フルスクラッチ・オーダーメイド開発では、独自の要件や規模に応じて最小5名程度から体制を組みます。
自社業務に合わせて作れる一方、難易度と投入リソースは大きくなります。体制の規模、PMO、属人化、発注側の統制の4点から、立ち上げ時や大規模開発を見直す判断軸を示します。
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フルスクラッチ開発と体制設計の関係
フルスクラッチは、既製品で済むパッケージ導入やノーコード開発と比べて、必要な体制の重さが根本から違います。企画・設計・開発・品質保証・インフラまで幅広い工程を担うため、期間も長くなります。
フルスクラッチが体制規模を大きくする理由
既製品が担ってくれる機能も、フルスクラッチでは自前で設計・実装しなければなりません。データベースや画面の挙動、外部システムとの連携まで一から作り込むため、体制も大きくなります。
- ノーコード:企画・開発1名とデザイン補助1名の計2名で進めるケースもあります。
- フルスクラッチ:企画1名、デザイン1名、開発3名の計5名程度が、最小規模の目安になります。
- 役割配置:専門領域ごとに担当を分け、要件定義や品質確認、基盤などを受け持ちます。
ノーコードは提供されている機能を使うため、設計や実装を省いて、期間とコストを抑えられる場合があります。その差は人数だけでなく、必要な専門領域の広さにも表れます。
フルスクラッチを選ぶ場合は、開発を進める側が、それに見合う体制を組む必要があります。
体制設計による成否の分かれ目
フルスクラッチは長期にわたるため、体制設計の良し悪しは時間をかけて表れます。1年以上の開発では、役割分担や管理の不備が手戻り、品質低下、進捗遅延となって積み重なります。
短期の開発であれば、多少の体制の歪みは勢いで乗り切れる場合があります。
- 全体把握:複雑化しても、誰も全体像を見失わない状態をつくります。
- 管理体制:初期から品質・進捗・リスクを管理し、規模に応じて発注側の統制も設けます。
- 属人化対策:特定のメンバーやベンダーが抜けても、開発を続けられる仕組み。
長期かつ大規模になるほど、体制を組んで統制する設計が成否を左右します。体制が小さすぎれば作り切れず、大きすぎれば管理コストがかさみます。さらに、属人化すると保守の段階でブラックボックス化します。
体制設計を怠ると、自社専用に作ったシステムでも維持や改修が難しくなり、お荷物になるおそれがあります。
フルスクラッチに必要な体制規模とスケール

規模と構造は、開発の段階に応じて変えていきます。最初から大人数を揃えず、まずは最小の体制から始めて、専任化へ進み、大規模になった段階でチームを分けます。
最小5名から始まるフルスクラッチ体制
最小規模の目安は、企画1名、デザイン1名、開発3名の計5名程度です。人数だけでなく、それぞれが違う専門を受け持つ点が特徴です。
- 企画:要件とビジネス目的を定義します。
- デザイン:画面と利用体験を設計します。
- 開発:複数人で機能を実装します。
ノーコードの2名体制と比べると、人数は2倍以上で、専門領域にも大きな差があります。検証フェーズの3人以下の体制のように、人数を極限まで絞ることはできません。
立ち上げ期は役割の境界を柔軟にし、開発者が設計や実装、簡易テストを兼ねることで速度を確保できます。最小5名は、幅広い専門性を最低限カバーできるラインです。この体制を起点に、開発の進み具合や要件の広がりに応じて、段階的に広げていきます。
スケールに応じた専任化とサブチーム分割
中規模の5人以上10人未満、大規模の10人以上へ拡大すると、兼務中心の体制から、専門職を専任で置く体制へ移ります。PMやSE、PGなどの役割を専任化します。
- 専門部隊:品質保証や基盤を担うQA・インフラを独立させます。
- 共通ルール:API仕様や設計ルールを共有し、統一します。
- 分割統治:大規模時は4〜8名程度のサブチームに分け、各チームにリーダーを置きます。
サブチームには裁量を持たせ、リーダー同士の連携で全体の整合性を保ちます。ただし、人数を増やしても、速度が比例して上がるわけではありません。
人数が増えるとともに、コミュニケーションの経路は急増します。そのため、分割と権限委譲がなければ、増員がかえって混乱や遅延を生みます。規模に応じて専任化と分割を進めることが、破綻を防ぐ鍵になります。
長期開発を支える品質・進捗・リスク管理体制

