システムリニューアルのPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について

システムリニューアルのPoC・プロトタイプ・モックアップは、本格開発の前に、デザインや操作性がユーザーにとって使いやすいかを確かめる工程です。この検証を省くと、公開後にコンバージョン率が想定を下回るという致命的な結果を招きかねません。

  • 前提と位置づけ
  • 具体的な検証・設計・期間
  • 依頼先選定と進め方

見た目だけで決めると、公開後に離脱が増えるおそれがあるため、ユーザーの操作による検証でデザインを決めます。本記事は、デザイン案が複数あって迷っている方や、開発に着手したもののユーザビリティ面の不安が拭えない方にとっても、感覚論ではなく検証に基づいてデザインを決めるための判断軸が身に付く内容です。詳しくは、以下の全体ガイドをご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・システムリニューアルの完全ガイド

システムリニューアルにおけるPoC・プロトタイプ・モックアップの位置づけ(UX/UI・顧客体験・ブランド刷新起点)

システムリニューアルは、稼働中のシステムやWebサイト・ECサイトのデザインや操作性(UI/UX)、ブランドイメージを刷新する取り組みです。PoC・プロトタイプ・モックアップの出発点は、技術的に実現可能かを確かめることより、ユーザーにとって使いやすく、ブランドイメージを狙いどおりに伝えられるかを検証することにあります。

デザインを優先しすぎると、スマートフォンの読み込みが遅くなったり、カートボタンが小さくて押しにくくなったりします。こうした細部のUI問題が、購入前の離脱やコンバージョン率(CVR)の低下を招くケースは非常に多く見られます。

本格的な開発に着手する前に、この「かっこいいサイト」と「売れるサイト」のギャップを埋める検証工程を挟むことが、システムリニューアルならではの成功の鍵となります。

「かっこいいサイト」と「売れるサイト」は違うという課題認識

リニューアルプロジェクトでは、デザイナーやマーケティング部門の「見た目を良くしたい」という思いが先に立ち、実際のユーザー行動の検証が後回しになりがちです。

見た目の印象だけでデザインを決めてしまうと、購入前の離脱を招く要因を見落としたまま公開するリスクがあります。たとえば、表示速度が1秒から3秒に遅れるだけで、直帰率が32%増加するというデータがあります。

PoC・プロトタイプ・モックアップという検証工程を挟むことで、デザインの美しさとユーザーの使いやすさという、ときに相反する2つの目標を両立させるための、客観的な判断材料を得られます。

「刷新」「更改」「モダナイゼーション」との違いと本記事の焦点

姉妹記事では、「システム刷新」のPoCは技術的な移行手法の実現可能性を、「システム更改」のPoCは期限内でのベンダー技術力の裏付けを検証することに重心を置いています。「システムのモダナイゼーション」のPoCは、リホストやリファクタリングなどの技術的アプローチの動作検証に重心があります。

本記事が扱うシステムリニューアルのPoC・プロトタイプ・モックアップは、これらのいずれとも異なり、リニューアル特有の工程として、デザインやユーザビリティという顧客体験そのものの検証に焦点を絞ります。技術的な実現可能性の検証プロセスを知りたい方は、姉妹記事の完全ガイドもあわせてご参照ください。

ポイント

PoC・プロトタイプ・モックアップで確かめるのは、技術的に作れるかより、ユーザーが迷わず使えるか、ブランドイメージが伝わるかです。この2点で各案を比べると、判断しやすくなります。

デザイン検証・ユーザビリティテストの重要性

デザイン検証・ユーザビリティテストを本格開発の前に行うかどうかは、プロジェクトの成否を左右します。公開後のCVR低下や開発終盤の手戻りといったリスクを、事前に防げるからです。

CVR低下を招く典型的なUI/UXの落とし穴

コンバージョン率(CVR)を直接押し下げるUI/UXの落とし穴には、スマートフォンでの読み込み速度の低下、カートボタンの押しにくさ、入力フォームの項目数の多さなどがあります。いずれも、購入や問い合わせといったゴールへの到達を妨げる、細部の使い勝手の問題です。

