システム改修のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

システム改修のフルスクラッチ開発は、既存機能を延命させるか、該当機能をゼロから作り直すかを比べ、固有の要件と開発体制を見極めて選ぶ方式です。

既存システムの一部を直すか作り直すかで迷う方や、低予算で独自機能を実現する方法を探している方にとって、実務で使える判断軸が身に付く内容です。

  • 判断基準:部分改修と該当機能の作り直しの適用範囲
  • コスト:開発費と運用負荷
  • 移行:段階移行とロックインの回避

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

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・システム改修の完全ガイド

システム改修における部分改修と該当機能のみ作り直しの位置づけ

システム改修を検討する際、多くの現場でまず直面するのは、今動いているコードに手を入れて直すか、該当箇所だけ新しく作り直すかという選択です。

全面刷新での「フルスクラッチかパッケージか」という議論とは異なり、システム改修での選択は、対象を特定の機能・モジュールに絞ったうえでの進め方の選択です。

この前提を取り違えると、部分改修のつもりで始めた案件が大規模な作り直しに膨らむことがあります。逆に、作り直すべき老朽化したモジュールに延々とパッチを当て続けてしまうこともあります。どちらも、この選択を曖昧にしたまま進めたことが原因です。

この選択が改修プロジェクトの分岐点になる理由

パッチ的改修とミニリビルド(該当機能のみのフルスクラッチ)では、必要な期間・費用・スキルセットがまったく異なります。そのため、この選択が改修プロジェクトの分岐点になります。

パッチ的改修は既存コードの延長線上で進むため、短期間・低コストで完結します。ただし、対象箇所がすでにブラックボックス化している場合は、この前提が崩れ、逆に高くつくことがあります。

一方で、ミニリビルドは既存コードに縛られない自由度を得られる代わりに、まとまった期間と費用、そして新旧を橋渡しする技術的な工夫が必要になります。そのため、自社の対象箇所がどちらの前提に近いかを最初に見極めることが、無駄なやり直しを避ける第一歩になります。

「モダナイゼーション」「刷新」「更改」「リニューアル」「リアーキテクチャ」「リプレイス」との違いと本記事の焦点

姉妹記事は、それぞれ別の観点に重心を置いています。「システムのモダナイゼーション」のリビルドはクラウドネイティブな技術基盤への刷新という技術観点、「システム刷新」のフルスクラッチは業務要件への完全適合という経営・業務観点で語られます。

「システム更改」は期限内での実現可能性、「システムリニューアル」はUX/UI観点でのフルリニューアルに重心があります。「システムリアーキテクチャ」は構造そのものの再設計、「システムリプレイス」はビルド・バイ判断、つまり自社開発を続けるか他社製品へ乗り換えるかを主な論点にしています。

本記事が扱うシステム改修のフルスクラッチは、これらとは異なります。システム全体を作り直すか否かではなく、特定の機能・モジュールに限定して「パッチで直すか、その部分だけ作り直すか」を選ぶ、部分改修の延長線上の選択です。全面的な作り替えの詳細を知りたい方は、姉妹記事の完全ガイドもあわせてご参照ください。

ポイント

改修の対象を特定の機能・モジュールに絞れているかが、最初の目安になります。曖昧なまま進めると、部分改修が大規模な作り直しに膨らみかねません。

パッチ的改修とミニリビルドを分ける判断基準

対象箇所が安定稼働し仕様を把握できる場合と、ブラックボックス化している場合を左右に分けた図解
対象箇所の状態を見極めると、改修方法を選びやすくなります。

判断は、主に「対象箇所の品質(ブラックボックス度)」と「将来の要件変化の見込み」という2つの軸で行います。

パッチ的改修を選ぶべき基準(安定稼働・仕様把握が可能な場合)

対象箇所が安定して稼働しており、設計書などのドキュメントが残っていて内部構造や仕様が把握できている場合は、パッチ的改修が適しています。

今後その機能の業務フローを大きく変える予定がなく、現状の機能を維持しながら微修正できれば足りる場合も、既存コードをそのまま活かせるパッチ的改修を選ぶ合理性が高い場面です。

この条件がそろっているのに作り直しを選ぶと、必要以上の期間とコストをかけることになりかねません。

ミニリビルドを選ぶべき基準(ブラックボックス化・大幅な要件変化)

反対に、長年の機能追加でコードが複雑に絡み合い、開発した担当者もすでに退職して仕様を説明できる人がいない「ブラックボックス化」が起きている箇所があります。こうした箇所に無理にパッチを重ねると、解読不能なコードの調査だけに膨大な費用がかかってしまいます。そのため、その部分だけを新しい技術で作り直すミニリビルドが適しています。

対象機能について将来的に業務フローを大きく変えたい、あるいは外部システムとの連携を強化したいという要件がある場合も、既存コードの制約を引きずらないミニリビルドを選ぶ合理性が高まります。

ポイント

仕様を把握できて安定稼働しているならパッチ的改修、ブラックボックス化していたり将来の要件変化が大きかったりするならミニリビルドが目安です。

コスト・期間・リスクの違い

ミニリビルドの費用目安と期間を別々のパネルに示した図解
費用と期間の幅を把握し、対象範囲に照らして検討できます。

判断基準を踏まえたうえで、実際にどれくらいのコスト・期間・リスクの差が生まれるのかを具体的に見ていきます。

パッチ的改修の短期的な安さと中長期的な技術的負債リスク

パッチ的改修は、一から作るわけではないため、短期的には最も安価で、数週間〜数ヶ月で実行できます。

ただし、短期的な導入リスクの低さに安心してパッチによる場当たり的な改修を繰り返すと、技術的負債がさらに蓄積します。その結果、システムは身動きの取れない状態に陥り、改修コストが爆発的に跳ね上がるという中長期的なリスクを抱えることになります。

