EC-CUBE開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ECサイトを自社で構築したいと考えたとき、多くの企業が候補に挙げるのが国産オープンソースECプラットフォーム「EC-CUBE」です。2006年のリリース以来、累計35,000店舗以上の導入実績を誇り、日本のEC市場においてトップクラスのシェアを持つEC-CUBEは、BtoC・BtoBを問わず幅広い業種で活用されています。しかし、いざEC-CUBEで開発を始めようとすると、「どのような工程で進めればよいのか」「カスタマイズの自由度はどの程度あるのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった疑問に直面する担当者は少なくありません。特にEC-CUBE 4系はSymfonyフレームワークをベースとした本格的なPHPアプリケーションであり、開発の進め方を正しく理解しておかなければ、想定以上の工数やコストが発生するリスクがあります。

本記事では、EC-CUBE開発の全体像から具体的な進め方、費用相場、見積もりを取る際の注意点までを体系的に解説します。初めてEC-CUBEの導入を検討されている方はもちろん、既存のEC-CUBEサイトのリニューアルやバージョンアップを検討されている方にも参考になる内容です。最後までお読みいただくことで、プロジェクトを計画的かつ効率的に進めるための判断材料が明確になるはずです。

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EC-CUBE開発の全体像

EC-CUBE開発の全体像

EC-CUBEは、株式会社イーシーキューブが提供する国産のオープンソースECプラットフォームです。GPLライセンスのもとでソースコードが公開されており、ライセンス費用が無料であることから、初期コストを抑えながら本格的なECサイトを構築できる点が最大の魅力となっています。現行の最新バージョンであるEC-CUBE 4系は、PHPのSymfonyフレームワークをベースに再設計されており、拡張性や保守性が大幅に向上しました。データベースにはMySQLまたはPostgreSQLを利用でき、テンプレートエンジンにはTwigが採用されています。EC-CUBE開発の全体像を理解するためには、まずこのプラットフォームが持つ2つの大きな特徴を把握しておくことが重要です。

オープンソースならではの自由度と拡張性

EC-CUBEの最大の強みは、ソースコードが完全に公開されており、自社のビジネス要件に合わせて自由にカスタマイズできる点にあります。ShopifyやBASEといったSaaS型のECプラットフォームでは、プラットフォーム側が提供する機能やAPIの範囲内でしか改修を行えませんが、EC-CUBEではフロントエンドのデザインからバックエンドの業務ロジックまで、あらゆる部分を自社の要件に合わせて変更することが可能です。たとえば、商品の在庫管理を基幹システムとリアルタイム連携させたい場合や、独自のポイント制度やクーポン発行のロジックを組み込みたい場合でも、ソースコードレベルで手を入れることができます。EC-CUBE 4系ではプラグイン機構が大幅に改善されており、コア部分に手を加えずにプラグインとして機能を追加できる設計になっています。公式のオーナーズストアには2,000点以上のプラグインが公開されており、決済連携、配送管理、SEO対策、メールマガジン配信といった代表的な機能はプラグインを導入するだけで実現できるケースも少なくありません。ただし、プラグイン同士の相性やバージョン互換性の問題が発生する場合もあるため、導入前に十分な検証を行うことが推奨されます。また、オープンソースであるがゆえに、セキュリティパッチの適用やバージョンアップは自社(または委託先の開発会社)の責任で行う必要があります。SaaS型のように「プラットフォーム側が自動的にアップデートしてくれる」わけではないため、継続的な運用保守体制を確保しておくことが求められます。

