開発内製化では、業務の棚卸し、小規模な開発、反復改善を順に経て、自走できた後の納期を短縮できます。ただし、採用や育成が済むまでは外注時より遅くなるため、期間は年単位で見込む必要があります。
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内製化における開発期間の全体像
外注のように単一案件の工数だけで見ると、内製化の期間を見誤ります。期間は、案件の期間と体制移行の期間の二つに分けて考えます。
個々の案件は内製化で大幅に短くなりやすい一方で、採用や育成には時間がかかります。そのため、全体では「最初は遅く、後から加速する」流れになります。
「内製化すればすぐ速くなる」と期待すると、初年度の遅さに失望し、移行が頓挫することがあります。
スケジュールには、いつ、どの領域から切り替えるか、投資回収にいつ入るかも含めておきます。
外注のリードタイム構造と「見えない待ち時間」
外注の請負開発は、要件定義からリリースまで半年から1年以上かかるのが一般的です。その期間の中身は、純粋な開発工数に加えて、外注特有の調整に費やす時間です。
リリース後のボタン位置の変更や項目追加といった小改修でも、外注では毎回同じ調整手順が必要になります。
- 要望を確認し、ベンダーが影響範囲を調べて見積もる。
- 社内で稟議を通し、発注と契約の手続きを進める。
- 開発へ着手するのは、契約が済んだ後になる。
コードを書く作業そのものは数時間でも、前後の調整に数週間かかることがあります。
実作業時間をリードタイムで割ったプロセス効率は、外注依存の体制で数%程度に低迷するといわれます。また、開発の速さは、エンジニアの生産性に加えて組織間の調整コストで決まります。
内製化では、この見えない待ち時間を減らせるため、期間の短縮につながります。
内製化が短縮するリードタイムの実例
内製化後は、見積もり・稟議・発注の手続きを経ずに、社内での会話から開発や改修に着手できます。事例では、こうした待ち時間の短縮が数値に表れています。
- 製造業:機能追加にかかるリードタイムが、従来の5分の1になった。
- カインズ:外注していたWebアプリの脆弱性診断を専門ツールで内製化し、最大4週間短縮。
- 星野リゾート:コロナ禍に「三密回避IoTシステム」やGoToトラベル対応サイトを、自社主導で数日〜1ヶ月単位で公開した。
カインズの事例では、見積もりから発注までの契約事務手続きがなくなり、診断の待ち時間がゼロになったとされています。また、星野リゾートの事例は、同社が公表しています。
これらの事例は、外注の調整プロセスでは得にくい、内製化による時間面のメリットを示しています。
内製チーム立ち上げに要する助走期間
一方で、内製化の計画には立ち上げの助走期間も見込む必要があります。採用、育成、オンボーディングに時間がかかるため、初期は外注時より遅くなります。
- 採用人材の習熟:自社のシステムや業務、コード規約を覚えるまでに1〜2ヶ月以上かかる。
- 既存社員の育成:プログラミングやシステム設計を身につけるまで、少なくとも1年程度を要する。
- 成果と自走:社員主体の開発や迅速化は1〜2年、複数案件を並走する自走体制は3〜5年。
最初の半年から1年は、外部の伴走型パートナーと共同チームを組む方法があります。そのうえで、実プロジェクトを通じて経験を積み、立ち上げ期間を短縮します。
内製化プロジェクトの工程別スケジュール

内製化の工程は、要件定義・設計・開発・テスト・リリースを一直線に進める外注のウォーターフォール型とは、発想が異なります。
移行の頓挫を防ぐため、大規模な基幹システムからは始めず、現状把握、スモールスタート、反復開発の3段階で範囲を広げます。
現状把握・業務棚卸しフェーズ
最初に、手作業の非効率やボトルネックを業務フロー図などに描き出します。派手さはありませんが、対象の選定を誤らないための、最も重要な工程です。
競争優位に直結するコア領域と、業界共通の定型業務であるノンコア領域に分けます。顧客向けプロダクトやデータ基盤は内製し、経費精算や勤怠管理はSaaSの導入や外注に任せます。
この切り分けによって、限られた内製リソースを価値のある領域に集中できます。規模にもよりますが、数週間から1〜2ヶ月かけて丁寧に棚卸しすると、後工程の手戻りを防げます。
スモールスタートフェーズ
現状把握のあとは、失敗しても影響の小さい小規模な業務から始めます。Excel業務のアプリ化などを、ノーコード/ローコードツールで進めます。
- 成果を示す:短期間で目に見える結果を出し、内製化の意義を伝えて、予算や協力を得る。
- 知識を蓄える:小さな成功を重ね、自社のシステムや業務に関する理解をチームに残していく。
この段階では、数週間から数ヶ月の短いサイクルで業務改善アプリを完成させ、現場の利用とフィードバックにつなげます。
