TMTコンサルとは?|考え方/特徴/仕組み/目的を解説

TMTコンサルは、テクノロジー・メディア・通信という業界に特化し、業界再編や技術トレンドへの対応を専門的に支援するコンサルティングです。

新規事業や技術投資で標準論に物足りなさを感じる経営層も、相談先が業界に即した支援かどうかを判断できます。全体像は以下の記事で解説しています。

▼全体ガイドの記事
・TMTコンサルの完全ガイド

  • テクノロジー・メディア・通信の3つの業界領域
  • 技術トレンド・業界再編・規制対応のテーマ
  • 専門セクターチームと機能別チームの連携
  • 機能軸のDXコンサル・IT戦略コンサルとの違い

TMTコンサルとは何か?全体像と特徴

TMTコンサルの全体像を確認する経営企画担当者

TMTコンサルは、テクノロジー・メディア・通信という業界そのものに焦点を当てたコンサルティングです。特定の経営課題や業務工程を軸にする支援とは、切り口が異なります。EY Japanやアクセンチュアなどの大手ファームも専門セクターとして展開しており、業界特有の商習慣や規制、技術動向を踏まえた提案を行う点が特徴です。

業界軸のコンサルティングという立ち位置

DXコンサル、IT戦略コンサル、PMOコンサルなどは「機能・工程」を基準にしたコンサルティングで、業界を問わずDX推進や戦略立案そのものを支援します。一方、TMTコンサルは「業界」を基準にします。テクノロジー・メディア・通信という特定業界のプレイヤーを対象に、その業界特有の経営課題を扱います。

EY Japanは公式サイトで、TMTを専門セクターとして掲げています。そのうえで、EY-Parthenon(戦略・M&Aアドバイザリー)、カスタマーエクスペリエンス変革、サイバーセキュリティといった機能別コンピテンシーチームと連携し、経営課題の解決に当たると説明しています。さらに、チームの構成にはタックス・アドバイザリーやリスク管理も含まれます。

大手ファームの多くは、業界軸のセクターと機能軸のコンピテンシーを別々の組織として維持しつつ、案件ごとにチームを組成しています。そのため、依頼した窓口が業界軸のセクターか機能軸のコンピテンシーかによって、最初に受ける説明の切り口も変わります。相談前にどちらの窓口に連絡しているかを把握しておくと、初回の打ち合わせで論点がかみ合わない行き違いを防ぎやすくなります。

複数レイヤーを横断する専門性

TMT業界の企業が抱える課題は、単独の技術領域だけでは捉えきれません。通信インフラの整備状況、メディア・コンテンツの権利関係、エレクトロニクス製品のサプライチェーンなど、複数のレイヤーにまたがる知見が必要になります。

たとえばKPMGコンサルティングは、公式サイトでデータセンター変革、5G・6G戦略、通信インフラシェアリングを主要テーマに挙げています。AIデータセンター対応や、データ活用によるビジネスモデル変革・DXも主要テーマに含まれています。このことから、単一の技術トレンドだけでなく、複数テーマを横断して扱う体制であることがうかがえます。

ポイント

TMTコンサルかどうかは、相談内容が特定の業界に関わるかで判断できます。業界を問わない機能軸の支援と比べ、業界特有の商習慣や規制に踏み込むかが見極めの基準になります。

TMTコンサルが対象とする3つの業界領域とその融合

TMTコンサルが対象とする3つの業界領域

T(テクノロジー)・M(メディア)・T(通信)という3つの領域は、単体で語られることもあれば、業界の垣根が溶け合う「コンバージェンス」という文脈で一体として語られることもあります。それぞれの領域の重心を押さえておくと、自社の相談内容がどこに当たるかを見分けられます。

テクノロジー・メディア・通信それぞれの重心の違い

デロイト トーマツ コンサルティングは、TMT部門を2つのセクターに分けて展開していると説明しています。その2つは、「TM&E(通信・メディア・エンタメ:放送・新聞・出版・IP展開戦略)」と「TMT-Tech(エレクトロニクス・IT・半導体)」です。

