TMS改修の製品は、配車計画の自動化、受発注・帳票の電子化、動態の可視化という得意領域で分けると、自社に合う候補を絞り込めます。フルスクラッチとクラウド型の違いから比較の軸、7製品の特徴、料金と契約前の確認点まで、発注前に把握しておきたい論点を順に並べました。
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フルスクラッチ・オンプレ型TMSの改修とクラウド型TMSの機能追加の違い
現行のTMSがフルスクラッチ・オンプレ型の場合、改修は自社またはベンダーによる個別の追加開発になります。
一方で、困っている業務をクラウド型TMSへ切り出す場合は、開発を伴わず標準機能の範囲で対応できることが多いです。両者は、作り込む改修か、既製の機能に合わせる改修かという前提が異なります。
どちらか一方に決め切る必要はありません。たとえば、影響の大きい業務だけをクラウド製品へ切り出し、それ以外は既存システムの個別改修で対応するという組み合わせも、現実的な選択肢になります。
出発点は、自社の業務ごとに、作り込みが必要な部分と標準機能で十分な部分を仕分けることです。
フルスクラッチ・オンプレ型:継続的な保守体制が論点
フルスクラッチ・オンプレ型のTMSは、配車ロジックを自社の業務に完全に合わせて作り込めます。その一方で、法改正やOS更新のたびに、数十万〜数百万円の追加保守費用が発生するリスクがあります。
改修を重ねるほど独自仕様が積み重なり、対応できるベンダーは限られていきます。そのため、相見積もりが取りにくくなり、価格交渉力も弱まりがちです。
独自仕様がどこまで積み重なっているかを定期的に洗い出し、対応できるベンダーの選択肢も把握しておくとよいでしょう。
クラウド型:短期間での機能追加と標準アップデート
クラウド型TMSは、サーバーを調達しなくても利用を始めやすいのが特徴です。また、法改正や機能改善も、ベンダー側のアップデートに含まれることが多いです。
既存システムと併用する場合や、導入後に運用する場合は、事前に確認しておくべき項目があります。
- 既存システムとの併用範囲:どちらのデータを正とするか、二重入力が生じないかを先に決めておく
- 運用スケジュール:法改正のたびに、ベンダー側の対応時期に自社の運用を合わせる必要がある
- 契約前の確認事項:自社で設定を変えられる範囲と、ベンダーの対応を待つ範囲の境目
製品を比較するときの共通軸

製品ページの機能一覧だけでは、既存TMSから一部の業務を移したとき、どこまでスムーズに進むかを判断しにくいものです。そこで、候補を同じ条件で比べられるよう、対応業務範囲、既存システムとの連携、料金体系の3つを共通の質問に置き換えて考えます。
配車計画から請求までのカバー範囲をそろえた比較
まず、製品ごとに、配車計画、動態管理、受発注のうち、どこまでが標準機能として含まれるかを確認します。さらに、運行日報、請求・支払管理まで範囲を広げて、同じ確認を行います。機能一覧だけでは分からない運用の実態は、次の項目で見えてきます。
- 配車自動化の方式:AIによる自動生成か、担当者による手動調整かを確認する
- 自社データでの検証:改修したい業務を実際のデータで試し、比較の出発点にする
- 導入事例の確認:自社と近い規模・業種の事例は、実運用への適合度を推測する手がかりになる
公式サイトの事例だけで判断しきれないときは、必要に応じて個別に問い合わせます。
既存システムとの連携方式と料金体系の確認
既存の基幹システムや会計システムと、APIまたはCSVでどこまで連携できるかを見ておくと、データの受け渡しで行き違いが起きにくくなります。対象データと同期頻度、エラー時の扱いまで確かめておく必要があります。
同時に、車両台数、案件数、請求件数のどれに課金されるかを確かめます。既存システムと部分的に併用する期間のコストも含めて比べると、総額の差が見えてきます。
詳しい評価手順は、TMS改修の選定ポイント・選び方・種類で整理しています。
TMS改修で検討できる主要クラウド製品7選
2026年7月時点で現行の公式ページと対象業務を確認できた7製品を紹介します。掲載順は優劣を示すものではありません。
どの業務を既存TMSから切り出したいかで、適した製品は変わります。
MOVO(Hacobu):配車受発注と動態管理を組み合わせられる候補
MOVOは、トラック予約受付や動態管理、配車受発注など、複数のサービスで構成されるシリーズです。ドライバー業務支援やAI発注・輸送最適化、共同輸配送支援も、同じシリーズに含まれます。
動態管理や受発注の一部だけを切り出したい企業が、候補に挙げやすい製品です。拠点別の荷待ち時間比較や配送KPI管理といった機能も、公式サイトで確認できます。料金は各サービスの個別見積もりが基本です。
Loogia(オプティマインド):配車計画そのものの自動化を担う候補
