開発内製化のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

開発内製化でフルスクラッチを使うなら、競争力の核になる業務に絞り、定型業務はSaaSや外注に任せる形が現実的です。すべてを自前で作ろうとすると、限られた人材が分散し、肝心の核の業務に手が回らなくなるおそれがあります。

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内製化におけるフルスクラッチの位置づけ

コア領域の顧客向けプロダクトやデータ基盤と、ノンコア領域の経費精算や勤怠管理を左右に分けた図
競争優位との距離に応じて、内製する領域を切り分けます。

フルスクラッチ開発は、パッケージやテンプレートを使わず、ゼロから自社専用のシステムを構築する手法です。自由度が高い反面、初期投資やエンジニアの採用・維持費がかかります。

すべての業務を自前で作る100%自前主義は、人材不足やガバナンスの欠如で失敗するケースが大半です。そのため、内製する範囲は業務ごとに絞る必要があります。

現実的な進め方は、競争優位に直結する領域だけを内製し、それ以外はSaaSやパッケージ、外注に任せる形です。対象を絞ることが、内製化戦略の出発点になります。

コアとノンコアを切り分けるハイブリッド戦略

内製フルスクラッチを進めるには、業務を分けて考えることが欠かせません。競争優位に直結するコア業務と、業界共通のノンコア業務を分けておくことで、限られた内製リソースを価値の高い領域に集中できます。

  • コア領域:顧客向けプロダクトやデータ基盤などを内製する
  • ノンコア領域:経費精算や勤怠管理などをSaaSやパッケージに任せる

あるEC企業は、バックヤードの業務にSaaSを導入してリードタイムを短縮しました。一方で、顧客との接点になるECサイトのフロントは、microCMSなどを活用して内製しました。その結果、コンテンツページのアクセス数が30%増加しました。

競争力の源泉だけを内製し、それ以外を既製品で効率化する進め方は、内製化を現実的に進める王道といえます。

フルスクラッチとパッケージ・SaaS・ローコードの比較

内製化では、領域の特性に応じて開発手段を使い分けます。手段によって自由度や負担、カスタマイズの限界が違うためです。

  • フルスクラッチ:業務に完全に合う一方、開発・保守の負担が最も大きい
  • ローコード・ノーコード:自由度を保ちながら開発を速められる
  • パッケージ・SaaS:開発不要だが、細かなカスタマイズには限界がある

ローコードやノーコードは、ある程度の自由度を保ちつつ開発を大幅に速められます。そのため、内製化の初期や定型業務のアプリに適しています。

パッケージやSaaSは、開発が不要で、最新の機能とセキュリティを維持しやすい点が強みです。ただし、細かな調整には限界があります。

差別化が要らない定型業務はSaaSやノーコードで効率化し、独自仕様を頻繁に変える領域はフルスクラッチで内製します。成功の鍵は、一つの手段に固定しない柔軟さにあります。

「100%自前主義」への対策

経費精算や勤怠管理まで自社で開発すると、限られたリソースが浪費されて、肝心のコア業務が後回しになります。100%自前主義は、人材不足やガバナンスの欠如で失敗するケースが大半です。

  • コア領域:フルスクラッチで内製し、主導権を握る
  • ノンコア領域:SaaSや外注に任せる
  • 立ち上げ期:伴走型パートナーの支援を受ける

賢明な内製化には、自社で作るものと他者の力を借りるものを冷静に見極めることが欠かせません。技術選定や品質管理のガバナンスが効かないと、独りよがりのシステムが乱立します。

こうした役割分担によって、100%自前主義を避けながら、内製化を持続させられます。フルスクラッチは強力な手段ですが、すべての業務に当てはまる正解ではありません。

ポイント

業務を競争力に直結するかどうかで分け、コア領域だけをフルスクラッチで内製するのが目安です。定型業務はSaaSやパッケージ、外注に任せると、限られた内製リソースを集中できます。

フルスクラッチを内製で持つメリット

コア業務をフルスクラッチや独自アーキテクチャで内製する理由は、保守の自由度と、ベンダー依存からの脱却にあります。著作権の確保も含めて、3つのメリットを見ていきます。

