システムリニューアル後の保守・運用費は、構築方式、注文数、利用するツールによって、ほぼかからない場合から月額30万円を超える場合まであります。
公開後のデザインや使い勝手の改善費を予算に見込んでおかないと、数年後に大規模な作り直しを繰り返すおそれがあります。
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システムリニューアルの保守・運用費用の全体像(UX/UI・顧客体験・ブランド刷新起点)
ランニングコストは、刷新して公開したあとも続いて発生する費用です。そのため、陳腐化した見た目や使い勝手を放置するコストも踏まえて予算を見積もり、体験価値を保つための投資として考えます。
陳腐化した見た目・使い勝手を放置するコストという発想
保守・運用費用には、見た目や使い勝手を放置することで生じる機会損失も含めます。陳腐化による出費は見えにくい一方で、離脱率の上昇は売上を損ないます。
- トレンドの変化:デザインやUXの傾向は1〜2年単位で移り変わります。
- 競合との差:競合がリニューアルを重ねると、自社サイトは相対的に古い印象になります。
- 機会損失:直帰率やコンバージョン率(CVR)の低下など、来訪者の反応が落ちること。
表示速度が1秒から3秒に遅れると、直帰率が32%増えるというデータもあります。公開後もデザインとユーザー体験を手入れし続ければ、こうした機会損失を防げます。そのため、費用を『攻めのコスト』として位置づけられるかが、予算確保を左右します。
「刷新」「更改」「モダナイゼーション」との違いと本記事の焦点
本記事で扱う費用は、公開後に体験を作り続けるためのものです。姉妹記事とは費用の焦点が異なるため、違いを先に押さえておきます。
- システム刷新:経営判断としての投資対効果を扱います。
- システム更改:保守契約満了やEOS/EOLを踏まえた延命コストが対象です。
- システムのモダナイゼーション:技術的負債を解消するインフラ・アーキテクチャ費用。
システムリニューアルでは、公開後のデザイン・UX改善とブランドの一貫性を保つことに焦点を絞ります。そのため本記事では、リニューアル特有の費用構造を扱います。
技術的な保守費用や経営判断の詳しい内容は、各姉妹記事の完全ガイドもご参照ください。
リニューアル後に発生する費用の内訳

ランニングコストは、インフラ・CMS費、UI/UX改善費、更新・保守費の3つに分けて整理できます。構築方式によって費用の構造は変わり、リニューアルでは体験改善費が独立した費目になります。
インフラ・CMS利用料とUI/UX継続改善・マーケティングツール費用
インフラ・CMSの利用料は、選ぶサービス形態によって、かかる費用の中身が変わります。
- ASP・クラウドSaaS型:月額利用料がかかります。
- オンプレミス・パッケージ型:サーバー維持費、SSL、ドメイン費用などです。
1つ目のインフラ・CMS利用料に続き、2つ目は、UI/UXの継続改善とツールの利用料です。MA(マーケティングオートメーション)や分析ツールは月額または従量課金で、A/BテストやCRM、分析、レコメンドといった用途に使われます。公開後もデータをもとに仮説検証を続けるなら、その体制の費用も予算に含めておく必要があります。
コンテンツ更新費・保守セキュリティ対応費・決済手数料
更新、保守、決済の費用は、作業の中身とサイトの構築方法に応じて見積もる必要があります。
- コンテンツ更新・制作:バナー差し替えや商品ページ変更、特集ページ追加など。
- 保守・セキュリティ:不具合対応、OS・ブラウザ更新に伴う改修、脆弱性対応など。
- 決済手数料:決済機能を持つECサイトで発生します。
自社構築(パッケージ・フルスクラッチ等)の場合、WAFや脆弱性診断、ログ監視などに、最低でも月額10万円以上かかります。ECサイトの決済手数料は、1トランザクションあたり平均3〜4%が、売上に連動して発生します。初期費用だけで予算を組み、公開後の費用を合算しないと、想定外の出費が生じます。
ランニングコストを左右する3つの要因