テクノロジー領域は、半導体・エレクトロニクス・ITインフラの技術動向に重心があります。また、メディア領域は放送・新聞・出版・エンタテインメントのコンテンツ戦略とIP展開が中心です。通信領域は、5G・6G・Open RANといった通信インフラそのものの整備と投資判断に重心があります。

業界のコンバージェンス(融合)が専門特化の理由

EY Japanは公式サイトで「業界のコンバージェンスが起きています」というテーマを掲げ、技術・メディア・通信の垣根が薄れつつある現状を前提にサービスを設計しています。

動画配信サービスが通信キャリアと提携する例のように、通信インフラの投資判断がメディアコンテンツの流通戦略に直結する場面があります。単一業界の知見だけでは対応しきれない相談が増えていることが、TMTという横断的な専門領域が独立して成り立っている背景にあります。

この融合は、社内の組織体制にも影響を及ぼします。従来は通信事業本部、メディア事業本部、技術開発本部がそれぞれ独立して意思決定していた企業でも、コンバージェンス案件では部門横断のプロジェクト体制が必要になります。そのため、TMTコンサルに相談する際は、自社のどの部門が主管になるかをあらかじめ整理しておくと、提案内容と社内の実行体制を合わせられます。

ポイント

どの領域に相談が当たるかを先に整理すると、依頼先の得意分野と照らし合わせやすくなります。領域をまたぐ案件は、社内の主管部門も早めに決めておく必要があります。

主要な取り扱いテーマ(技術トレンド・業界再編・規制対応)

TMTコンサルの主要な取り扱いテーマを整理する担当者

EY JapanやKPMGコンサルティング、BCGなど主要ファームの公式情報を見ると、TMTコンサルが扱うテーマには共通項があります。技術トレンドへの対応、業界再編・M&A、メディア・通信特有の規制対応の3つに整理して押さえておくと、自社が相談したい内容を伝えやすくなります。

技術トレンドへの戦略対応とビジネスモデル変革

各社が共通して挙げる技術トレンドには、5G・6G・Open RANの実装、クラウドインフラへの投資、生成AI導入があります。ほかに、データセンター事業機会、半導体サプライチェーンの最適化、メタバース・Web3ビジネス開発も挙げられています。

また、デロイト トーマツ コンサルティングは「モノ売りからコト売りへ」と表現しています。単発の製品販売から、サブスクリプションやソリューション提供型へとビジネスモデルそのものを転換する支援も、技術トレンド対応と一体で語られる領域です。

これらの技術トレンドは進展が速く、生成AIの活用範囲や5G・6Gの商用化状況は年単位で更新されていきます。そのため、断定的な普及率や導入効果の数字をうのみにせず、各社が公式に発信する定性的なテーマの変化を継続的に追いながら、自社にとっての優先順位を都度見直す姿勢が求められます。

業界再編・M&Aとメディア・通信特有の規制対応

業界のコンバージェンスに伴うM&A戦略や事業ポートフォリオの再編は、TMTコンサルの代表的なテーマです。メディア・コンテンツ領域では、ストリーミング競争、IP資産・コンテンツ戦略の転換、放送・新聞・出版のデジタル化対応が扱われます。

通信業界では、電波・周波数政策やデータセンター関連規制など、通信インフラに関する規制動向が事業価値に与える影響が大きいとBCGが指摘しています。そのため、規制動向を織り込んだ意思決定を支援することも、TMTコンサルの重要な役割です。

専門セクターチームと機能別チームが連携する支援体制の仕組み

TMTコンサルの支援体制の仕組みを確認する会議

TMTコンサルは、業界知見を持つセクターチームだけで完結せず、機能別の専門チームや海外拠点と連携する体制を取る点が特徴です。この連携の仕組みを理解しておくと、依頼した相談が社内でどう処理されるかを見通しやすくなります。

セクターチームと機能別コンピテンシーチームの連携

EY Japanの例では、TMTという業界軸のセクターチームが、機能軸のコンピテンシーチームと連携して経営課題に対応します。連携先には、M&A戦略・財務アドバイザリーを担うEY-Parthenonや、カスタマーエクスペリエンス変革、サイバーセキュリティのチームがあります。さらに、タックス・アドバイザリーやリスク管理のチームも含まれます。

