TMS改修の開発期間・スケジュール・納期について

TMS改修の期間は、軽微な修正なら2〜4週間、1業務に絞ったMVP改修なら2〜3ヶ月が目安です。全面刷新(12ヶ月以上)と比べると、数分の一から10分の1以下の期間で済みます。

  • TMS改修の位置づけ(部分的・小規模な修正であること)
  • 特定車両タイプの配車ロジック調整と帳票の軽微な修正にかかる期間の目安
  • アジャイル型で短納期のスケジュールを組む方法

期間は、既存機能のどこまでを直すかで決まります。TMS改修の全体像は、次の記事をご覧ください。

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・TMS改修の完全ガイド

TMS改修の位置づけ(部分的・小規模な修正)

TMS改修とは、配車計画・ルート最適化・運賃計算・車両とドライバーの動静管理を担う既存のTMS(輸配送管理システム)を指します。この取り組みは、部分的・小規模修正という位置づけで、システム全体を作り替えず、特定の機能やモジュールに対象を絞って直すものです。

同じTMSというテーマでも、全面的な作り替えを前提とする先行の記事群と本記事が扱う部分修正とでは、スケジュールの立て方も規模感も異なります。そのため、期間を見積もる前に、どちらの話かを確かめておく必要があります。

5つの技術的アプローチ(リホスト・リプラットフォーム・リファクタリング・リビルド・リプレース)を横並びに扱うのが、「TMSのモダナイゼーション」という技術手法の総論です。

輸送コストの増加や積載効率の低下、傭車比率の上昇といった経営への影響を起点に、いつ全面刷新へ投資すべきかを決める経営層向けの意思決定を主軸にするのが「TMS刷新」です。「TMS更改」は、保守契約の満了や車載器・GPS端末のリース期限、EOS/EOLといった外部から強制される期限の管理を中心に据えています。

ドライバー向けの配車アプリや荷主向けポータルのUX/UIという顧客体験の刷新を中心に据えるのが「TMSのリニューアル」です。「TMSのリアーキテクチャ」は、マイクロサービス化やストリーム処理基盤の構築といったアーキテクチャ設計そのものの技術的な深掘りを主軸にしています。

自社スクラッチを維持するか、別製品やSaaSへ乗り換えるかというビルド・バイの判断を主軸にするのが「TMSリプレイス」です。

6つの先行記事群との違い(部分修正・低予算・短納期の観点)

「TMSのモダナイゼーション」「TMS刷新」「TMS更改」「TMSのリニューアル」「TMSのリアーキテクチャ」「TMSリプレイス」は、切り口こそ異なるものの、大がかりなプロジェクトを前提にしています。既存のTMSを全面的に作り替える、または別のシステムに乗り換えることが、その前提です。

これに対し本記事のTMS改修は、全面的な作り替えを検討の対象にしません。既存のTMSは土台として十分に機能しており、そのまま問題なく使い続けられるためです。

ただし、特定の車両タイプだけ配車ロジックが実情に合わない、運行日報の帳票が取引先の新しい要求に対応していないといった、局所的で具体的な困りごとが1つか2つある場合には、そこだけを直す選択肢になります。また、部分修正・低予算・短納期という軸で見ると、予算規模も開発期間も他の6つの記事群より一段小さく、意思決定に要する時間も短く済みます。

典型例:特定車両タイプの配車ロジック調整・運行日報帳票の軽微な修正

TMS改修で最も多い相談の1つが、特定車両タイプの配車ロジック調整です。たとえば、冷凍車・冷蔵車に温度帯の制約を加えることや、大型車が通れない道路を配車計画から外すこと、特定の荷主にだけ特殊な配送ルールを適用することが挙げられます。いずれも、既存の配車エンジンに対する限定的な条件の追加にあたります。

もう1つの典型例が、運行日報帳票の軽微な修正です。取引先から新しい伝票フォーマットへの対応を求められたケースや、2024年問題以降の労務管理強化に伴って休憩時間の記載欄を追加したいケースが、これにあたります。

どちらのケースも、配車ロジックそのものや基幹システムとの連携の構造には手を入れず、対象を限定した修正で完結します。この2つに共通するのは、影響範囲が明確に局所化されており、既存の拡張性の範囲内で対応できる点です。

ポイント

既存のTMSを作り替える必要があるかを、まず確かめます。困りごとが1つか2つの局所的なもので、既存の仕組みの拡張で対応できるなら、TMS改修として期間を見積もれます。

