開発チーム構築のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

フルスクラッチ開発のチーム構築は、必要な職種を揃え、社内の人材と外部人材を組み合わせ、規模に応じてチームを分割して進めます。

標準製品より自由度と競争優位性が高い一方で、それを支えるチームの総合力が必要です。成否は、技術や予算以上にチーム構築にかかります。

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開発チーム構築とフルスクラッチ・オーダーメイド開発の全体像

フルスクラッチ開発でチームに求められる4つの観点を並べた図解。
設計から統括までを支える観点が並びます。

フルスクラッチ開発は出来合いの部品を組み合わせず、要件に合わせて一から作ります。

期間は1年以上、人数は数十名規模に及ぶこともあります。

設定中心のパッケージ導入と違って、何を作るかも自分たちで決めます。そのため、ビジネスを理解する意思決定者と幅広い専門人材が必要になります。

長期・大規模という特性は、チーム構築に固有の課題をもたらします。まず、なぜ重厚なチームが必要なのかを見ていきます。

フルスクラッチが重厚なチームを必要とする理由

パッケージやSaaSなら、ベンダーの機能や設計思想を利用できます。一方、フルスクラッチでは幅広い領域を自分たちで設計するため、専門性が求められます。

  • 設計範囲:アーキテクチャ、データベース、UI、インフラ、セキュリティのすべてを自分たちで設計する
  • 判断の専門性:一つの誤った選択が、後工程で大きな手戻りを招く
  • 変化への対応:要件も技術も変わり続けるなかで、品質を保つ
  • チームの力:作る力に加え、決める力と束ねる力を備える

品質を保つには、各領域の専門家と、全体を統括するマネジメント層が必要です。

長期戦を見据えたチーム設計が前提

フルスクラッチ開発は、リリースまで1年以上かかり、保守や改善も含めると数年単位になります。この時間軸を前提にしなければ、途中で立ち行かなくなります。

持続可能なチームにするには、長く走り続けられる仕組みを体制に組み込みます。

  • 属人化を防ぐ:特定の個人に頼りきらず冗長性を持たせ、交代に備えて文書とナレッジを共有する
  • 継続的な運営:意欲と品質を長く保つマネジメント構造を、早い段階から持たせる
  • 将来の健全性:1年後、2年後もチームが健全に機能するかを考える

長期開発では、一気に作り切る体制より、マラソンのように走り続けられる体制を設計することが重要です。

ポイント

期間と人数の規模が大きいぶん、迷ったときは、1年後、2年後もチームが健全に機能するかを基準に体制を選びます。属人化を防ぐ視点も、その基準に含めます。

フルスクラッチが要求するチームの規模感と職種網羅性

特定の職種に限らず、開発に必要な職種をフルラインで揃えます。

各職種の責務と、専門部隊として独立させる領域も確認します。

フルラインで揃えるべき職種

フルスクラッチで揃える職種は多岐にわたります。作るものを決める役割と、設計・実装・品質を担う役割が連携して進めます。

  • PM:プロジェクト全体を統括する
  • アーキテクト:システム全体の構造を設計する
  • フロントエンド・バックエンド:画面とサーバー側の処理を実装する
  • インフラエンジニア・QA・UI/UXデザイナー:基盤、品質、使いやすさを担う
  • PdM(プロダクトマネージャー)またはプロダクトオーナー:作るべきもの(What)と優先順位を決める

職種をフルラインで揃えることで、独自システムをゼロから作る体制が整います。

フルスクラッチは、作るべきものを決めるところから始まります。そのため、ビジネス目的と優先順位を判断するPdMなどの役割が欠かせません。

役割の境界が曖昧なままだと、全体設計の責任者が決まらないまま各部分が個別に実装され、後で統合できなくなる恐れがあります。

QA・インフラ・セキュリティは専門部隊として独立

大規模開発では、QA・インフラ・セキュリティを横断する専門部隊として機能させます。

  • QA(品質保証):テストを直前にまとめず、初期に仕様を確認して重大な欠陥を早期に見つける。単体から受け入れまで体系的にテストする
  • インフラ・セキュリティ:可用性・性能・安全性を支える共通の土台を担う

各チームに任せきりにすると基準がばらつき、全体の品質や安全性を担保できなくなります。

職種を揃えたうえで、一定規模を超えたら横断する専任部隊を置きます。この部隊が長期開発の品質基準を保ち、共通基盤と基準を各チームに提供します。

ポイント

判断の目安は、全体設計の責任者が決まっているかどうかです。その人がいれば、各職種が部分ごとに最適化されて統合できなくなる事態を減らせます。

内製の壁と混成(ハイブリッド)という現実解

混成体制における社内の判断と中核設計、外部の実装、チーム連携を示す3つのパネル。
判断を社内に残し、実装力を組み合わせる形です。

必要な職種をすべて自社の正社員で賄うのが理想です。しかし、採用やリソース確保には壁があります。

まず内製の難しさを見たうえで、広く採られる現実解である混成体制を確認します。

内製でフルラインを揃える難しさ

必要な役割をすべて内製で揃えるのは容易ではありません。特に人材確保と意思決定の担い手に注意が必要です。

  • PdM:目的と優先順位を決めるため、社内の人材か深く関与するパートナーが担う
  • 意思決定:外部に丸投げすると、自社の目的から外れるリスクがある
  • リーダー・シニア人材:高度なスキルを持つPM・PLや経験5〜10年以上の開発者は別案件に配属済みの場合が多く、確保が難しい
  • 人材の姿勢:経験年数だけでなく、AIツールを面白がり、ビジネスの成功に関心を持つ姿勢が現場で強く求められる
  • 採用の難しさ:IT人材不足の中、必要な人数を必要な時期に揃えるのは難しい

