BtoBアプリ開発の発注/外注/依頼/委託方法について

BtoBアプリを外注する場合は、まず社内の人材、開発の期限、業務要件を整理し、外注と内製のどちらが合うかを判断します。そのうえで、発注は要件定義、候補先の比較、契約とキックオフの順に進めます。

国内企業の約65%が2025年時点でDX推進に取り組み、BtoBアプリの開発需要は前年比で約25%増加しました。一方で、経済産業省は2030年までにIT人材が最大79万人不足すると予測しています。

外注先を選ぶときは、業務への理解や既存システムとの連携を確認します。さらに、セキュリティや開発後の保守までを、候補となる各社に同じ基準で当てはめます。

本テーマ全体の流れは、次の記事で解説しています。

BtoBアプリ開発を外注する前の確認事項

外注を決める前に、自社で使える開発リソースと事業上の優先順位を洗い出します。外注が向く場合と内製が向く場合では、見るべき点が異なります。

外注が向くケースと内製が向くケース

外注が適するのは、社内に専門人材がいない場合です。BtoBアプリでは、APIやUI/UX、データベースの知識に加えて、セキュリティやクラウドインフラの知識も必要になるため、採用だけで3〜6か月かかり、安定稼働までには、さらに半年以上かかるのが一般的です。

経験豊富なバックエンドエンジニアの年収は600万〜1,200万円、プロジェクトマネージャーは700万〜1,000万円程度が相場で、チーム全体の人件費は年間3,000万円を超えることもあります。

開発を急ぐ場合も、外注が有効です。たとえば、3か月以内に受発注管理システムをモバイル対応するような案件では、外注先のノウハウや部品を使うことで、内製より開発期間を30〜50%短縮できるケースがあります。

  • SaaS企業:アプリが競争優位性の源泉になり、顧客の声をすぐ反映できる内製のほうが長期的に効率的です。
  • 業界規制が複雑な場合:金融のFISC安全対策基準や医療の個人情報保護ガイドラインのように、業務知識とIT知識を持つ社内チームが主導しやすくなります。

外注先の種類と特徴

外注先は4つのタイプに分けられ、規模や目的、予算に応じて使い分けます。必要な管理体制も、選ぶときの判断材料になります。

  • アプリ開発専門の受託開発会社:小規模は300万〜800万円、中規模は800万〜2,000万円程度です。
  • 大手SIer:1,000万円以上が一般的です。
  • フリーランス・少人数チーム:月額50万〜150万円程度です。
  • オフショア開発会社:国内より30〜50%費用を抑えられます。

アプリ開発専門の受託開発会社は、UI/UXからバックエンド、クラウドまで一貫して対応します。大手SIerは、NTTデータや富士通、日立ソリューションズやTISなどが代表例で、基幹連携やインフラ、運用保守まで対応できます。

フリーランスや少人数チームは、LancersやCrowdWorksで依頼でき、小回りが利く一方で、品質のばらつきと離脱リスクがあり、プロトタイプやMVPに向きます。

オフショア開発会社は、ベトナムやフィリピン、インドなどの海外拠点に委託します。時差や言語、品質管理のためにブリッジSEが必要です。

ポイント

外注か内製かは、社内に専門人材がいるか、開発の期限が迫っているか、アプリが競争優位の源泉になるかで判断します。外注先は、規模や目的、予算に応じて選びます。

BtoBアプリ開発の発注手順

要件定義、発注先の選定、契約締結の順に進むBtoBアプリ開発の発注手順を示した図。
比較と合意を重ねてから開発を始めます。

発注は、要件定義と仕様書の作成、発注先の選定と見積もり比較、契約締結から開発スタートまでの3ステップで進みます。

要件定義と仕様書の作成

要件定義では、機能や性能、運用条件を文書にまとめます。要件があいまいだと、発注者と開発会社の認識がずれやすくなります。実際に、JUASの調査では、システム開発プロジェクトの失敗原因の約40%が要件定義の不備です。

特に、業務フローを整理し、現行の手順とアプリ導入後の変化を描きます。紙の受発注をアプリ化する場合は、承認プロセスと例外処理も洗い出します。

RFPには、背景と目的、対象ユーザーとユースケース、必須・希望機能を盛り込みます。そのうえで、レスポンスタイムや同時接続数、稼働率などの条件を書き込みます。さらに、セキュリティやスケジュール、予算も書き添えます。既存システムとの連携や使用言語、フレームワークの制約も加えます。RFPの作成期間は、通常2〜4週間です。

発注先の選定と見積もり比較

RFPは3〜5社へ送付するのが目安です。2社以下では比較が不十分になり、6社以上では評価の手間が大きくなります。候補は、紹介や業界団体のディレクトリに加え、発注ナビやリカイゼンなどのマッチングサービスで探します。

金額に加えて、工程ごとの工数を比べます。テストとドキュメントの有無、同業界・同規模の実績、技術スタックの適合性を並べると、各社の違いが見えてきます。さらに、PMの経験年数や役割分担、ヒアリングとレスポンスの質も確認します。

契約締結とキックオフ

契約形態は、請負契約と準委任契約の2種類に分かれます。成果物の納品を約束する請負は要件が固まった案件に、稼働時間に対して報酬を払う準委任は要件が変わるアジャイル案件に向きます。なお、要件定義を準委任、開発を請負と分けるケースもあります。