特定車両タイプの配車ロジック調整・帳票軽微修正の期間目安

軽微な修正、1業務に絞ったMVP改修、全面刷新の期間目安を3枚のパネルで示した図。
対象業務が広がるほど、期間の目安も長くなります。

TMS改修の開発期間は、対象範囲の広さで大きく変わります。代表的な2つのパターンで、現実的な期間の目安を示します。

軽微な修正・機能追加は2〜4週間

帳票フォーマットの変更や、特定の荷主・車両に合わせた条件調整といった改修は、アジャイル開発により2〜4週間単位で開発・リリースを回せます。

要件が明確で、影響範囲も既存機能の一部に限られます。そのため、要件定義と設計にかける時間を最小限に圧縮できます。

全面刷新では、要件定義だけで1〜2ヶ月かかることも珍しくありません。一方、軽微な修正では、現場担当者との1〜2回のヒアリングで要件が固まり、そのまま開発に入れるケースが多く見られます。

1業務に絞ったMVP改修は2〜3ヶ月

対象業務を1つに絞った最小限の機能(MVP)レベルの改修でも、現場へのリリースまでは2〜3ヶ月程度を見込んでおくのが現実的です。たとえば、配車計画機能のみを新しい画面に移行する改修や、ハンディターミナルでの検品機能だけを追加する改修が該当します。

軽微な修正より工数がかかるのは、対象の業務プロセス全体を洗い出したうえで、既存システムとの接続部分(データ連携・画面遷移)も含めて設計し直す必要があるためです。

とはいえ、システム全体を作り替える全面刷新と比べれば、対象を1業務に限る分、要件定義とテストにかかる工数は大幅に抑えられます。

ポイント

改修範囲が1つの機能に収まるか、1業務に絞れるかで、見積もる期間を分けます。範囲が広がると当初の見積もりは崩れやすいため、目安を超えそうなら範囲を見直します。

アジャイル型の短納期進行スケジュールの組み方

要件定義・設計、開発・実装、テスト・リリースの3工程と、それぞれに配分する全体期間の目安をカードで示した図。
テスト・リリースにも全体の時間を割り当てます。

TMS改修の納期を守るうえで鍵になるのは、アジャイル型で短いサイクルを繰り返しながら進める進行管理です。全工程を一度にまとめて計画するウォーターフォール型とは、進め方が大きく異なります。

要件整理〜リリースまでの工程別期間配分

システムの規模にかかわらず、開発工程にかける時間の比率は概ね共通しています。目安として、要件定義・設計に全体の40〜50%(現場担当者へのヒアリングと仕様の言語化)、開発・実装に40〜50%(実際のロジック改修・帳票修正のプログラミング)、テスト・リリースに20〜30%を配分します。

TMS改修の2〜4週間の短納期案件であれば、初週に要件をヒアリングして仕様を固め、中盤で実装を進め、最終週にテストとリリースを行います。この1サイクルの中に、上の比率を圧縮して当てはめる形になります。

ただし、期間を短縮するためにテスト工程を削ってはいけません。既存システムへの追加改修は、修正が他の機能に悪影響を及ぼす「デグレード」を起こしやすいため、短納期でもテストには全体の20〜30%を確保する必要があります。

2〜4週間サイクルでの反復改修

改修要望が複数あるときは、優先度の高いものから2〜4週間のサイクルで1件ずつ着手し、リリースを重ねていく進め方が有効です。要望を一括りにして数ヶ月がかりのプロジェクトにしないことが、短納期を実現する鍵になります。

たとえば、今回は冷凍車の配車ロジック調整、次回は運行日報の記載項目の追加というように、改修対象を小さく区切ります。そうすると、1サイクルのテスト範囲も局所化でき、リリース後に不具合が出ても影響範囲を特定しやすくなります。

日常の配送業務やシステム運用と並行しながら必要な機能をピンポイントで改善していける点が、反復改修の最大の利点です。

ポイント

要望が2〜4週間の1サイクルに収まる大きさかどうかで、納期を守れるかを判断します。要望は一括りにせず、優先度の高いものから1件ずつ着手します。

全面刷新と比較した期間短縮効果とスモールスタートのメリット

TMS改修を選ぶ最大の理由は、全面刷新と比べたときの圧倒的な期間の短さです。この違いを数値で押さえておくことが、経営層にも現場にも説明する材料になります。

全面刷新12ヶ月以上との比較(数分の一〜10分の1以下)