国内ECサイト構築における標準的な選択肢としての位置づけ

EC-CUBEは、日本国内のEC市場において非常に高いシェアを持つプラットフォームです。経済産業省の調査によると、日本のBtoC EC市場規模は2024年に約24.8兆円に達し、前年比9.0%の成長を記録しました。この拡大する市場の中で、EC-CUBEは中小企業から大手企業まで幅広い規模のECサイトに採用されています。特に年商1,000万円から10億円規模のEC事業者にとって、SaaS型では実現できない独自のカスタマイズが必要であるものの、フルスクラッチ開発ほどの予算は確保できないという状況において、EC-CUBEは最適な選択肢となっています。国内で開発されたプラットフォームであるため、日本の商習慣に合った機能が標準で備わっている点も大きな利点です。たとえば、日本特有の配送伝票のフォーマット対応、のし・ラッピングといったギフト機能、消費税の軽減税率対応、銀行振込や代金引換といった決済手段の標準搭載など、海外製のプラットフォームでは追加開発が必要になるような機能が最初から用意されています。さらに、国内に多くの開発パートナー企業が存在するため、技術サポートや開発委託がしやすい環境が整っています。EC-CUBEの公式サイトに掲載されているインテグレートパートナーは200社以上にのぼり、全国各地で開発支援を受けることが可能です。コミュニティも活発で、公式フォーラムやGitHubでの情報共有が日常的に行われているため、開発中に発生した技術的な課題を解決するためのリソースが豊富に存在します。

EC-CUBE開発の進め方

EC-CUBE開発の進め方

EC-CUBE開発のプロジェクトは、大きく分けて「要件定義・企画フェーズ」「設計・開発フェーズ」「テスト・リリースフェーズ」の3段階で進行します。各フェーズで何を行い、どのような成果物を作成するのかを明確にしておくことが、プロジェクトを遅延なく進めるための鍵となります。ここでは、それぞれのフェーズについて実務レベルで押さえるべきポイントを詳しく解説します。

要件定義・企画フェーズ

EC-CUBE開発における最初のステップは、要件定義と企画の策定です。このフェーズでは、まず「どのようなECサイトを作りたいのか」というビジネス要件を明確にします。取り扱う商品の種類と数量、ターゲットとなる顧客層、期待する月間売上規模、競合サイトとの差別化ポイントなど、ビジネス戦略に関わる情報を整理することが出発点となります。次に、技術的な要件として、EC-CUBEの標準機能でカバーできる範囲とカスタマイズが必要な範囲を切り分けます。EC-CUBE 4系には、商品管理、受注管理、顧客管理、コンテンツ管理、メール配信、クーポン発行といった基本機能が標準で搭載されています。これらの標準機能で十分な部分と、自社の業務フローに合わせて独自に開発すべき部分を明確に区別することで、開発工数の見積もり精度が格段に向上します。たとえば、定期購入(サブスクリプション)機能が必要な場合、EC-CUBEには標準では搭載されていないため、プラグインの導入またはカスタム開発が必要になります。同様に、BtoB向けの掛け売り機能、会員ランク別の価格設定、複雑なセット商品の管理なども、要件定義の段階で実現方法を検討しておくべき項目です。決済手段の選定もこのフェーズで行います。クレジットカード決済、コンビニ決済、後払い決済、Amazon Pay、PayPayなど、どの決済手段を導入するかによって連携する決済代行会社が異なり、開発工数にも影響が出ます。EC-CUBEの決済プラグインは主要な決済代行会社をカバーしていますが、特殊な決済フローが必要な場合は個別開発が発生します。このフェーズの期間は、小規模なECサイトであれば2〜3週間、中規模以上のプロジェクトでは4〜8週間が一般的です。要件定義書、画面遷移図、概算見積書がこのフェーズの主な成果物となります。