予算策定で見落としやすく、後から費用を大きく変動させる要因は3つです。この3つを事前に把握しておけば、想定外のコスト増を抑えられます。
注文数増加による手数料膨張と構築方法による保守費用差
従量課金や決済手数料は、事業が成長するほど負担が大きくなります。
- 注文数の増加:月間500件で月額3万円のコストが、5,000件では30万円を超える場合もあります。
- 構築方法:5年間の保守・更新費用の差が、方式によって大きく開きます。
月額無料や格安のサービスは、決済手数料が高めに設定される傾向があります。そのため、売上が伸びるほど総額が逆転しやすく、注意が必要です。
5年間の保守・バージョンアップ費用は、ASP型ならほぼなしから100万円までです。クラウド型SaaSは自動更新のためほぼなしですが、パッケージ型は500万〜1,500万円かかります。
パッケージ型は、OS更新やセキュリティ対応を自社が担うことになります。デザインの自由度を得る代わりに、長期的な保守負担が重くなる構造です。
外部ツールの複数組み合わせによる費用の重層化
1つ目・2つ目の注文数と構築方法に加え、3つ目は、外部ツールを組み合わせることで費用が重なっていく点です。ツールを個別に契約すると、利用料に加えて連携開発費も積み重なります。
- ツール利用料:パーソナライズ、A/Bテスト、メール配信などが対象です。
- 連携開発費:ツールを追加するたびに発生する場合があります。
マーケティングツールの利用料は、合計すると月額15万円を超えることも珍しくありません。個々の月額料金以上に総費用が膨らみやすい構造です。
刷新の時点で、標準機能で代替できるツールを洗い出しておかないと、運用コストは増え続けます。場合によっては、運用コストがデザイン費用を上回ることも起こり得ます。
コストを抑えるための工夫

リニューアル後もUX改善を続けながら運用コストを抑える工夫は、投資対効果を高める手段になります。
担当者自身で完結できるCMS選定と標準機能の代替
1つ目の工夫は、担当者自身で更新できるCMSやプラットフォームを選ぶことです。そうすれば、外注費も改善の遅れも抑えられます。
- 更新を内製化:バナーや商品ページを担当者自身で変更できるCMSを選びます。
- 標準機能を活用:外部ツールを入れる前に、CMSやECが備える機能で足りるかの見極め。
軽微な更新のたびに制作会社へ頼むと、改善のスピードが落ちて、そのたびに外注費もかかります。コンテンツの追加や更新を自社だけで完結させられる設計にしておくと、ランニングコストの削減に直結します。
MAや分析機能を標準で備えるECシステムやCMSを選べば、外部ツールの月額料金や連携開発費を抑えられます。
5年間のTCOによる比較と稟議
2つ目の工夫は、初期費用だけでなく、5年間のTCO(総保有コスト)で各システムを比べることです。
- 比較対象:初期費用に、5年間のランニングコストと保守費用を足した合計額。
- 評価の視点:運用の属人化や将来の改修費用も踏まえます。
初期費用が安くても、サポートが不足していると、運用が特定の担当者に偏る属人化が起きる場合があります。また、数年後のバージョンアップやデザインシステムの改修で、多額の費用が生じることもあります。
複数のシステムをTCOで比べ、長期的な視点で基盤を選べば、コスト削減につながります。そのうえで、運用フェーズの費用も経営層に説明しておくと、予算超過の防止に役立ちます。
依頼先選定が運用コストに与える影響
同じデザイン品質でも、依頼するパートナーによって公開後の費用は変わります。そのため、発注前に確認しておきたい点を押さえておきます。
デザインシステムの保守実績・UI/UX改善体制の確認ポイント
依頼先を選ぶ時点で、公開後の保守支援と改善体制を確かめておきます。
- デザインシステム:ガイドラインやUI部品の整備・保守までの支援範囲。
- 継続改善:A/Bテストやユーザビリティ改善の支援範囲。
- 月次支援:アクセス解析や改善提案を含む契約の有無。
デザインガイドラインやUI部品が整っていれば、担当者が軽微な更新を行えます。その結果、更新の外注費も抑えられます。公開後も伴走してくれる依頼先を選ぶことが、長期的な費用の抑制につながります。
契約形態とランニングコスト見積の妥当性確認
契約は、制作と公開後の運用の両方を見据えて決めます。フェーズごとに合った取り決めが欠かせません。
- 制作フェーズ:請負契約とする場合。
- 継続改善フェーズ:準委任契約とする場合。
- 費用見積:初期費用とランニングコストの内訳を確認します。
月額の保守・改善費用、ツール利用料、決済手数料は、具体的な数値で提示してもらいます。5年間のTCOに換算すれば、想定外の出費が生じる箇所を事前に確かめられます。
見た目だけでなく、公開後の運用コストが明確に示されるかも、依頼先の評価に含めます。
まとめ
ランニングコストは、陳腐化する体験価値を保つ投資です。費用の中心は、インフラ・CMS、UI/UX改善、更新・保守の3つです。注文数や外部ツールを重ねると総額は変わり、ECでは決済手数料も加わります。
そのうえで、担当者自身で更新できるCMSを選び、5年間のTCOで比べることが、予算超過を防ぐ鍵です。公開後の改善まで支援してくれる依頼先も、候補に入れておきましょう。
経営判断や技術的な保守費用については、姉妹記事「システム刷新」「システム更改」「システムのモダナイゼーション」もあわせてご覧ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
