医療・介護業界では、人手不足と業務過多が続いており、その解決策としてAIエージェントの活用が広がっています。
診療支援、記録の自動化、問い合わせ・患者対応、介護施設の見守りといった場面で、実際の活用が進んでいます。全体像は、以下の完全ガイドで解説しています。
▼全体ガイドの記事
・医療・介護業界AIエージェント開発・構築の完全ガイド
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医療・介護業界でAIエージェントが求められる背景
日本の医療・介護業界は、少子高齢化による患者・利用者数の増加と、働き手の不足という二重の課題に直面しています。
2026年には医師の時間外労働上限規制が本格施行され、限られた人員でいかに質の高い医療・ケアを提供するかが、現場の最優先課題となっています。医療・介護の現場では、AIエージェントによる業務効率化への関心が急速に高まっています。
医師・看護師が抱える業務負担の実態
医師は診療外の業務に費やす時間が膨大で、紹介状・診断書・各種証明書の作成や問い合わせへの電話対応、学会資料の準備など、医療行為以外の事務的業務が積み重なっています。その結果、「本来の診療に集中できない」という声は全国の医療機関で共通の悩みとなっています。
看護師についても、服薬管理の確認や患者家族への説明、記録業務が重なり、直接的なケアに専念しにくい状況が続いています。
- 記録や事務の割合:医師・看護師とも、業務時間の大きな割合を占めています
医師については、電子カルテの入力・更新だけで1日の業務時間の約40%を占めるという調査結果があります。
介護現場での人手不足と記録業務の負荷
介護業界では、少ない人員でより多くの利用者を支える「生産性向上」が急務となっています。
介護職員の業務では、日々の介護記録作成やケアプランの更新、ヒヤリハット報告書の作成といった書類業務に多くの時間が割かれています。こうした負担が、ケアの質の低下や職員の離職につながる悪循環を生んでいます。
厚生労働省も2024年度介護報酬改定において、AIや介護ロボットの活用による業務効率化を政策として推進する方向を明確に打ち出しました。
- 人手不足と書類業務の負担:2040年に約69万人の介護職員が不足するとの試算があり、記録作業が大きな負担になっています
診療支援でのAIエージェント活用事例

診療支援の分野では、AIエージェントが患者の状態を事前に把握する問診補助から、診察中の情報整理、さらには診断精度を補助する画像解析まで、幅広い場面で活用されています。
医師が「本来の診療判断」に集中できる環境をつくることが、AIエージェント活用の中心的な価値といえます。
AI問診・トリアージ支援の実例
大阪国際がんセンターでは、患者がスマートフォンやタブレットを通じてAIアバターと対話しながら問診内容を入力できる「問診生成AI」を実運用しています。
この仕組みにより、問診情報の整理時間も削減されました。さらに、緊急度の高い患者を早期に識別するトリアージ精度の向上にもつながっています。
福岡和白病院でもUbieの「AI問診」を導入しており、来院前の事前入力でピーク時の受付がスムーズになったほか、薬情報の転記ミスによる安全リスクも低減されたと報告されています。
AI問診の特徴は、患者が自身のペースで入力できるため、医師との対話時間を本質的な診断に集中させられる点にあります。
- 問診情報の事前整理:患者が症状や既往歴を入力でき、医師は診察前に状態を把握しやすくなります
画像診断支援AIの活用と診療報酬加算
画像診断の領域では、AIが胸部X線やCT画像を自動解析し、がんの疑いのある病変や骨折・脳出血などの異常所見を素早く検出する活用が進んでいます。
制度面でも、医療機関がAI導入のコストを回収しやすい後押しが整ってきました。
Googleが発表したMed-Geminiは、医師国家試験レベルの問題で専門医を上回るスコアを記録しています。また、AIの診断補助能力は今後さらに向上が期待されています。
AIエージェントは、こうした画像解析結果を電子カルテに自動連携し、医師が診断根拠を確認しながら診察を進められる環境を提供します。
- 診療報酬加算による後押し:2024年度の改定で、AIを活用した画像診断支援に新たな加算が設けられました
臨床サマリーの自動生成による診察前準備の効率化
AIエージェントは、処方履歴などを含めて情報を自動で集約・整理します。また、「臨床サマリーレポート」を短時間で自動作成する機能も持っています。
医師は、患者の状態を診察室に入る前に把握したうえで診察に臨めるため、初診・再診を問わず、一人ひとりの患者により深い診療が可能になります。
複数の慢性疾患を抱える高齢患者の診察では情報量が多くなりがちですが、AIが情報を整理することで、診察の質と速度を両立できます。
- 診察前の要点整理:問診票や既往歴、検査結果などを集約し、医師が把握すべき要点をまとめます
診療・介護記録の自動化事例

記録業務の自動化は、医療・介護の双方で、最もすぐに効果が出やすい領域の一つです。音声入力やAIによるテキスト化・整理を組み合わせることで、記録作業にかかる時間を大幅に削減しながら、記録の質を均一に保つことが可能になります。
電子カルテ自動記載・要約の事例