発注側は、目先の安さだけで判断せず、この対象箇所へのパッチ的改修をあと何回繰り返せるかという見通しも持っておく必要があります。

ミニリビルドの費用目安(500万〜2,000万円程度)とグルーコードのリスク

ミニリビルドは新しい技術で作り直すため、一部機能の刷新であっても、まとまった期間(数ヶ月〜)と費用がかかります。目安としておおよそ500万円〜2,000万円程度が1つの水準になります。

システム全体を一気に作り変える「ビッグバンリライト」に比べれば、移行失敗のリスクは大幅に低くなります。一方で、新しく作った部分と既存システムを連携・共存させる「グルーコード(連携プログラム)」の開発が必要になります。さらに、通信制御やデータ整合性の維持が複雑になるという特有のリスクがあることも押さえておく必要があります。

ポイント

パッチ的改修は短期間で安く済みますが、場当たり的に重ねるほど技術的負債が積み上がります。ミニリビルドは費用の目安が500万〜2,000万円程度で、グルーコードの複雑さも含めて比べることが大切です。

稼働中のシステムを止めずに置き換える「ストラングラーフィグパターン」

ミニリビルドを選んだ場合、新旧をどう切り替えるかという進め方にも、システム改修ならではの工夫が求められます。

古い機能を少しずつ新モジュールへ置き換える進め方

稼働中のシステムを止めずに、老朽化した特定の機能だけを少しずつ新しいモジュールへ置き換えていく手法は、「ストラングラーフィグパターン」と呼ばれます。リスクを抑えながら部分的に近代化を進める方法として知られています。

全体を一度に切り替えるビッグバン方式とは異なり、対象機能を小さく区切って段階的に置き換えます。そのため、万が一問題が起きても影響範囲を限定でき、業務を止めずに改修を進められます。この進め方は、低予算・短納期というシステム改修の特性とも相性が良いものです。

置き換え単位の切り方による成否の分かれ目

ストラングラーフィグパターンを成功させる鍵は、新旧の境界線をどこに引くか、つまり置き換え単位の切り方にあります。業務上の意味のあるまとまりで境界を切ると、新旧間のデータの受け渡しがシンプルになり、グルーコードの複雑化も抑えられます。たとえば「特定の帳票出力機能だけ」や「特定の承認フローだけ」といった単位です。

一方で、境界線が業務上の意味を持たない中途半端な切り方になると、新旧間の連携が複雑になります。その結果、かえって開発期間や費用が膨らむため、置き換え単位の設計には着手前の十分な検討が欠かせません。

ポイント

全体を一度に切り替えず、業務上のまとまりごとに境界を切って置き換えるのが目安です。境界が中途半端だと新旧の連携が複雑になり、開発期間や費用が膨らみます。

低予算でオーダーメイド開発を実現する方法

SaaSとのAPI連携、ローコード、MVP、自社で対応できる工程をカードで示した図解
汎用業務と独自機能の分担が、費用を抑える組み立ての軸です。

予算が限られているなかで必要な独自機能をミニリビルドで実現するための工夫を、具体的に紹介します。すべてを高コストなフルスクラッチで賄う必要はありません。

SaaSとのAPI連携・ローコード活用によるハイブリッド戦略

勤怠管理や経費精算、標準的な顧客管理といった一般的な業務は、既存の安価なSaaSを導入してAPIで連携させます。自社の競争力の源泉となる独自のコア業務プロセスだけをオーダーメイドで作り込むという、ハイブリッド戦略を取ることで、効率的かつ低予算で実現できます。

加えて、プログラミングの記述を最小限に抑えられるローコードツールを組み合わせれば、開発期間の短縮とコスト削減を同時に狙えます。専門的なスキルがなくても現場の担当者が改修に関わりやすくなり、外部ベンダーへの依存を減らす内製化の推進にもつながります。

MVPによるスモールスタートと自社工数の巻き取り

最初から完璧な作り直しを目指して機能を詰め込むと、予算超過や納期遅延を招きます。そこで有効なのが、最も重要な課題を解決する最小限の機能(MVP)だけを先にミニリビルドすることです。

このスモールスタートでは、実際に現場で使いながらフィードバックを得て、本当に必要な機能を段階的に追加していきます。無駄な投資を防ぐ鉄則です。

あわせて、業務フローの分析、テストパターンの作成、マニュアルの執筆や社員への操作説明といった、自社で対応できる工程を発注者側が巻き取ることでも、外注費用を直接的に抑えられます。

ポイント

汎用的な業務はSaaSとAPIで連携し、競争力になる部分だけを作り込むのが目安です。最初はMVPから始め、自社で担える工程も受け持つと外注費を抑えられます。

まとめ

部分改修と該当機能のみの作り直しの使い分けについて、判断基準やコスト・期間・リスクの違いを整理し、段階的な置き換えと低予算での実現方法まで解説しました。

この選択では、システム全体を作り直すかという大きな話ではなく、対象箇所の品質と将来の要件変化という2つの軸で、機能・モジュール単位の小さな意思決定として捉えることが鍵になります。

パッチ的改修は数週間〜数ヶ月で済み低コストですが、技術的負債のリスクを抱えます。一方で、ミニリビルドは500万〜2,000万円程度のまとまった投資が必要になる代わりに、ブラックボックス化を解消できます。

SaaS連携・ローコード・MVP・自社工数の巻き取りといった工夫を組み合わせることで、低予算でも必要な独自機能を実現できる道が開けます。

全面的な作り替えの技術詳細や経営判断のプロセスについては、姉妹記事「システム刷新」「システムのモダナイゼーション」もあわせてご参照ください。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。