契約書には、ソースコードや設計書の知的財産権と、NDAまたは秘密保持条項を明記します。さらに、瑕疵担保(契約不適合)の範囲と期間、解約条件、損害賠償の上限も書き込みます。

キックオフでは、スケジュールとマイルストーンを合意します。定例会議や使用ツール、エスカレーションフローも決めておきます。そのうえで、実装担当のエンジニアにも参加してもらい、環境構築やアカウント発行の準備に1〜2週間を見込みます。

ポイント

RFPは要件を固めてから3〜5社に送り、見積もりと実績を比べて選びます。契約形態は、要件が固まっているかどうかで決めます。

外注で失敗しないためのポイント

単体、結合、システム、受入(UAT)の4段階のテストをカードで示した図。
確認範囲を段階ごとに広げて品質を確かめます。

外注の失敗は、技術の問題より、要件の認識のずれやコミュニケーション不足に起因することが多くあります。実際に、日経BPの調査では、IT開発プロジェクトの約55%が当初計画どおりに完了していません。

コミュニケーション体制の構築

定例は、初期は週2回、中盤以降は週1回を目安に設定します。画面や動作デモを見ながらフィードバックすると、認識のずれに早く気づけます。

日常の連絡は、SlackやMicrosoft Teamsの専用チャンネルで行います。実際に、チャットを使うプロジェクトでは、メールのみの場合より問題解決までの平均時間が約40%短くなったという社内調査があります。

発注者側には、プロジェクトオーナーを1名専任で置きます。この担当者が要望を集約し、優先順位を付けて伝えます。また、専任者を置いたケースと置かなかったケースでは、スケジュール遵守率に約25ポイントの差が生じた報告があります。

品質管理とテスト計画

テストは4段階で、単体、結合、システムの順に進み、最後に受入(UAT)を行います。結合テストでは基幹システムや外部サービスとの連携を、UATでは実際の業務シナリオを、発注者側の担当者が確認します。

在庫連携では、更新のタイムラグや二重登録を確認します。現場でしか把握できない例外処理も、テストケースに含めておくことが大切です。また、バグ密度(1,000行あたりのバグ数)とテストカバレッジを共有し、本番前の基準をバグ密度0.5件/KLOC以下、テストカバレッジ80%以上として合意する方法があります。

ポイント

外注の失敗は、要件の認識のずれやコミュニケーション不足から起きることが多いため、要件の段階と定例の場で食い違いを早く見つけることが欠かせません。

発注後のプロジェクト管理

納品後の検収、パイロット運用、保守の3項目を並べた図。
小さく試してから対象を広げ、運用条件を整えます。

外注後も、発注者のプロジェクト管理責任は残ります。そのため、進捗はマイルストーンで確認し、納品や検収、保守運用までを契約と計画に沿って管理します。

進捗確認とマイルストーン管理

典型的なマイルストーンは全体で7段階に分かれ、前半は要件定義完了、基本設計完了、詳細設計完了の順に区切ります。後半は、主要機能の実装完了、結合テスト完了、UAT完了を経て、本番リリースに至ります。各段階には、成果物と完了基準を結びつけて決めておきます。

進捗は、JiraやBacklogなどのツールで一覧にします。AsanaやRedmineなどを選ぶこともできます。マイルストーンが計画から1週間以上遅れた場合は、全体への影響を確認し、早期に対策します。

要件が変わると、スケジュールや費用、品質への影響を評価する必要があります。そのため、影響の評価方法と承認権限、追加費用の算出方法を文書にしておきます。また、業務ルールの変更や法改正への対応も、変更管理の対象にします。

納品・検収・保守運用

納品物は、アプリ本体(ソースコード一式)や設計書などです。テスト結果報告書や操作マニュアル、環境構築手順書も含まれます。検収は、事前に合意した検収基準と品質指標で判定し、検収期間は通常2〜4週間を設けます。

まず、一部の部署や取引先で2〜4週間のパイロット運用を行います。本番データの安定性と操作性を確かめたうえで、対象を広げます。

保守は、月額固定で10万〜50万円程度が一般的です。契約では、対応時間帯(営業時間内のみか24時間対応か)、障害レベルとSLA、月間対応工数の上限を定めます。さらに、バージョンアップやOS更新の範囲も定めておきます。

ポイント

進捗は7段階のマイルストーンで追い、要件変更は影響と追加費用を文書にして承認を得ます。検収と保守の条件は、契約であらかじめ決めておきます。

まとめ

外注前には、専門チームの有無と期限を整理します。あわせて、アプリが競争優位性の源泉になるか、規制対応が複雑かも確認します。発注先は4タイプに分けられ、受託開発会社と大手SIerのほかに、フリーランス・少人数チームやオフショアがあります。

要件定義とRFPを作り、3〜5社の見積もりを比べてから、契約締結へ進みます。契約では、知的財産権や秘密保持のほか、契約不適合と損害賠償も確認します。

開発中は、定例とチャットでの連絡が欠かせません。専任のオーナーを置き、テスト計画も早い段階で立てておきます。

発注後も、7段階のマイルストーンと変更管理を使って、検収やパイロット、保守まで管理します。適切なパートナーと進めれば、アプリは業務効率や取引先との関係、新たなビジネス機会につながる資産になります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。