設計・開発フェーズ

要件定義が完了したら、設計・開発フェーズに移ります。このフェーズは「インフラ設計」「デザイン・フロントエンド開発」「バックエンド開発」「外部システム連携」の4つの工程で構成されます。インフラ設計では、EC-CUBEを稼働させるサーバー環境を決定します。選択肢としては、専用サーバー、VPS(仮想専用サーバー)、クラウド(AWS、GCP、さくらのクラウドなど)のいずれかになります。近年はAWSのEC2やAmazon ECS上にEC-CUBEをデプロイするケースが増えており、トラフィックの増減に応じたオートスケーリングや、マネージドデータベース(Amazon RDS)の活用によって運用負荷を軽減する構成が主流となっています。年商1億円以上のECサイトであれば、冗長構成やCDN(CloudFront等)の導入も検討すべきです。デザイン・フロントエンド開発では、EC-CUBEのTwigテンプレートをベースにオリジナルのデザインを適用します。EC-CUBEにはデフォルトのテンプレートが用意されていますが、ブランドイメージを反映した独自デザインを採用する場合は、デザインカンプの作成からHTML/CSSコーディング、Twigテンプレートへの組み込みまでの工程が必要になります。スマートフォン対応(レスポンシブデザイン)は現在のECサイトでは必須であり、モバイルファーストの設計思想で進めることが推奨されます。総務省の調査によると、ECサイトへのアクセスの約75%がスマートフォン経由であり、モバイルでの購買体験の質が売上に直結します。バックエンド開発では、EC-CUBEのコア機能をベースにカスタマイズを実装します。EC-CUBE 4系ではSymfonyのイベントディスパッチャーを活用した拡張が推奨されており、コア部分を直接修正するのではなく、プラグインやカスタマイズディレクトリを通じて機能を追加する設計パターンが採用されています。この方式に従うことで、EC-CUBEのバージョンアップ時にカスタマイズ部分が上書きされるリスクを回避できます。外部システム連携については、基幹システム(ERP)、倉庫管理システム(WMS)、CRM、MAツール、会計システムなどとのデータ連携が代表的です。連携方式としては、API連携、CSV連携、データベース直接連携の3つがありますが、リアルタイム性が求められる在庫管理やの受注データ連携にはAPI方式が適しています。設計・開発フェーズの期間は、標準的なECサイトで2〜4ヶ月、大規模なカスタマイズを含むプロジェクトでは4〜8ヶ月が目安です。

テスト・リリースフェーズ

設計・開発フェーズが完了したら、テストとリリースの工程に入ります。EC-CUBEのテストは、大きく分けて「機能テスト」「表示テスト」「セキュリティテスト」「負荷テスト」「決済テスト」の5つの観点で実施します。機能テストでは、商品の閲覧から会員登録、カートへの追加、決済完了、受注管理までの一連の購買フローを網羅的に検証します。特にカスタマイズ部分については、標準機能との整合性が取れているかを入念に確認する必要があります。表示テストでは、主要なブラウザ(Chrome、Safari、Firefox、Edge)とデバイス(PC、タブレット、スマートフォン)の組み合わせでレイアウトの崩れや文字化けがないかを確認します。セキュリティテストは、ECサイトでは特に重要です。EC-CUBEは過去にクロスサイトスクリプティング(XSS)やSQLインジェクションの脆弱性が報告された経緯があり、開発時には最新のセキュリティパッチが適用されているか、カスタマイズ部分にセキュリティホールが存在しないかを必ず確認します。OWASP Top 10に基づいたセキュリティチェックリストを用いて体系的にテストを行うことが望ましいです。負荷テストでは、想定されるピークトラフィック時にサイトが安定して動作するかを検証します。ECサイトではセール期間中やテレビ放映時にアクセスが急増することがあり、そのような状況でもレスポンス速度が3秒以内に収まることを確認しておく必要があります。Apache JMeterやGatlingといったツールを使って、同時接続数やリクエスト数を段階的に増やしながらサーバーの限界値を測定します。決済テストは、各決済代行会社が提供するテスト環境を使って実施します。クレジットカードの正常決済だけでなく、与信エラー、タイムアウト、キャンセル・返金処理など、異常系のパターンも漏れなく検証することが重要です。すべてのテストをクリアしたら、本番環境へのデプロイを行います。リリース日は売上への影響を最小限に抑えるため、平日の午前中(アクセスが比較的少ない時間帯)を選ぶのが一般的です。リリース後は、最低でも1週間はモニタリングを強化し、アクセスログやエラーログを注視して問題の早期発見に努めます。