Loogiaは、AIで複数拠点の訪問順序を自動計算する配車作成機能が中心です。さらに、動態管理やコンサルティングまで展開しています。
現行TMSの配車ロジック部分だけを刷新したい企業にとって、検討の候補に入れやすい製品です。既存の車両情報や配送先データを、Excel・CSVで取り込める点も確認できます。
料金は非公開で、問い合わせや資料請求を通じた個別見積もりが必要です。
輸配送管理システム(TMS)シリーズ(ロジスティードソリューションズ):運賃計算まで一気通貫で扱う候補
配車計画や運行計画から、運賃計算・請求管理まで幅広くカバーするTMS製品です。車両基本情報管理や経費管理も扱います。
運賃計算や経費管理が個別のExcel管理になっている企業が、まとめて見直す際の候補になります。料金は本文に記載がなく、問い合わせを通じた確認が必要です。
ハコベル配車管理:受発注・帳票まわりの電子化に強みがある候補
ハコベル配車管理は、WEBやCSVでの配車依頼を受けるところから、帳票出力、請求・支払確認までを扱います。車番情報の管理や変更履歴の管理も含まれます。
現行TMSの帳票・伝票フォーマットだけを見直したい企業や、法令改正・下請法対応を強化したい企業が、候補に挙げる製品です。
料金ページはありますが、公式サイトの本文には「月額での料金をお見積り」とあるのみで、具体額の記載はありません。
LYNA自動配車クラウド:配車計画の自動生成とAPI連携に強みがある候補
LYNA自動配車クラウドは、AIアルゴリズムで配車計画を自動作成し、最適な車両台数と配送ルートの算出にも対応します。発着管理や動態管理、日報作成も扱えます。さらに、受発注から請求までのデジタル化にも対応しています。
配車計画と請求まわりを同時に見直したい企業が、候補に挙げやすい製品です。料金は非公開のため、問い合わせや資料請求を通じて確認します。
一番星クラウド配車:料金体系を公式サイトで確認できる候補
一番星クラウド配車は、ドラッグ&ドロップで配車を操作でき、日・週・順位の複数ビューで表示できます。休憩・休息の管理にも対応しています。
実運送体制管理簿(2025年4月施行の改正法対応)にも対応しており、一番星運送業システムVer.8とも連携できます。
2026年7月時点の公式サイトには、料金として次の内容が掲載されています。
- 初期費用:30,000円〜
- 基本ライセンス:月額12,000円
- 追加ライセンス:1つあたり月額4,000円
適用条件と最新の価格は、見積もりの段階であらためて確認してください。
BRIDGES@ny:クラウド型で物流を見える形にする候補
BRIDGES@nyは、クラウド型の配送管理システムです。物流を見える形にする点と、配送の組み方を改善する点を訴求しています。荷主と輸送会社の双方の声から開発された背景も、公式サイトで確認できます。
現行TMSでは見える化や分析の機能が弱く、その部分だけを補いたい企業が候補になります。料金の記載はなく、個別の問い合わせが必要です。
自社の課題別に候補を絞る方法

7製品を一斉に細部まで比べるより、最も困っている業務を1つ決め、必須要件で候補を減らすほうが効率的です。配車計画の精度、受発注・帳票の電子化、動態の可視化では、適した製品が異なります。
複数の課題が同時にある場合は、影響範囲が最も広い課題から優先順位をつけます。
配車計画の非効率が燃料費や残業代に直結している場合は、まずそこから着手します。一方で、受発注や見える化の課題は、次の段階で検討するという進め方も現実的です。
配車計画そのものの精度・自動化を優先したい場合
配車担当者の経験に頼った計画作成から脱したい場合は、Loogiaや輸配送管理システム(TMS)シリーズ、LYNA自動配車クラウドのような製品を優先します。
これらは配車計画を含む製品です。現行TMSの配車エンジンだけを差し替える改修と比べながら、AIによる自動計算の精度を実データで検証します。
受発注・請求まわりの電子化を優先したい場合
紙やメールでの配車依頼、帳票の手作業集計に困っている場合は、ハコベル配車管理やMOVOを候補にします。次に、既存の会計・基幹システムへの連携方式を確認します。
受発注の電子化とあわせて動態管理や見える化も強化したい場合は、BRIDGES@nyや一番星クラウド配車を含め、車両規模と料金体系のバランスを見ます。
料金・契約前の確認事項
一番星クラウド配車のように公開価格が明記されている製品でも、車両台数や利用者数が増えると条件が変わることがあります。
料金表に載る月額費用だけを見ると、判断を誤りやすくなります。既存TMSとの併用期間や移行、教育まで含めた総保有コストで比べる必要があります。
何に対して課金されるかの確認
クラウド型TMSの料金は、製品ごとに課金単位が異なります。課金の基準には、車両台数やドライバー数、案件数などがあります。
現在の規模だけでなく、1年後・3年後の想定台数を伝えて、見積もりを依頼します。さらに、次の項目を同じ条件でそろえて比べます。