UI/UXの落とし穴は、見た目の美しさを評価する社内レビューだけでは見つけにくく、実際のユーザーの操作を観察する検証を経て初めて浮かび上がってきます。

デザイン案を確定する前に、ユーザーの操作を観察する検証を挟むことは、公開後のCVR低下という取り返しのつかない事態を防ぐ、最も確実な方法です。

検証を怠った場合の開発終盤での手戻りコスト

本格的なプログラム開発に入る前に、ユーザーの心理や行動に基づいた操作性を検証すると、開発終盤での作り直しを防げ、コストと期間を抑えられます。

逆に、検証を省いて開発を進めると、実装がほぼ完成した段階でユーザビリティの課題が発覚し、画面設計からやり直す大規模な手戻りにつながります。

さらに、エラー発生率を下げて直感的な操作を可能にすれば、公開後のカスタマーサポートへの問い合わせ対応工数を削減する効果もあります。検証にかける時間は、開発コストだけでなく運用コストの削減にも直結する投資だと言えます。

ポイント

デザイン案を確定する前の検証が、公開後のCVR低下や手戻りを防ぎます。検証の時間は、開発と運用のコストを抑える投資と見ると判断しやすくなります。

プロトタイプを用いたデザイン検証の進め方

ワイヤーフレームで操作の流れを検証し、デザインカンプでフィードバックを得る流れ図
軽量な画面案の段階で意見を集める順序が分かります。

プロトタイプを用いた検証は、開発の初期段階で認識のズレをなくし、操作性を確かめるために、段階を踏んで進めます。

ワイヤーフレーム・デザインカンプによる早期検証

最初のステップは、ユーザーが目的(商品購入や会員登録など)を達成するまでの手順を書き出し、ワイヤーフレームを使って画面設計の段階で操作の流れを検証することです。

次に、本格的な開発に入る前にデザインカンプ(試作品)を用いて、関係者や一部のユーザーからフィードバックをもらいます。この段階のフィードバックは、コストをほとんどかけずに得られます。

一方で、実装後に同じ指摘を受けると、手戻りのコストは何倍にも膨らみます。そのため、ワイヤーフレームやデザインカンプという軽量な検証手段を惜しまず使うことが大切です。

UIコンポーネントの一貫性を保つデザインガイドライン

プロトタイプ検証と並行して整備したいのが、ボタンの配置、色使い、フォントサイズなどを定めた共通のデザインパターン(デザインガイドライン)です。

これを作成し全画面で統一して適用することで、ユーザーの学習コストを下げるとともに、開発チーム内でのデザイン解釈のブレを防げます。

ガイドラインが整備されないままプロトタイプ検証を進めると、画面ごとにUIの表現がばらつき、検証結果を全体に反映する際に手戻りが生じやすくなります。そのため、検証と並行してガイドラインを固めていく進め方が効率的です。

ポイント

プロトタイプ検証は、実装後に指摘を受ける前に、ワイヤーフレームやデザインカンプで早く行うのが基本です。デザインガイドラインを並行して固めると、検証結果の反映による手戻りを減らせます。

モックアップ段階でのユーザーテストと分析手法

モックアップ段階の検証手法としてユーザビリティテスト、スマホ実機レビュー、自動分析、ヒューリスティック評価を示す図
実操作の観察と課題のスクリーニングを組み合わせられます。

デザインやモックアップの段階では、実際のユーザーが迷わず操作できるかを確かめるため、複数の手法を組み合わせて使います。

ユーザビリティテストとスマホ実機レビュー

ユーザビリティテスト(対面・リモート検証)は、実際のユーザーに購入や会員登録などの特定のタスクを依頼し、操作が止まった箇所や誤解が生じた箇所を観察・記録する手法です。開発側では気づけない「ユーザーの生の迷い」を直接特定できるため、最も改善効果が高い手法とされています。