「コアは内製、手足は外注」のワンチーム体制

人材確保が難しい場合は、成功確率の高い現実解として、コアを内製し、手足となる実装を外注する混成体制を取ります。

  • 自社が担う領域:PdMの判断と中核アーキテクチャの設計
  • 外部に委託する領域:不足する実装をフリーランスや受託・ラボ型の開発会社に依頼
  • 連携方法:「仕様書通りに作る」と切り離さず、Slackなどで常時接続し、一つのチームとして密に連携する

長期・大規模の開発を外部任せにすると、目的のずれや品質のばらつきを招きます。こうした連携によって仕様の認識ずれを減らし、アジャイルな変更要求にも対応できます。

自社が手綱を握ったうえで外部の実装力を取り込む方法が、現実的で堅実です。

ポイント

判断の目安は、社内でPdMの判断と中核設計を担えるかどうかです。足りない実装力は外部から補い、一つのチームとして連携できるかで決めます。

スケール時のチーム分割とチームトポロジー

チームトポロジーの4タイプを同じ階層で配置した図解。
各タイプが異なる役割を担い、開発体制を支えます。

開発が長期化して人数が増えると、一つの大きな集団の一括管理には限界があります。そこで、分割の考え方と、その指針となるチームトポロジーを紹介します。

4〜8名のサブチームへの分割と大規模体制例

開発が長期化し30名を超える規模では、一括管理を避け、4〜8名のサブチームに専任リーダーを置く構造が有効です。

  • サブチーム:30名超では4〜8名程度に分け、専任リーダーを置く
  • 統括・PMO:PM(1名)の下でPMO(3〜5名)が進捗・リスク、標準、品質を管理する
  • 中間管理:サブPMやプログラムマネージャーを2〜3名置く
  • 開発チーム:機能・モジュール別に分け、PL(5〜10名)とメンバー(30名以上)を配置する
  • 会議体:月次のステアリングコミッティ、週次のPM会議・チーム定例など4階層で連携する

大規模開発の成否を分けるのは、人数の多さよりも、自律する小チームと、それらを束ねる構造です。

チームトポロジーの4タイプという考え方

チームトポロジー(Team Topologies)は近年広く参照されます。一般的な定義では、組織のチーム編成を四つの基本タイプに整理する枠組みで、大規模開発の体制設計にも役立ちます。

  • ストリームアラインドチーム:機能やサービスの価値の流れに沿って自律的に開発する
  • プラットフォームチーム:共通基盤やツールを提供し、開発チームを支える
  • イネイブリングチーム:技術やノウハウを他チームに移植し、能力を底上げする支援役
  • コンプリケイテッド・サブシステムチーム:高度な専門性が必要な複雑な領域を担う

たとえば、モジュール単位に分割した開発チームはストリームアラインドに当たります。インフラ専任部隊は、プラットフォームに近い存在です。

類型を使うと、各チームの責任範囲や支え合い方を整理できます。また、機能横断型を基本に、プラットフォームチームを加えるSpotifyモデル型もあります。

ポイント

30名を超えるときは、一括管理をやめて4〜8名のサブチームに分け、それらを束ねる構造を設けるかで判断します。

フルスクラッチ特有のチームマネジメント注意点

長期開発では、チームマネジメントが品質と継続性を左右します。陥りやすい問題と、その対策を見ていきます。

属人化の排除とナレッジの分散

長期開発で深刻なリスクとなるのが属人化です。特定の天才的な個人(英雄崇拝)への依存や、コードを書いた人だけが仕様を知る状態は、引き継ぎや保守を脅かします。

  • 引き継ぎへの備え:メンバー交代は避けられず、キーパーソンの離脱で開発が止まる事態を防ぐ
  • 形式知の共有:社内Wikiなどで知識を文書化する
  • 暗黙知の共有:ペアやモブプログラミングを定常化し、設計意図をリアルタイムにチーム全体へ分散する

一人で抱え込ませず、複数人で知識を共有することが、長期戦を支える基礎体力になります。短期的には効率が落ちるように見えても、持続可能性を高める投資です。

RACIによる責任分界点の明確化

意思決定の所在が曖昧だと、判断が進まず、問題が起きたときに責任を押し付け合って、プロジェクト全体が停滞します。

  • RACIの役割:マトリクスで実行責任・説明責任・相談先・報告先を整理し、各タスクの関与者も明文化する
  • 最終責任者:各決定事項の説明責任者は必ず1名だけとする。複数いると判断が止まりやすい
  • 設計書:報告用に作り込まず、思考共有と合意形成に必要な範囲にとどめる
  • 設計と実装:長期開発では、両者を密に行き来させる

責任の所在と意思決定の流れを定めることで、複雑な体制が機能します。

ポイント

判断の目安は、特定の個人が抜けても開発が止まらないかどうかです。説明責任者が1名に決まっているかも、あわせて押さえます。

まとめ

開発チーム構築の視点から、フルスクラッチに必要なチームの作り方を解説しました。

フルスクラッチの成否は、技術や予算以上にチーム設計にかかっています。長期・大規模化を見据えた体制が欠かせません。

PMやアーキテクトなど必要な職種を揃え、QA・インフラ・セキュリティは横断部隊として支えます。

すべての職種を内製で揃えるのは採用の壁が高いため、コアを内製し、実装を外注するワンチーム型の混成体制が現実的です。PdMの判断と中核設計は社内に残し、実装は外部から補います。Slackなどで常時接続し、密に連携します。

30名を超える規模では、4〜8名のサブチームに分割し、専任リーダーを置きます。

チームトポロジーの類型を使い、各チームの責任範囲を整理します。

属人化を防いで知識を分散し、RACIで説明責任者を1名に絞ることも重要です。

自社のプロダクトを長く健全に育てられるチームづくりを検討しましょう。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。