取り、数年単位の総保有コストで比べます。

デモとPoCで最終候補へ絞る進め方

1機能をAPIゲートウェイ、実行基盤、サービスメッシュへつないで検証する流れ図。
一連の接続を試すことで、製品単体では見えない運用上の論点も確認できます。

資料比較で2〜3製品に絞ったら、分割を予定している1機能で動作を検証します。

アーキテクトに加えて実装担当のエンジニアも参加すると、運用イメージのずれを減らせます。

1機能のフルパス検証

本格展開の前に、構成要素の接続と障害時の運用を確認します。

  1. 既存モノリスの前面にAPIゲートウェイを置き、影響の小さい1機能を新サービスとして切り出します。
  2. 新サービスを実行基盤へデプロイし、サービスメッシュ経由で通信させる構成です。
  3. 必要であれば、ワークフローオーケストレーションによる補償処理も動かします。
  4. 記録する項目は、通信のレイテンシ、障害時の切り分け時間、監視画面での可視性です。

記録した内容は、本格展開時の判断材料になります。

移行効果の実測と稟議への活用

PoCの前に、対象機能の変更にかかる確認工数とリリースの所要時間を記録しておきます。

PoC後の数値と比較し、効果を確かめます。

一般的な効果をそのまま当てはめず、自社開発チームの実績値で算出すると、経営層への説明に根拠を持たせられます。

ポイント

PoCは分割予定の1機能で行い、レイテンシや障害対応時間を記録します。製品単体では見えない運用上の論点も、そこで確認できます。

システムリアーキテクチャの製品比較で押さえておきたいポイント

買い切り型の有無やおすすめの順位を見る前に、自社の設計と運用体制に合うかを同じ条件で比べます。判断が分かれやすいポイントも、ここで確認します。

パッケージ型が必要な場合の個別構築の比較

機能や料金を具体的に確認しやすい製品は、現在クラウド型が中心です。

自社データセンター内での完全な自社構築が必須の場合は、オープンソース製品を組み合わせた個別構築も比較します。

外部ベンダーとのハイブリッド構成も、比較の対象に入れます。

最優先課題によるおすすめ製品の違い

おすすめ製品は、最優先課題によって決まります。全企業に共通する1位はないため、課題に合う製品を選ぶことになります。

  • 実行基盤の刷新:Red Hat OpenShiftやAmazon EKS
  • サービス間通信の整理:HashiCorp Consul
  • 整合性の確保:Temporal

対象範囲と課題を明確にし、必要な製品の組み合わせで2〜3案に絞ってPoCへ進みます。

評価軸や体制の絞り方は、システムリアーキテクチャの選定ポイントで解説しています。

複数年の総保有コストによる料金比較

各社に同じサービス数・トラフィック量・サポート条件を提示し、比較します。

利用料に加えて、学習、既存基盤との統合、商用サポートの費用も含めます。そのうえで、数年単位の総保有コストで判断します。

まとめ

買い切りのパッケージ製品を探すより、役割ごとにクラウド製品を組み合わせて検討するのが現実的です。

役割は、コンテナ実行基盤、サービスメッシュ、APIゲートウェイ、ワークフローオーケストレーションの4つに分かれます。

6製品には違いがあり、たとえばマルチクラウド対応や通信の可視化で差が出ます。AWS統合やSagaパターン対応の有無も、比べる際の違いになります。

課題診断から2〜3案への絞り込み

まず、実行基盤の刷新、通信の整理、整合性の確保のうち、最優先の課題を決めます。

分割方針との適合性、運用性、既存基盤との連携で候補を比べれば、話題性に左右されずに絞り込めます。

実機能のPoCによる確認

検証では、製品の機能だけでなく、実装時に残る課題も見極めます。

  • 自社機能で検証:実際に分割する機能をPoCに使います
  • 移行の影響:レイテンシや障害対応時間を測って判断します

既製のクラウド製品では、独自の分割方針や既存基幹システムとの連携を吸収しきれない場合があります。その場合は、個別のアーキテクチャ設計や実装支援が必要になることもあります。

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品比較で見えてきた不足部分を整理します。自社業務に合わせたシステムリアーキテクチャの実装も支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。