あわせて、デザインを「見た目の印象」だけで終わらせないため、スマートフォンの実機で購入フローを一通り操作するレビューも必須です。レビューには、社内のEC担当者や既存顧客モニターなどを加え、「実際の購入者に近い視点」で評価してもらいます。

実際、PC画面上の見た目だけで承認された画面が、実機では思わぬ操作性の問題を抱えていることは珍しくありません。

自動分析・ヒューリスティック評価による定量的把握

AIや機械学習を使ってユーザーのクリックやスクロールのパターンを解析し、迷いやすい箇所や離脱ポイントを定量的に把握する自動分析も、最新のトレンドとして取り入れられています。また、UXデザインの専門家がニールセンの5原則などのチェックリストに照らして問題点を抽出する「ヒューリスティック評価」も有効な手法です。

ユーザーを集めるコストがかからず、短期間で網羅的に課題を洗い出せるため、ユーザビリティテストの前段階のスクリーニングとして活用すると、検証全体の効率を高められます。

ポイント

ユーザビリティテストとスマホ実機レビューは、PC画面の見た目では見つからない操作の問題を確かめるために組み合わせます。自動分析やヒューリスティック評価は、テスト前の洗い出しに使うと効率的です。

公開後も続くA/Bテストによる仮説検証のPDCA

ユーザー行動や問題点の分析から改善仮説、施策の実施、効果検証へ循環する図
検証結果を次の改善判断へつなげる循環を表しています。

システムリニューアルは公開して終わりではなく、公開後も仮説検証を繰り返すPDCAサイクルの設計が必要です。

分析→仮説→改善→検証のサイクル設計

新しいサイトで成果を出すには、A/BテストやCRM施策、コンテンツ追加などの継続的な改善活動が不可欠です。そこで、現状のユーザー行動や問題点を一覧にして改善の仮説を立て、施策の実施後にユーザーテストやデータ分析で効果を検証するサイクルを構築する必要があります。

「誰がどのデータを見て、どのサイクルで改善を判断するのか」という運用体制は、リニューアル計画と並行して設計しておくことが、公開後もデザインの鮮度と使いやすさを保つうえで欠かせません。

UI/UX改善の具体事例に学ぶ効果

実際の改善事例からも、検証に基づくUI/UX改善の効果が確認できます。あるコンタクトレンズECでは、欠品商品の度数をグレーアウト表示するというシステム側のUI改善を行い、ユーザーが誤った商品を選ぶのを防ぐとともに、カスタマー対応の工数削減にも成功しています。

別の事例では、購入完了までのステップを示す「進捗バー」を導入し、ユーザーの心理的負担を軽減して、購入プロセス途中での離脱率の低下に成功しています。

BtoBの業務システムにおいても、入力フォームの自動補完やエラー表示の分かりやすさ、ダッシュボードの情報整理を行うことで、ユーザーの作業負荷を下げ、作業効率と満足度を同時に向上させた事例があります。こうした小さな検証と改善の積み重ねが、リニューアル全体の投資対効果を高めていきます。

ポイント

公開後に誰がデータを見て、どのサイクルで改善を判断するかを、リニューアル計画と並行して決めておくと、施策を続けやすくなります。

まとめ

ここまで、システムリニューアルのPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について、検証の重要性から公開後のPDCAまでを順に解説しました。

PoC・プロトタイプ・モックアップを正しく活用する鍵は、技術的な実現可能性の検証とは区別して、顧客体験の検証として捉えることにあります。この検証は、「かっこいいサイト」と「売れるサイト」のギャップを埋めるためのものです。

ワイヤーフレームやデザインカンプでの早期検証、ユーザビリティテストとスマホ実機レビュー、自動分析やヒューリスティック評価を組み合わせると、開発終盤での手戻りを防げます。さらに、公開後もA/Bテストで継続的に改善サイクルを回すことが、リニューアルの投資対効果を最大化する要になります。

技術的な実現可能性検証や経営判断の詳細については、姉妹記事「システム刷新」「システム更改」「システムのモダナイゼーション」もあわせてご参照ください。

▼全体ガイドの記事
・システムリニューアルの完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。