業界知見に加えて、M&Aや税務、リスク管理といった専門機能が必要になったとき、同じファーム内で他チームを呼び込めるかどうかは、依頼先を検討するうえで確認しておきたい点です。

グローバルの知見を取り込むバーチャルチーム編成

デロイト トーマツ コンサルティングは、業界横断的な新規事業構想を「TMTストラテジー」と呼ぶバーチャルチームで支援しています。海外の各地域メンバーファームと連携し、規制動向や技術トレンドをグローバルな視点で把握する体制を取っていると説明しています。

国内の商習慣に加えて、海外の規制動向や技術トレンドまで踏まえた助言を求めるなら、こうしたグローバル連携の有無が支援の質を左右します。グローバル連携があると謳っていても、実際には日本側の担当者が海外の情報を都度取り寄せる程度の関わりしかない場合もあります。

発注側は、海外拠点のコンサルタントが実際のプロジェクトにどの程度関与するのか、リアルタイムの情報連携なのか定期レポートの共有なのかを、契約前の打ち合わせで具体的に確認しておくと、期待した支援内容とのずれを防げます。

ポイント

依頼後にどのチームが動くかは、業界担当と機能担当の役割分担で決まります。海外拠点の関与も含めて契約前に確認しておくと、期待との食い違いを防げます。

導入目的と得られる効果

TMTコンサル導入の目的を整理する会議

TMTコンサルを導入する目的は、外部の専門家を確保することだけにとどまりません。業界の垣根が溶け合う環境変化に対応できる体制を整え、自社単独では判断が難しい技術投資や事業再編の意思決定を裏付けることにあります。

業界コンバージェンスへの対応力

通信キャリアがメディア事業に参入したり、テクノロジー企業がコンテンツ配信に乗り出したりするなど、業界の境界を越えた競争が広がっています。自社の事業領域だけを見ていると察知しにくい他業界の動きを、TMTという横断的な視点から捉えます。そのうえで、事業ポートフォリオや投資優先順位の見直しに反映できることが、導入目的の中心にあります。

エコシステム構築と新しいビジネスモデルへの転換支援

「モノ売りからコト売りへ」の転換や、サブスクリプション化、共創パートナーとのエコシステム構築は、自社単独の検討だけでは実行段階で行き詰まりやすいテーマです。そこで、TMTコンサルは、他社との提携先候補の発掘や、業界内での協業モデルの設計まで踏み込んで支援することがあり、社内に前例のないビジネスモデル変革を進める際の伴走役として位置づけられます。

ただし、提携先の実現可能性や社内体制の整備は、自社の意思決定が前提になる点は変わりません。サブスクリプション化やソリューション提供型への転換は、営業部門の評価指標や収益認識のタイミングまで見直しを迫る取り組みでもあります。

TMTコンサルが示したビジネスモデルの設計図を実行に移す段階では、経理・法務・営業企画といった関連部門を早期に巻き込むことが望まれます。あわせて、社内の合意形成にどれだけの時間がかかるかを見込んで、スケジュールを組むとよいでしょう。

機能軸のDXコンサル・IT戦略コンサルとの違い

TMTコンサルと機能軸のコンサルとの違いを整理する担当者

TMTコンサルは、DXコンサルやIT戦略コンサルと役割が重なって見えることがあります。ただし、業界軸か機能軸かという立ち位置の違いを押さえておくと、依頼範囲を見誤らずに済みます。