費用相場とコストの内訳

EC-CUBE開発の費用相場

EC-CUBE開発にかかる費用は、サイトの規模やカスタマイズの度合いによって大きく変動します。ここでは、費用の内訳を「人件費と工数」「ランニングコスト」の2つの観点から具体的に解説します。予算計画を立てる際の参考にしてください。

人件費と工数

EC-CUBE開発における費用の大部分を占めるのが人件費です。開発チームの構成は、プロジェクトの規模に応じて異なりますが、標準的には、プロジェクトマネージャー1名、デザイナー1名、フロントエンドエンジニア1名、バックエンドエンジニア(PHP/Symfony)1〜2名、テスター1名という体制で進めるケースが多くなっています。人月単価は、国内の開発会社の場合、バックエンドエンジニアが月額80万〜130万円、フロントエンドエンジニアが月額70万〜120万円、デザイナーが月額60万〜100万円、プロジェクトマネージャーが月額90万〜140万円が相場です。EC-CUBEの開発費用をカスタマイズの度合いで3つの段階に分けると、まずデザインテンプレートの変更と基本的なプラグイン導入のみで済む「ライトカスタマイズ」の場合は100万〜300万円程度で構築できます。開発期間は1〜2ヶ月が目安です。次に、オリジナルデザインの適用、決済連携、基幹システムとのCSV連携などを含む「ミドルカスタマイズ」の場合は300万〜800万円が相場となり、開発期間は2〜4ヶ月です。さらに、複雑な業務ロジックの実装、複数の外部システムとのAPI連携、大規模なデータ移行などを伴う「フルカスタマイズ」の場合は800万〜2,000万円以上の費用が発生し、開発期間は4〜8ヶ月に及ぶこともあります。EC-CUBEはオープンソースであるためライセンス費用はかかりませんが、有料プラグインを利用する場合は1つあたり数千円から数万円の費用が別途発生します。たとえば、主要な決済プラグインは3万〜10万円程度、定期購入プラグインは5万〜15万円程度が一般的な価格帯です。また、デザインテンプレートを購入する場合は3万〜8万円程度の費用がかかります。これらの有料プラグインやテンプレートを活用することで、フルスクラッチでの開発に比べて大幅に工数を削減できる場合があります。

初期費用以外のランニングコスト

EC-CUBEの開発費用を検討する際に見落とされがちなのが、リリース後に継続的に発生するランニングコストです。まず、サーバー費用として月額1万〜10万円程度がかかります。共用サーバーであれば月額1,000〜5,000円程度で済みますが、アクセス数が月間10万PVを超えるようなサイトではVPSやクラウドサーバーが必要となり、月額3万〜10万円の費用が発生します。AWSを利用する場合は、EC2インスタンス、RDS、S3、CloudFrontなどの利用料を合算すると月額5万〜15万円程度が目安です。次に、SSL証明書の費用があります。無料のLet’s Encryptを利用する選択肢もありますが、ECサイトの信頼性を高めるためにEV SSL証明書を利用する場合は年間5万〜15万円の費用がかかります。ドメイン維持費は年間1,000〜5,000円程度で、これは比較的軽微なコストです。運用保守費用は、EC-CUBEのランニングコストの中でも大きな割合を占めます。EC-CUBEのセキュリティパッチの適用、PHP・MySQLのバージョンアップ対応、障害時の復旧対応、日常的な問い合わせ対応などを含む保守契約を開発会社と締結するケースが一般的で、月額5万〜30万円が相場です。年に1〜2回実施されるEC-CUBEのセキュリティアップデートへの対応は、特に重要な保守業務です。過去には、セキュリティパッチを適用していなかったEC-CUBEサイトがクレジットカード情報の漏洩事故を起こした事例もあり、保守費用を惜しむことは大きなリスクにつながります。決済代行サービスの手数料も見逃せないコストです。クレジットカード決済の場合、売上に対して3.0〜3.6%程度の手数料が発生します。月間売上が500万円のサイトであれば、決済手数料だけで月額15万〜18万円の費用がかかる計算です。これらを合算すると、EC-CUBEサイトのランニングコストは月額10万〜50万円程度、年間では120万〜600万円が一般的な水準となります。初期開発費用だけでなく、少なくとも3年間のランニングコストを加味した総額で予算計画を策定することが重要です。

