開発チーム構築の保守・運用費用・ランニングコストについて

開発チームの保守・運用費は、月額数万円から600万円程度まで幅があります。その差を生むのは、チームの組み方(内製・受託・ラボ型)、規模、改善の頻度です。

3年・5年で見ると、この違いが総支出を左右します。個別の契約ではなく、方式別の費用とTCO(総保有コスト)、中長期の判断の軸を取り上げます。

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開発チーム構築と保守・運用費用の全体像

保守・運用費用は、サーバー代やライセンス費などのインフラコストと、チームを維持する人件費の二つに分けて捉えると見通しが立ちます。インフラ費用は比較的見積もりやすいものの、ランニングコストの大半は人的コストです。

人的コストは、チームの組成方法によって固定費にも変動費にもなります。一方で、初期開発費だけで業者やプランを選ぶと、リリース後に想定外の費用が出て、プロダクトの継続が難しくなる場合があります。

ランニングコストの大半は人件費

システム開発・運用のランニングコストは、その大半が人件費で成り立っています。一方、インフラ費やSaaSのライセンス費は、月数万円〜数十万円規模で予測を立てやすい費用です。

改善や保守を担うエンジニア・PM・QAの人材を確保し続ける費用は、インフラ費などの数倍から数十倍に達することも珍しくありません。

  • 内製:正社員の稼働量に関係なく、毎月の人件費が固定費として積み上がる形。
  • 受託・ラボ型:必要な時期に必要な分だけ契約し、人件費を変動費として扱える余地がある。

ランニングコストを左右するのは、どんなチームを、どの規模と契約形態で維持するかです。まず、人件費が主役だという前提を社内で共有しておくことが大切です。

固定費と変動費の分かれ目

固定費と変動費の性格は、チームの作り方によって変わります。そのため、プロダクトの状況に合わせて比べることが欠かせません。

  • 100%内製:人件費・設備費が固定費になります。改善が多い時期は割安でも、業務が減った後や退職後にも、費用と採用のリスクが残ります。
  • 受託・ラボ型:人件費を変動費として扱い、繁忙期は増員、閑散期は縮小できる形。

変動費型では、ベンダーとの仕様合意や稟議、調整に伴う「見えないコスト」が上乗せされます。

どちらが得かは一概に言えず、改善頻度や事業の継続性、社内に残したいノウハウの量によって答えが変わります。固定費と変動費のバランスから考えることが大切です。

ポイント

インフラ費だけを見て予算を組むと、人件費の分が抜け落ちるおそれがあります。内製か受託か、どの方式で人を確保するのかを先に決めておくと、判断の軸がぶれにくくなります。

チーム維持コストの内訳

内製チーム、受託保守、ラボ型の維持費相場を3つのパネルで示した図解。
契約方式によって、月額・年額・人月単価の見方が変わります。

チームの作り方ごとの維持費を、具体的な金額で見ていきます。ただし、金額は規模や地域、スキルレベルによって変わるため、判断の出発点となる相場として捉えてください。

内製チームの月額維持費は400万〜600万円が目安

内製チームの費用には、給与のほか、法定福利費(社会保険料の会社負担分)や採用費が含まれます。そのほか、PCやソフトウェアライセンス、オフィス関連費もかかります。

  • 月額・年額:PM・エンジニア・QAなど4〜5名の体制で、毎月400万〜600万円、1年で5,000万〜7,000万円の投資です。
  • 内製の価値:常駐エンジニアがいることで、障害時にすぐ動ける即応性や知識の蓄積など、金額に換算しにくい効果が得られます。

内製チームの維持費は、開発や改善の作業量が少ない月やリリース後の安定運用期にも発生します。そのため、人材を抱える固定費として見込んでおくことが大切です。

受託保守は初期開発費の年10〜15%が相場

受託保守の費用は、契約範囲と追加改修の費用、中間マージンに分けて見ると、内訳が把握しやすくなります。

  • 契約範囲・相場:バグ対応、監視、軽微な修正が対象です。相場は初期開発費の年10〜15%で、月額にすると約1%です。
  • 費用例:初期開発費が1,000万円なら、月額は10万円前後です。
  • 追加改修:機能追加などは保守の範囲外となり、その都度、見積もりと契約が必要になります。
  • 中間マージン:受託開発費の平均30%以上を、多重下請けが占める構造も指摘されています。