DXコンサルとは「業界軸」と「機能軸」の違い

DXコンサルは、業界を問わずビジネスモデルの変革や新たな顧客価値の創造を、診断・戦略立案・実行計画・実行支援という機能軸で一気通貫に支援します。

TMTコンサルは、テクノロジー・メディア・通信という特定業界のプレイヤーに対象を絞り、その業界特有の商習慣・規制・技術動向を前提に助言する点が異なります。

同じ企業がDX推進を検討する場合でも、進め方の型そのものを相談したいのか、TMT業界特有の事情を踏まえた打ち手を相談したいのかで、適した依頼先は変わります。

IT戦略コンサルやPMOコンサルとの役割の違い

IT戦略コンサルは、自社の情報システムやITインフラをどう最適化するかという技術視点を中心に据えます。PMOコンサルは、複数プロジェクトの進捗管理や体制構築といった工程管理を中心に担います。いずれも業界を限定しない機能軸の支援である点が、業界軸のTMTコンサルとの根本的な違いです。

実務では、TMTコンサルが業界特有の事業戦略を描いたあと、その実行段階でIT戦略コンサルやPMOコンサルに個別のシステム刷新やプロジェクト管理を依頼するという役割分担も見られます。

ポイント

DXコンサルやIT戦略コンサルと迷うときは、業界に特化した事業戦略を相談したいのか、業界を問わず進め方や工程を任せたいのかで、適した依頼先が変わります。

TMTコンサル導入前に確認しておきたいポイント

TMTコンサルに関する質問を確認する担当者

TMTコンサルを検討するかどうかは、会社の規模だけで決まるものではありません。相談内容が業界軸に当たるのか、依頼したい範囲がM&Aアドバイザリーか事業変革支援かまで整理しておくと、依頼先とのミスマッチを防げます。

相談内容が業界軸か機能軸かの見極め

「事業戦略そのものを相談したいのか」「既存システムの技術的な最適化を相談したいのか」を自問したうえで担当窓口に明確に伝えると、無駄な打ち合わせを減らす近道になります。具体的な比較軸や依頼範囲の絞り方は、TMTコンサルの選定ポイント・選び方・種類で整理しています。

中堅規模のTMT関連企業にとっての相談価値

大企業のグローバル再編だけがTMTコンサルの対象ではありません。中堅規模の通信関連企業やメディア企業であっても、業界のコンバージェンスに伴う競争環境の変化や、生成AI・5G活用といった技術トレンドへの対応は共通の課題です。そのため、自社の事業規模に見合った関与範囲(スポット相談か継続的な伴走支援か)を、依頼前に確認しておくとよいでしょう。

M&Aアドバイザリーと事業変革支援の依頼範囲の違い

M&Aアドバイザリーは、買収・売却に伴うデューデリジェンスや財務評価が中心です。一方、事業変革支援は、ビジネスモデルの転換や新規事業構想の策定が中心になります。

同じTMTコンサルという名称でも、ファームによって強みを置く領域は異なります。そこで、依頼したいテーマがどちらに近いかを事前に整理し、対応できる範囲を問い合わせの際に確認することが大切です。

ポイント

相談内容が業界軸か機能軸かを最初に見極め、依頼したい範囲がM&Aなのか事業変革なのかを整理しておくと、依頼先とのずれを減らせます。

まとめ

TMTコンサルの要点をまとめる担当者

TMTコンサルは、テクノロジー・メディア・通信という業界軸に専門特化したコンサルティングです。業界を問わず機能・工程を支援するDXコンサルやIT戦略コンサルとは、対象とする領域が異なります。

業界のコンバージェンスを前提に、技術トレンドへの戦略対応、業界再編・M&A、メディア・通信特有の規制対応といったテーマを、セクターチームと機能別チームの連携によって扱う点が特徴です。

業界横断的な意思決定を裏付ける立場

自社単独では察知しにくい業界の境界を越えた競争環境の変化を捉え、事業ポートフォリオの見直しやエコシステム構築を進めるための判断材料を提供することが、TMTコンサルを導入する本質的な価値です。

M&Aアドバイザリーか事業変革支援かという依頼範囲の見極めも、TMTコンサル選定の重要な出発点になります。

自社の相談内容を業界軸で整理すること

まずは、自社の課題がテクノロジー・メディア・通信のどの領域に当たるのかを整理し、技術トレンド対応と業界再編のどちらを優先すべきかを見極めてください。優先する目的が明確になれば、必要な支援範囲と依頼先を具体化できます。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。