中堅製造業では、ローコードで現場主導のアプリを月3〜5本作り、外注時代より改善速度が5倍以上になりました。小売企業では、ノーコードで半年間に20本以上を店舗スタッフ主導で開発しました。
アジャイル・スクラムによる反復開発フェーズ
内製チームが立ち上がったら、アジャイル(スクラム)型で本格的な開発を進めます。設計、テスト、リリースまでを短いサイクルで繰り返します。
- 1〜4週間(通常は1〜2週間)のスプリントやイテレーションで、開発を区切って進める。
- 各スプリントの終わりに、動くソフトウェアをリリースする。
- 市場や現場の反応を受けて、次のスプリントで軌道修正する。
伴走型パートナーと新規事業やWebサービスを立ち上げる場合も、MVP(Minimum Viable Product)に絞ります。MVPは核となる最小限の機能構成で、伴走支援を受ければ概ね1.5ヶ月〜3ヶ月で初回リリースできます。
納期は、短い周期で価値を届け続けるリズムとして捉えます。1〜2週間単位で柔軟に方向転換できることが、内製化の競争優位につながります。
内製と外注の期間比較と開発手法の選択
同じシステムでも、内製か外注か、どの手法を選ぶかによって納期は変わります。内製化を前提にしたうえで、期間のメリットを大きくする選び方を押さえておきます。
フルスクラッチだけに頼らず、ノーコード/ローコードや伴走支援を組み合わせることで、内製の速さと現実的な納期を両立します。
ノーコード/ローコードによる超短納期化
ノーコード/ローコードは、プログラミングを不要または最小限にするツールで、内製の期間短縮に役立つ点が二つあります。
- 開発期間:内製で使えば、リードタイムを大幅に縮められる。
- 初期の導入:内製の初期でも、経験の浅い現場担当者が小さく始めやすい。
スクラッチ開発では、実装フェーズが全体工数の約3割を占めるといわれます。ツールを使えば、数ヶ月かかるアプリを数分から数日で開発・リリースできることもあります。
前の節で触れた製造業と小売企業の事例も、こうしたツールによる内製の成果です。ただし、複雑な業務ロジックや大規模なデータ処理では、ツールの制約に直面することがあります。対象業務の特性を見極めて使い分けます。
伴走型支援とハイブリッド体制での期間短縮
「すべてを自社だけで抱え込む100%自前主義」は、人材不足やガバナンスの欠如によって、失敗するケースが大半を占めます。
納期を守るには、外部の専門ベンダーを、自社エンジニアと組んで動く伴走型パートナーとして起用します。
- 技術移転:ペアプログラミングなどを通じて、技術やアジャイルの進め方を社内に移す。
- 領域分担:コア領域は内製し、ノンコア領域はSaaSや外注に任せる。
- 権利の確保:ソースコードや設計文書の権利を自社に残し、将来の改修速度も守れる契約にする。
こうした体制では、外部の知見を借りて試行錯誤の時間を減らし、開発の知識を社内に残せます。さらに、限られた人員を重要領域に集中でき、全体の納期も短縮できます。
ウォーターフォールとアジャイルの納期観の違い
外注の請負契約では、納期は契約で決めた一点の締切です。そのため、全機能をその日に向けて完成させるウォーターフォール型が前提になります。
- ウォーターフォール型:予算と納期は見通しやすい一方、仕様変更は再見積もりとなり、対応が遅れる。
- アジャイル型:納期を価値提供のリズムとして捉え、初回公開のあとも2週間ごとに改善を重ねる。
アジャイル型では、「いつ完成するか」よりも「いつ価値を提供し始められるか」を重視します。納期観の違いは、経営層や事業部門とあらかじめ共有しておきます。
「いつ全部できるのか」という問いに固執すると、アジャイルの良さを活かせず、内製のスピードを損なうことがあります。
内製化で納期を短縮する具体的な方法

内製の速度メリットを高めるには、MVPの段階リリース、現場参加による手戻り防止、CI/CDや自動化による高速化が有効です。
MVPによる段階リリースと初回納期の短縮
初回納期を縮めるには、機能の優先順位と、追加開発にかかる調整の負担を踏まえることが大切です。
- 内製チームは、MoSCoW法などでMust機能を選び、推奨機能を素早く外す。
- 核となる機能を公開し、現場や利用者の反応を確かめる。
- 反応を見ながら機能を段階的に広げ、内製であればスプリント単位で追加できる。
伴走支援を受けて新規サービスを立ち上げる場合でも、MVPなら概ね1.5ヶ月〜3ヶ月で初回リリースできます。全機能をフルスクラッチで作ると、数ヶ月から1年かかります。
外注では機能を追加するたびに契約の調整が必要になります。MVPなら、ビジネス価値の提供開始を大幅に前倒しできます。
現場の巻き込みによる手戻りの防止