長期のフルスクラッチ開発では、品質・進捗・リスクを継続して管理する専門の体制が、安定した運営を支えます。現場リーダーだけに任せると、規模が大きくなるにつれて管理が行き届かなくなります。
PMOの3機能による長期開発の統制
中〜大規模(おおむね10名〜30名以上)では、専任のPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設けて管理を強化するのが定石です。PMOは、次の三つの機能を担います。
- 支援:PMやPLを支え、レポート作成や会議運営を補助します。
- 統制:標準プロセスや品質ゲートを定め、リスクを継続して監視する役割です。
- 指導:ベストプラクティスを広め、メンバーの育成やツール教育に当たります。
三機能がそろうことで、品質・進捗・リスクを一貫して管理できます。とくに統制機能は、複雑化するなかで品質基準が緩んだり、リスクが見過ごされたりするのを防ぎます。
PMOには、プロセスと品質を統制する権限を持たせることが大切です。規模が大きくなるほど、現場の努力だけに頼らず、専門の体制を組み込んでおく必要があります。
定量品質管理と三権分立の事例
品質管理体制の事例では、役割の分離、品質メトリクス、全社PMOによる集約が行われています。
- 情報技術開発:営業、製造、プロジェクト管理を分ける三権分立を構築しました。
- NECシステムテクノロジー:品質メトリクスで数値を管理する仕組みを導入しました。
- 日立ソフトウェアエンジニアリング:全社PMOが各プロジェクトの進捗とリスクを監視・評価する体制を整えました。
情報技術開発では、社内標準を適用し、工程別・月次で、SQA(品質保証担当)と有識者が厳格にレビューします。さらに、開発と営業の上位管理職も加わってリスクと課題を指導し、予防管理で赤字プロジェクトの撲滅に成功しました。
NECシステムテクノロジーは、バグ摘出率やレビュー工数比率などを測定しました。計画値との差が限界を超えると、自動でアラームが出る仕組みです。
この制度により、5年間で年間のバグ受付数を約40%減らしました。さらに、納期遅れも3年間で約30%改善したと報告されています。
NECシステムテクノロジーは、プロジェクトごとに異なっていた管理手法を、全社共通の管理ツールへ段階的に集約しました。
これらの事例では、品質と進捗を定量的に測り、統制する仕組みが結果を支えています。長期開発では、管理体制の有無が結果の差になります。
ベンダーロックイン・属人化を回避する体制
仕様が特定のベンダーや個人にしか分からない状態、つまりブラックボックス化は、ベンダーロックインにつながります。長期開発では、改修や保守が特定の相手に依存し、発注側が主導権を失うおそれがあります。
ペア・モブプログラミングによる暗黙知の分散
そこで、ペアやモブプログラミングを開発プロセスの中心的な業務として組み込みます。文書に残しても、設計判断の背景や実装の勘所といった暗黙知は個人に残りがちです。
- 複数人で実装:設計・実装・レビューを同時に進め、暗黙知を共有します。
- 発注側も参加:発注側とベンダー側が組み、発注側にもノウハウが蓄積されます。
- 継続して実施:知識をチームに分散させ、担当者の離職やベンダー変更に備えておきます。
誰かが抜けても回る冗長性を、日常業務に織り込んでおくことが属人化対策の要点です。ペア・モブプログラミングは、その仕組みとして長期開発で効果を発揮します。
内製化と体制移行によるロックイン対策
開発の核を内製化して、外部への依存を計画的に減らす方法があります。すべてを外部に任せると、システムの全貌を理解しているのがベンダーだけになり、改修のたびに高額な見積もりを受け入れる状況になり得ます。
- 意思決定:「何を作るか」を決めるPdMや、重要なアーキテクチャ判断を発注側が握ります。
- 混成体制:実装は外部に依頼しつつ、ノウハウを社内へ移していきます。
- 段階的な移行:外部主導で始め、ペア開発や文書共有で理解を深めながら、内製比率を高めます。
内製化は段階を踏み、ノウハウの移植にかかる移行コストを計画的に払いながら進めます。コアを自社で持つという役割分担が、長期の主導権を支えます。
発注側に必要な体制とガバナンス

外部の体制で開発する場合も、発注側には果たすべき役割とガバナンスがあります。それが欠けると、自社の目的から外れたシステムになったり、ベンダーに主導権を奪われたりします。
発注側が持つ受入基準と変更管理ルール
外部に委託する場合でも、成果を鵜呑みにせず、受入基準と変更管理を文書にして明確にしておきます。たとえば、「何をもって完成とするか」を定める受入基準(Definition of Done)は、事前に決めておきます。
基準がないと、成果物を客観的に評価できず、期待とのずれをめぐって争いになりがちです。長期開発では仕様変更が起きやすいため、変更要求の扱いも決めておく必要があります。
- 受付:変更要求を受ける担当者。
- 影響調査:影響範囲を調べる担当者。
- 承認と実施:承認する人と実施する人。
口頭での小さな追加が積み重なると、予算とスケジュールを圧迫していきます。だからこそ、受入基準と変更管理を発注側が持つことが、成果と進捗を管理する土台になります。
ワンチーム体制による丸投げの回避
発注側が陥りやすい失敗は、ベンダーへの丸投げです。「専門家に任せれば安心」と関与をやめてしまうと、課題から外れ、仕様もベンダーだけが把握する状態になり得ます。
- 発注側:PdMなどが、ビジネス目的や要件を定義します。
- ベンダー側:実装を担う実務部隊。
- 共同作業:同じ場で議論し、情報を共有して認識のずれを早期に直します。
自社のビジネスを最もよく理解しているのは発注側です。だからこそ、プロダクトの意思決定は発注側が握り続けるべきです。「何を解決し、何を作るか」の判断を、外部に丸投げしてはいけません。
発注側とベンダー側を分けず、共通の目的に向かうワンチームとして協働する体制をつくることが、システムを自社にとって価値あるものにします。
まとめ
フルスクラッチ・オーダーメイド開発の体制設計を、規模、管理、属人化、発注側の4つの視点から整理しました。
ゼロから作るため、ノーコードの2名体制に対して最小5名規模が目安になります。開発の進展に合わせて、専任化とサブチームへの分割を進めます。
長期開発では、PMOの支援・統制・指導によって品質・進捗・リスクを管理します。定量品質管理や三権分立などの仕組みも、その管理を支えます。
ペア・モブプログラミングで知識を分散し、内製化を段階的に進めると、属人化やベンダーロックインを避けやすくなります。
発注側は受入基準と変更管理ルールを持ち、ベンダーと協働して丸投げを防ぎます。これが、システムを自社にとって価値あるものにする条件です。
長期にわたって品質を保ち、誰かが抜けても回り、発注側が主導権を保つ体制が、成否を左右します。
検討の際は、必要な体制規模と管理・ガバナンスの仕組みを描き出すことから始めます。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