- 初期費用・最低利用期間:契約条件を同じ基準でそろえる
- API利用・サポート費用:同じ条件で比べたときの複数社の差
- 料金見直しのタイミング:車両台数が増減したとき、いつ改定されるか
- 増車時の対応:繁忙期など年度途中に車両を増やす場合の扱い
繁忙期に車両を一時的に増やす運用があるなら、この点を確かめておかないと、想定外の追加費用につながります。ただし、料金が非公開の製品も多いため、未確認の具体額を推測で比較表に入れないようにします。
データ移行・解約条件の契約書での確認
まず、既存TMSの配車履歴や車両データを、どこまで取り込めるかを確かめます。解約時に、どの形式でデータを受け取れるかも確認します。
契約前には、次の項目も確認しておく必要があります。
- 権限管理・保存期間:車両位置情報や取引先情報を扱う権限と保存期間
- 対応範囲の分担:製品と自社が、それぞれどこまでの機能を受け持つか
- 解約通知の期限:将来解約する場合に必要となる通知期間
- データ返却の期間:解約時に受け取れるデータの形式と期間
移行の判断を急ぐ企業ほど、解約条件の確認は後回しになりがちです。長期的なリスクを避けるうえで、解約条件の確認は欠かせない工程です。
デモとPoCによる最終候補の絞り込み

資料比較で2〜3製品まで絞ったら、実際の車両データと配車条件を使って、デモまたはPoCを行います。特に、経理や情報システムの担当者にも参加してもらうと、導入後の行き違いを減らせます。
実際の配車条件による1案件の通し確認
大型車が通行できない道路や温度帯指定といった、現場の暗黙知にあたる制約条件を実際に投入します。続けて、配車計画がどこまで自動で組めるかを確認します。
デモやPoCでは、次の項目もあわせて見ておくと、運用負荷の違いを比べられます。
- 例外処理:急な配送先変更やドライバー欠勤が起きたときの処理の流れ
- ドライバー操作性:配車担当者だけでなく、ドライバーが使う画面の分かりやすさ
- 現場定着の見込み:管理画面と、ドライバー向けアプリの使いやすさの両方
ドライバー向けアプリの操作が複雑だと、問い合わせ対応の負荷が増える可能性があります。
導入効果の実測と稟議への活用
PoCの前に、配車計画にかかる時間、帳票の差し戻し件数、月次締めにかかる時間を記録し、PoC後の数字と比べます。
公開事例の効果をそのまま当てはめず、自社の件数と人件費で削減見込みを算出します。また、その数字は、フルスクラッチ改修との費用比較にも役立ちます。
TMS改修の製品比較で押さえるポイント
製品一覧から候補を選ぶときは、おすすめの順位ではなく、自社の配車条件と既存システムとの併用方針を同じ条件で比べる必要があります。選定のときに判断が分かれやすいのは、併用の構成と料金の見方です。
既存TMSと部分的に併用する構成
すべての業務を一度にクラウド型へ移す必要はありません。たとえば、配車計画だけをLoogiaへ、受発注・帳票だけをハコベル配車管理へ切り出すなど、既存TMSの改修が難しい部分だけをクラウド製品へ委ねる構成も現実的です。
部分的な併用を選ぶ場合は、既存TMSとクラウド製品のどちらのデータを正とするかを業務ごとに書き残しておくと、担当者が替わっても運用ルールが崩れにくくなります。
料金の改修費用との総額比較
クラウド製品の月額料金だけを見ると、割高に感じられることがあります。しかし、既存TMSを個別改修し続けた場合の保守費用や追加開発費用と並べると、総額では逆転することもあります。
月額だけで判断しないよう、3年程度の期間で両者を試算して比べるとよいでしょう。
まとめ
TMS改修では、既存システムに手を入れ続けるほかに、困っている業務だけをクラウド型TMSへ切り出す選択肢もあります。
今回紹介した7製品にも、配車計画の自動化、受発注・帳票の電子化、動態の可視化など、異なる得意領域があります。
困っている業務1つの特定と候補の絞り込み
配車計画、受発注・帳票、動態の可視化のうち、最も困っている業務を1つ決めます。次に、対応範囲、既存システムとの連携、料金体系を同じ質問で比べれば、広告的な訴求に左右されにくくなります。
実際の配車条件を使ったPoCでの最終確認
資料上の機能数よりも、自社特有の配車ルールや帳票フォーマットを実データで処理できるかどうかが重要です。
最終判断では、次の3点を比べてください。
- 費用比較:既存TMSを部分改修し続けるコストと、クラウド製品への切り出しコストの差
- ロジックの吸収可否:既製のクラウド製品で、自社独自の配車ロジックや基幹システム連携を吸収できるか
- 吸収できない場合:フルスクラッチ改修との比較
riplaは、フルスクラッチ開発の立場から、製品比較で見えた不足機能の洗い出しや、既存TMSの部分改修を支援しています。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