「medimo(メディモ)」は、患者との会話をもとに約5秒でカルテを自動作成するAIクラークサービスで、全国300件以上の医療機関に導入されています。音声認識を使い、SOAPフォーマットに沿って整理する仕組みです。
「カルテ残業ゼロを実現した」という声も寄せられており、特に一人医師のクリニックや忙しい外来診療では、導入効果が顕著です。
音声入力の精度はリアルタイムで向上しており、専門用語や医薬品名にも対応したモデルが提供されています。
- カルテ記入作業の削減:診察中の会話を自動でテキスト化し、診察後の記入作業をほぼゼロに近づけます
介護記録の音声入力自動化とケアプラン作成支援
介護現場では、スタッフがウェアラブルデバイスやスマートフォンに向かって話すだけで、AIがその内容をテキスト化し、施設指定の記録フォーマットに入力する仕組みの導入が広まっています。記録作業時間を最大50%削減した施設も報告されており、直接ケアに充てられる時間の増加につながっています。
ケアプランの作成支援では、CDIの「SOIN」が愛媛県で実証実験を行い、約4.5万件のケアプランデータをAIに学習させた結果、最適なケアプランを自動提案できる水準に達しました。
属人化しがちなプラン作成に、一定の標準化をもたらす効果も確認されています。
- ケアプラン作成の標準化:実証に参加したケアマネジャーの約9割が、客観的な視点を持てるようになったと回答しています
紹介状・診断書の自動ドラフト生成
電子カルテに蓄積されたデータをAIエージェントが自動で取得し、紹介状や診断書、各種証明書の初稿を生成する活用も注目されています。
大阪市立総合医療センターでは、SMS連絡の自動化によって1日の通話時間を130分削減し、診断書の交付率も改善した実績があります。
書類業務の削減は、医師の時間だけでなく医療事務スタッフの負担軽減にも直結するため、病院全体の生産性向上に寄与します。
- 文書作成の時間短縮:医師は初稿を確認・修正するだけでよく、1件あたりの作成時間が大幅に短縮されます
問い合わせ・患者対応でのAIエージェント活用事例
医療機関には、予約や料金、診療時間、処方薬の確認などの問い合わせが毎日大量に寄せられます。
問い合わせの一次対応をAIエージェントが担うことで、スタッフは複雑な患者対応や診療補助に集中できるようになります。
AIチャットボットによる24時間問い合わせ対応の実績
たとえば、「初診の予約方法は?」「保険証を忘れた場合は?」「駐車場はありますか?」などの質問があります。
NOMOCa-AI chatのように、1,592件の問い合わせをAIが対応した実績もあります。予約関連の質問に24時間対応できることは、新規患者の取りこぼし防止に直結しています。
- 一次対応の24時間化:定型的な問い合わせに自動で応答し、診療時間外も含めて対応します
医療法人社団浅井耳鼻咽喉科医院では、毎月60〜100件程度の問い合わせをAIチャットが自動対応しており、スタッフへの負担軽減と患者の利便性向上を実現しています。あるクリニックでは、AIチャットボット導入後に受付スタッフの電話対応業務が約40%削減され、患者のキャンセル率が15%から9%まで低下したという報告もあります。
予約管理・リマインド通知の自動化
AIエージェントによる予約管理の自動化では、患者が電話やWebから予約を申し込むと、AIが空き枠を確認しながら最適な日時を提案します。
確定後は患者へSMSやLINEでリマインド通知を自動送信する仕組みも実現しています。
加えて、問診票の事前記入依頼や持参物の案内もあわせて自動送信できるため、当日受付での確認作業も効率化されます。医療機関にとっては、患者満足度の向上と業務効率化を達成できる取り組みとして評価されています。
- 無断欠席の減少:リマインド通知により、予約当日のキャンセルやノーショーが減り、予約枠を有効に使えます
介護施設における家族・利用者対応の自動化
介護施設では、入居者家族からの「今日の様子はどうですか」「体調の変化はありますか」といった問い合わせへの対応も、スタッフの日常業務の中で一定の時間を占めています。AIエージェントを活用すると、センサーや介護記録と連携して入居者の当日の状態サマリーを自動生成し、家族への定期報告メッセージとして配信する仕組みを実現できます。
定期報告があることで、家族は安心して施設に任せられるようになります。
「見学の予約」「施設案内の資料請求」といった入居前の問い合わせをAIチャットが一次対応し、施設のWeb担当者や相談員の負担を軽減する活用も広がっています。
- 家族への定期報告の自動化:入居者の状態サマリーを家族へ配信し、スタッフが対応に追われる状況を緩和します
介護施設での見守り・転倒予防AIの活用事例
介護施設の夜間巡視や転倒・転落の防止は、限られた夜勤スタッフが抱える最大のリスクのひとつです。AIエージェントと連携したセンサーや画像解析技術により、利用者の状態をリアルタイムで把握できるようになります。
異変を即座にスタッフへ通知する「スマート見守り」が現実のものとなっています。
AI見守りシステムによる夜間巡視回数の削減事例
従来、夜間スタッフは一定間隔で全入居者の部屋を巡回する必要があり、スタッフの睡眠機会を妨げながらも、転倒・転落を完全に防ぐことは困難でした。
AI見守りシステムは、利用者の体動や離床・徘徊の動きをセンサーがリアルタイムで検知します。異常があれば、スタッフのスマートフォンやナースコールに即時アラートを送信します。