見積もりを取る際のポイント

EC-CUBE開発の見積もりポイント

EC-CUBE開発を外部の開発会社に委託する場合、見積もりの取り方によってプロジェクトの成否が左右されることがあります。ここでは、適切な見積もりを取得し、信頼できる発注先を選ぶために押さえておくべきポイントを3つの観点からお伝えします。

要件明確化と仕様書の準備

見積もりの精度を上げるために最も重要なのは、発注側が要件を可能な限り明確にしておくことです。「EC-CUBEでECサイトを作りたい」という漠然とした依頼では、開発会社ごとに前提条件の解釈が異なり、見積もり金額に2〜5倍の開きが出ることも珍しくありません。見積もり依頼の前に整理しておくべき情報としては、まずサイトの概要として、取り扱い商品のカテゴリ数と商品点数、ターゲット顧客層(BtoC・BtoB・両方)、月間想定アクセス数と売上目標があります。次に、必要な機能として、決済手段の種類、配送方法の種類、会員制度の有無と種類(会員ランク、ポイント制度など)、レコメンド機能の要否、多言語対応の要否などを明確にしておきます。外部連携の範囲も重要で、基幹システムとの連携方式(API・CSV・データベース直接)、倉庫管理システムとの在庫連携、CRM・MAツールとの顧客データ連携、会計ソフトとの売上データ連携など、連携先の数と連携方式によって工数が大きく変動します。デザインについても、既存のテンプレートを使うのか完全オリジナルデザインにするのか、ブランドガイドラインの有無、参考にしたい競合サイトのURLなどを事前に共有しておくと、デザイン工程の見積もり精度が向上します。これらの情報をRFP(提案依頼書)としてまとめておくことで、開発会社は具体的な工数を算出しやすくなります。RFPの作成が難しい場合は、少なくとも画面遷移図(どの画面からどの画面に遷移するかの全体像)と機能一覧表(必須機能・オプション機能の区分を含む)を用意しておくことを推奨します。

複数社比較と発注先の選び方

EC-CUBE開発の発注先を選定する際は、最低でも3社以上から見積もりを取得して比較検討することが重要です。比較の際に最も重視すべきポイントは「EC-CUBE開発の実績」です。一般的なWebシステム開発の経験が豊富であっても、EC-CUBE特有のプラグイン機構やTwigテンプレートの設計パターン、Symfonyフレームワークの知見が不足している開発会社に発注すると、品質面でのリスクが高まります。EC-CUBEの公式インテグレートパートナー認定を受けている企業は、一定の技術水準と実績が保証されているため、発注先候補の選定基準として有効です。認定パートナーには「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」の3段階があり、認定ランクが高いほど豊富な実績と技術力を持っています。次に確認すべきは「過去の構築事例」です。自社と同じ業種・規模のECサイト構築実績があるかどうかは、開発の効率性に直結します。アパレルECと食品ECでは必要な機能が異なりますし、BtoBとBtoCでは商流や決済の仕組みが根本的に異なります。類似案件の経験がある開発会社であれば、要件定義の段階から的確な提案を受けられる可能性が高くなります。費用面では、見積もり金額の総額だけでなく内訳の詳細度も重要な比較ポイントです。「デザイン一式:100万円」のように大項目でしか記載されていない見積もりと、「トップページデザイン:15万円、商品一覧ページデザイン:10万円、商品詳細ページデザイン:12万円」のように細分化された見積もりでは、後者のほうが要件の認識合わせがしやすく、追加費用が発生した際の交渉もスムーズになります。また、保守運用体制の充実度も発注先選びの重要な基準です。EC-CUBEは定期的にセキュリティパッチが公開されるため、迅速にパッチを適用できる体制があるかどうかを確認しましょう。開発後の問い合わせ窓口、対応時間、障害時のエスカレーションフローなどが明確に定められている開発会社を選ぶことで、リリース後の運用リスクを軽減できます。