複数拠点への対応や他システムとの複雑な連携、高度な自動化まで含めた大規模な全面刷新には、12ヶ月(1年)以上を要するのが一般的です。標準的なAPI連携程度の中規模な再構築でも、6〜12ヶ月はかかります。

TMS改修の部分的な改修は数週間〜3ヶ月で完了するため、全面刷新の数分の一から10分の1以下の期間で済みます。

この期間差は、工数の違いだけでなく、要件定義・稟議承認・ステークホルダー調整といった上流プロセスの重さの違いにも起因します。全面刷新では複数部門や経営層を巻き込んだ合意形成が必要になるのに対し、TMS改修は担当部門と情報システム部門の間で完結するケースが大半です。その結果、意思決定のスピードそのものが違います。

現場の混乱を抑え業務を止めずに改善できる利点

全社で一括に切り替えるとリスクが大きい物流現場では、部分的・小規模な改修から始めるスモールスタートが、期間短縮以外にもメリットをもたらします。大規模に作り込んでから現場に降ろすと、「現場の実態と合わない」という失敗に陥りがちです。

軽微な改修から始めれば、現場の反応を見ながら細かく調整できます。そのため、システムは現場に定着していきます。また、日常の配送業務を止めずに必要な機能を改善できるため、ドライバーや配車担当者の心理的な負担も小さく抑えられます。

まずは優先度の高い部分的な改修から着手し、現場の安定運用を確かめながら次の段階へ広げていきます。こうした段階的な進め方が、短納期と現場定着を両立させる現実的な選択肢になります。

短納期でも手戻りを防ぐための進め方・体制

対象スコープの絞り込みから対象機能のテスト、回帰テスト、1〜2日の試験運用、本番リリースまでを矢印で示した図。
範囲の明確化とリリース前の確認が、手戻りを抑えます。

短納期のTMS改修では、進め方を誤ると小さな手戻りでも納期全体が圧迫されます。限られた期間で納期を守るには、実務上の押さえどころがあります。

対象スコープの絞り込み

短納期の改修案件で最も陥りやすいのが、「ついでにこの機能も直したい」と対象範囲が着手後に広がっていく、スコープクリープです。たとえば、特定車両タイプの配車ロジック調整を依頼したはずが、途中で他の車両タイプの調整や画面デザインの見直しまで含まれると、当初の2〜4週間という見積もりは簡単に崩れます。

これを防ぐには、着手前に対象範囲を文書にまとめます。そのうえで、追加の要望は「今回に含めるか、次のサイクルに回すか」を都度判断するルールを、最初に決めておくことが有効です。対象を1つに絞る規律が、短納期を実現する最大の要因になります。

テスト工程の確保とデグレード対策

特定機能だけの改修でも、既存の配車ロジックや帳票出力の仕組みと密接につながっています。そのため、修正箇所以外の機能に予期せぬ影響(デグレード)が及ぶリスクは常にあります。

短納期だからといってテストを省略すると、リリース後に「他の車両タイプの配車計画まで意図せず変わってしまった」といった二次的な不具合を招きかねません。

対策としては、改修対象の機能単体のテストに加えて、隣接する機能への影響を確かめる回帰テストを最小限でも組み込みます。さらに、本番リリース前に一部の拠点や車両だけで試験運用する期間を、1〜2日でも設けることが有効です。こうした小さな確認工程を挟めば、短納期を保ったまま、安全にリリースを進められます。

ポイント

短納期で手戻りを防ぐには、対象スコープを1つに絞り、テストの時間を残すことが基本です。追加の要望は、今回に含めるか次のサイクルに回すかを都度決めます。

まとめ

TMS改修の開発期間は、部分的・小規模な修正という位置づけを確かめることから始まります。軽微な修正は2〜4週間、1業務に絞ったMVP改修は2〜3ヶ月が目安で、全面刷新(12ヶ月以上)と比べると、数分の一から10分の1以下の期間で済みます。

全面刷新に踏み切る予算や時間はないものの、現場の困りごとを早く解消したい企業にとって、TMS改修は現実的な選択肢です。対象スコープを1つに絞り、テスト工程を確保しながら、小さく確実にリリースを重ねていくことが前提になります。

まずは最も困っている課題を1つ選び、短納期の改修に着手してみることをお勧めします。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。