アジャイルな保守自由度の獲得

内製フルスクラッチの強みは、改修を自社の意思と速度で進められることです。市場や顧客の変化に合わせて、仕様を柔軟に変えられます。

  • 外注保守:要件定義、見積もり、稟議、発注を経る
  • 内製保守:1〜2週間単位のスプリントで変更・リリースできる

外注では、小さな機能追加でも数週間から数ヶ月のリードタイムが生じます。そのため、顧客向けプロダクトの反応を見ながら素早く改善できるかどうかが、競合との差につながります。

パッケージやSaaSでは、提供元の機能追加を待つ必要があり、自社の都合で自由に変えられません。特に競争力に直結するシステムほど、内製による速度の差が大きな意味を持ちます。

自社の意思と速度でシステムを進化させ続けられる状態こそ、コア領域を内製化する本質的な価値です。

ベンダーロックインとブラックボックス化の回避

ベンダーロックインから抜け出せることも、フルスクラッチを内製で持つ大きなメリットです。コードや設計の主導権を握れば、改修の必要性や工数を自社で判断できます。

  • 丸投げのリスク:構造がブラックボックス化し、他社への移行も難しくなる
  • 内製の利点:サービス終了やベンダーの経営状況に左右されにくい
  • 中間コスト:外注費には平均30%以上の中間マージンが含まれるといわれる

ベンダーに保守も改修も頼る状態では、言い値の保守費を払い続ける構図から抜け出しにくくなります。内製は、自社の意思でシステムを存続させ、進化させる手段です。

この中間マージンは、日本特有の多重下請け構造に伴うものです。内製でフルスクラッチを持つと、こうした中間コストからも解放されます。

内製化の初期には、外部ベンダーの伴走支援を受けて開発するケースもあります。その際は、ソースコードと設計書の著作権の扱いを契約で定めておきます。

  • 契約条件:開発したコードと設計書の著作権を発注者へ移転する
  • 移転の時期・費用:プロジェクト終了時に無償で移転する

契約を怠ると、コードの権利がベンダー側に残り、依存が続く可能性があります。そのため、権利の移し方を契約の段階で取り決めて、主導権を守ります。

権利の確保は、内製の主導権を支える前提です。契約の段階で条件を固めておくことが、フルスクラッチ内製の価値を守ります。

ポイント

改修の速度と仕様を自社で決められるか、保守をベンダーに握られていないかを確かめるのが目安です。主導権を自社で持てているほど、内製の価値は大きくなります。

内製フルスクラッチの判断基準とコスト

内製フルスクラッチの適合度を検討する競争力・収益、ITリーダー、仕様変更の3観点を並べた図
3つの観点を自社の状況に照らして見比べます。

内製フルスクラッチは、判断基準とコスト構造の両面から検討します。コストを見るうえでは、TCO(総所有コスト)の考え方が役立ちます。

フルスクラッチを内製で行う判断基準

内製フルスクラッチの適合度は、競争力との関係、意思決定できる人材の有無、仕様変更の頻度で判断します。それぞれを自社の状況に照らして確かめます。

  • 競争力・収益:システムが自社の差別化や収益に直結するか
  • ITリーダー:要件をまとめ、社内で意思決定できる人がいるか
  • 仕様変更:ビジネス環境の変化に応じて頻繁な改修が必要か

競合との差別化につながる中核業務は、内製の価値があります。一方、どの企業でも同じ定型業務ならSaaSで十分で、仕様が安定している業務はパッケージの方が効率的です。

要件定義や技術選定、優先順位を決めるリーダーがいないと、開発が迷走しがちです。また、市場や顧客の変化に応じて素早く改修する必要がある領域では、内製の保守自由度が活きます。

3基準のすべてに近いほど、内製フルスクラッチへの適合度は高いといえます。

初期投資と中長期のTCO

初年度は、採用費や教育費がかさむため、外注より高くつくことがあります。しかし、TCO(総所有コスト)を2年目、3年目と中長期で見ると、状況は逆転します。

  • 初年度:人員確保と戦力化までの育成が費用になる
  • 2年目以降:中間マージンや改修ごとの契約コストを抑えられる
  • 調整コスト:見積もりや稟議に伴う待ち時間も削減できる

外注費には、平均30%以上の多重下請けによる中間マージンが含まれます。内製化後は、このマージンや改修ごとの契約費、調整コストが不要になります。

ある製造業企業では、内製チームの初年度は費用がかさみましたが、2年目以降は年間コストを約30%削減しました。立ち上げの初期を過ぎると、外注を上回る効率も期待できます。そのため、中長期のTCOで評価します。