保守契約は、固定的な人材を抱えるより安く見えます。ただし、支払った額がすべて実装に回るわけではない点に注意が必要です。

改善頻度が低く安定運用が中心であれば向いていますが、継続的な改修が続くと割高になりやすいため、追加費用を踏まえて選ぶことが大切です。

ラボ型の人月単価は国内80〜120万円・オフショア30〜50万円

ラボ型は、月額固定で専属チームを確保する契約です。国内外の単価や追加費用、契約の中でできる改善の範囲を比べる必要があります。

  • 国内単価:SIerやSES企業の場合、1人月(エンジニア1人が1ヶ月稼働する単位)で80万〜120万円程度です。
  • オフショア単価:ベトナム・フィリピンなどでは1人月30万〜50万円で、国内の2分の1〜3分の1程度です。
  • 追加費用・プラン:ブリッジSEが必要になります。コード実装を含むアジャイルプランは月額300万円からです。
  • 伴走支援:コンサルティングを伴う場合は、月額100万〜数百万円規模になります。

契約期間内であれば、追加費用や再契約なしで改善タスクを進められます。そのため、受託保守の都度見積もりを避けつつ、内製の固定費リスクも抑えられる選択肢です。

ポイント

金額は規模や地域、スキルレベルで変わるため、見積もりを比べる際は前提条件を揃えて読むことが欠かせません。内製と受託、ラボ型の金額を並べるなら、チーム人数と稼働月数もそろえてください。

組成方法別のランニングコスト比較

採用(内製)、委託(受託保守)、ラボ型の向き不向きを3枚のカードで並べた図解。
改善の続け方や社内に残すノウハウが選択の手掛かりになります。

採用(内製)、委託(受託)、ラボ型の使い分けを比べます。どの方式が一律に安いとは言えず、プロダクトの性格や事業フェーズによって最適な方式は変わります。

採用・委託・ラボの使い分け

方式ごとの向き不向きは、改善頻度、固定費をどこまで許容できるか、社内にノウハウを蓄積する必要性で見極めます。

  • 採用(内製):事業の中核で継続改善し、ノウハウを社内に蓄積したい場合。
  • 委託(受託保守):安定運用が中心で、改善頻度が低い場合。
  • ラボ型:継続的に育てたいが、採用リスクや固定費を避けたい場合。

内製は固定費が高くても、長い目で見れば外注マージンや都度の契約費用が不要になり、安定した体制が築けます。一方、受託保守は改善が少ないほど割安ですが、頻繁に改修すると追加見積もりが積み上がります。

ラボ型は、月額で専属チームを確保しつつ、契約の調整で増減できる柔軟性があります。さらに、各方式は択一ではありません。コア機能を内製し、特定の領域はラボ型、安定した領域は受託保守に任せる組み合わせも現実的です。

見えないコスト(中間マージン・調整コスト)

見積書に載る費用と、運用の中で生じる見えないコストを分けて捉えます。

  • 中間マージン:受託型では、多重下請けが開発費の平均30%超を占めます。
  • 調整・協調コスト:仕様の合意や稟議の待ち時間、連絡のロスが、担当者の工数や判断の遅れにつながります。
  • 内製・混成チーム:調整費を圧縮できるため、月額は割高でも、合計では効率的になる場合があります。

費用の数字だけでなく、表に出ない調整コストも含めて比べることが大切です。そのうえで、自社の意思決定のスピードや社内のリソースも評価に加えてください。

ポイント

一律に安い方式はないため、改善頻度と固定費をどこまで許容できるかを基準に方式を選びます。ラボ型や伴走を組み合わせる選択肢も、比較の対象に入れておくとよいでしょう。

内製化によるコスト最適化

初期支援から共同運営を経て段階移行へ進む内製化の流れを示した図解。
外部支援を受けながら、運営の主体が社内へ移っていきます。

中長期のランニングコストを抑える方法の一つが、委託から内製への移行です。内製は一見高コストに見えても、時間軸を長く取ると評価が逆転することがあります。具体的な事例で、コストの変化を確認します。