納期が遅れる一因は、完成間際になって使えないと分かり、手戻りが起きることです。外注では発注者とベンダーの距離があるため、認識のずれが後になって判明しがちです。
一方、内製では、実際に使う現場の担当者を開発の初日から加えられます。これは、納期内に使われるシステムを届けるうえでの強みになります。
- 手戻りの防止:操作感やデータ整備の問題を早い段階で見つけ、大きな手戻りになる前に食い止める。
- 利用率の向上:「自分たちが作った」という意識が生まれ、本番稼働後も使い続けられる状態につながる。
たとえば、製造業の社内FAQ構築では、総務や経理の担当者がデータ整備に加わり、本番稼働後に95%以上の利用率を達成しました。
CI/CDと自動化による開発サイクルの高速化
短い周期でリリースを続けるには、開発・テスト・デプロイの自動化が欠かせません。
- CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー):コードのプッシュを起点に、テスト、ビルド、本番反映を自動で進める。
- 自動テスト:機能を追加するたびに既存機能の不具合を短時間で検証し、品質と速度を保つ。
人手でテストやデプロイを続けると、スプリントごとのリリースは難しくなります。特に、開発基盤への投資は自走の初期ほど効果が大きく、長期のリードタイム短縮につながります。
また、多くのノーコード/ローコードツールは、デプロイの自動化を備えています。スモールスタートの段階から、高速なリリースサイクルに慣れられます。
内製化初期の「初速の遅さ」と納期リスクへの対策

内製化では、立ち上げ初期の遅さに注意が必要です。
初速の遅さの正体と緩和策
初速が遅くなる主な原因は、採用、オンボーディング、育成に時間がかかることです。エンジニアの習熟には1〜2ヶ月以上、既存社員の育成には少なくとも1年程度を要します。
育成による遅れを抑えるには、立ち上げ期の外部支援と、習得しやすい業務からの経験づくりを組み合わせます。
- 伴走チーム:最初の半年から1年、パートナーと実務を通じて経験を積む。
- 主体の引き継ぎ:まずパートナーが主導して開発し、ペアプログラミングやレビューを通じて主体を社内に移す。
- 小規模な業務から開始:ノーコード/ローコードで成功体験を積み、初速の遅さを和らげる。
成果が見え始めるまで1〜2年、自走の定着まで3〜5年という計画を経営層に共有します。また、短期の遅さだけで判断を急がないことも大切です。
属人化による将来の納期リスクへの備え
少人数で開発すると、システムの構造が特定の担当者に依存する形になりがちです。その人が退職・休職・異動すると、保守や改修が止まるおそれがあります。
キーパーソンが抜けて外注に戻れば、内製の速さは失われてしまいます。そこで、誰が抜けても運用できるよう、次の二つの取り組みを進めます。
- 記録を残す:設計書や業務フロー図の作成を必須にする。
- 複数人で確認する:ペアプログラミングやコードレビューを業務に組み込む。
標準化は短期的に開発を遅く見せることもありますが、人の入れ替わりに耐える速度を保ち、納期の安定につながります。
中長期で加速する内製化のスケジュール観
内製化のスケジュールは、初年度の遅さと中長期の加速を合わせて考えます。外注依存の体制では、承認待ちや発注調整でプロセス効率が数%まで低迷するといわれます。
内製化で調整コストを減らすと、着手から2〜3年の中長期では、機能追加や改修が外注時代より速くなります。たとえば、製造業の事例では機能追加のリードタイムが5分の1になり、カインズでは最大4週間の短縮とされています。
この加速には、立ち上げ投資と標準化への継続的な取り組みが必要です。内製化の成否は、短期の納期だけで決めないようにします。
- 投資期間:〜1年。
- 成果が見え始める期間:1〜2年。
- 自走で加速する期間:3〜5年。
この時間軸を経営計画に含めることが、内製移行を成功させる鍵です。
まとめ
外注は要件定義からリリースまで半年から1年以上かかるのが一般的です。見積もり、稟議、発注の待ち時間によって、プロセス効率が数%に下がることもあります。
内製化は調整コストを減らします。製造業では機能追加のリードタイムが従来の5分の1になり、カインズでは脆弱性診断を最大4週間短縮しています。案件の期間と体制の移行期間は、分けて考えます。
立ち上げ初期は育成に時間がかかりますが、伴走型パートナーとの共同チーム、ノーコード/ローコードでの小規模な開始、標準化によって、初速を支えられます。
成果が見え始めるまで1〜2年、自走定着まで3〜5年を経営計画に含め、短期の遅さだけで判断しないことが内製移行の鍵です。移行計画に迷う場合は、伴走支援を提供するパートナーに相談します。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