注意すべきリスクと対策

EC-CUBE開発には、プラットフォーム特有のリスクがいくつか存在します。1つ目のリスクは「セキュリティ脆弱性への対応遅れ」です。EC-CUBEはオープンソースであるため、脆弱性が発見されると攻撃者にも情報が公開されることになります。過去には、EC-CUBEの脆弱性を突いたクレジットカード情報の漏洩事件が複数報告されており、経済産業省とIPAが共同でEC-CUBEサイトのセキュリティ対策を呼びかける異例の注意喚起を行ったこともあります。対策としては、EC-CUBEの公式セキュリティアドバイザリーを定期的に確認し、パッチが公開された際には速やかに適用する体制を構築しておくことが不可欠です。WAF(Web Application Firewall)の導入や、不正アクセス検知の仕組みを併用することも効果的です。2つ目のリスクは「バージョンアップの困難さ」です。EC-CUBEのコア部分を直接改修してしまうと、新しいバージョンへのアップグレード時にカスタマイズ部分との競合が発生し、膨大な修正工数が必要になることがあります。EC-CUBE 2系から4系への移行では、アーキテクチャが根本的に変わったため、実質的にはゼロからの再構築に近い作業が必要になった事例も多く報告されています。対策としては、開発時にコアの直接修正を避け、プラグインやカスタマイズディレクトリを活用した拡張方法を徹底することが重要です。3つ目のリスクは「属人化による開発ベンダーロックイン」です。EC-CUBEはオープンソースであるため本来はベンダーロックインが発生しにくいはずですが、ドキュメントが不十分なカスタマイズが行われると、開発した会社以外では保守が困難になるケースがあります。対策として、開発時にはソースコードのコメント記載、設計書の作成、テストコードの整備を徹底し、将来的に開発会社を変更する可能性も見据えた体制を整えておくことが望ましいです。契約書においても、ソースコードの著作権や納品物の範囲(設計書、テスト仕様書を含むかどうか)を明確に規定しておくことで、このリスクを軽減できます。

まとめ

EC-CUBE開発のまとめ

本記事では、EC-CUBE開発の全体像から具体的な進め方、費用相場、見積もりを取る際のポイントまでを解説しました。EC-CUBE開発を成功に導くためのポイントを改めて整理すると、まずオープンソースならではの自由度を活かしつつ、コア部分の直接修正は避けてプラグインやカスタマイズディレクトリを活用した拡張設計を採用すること、要件定義フェーズで標準機能とカスタマイズの範囲を明確に切り分けること、セキュリティ対策を最優先課題として位置づけ、パッチ適用の体制を整備すること、そして初期開発費用だけでなくランニングコストを含めた総額で予算計画を立てることが重要です。費用相場としては、ライトカスタマイズで100万〜300万円、ミドルカスタマイズで300万〜800万円、フルカスタマイズで800万〜2,000万円以上が初期開発の目安であり、ランニングコストは月額10万〜50万円程度を見込んでおく必要があります。発注先の選定では、EC-CUBEの開発実績とインテグレートパートナー認定の有無、過去の構築事例、保守運用体制の充実度を総合的に評価し、最低3社以上の比較検討を行いましょう。EC-CUBEは日本のEC市場に最適化された国産プラットフォームとして、今後も多くの企業に選ばれ続けることが予想されます。適切な開発パートナーを選び、正しい進め方でプロジェクトを推進することが、ECビジネスの成功への第一歩となります。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。