初年度は割高、2年目以降に約30%削減の事例

初年度の投資負担と、複数年にわたる削減の実績は、分けて確認します。

  • 初年度:採用・育成費やツール導入の初期投資がかさみ、外注より高額になるケースが大半です。
  • 製造業の事例:5名で内製化し、初年度は高額になったものの、2年目以降は年間費用を約30%削減しました。
  • 星野リゾートの事例:外部の伴走支援を受けてAWS保守を内製化し、AWS利用費を29%削減しました。

内製化により、外注費に含まれる30%の中間マージンや、追加改修のたびの契約費用が不要になり、削減につながる場合があります。そのため、内製化は単年度ではなく、初期投資を回収する2年目以降も含めて評価することが大切です。また、継続改善するプロダクトほど経済合理性が高まります。

伴走型ハイブリッドによる段階的な内製化

全面内製へ一度に移るリスクを抑えるため、伴走型ハイブリッドを経由して、内製の比率を段階的に高めていきます。

  • 初期支援:外部パートナーに移行トランザクションコスト(伴走支援費用)を払い、アジャイル開発の型を身につけます。
  • 共同運営:専門家が自社メンバーと一緒に動きながら、設計・運用・技術選定の考え方を伝えます。
  • 段階移行:社内メンバーが徐々に主体となり、内製の比率が高まっていきます。

この進め方なら、固定費リスクと外注の調整費の増大を避けながら、中長期のランニングコストを小さく保てます。外注か内製かの二者択一にせず、外部の力を借りて内製力を育てる設計にすると、失敗を抑えられます。

ポイント

内製化は初年度の割高さだけで判断せず、初期投資を回収する2年目以降の費用まで含めて見積もるとよいです。委託を続けるか移行するかは、改善の頻度が今後も続くかどうかが分かれ目になります。

TCOで考えるコスト評価とリスク

チームの組成費用は、月額や年額だけでなく、TCO(Total Cost of Ownership=総保有コスト)の視点で評価します。あわせて、組成方法ごとのリスクも確認します。

TCOの構成要素

ランニングコストは、目に見える月額費用だけで判断せず、TCOで評価することが重要です。

  • 運用を含む総額:初期投資と運用・保守費用を軸に、インフラ、教育、サポートまでの費用を合算します。
  • 取引コスト理論:直接開発や外部調達の費用に加え、調整・協調、移行トランザクションの費用で捉えます。

調整・協調コストには、開発以外の労力も含まれます。たとえば、要件のすり合わせや仕様変更の合意、稟議・承認の待ち時間などです。

調整・協調コストが大きい受託型では、プロセス効率が数%まで落ち込む場合もあると指摘されています。

月額が安いオフショアでも、調整費が膨らめばTCOは高くなることがあります。

各方式に潜むコストリスク

TCOで比べると、各方式には費用の柔軟性と運営上のリスクがそれぞれあります。

  • 外注(請負):人件費は変動費ですが、要件定義、ベンダーとの仕様合意、稟議に時間がかかり、調整費が増えて効率が落ちます。
  • 100%内製:調整費を抑えて速度を上げやすい反面、人件費・設備費が固定化し、業務減や退職の際に柔軟性を損ないます。
  • ハイブリッド型(伴走・ラボ型活用):外部パートナーに移行費を払い、ノウハウを社内へ移していく方式です。

ハイブリッド型は、固定費と調整コストの両方のリスクを避けながら、中長期のTCOを抑える現実的な方法とされています。

最適な配分は一つに決め切らず、事業フェーズに応じて見直していきます。

ポイント

月額が安く見えても、調整費や中間マージンを含めたTCOで比べないと、長期の負担を見誤るおそれがあります。複数年の総額を基準に、組み方を見直す時期を決めておくとよいでしょう。

まとめ

開発チーム構築の視点から見ると、保守・運用費とランニングコストの大半は人件費で、チームの方式によって固定費と変動費の性格が変わります。内製チーム4〜5名は月額400万〜600万円程度です。

受託保守は初期開発費の年10〜15%、ラボ型は1人月あたり国内80〜120万円、オフショア30〜50万円が目安です。

受託型には、平均30%超の中間マージンや調整費が潜んでいます。一方、内製化は初年度こそ割高になりますが、2年目以降に約30%削減した事例があります。

評価は複数年のTCOで行い、事業フェーズに合わせてチームの配分を見直していくことが大切です。目先の見積額だけでなく、中間マージンや調整費も含めて、自社のプロダクトに合う維持体制を設計してください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。