フルスクラッチへの段階的な移行

大規模システムをいきなりゼロから作らず、段階的に進めることが成功の秘訣です。業務を洗い出すことから自走体制まで、順に取り組みます。

  1. 現状と業務を洗い出し、内製する業務を見極める
  2. ノーコードやローコードの小規模アプリでチームが経験を積む
  3. 競争力に直結するコア領域の開発を始める
  4. 伴走支援を受け、社内の自走体制へ移る

初期はパートナーが開発をリードし、ペアプログラミングやコードレビューを通じて、技術とアジャイル開発の型を社内に移します。段階を踏めば、頓挫を避けながら内製の地力を高められます。

フルスクラッチは、内製化の到達点の一つです。スモールスタートから積み上げることで、無理なく移行できます。

ポイント

初年度の投資だけでなく、2年目以降の中間マージンや改修ごとの契約費、調整コストまで含めた中長期のTCOで比べるのが目安です。

属人化リスクと失敗回避のポイント

属人化対策として設計書、業務フロー図、コードレビュー、ペアプログラミングを並べた4パネル図
記録を残す方法と複数人で確かめる方法が並びます。

独自システムは、特定の人しか中身を理解できない状態になりやすく、放置すると深刻な事態を招きます。失敗事例と、それに対する対策を合わせて押さえておきます。

属人化が招いた失敗事例

属人化の怖さを示す事例として、製造業N社では、エンジニアが業務の合間にGoogle Apps Script(GAS)で見積管理システムを開発しました。当初は、現場に合う仕組みでした。

設計書もマニュアルも一切残さなかったため、担当者の異動後は誰も触れないブラックボックスになりました。改修も保守もできなくなり、莫大なコストをかけて外部のSIerに再開発を依頼しました。

この事例は、自由度の高さが、ドキュメント不在と一人への依存によって負債に変わることを示しています。内製フルスクラッチも、対策を怠れば外注以上のリスクを抱えることになります。

ドキュメント化とチーム開発による属人化対策

属人化を防ぐ第一の対策は、ドキュメント化の徹底と仕組み化です。記録を残し、複数人で開発することで、担当者が変わっても中身を追える状態を保ちます。

  • ドキュメント化:設計書や業務フロー図を残す
  • チーム開発:コードレビューやペアプログラミングを組み込む

業務フロー図は、Mermaid.jsなどで記述できます。また、ドキュメント作成を必須ルールにして、本人がいなくても他のメンバーが中身を理解できる状態を維持します。

内製の自由度と引き換えに、属人化のリスクも引き受けることになります。速度や機能だけに偏らず、標準化とチーム開発を最初から組み込むことが成功の条件です。

内製フルスクラッチを成功させるポイント

内製の自由度を活かすには、対象・体制・コスト・リスクの4点を、着手前に決めておく必要があります。

  • 対象:競争力に直結するコア領域に絞る
  • 体制:ITリーダーを立て、頻繁な仕様変更に対応する
  • コスト:中長期のTCOで評価する
  • リスク:ドキュメント化とチーム開発で属人化を防ぐ

製造業では2年目以降に年間コストを約30%削減し、EC企業ではフロントを内製化してアクセスが30%増えた事例があります。いずれも、基本を押さえた取り組みです。

適切な対象選定とリスク管理を伴えば、フルスクラッチ内製は競争力を自ら磨く選択肢になります。導入の際は、伴走支援を提供するパートナーに相談し、コア領域とリスク管理を含む計画を描きます。

ポイント

内製する業務ごとに、設計書などの記録をどう残すか、複数人でどう開発するかを決めておくのが目安です。対策を怠ると、外注以上のリスクを抱えます。

まとめ

フルスクラッチ内製では、コア業務に対象を絞り、ノンコア業務はSaaSや外注に任せる形が現実的です。得られる主な利点は、保守の自由度とロックイン回避です。

判断では、競争力、ITリーダーの有無、仕様変更の頻度を見ます。初年度の投資だけでなく、中間マージンや調整費用まで含めた中長期のTCOで比べます。

属人化を防ぐには、ドキュメント化とコードレビューなどのチーム開発が欠かせません。また、伴走開発では、コードと設計書の著作権を自社へ移転する条件を契約に記載します。

導入を検討する際は、伴走支援を提供するパートナーに相談し、コア領域の見極めとリスク管理を含む計画を描きましょう。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。