スタッフは、必要なときにだけ対応すればよくなり、夜間の疲労軽減と介護事故の予防を実現できています。
- 夜間巡視の負担軽減:西東京ケアセンターそよ風では、センサーとカメラの導入後に夜間巡視回数が40%減りました
排泄予測・バイタル変化の早期検知
介護AIの中でも特に注目されているのが、排泄のタイミングを予測して事前にスタッフへ通知するシステムです。
体動センサーや生体データを分析する方式が使われています。これは、利用者の尊厳の保護と介護スタッフの業務負担の軽減の両面で、大きな意義を持ちます。
AIが利用者のバイタル変化(体温・脈拍・血圧・SpO2)を継続的に監視し、通常範囲を逸脱した場合に素早く報告する仕組みも整備されており、適切な対応につながっています。
排泄予測やバイタル監視の機能は、利用者の安全を守りながら介護職員の心理的負担を軽くするうえでも、重要な役割を担っています。
- 排泄予測とバイタル監視:排泄のサインを事前に検知して失禁前に誘導し、病状悪化の早期発見にもつなげます
医療・介護業界でAIエージェントを導入する際のポイント

医療・介護業界でのAIエージェント導入は、一般的な業務用途と異なる固有の考慮事項があります。患者・利用者の個人情報や医療情報を扱う特性上、セキュリティ・法令対応・現場への定着が成功の鍵を握ります。
セキュリティ・個人情報保護と法令対応の確認
医療・介護データは、個人情報保護法のみならず、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省)や介護情報の取り扱い基準に従って、厳格に管理する必要があります。
AIエージェントのベンダーを選ぶ際には、データを国内サーバーで保管しているかどうかを必ず確認しましょう。
AIが生成する情報には、「ハルシネーション(誤情報の生成)」が起こるリスクがあります。たとえば、カルテの記載内容や問診サマリーにも、こうした誤りが含まれる可能性があります。
最終的な判断は必ず医師・看護師・介護職員が行う「人間による確認」の工程を、業務フローに組み込むことが不可欠です。
IPA(情報処理推進機構)は2026年3月に「ヘルスケア領域におけるAIセーフティ評価観点ガイド」を公表しており、導入前のリスクアセスメントの参考にすることをお勧めします。
- ベンダーの確認項目:データの保管場所、暗号化の方式、アクセスログの管理体制、第三者認証(ISMSなど)の有無
スモールスタートから始める導入ステップ
一度に全業務を変えるより、効果が出やすい領域から段階的に始めるほうが、AIエージェント導入の成功の近道です。
介護施設であれば、「AI見守りセンサー」から着手し、夜間巡視の負担軽減を体感してから次のステップに進む方法が推奨されています。
医療機関では、「AIチャットボットによる問い合わせ対応」や「AI問診票」が比較的導入しやすく、既存の業務フローへの影響が少ない入り口として適しています。
まずは導入効果を定量的に把握する進め方は、定着率を高めるうえでも効果的です。
- 段階的な導入:1つの業務課題に絞って効果を測り、現場の反応と改善点を確認してから展開範囲を広げます
電子カルテ・介護システムとの連携設計
AIエージェントの効果を最大化するためには、既存の電子カルテシステムや介護記録ソフトとのデータ連携が不可欠です。
AIが自動生成した記録や問診サマリーを既存のシステムに自動で取り込む仕組みを設計すれば、スタッフが二重入力する手間を排除できます。
2026年には電子カルテの標準化義務化が本格的に進展しており、標準化されたデータフォーマットを使うことで、システム間の連携がより容易になっていく見通しです。
システム統合の設計段階で、IT部門・現場スタッフ・ベンダーの三者が合意できる仕様を固めることが、導入後のトラブルを減らすうえで重要です。
- 既存システムとのAPI連携:ベンダーを選ぶ際は、自院・自施設が使う電子カルテや介護ソフトとの連携実績を確認します
まとめ
医療・介護業界におけるAIエージェントの活用は、診療支援・記録の自動化・問い合わせ対応・見守りといった多岐にわたる領域で、着実に実績を積み重ねています。
たとえば、AI問診による診察前準備の効率化や、電子カルテの音声自動記載が挙げられます。ほかにも、AIチャットボットによる24時間の問い合わせ対応や、介護施設での見守りシステムによる夜間巡視の削減があります。
現場の課題に直結した具体的な成果が各地で生まれています。
大切なのは、AI導入を「コスト削減のツール」としてだけでなく、「患者・利用者の安全とQOL向上」のための手段として位置づけることです。スモールスタートで効果を検証しながら、段階的に展開することが求められます。
セキュリティ・法令・現場定着の3点を丁寧に押さえることが、医療・介護業界でのAIエージェント活用成功の鍵となります。
自施設・自医院での導入を検討される方は、まず「どの業務課題を最初に解決したいか」を明確にし、専門パートナーとともに進めることをお勧めします。
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会社紹介
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また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
