ECサイトの多言語対応開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ECサイトの多言語対応開発は、市場、翻訳、決済、法規制を一体で設計しながら、要件定義から本番リリースまで段階を追って進めるのが基本です。

経済産業省の調査では、日本の越境BtoC-EC市場規模は2024年時点で約4,200億円を超えています。また、年平均成長率は10%以上で推移しています。さらに、アジアを中心に訪日外国人が増え、日本製品への関心も高まっています。

▼全体ガイドの記事
・ECサイトの多言語対応開発の完全ガイド

ECサイト多言語対応の全体像

オンラインストアを中心に、翻訳、通貨表示、国際配送、現地決済、法規制を配置した多言語対応の図解。
翻訳以外の運用要素も対応範囲に含まれます。

ECサイトの多言語対応とは、自社のオンラインストアを複数の言語で表示・運用できるようにする取り組みのことです。

多言語化は、商品説明やメニューの翻訳だけでは終わりません。そのため、通貨表示、国際配送、現地決済、法規制まで整える必要があります。

対応の範囲は企業の戦略によって大きく異なるため、代表的なアプローチを特徴とあわせて比べます。

多言語対応の主なアプローチと特徴

方式は、導入の速さ、管理できる範囲、将来の拡張性で比べます。

  • SaaS型:既存サイトを短期間で多言語化できます。
  • 独自開発:業務と市場に合わせて、細かく設計します。

ECサイトの多言語対応には、大きく3つのアプローチがあります。

第一は「翻訳プラグイン・SaaS型」で、WOVNやWeglotを既存のサイトに導入する方法です。既存のECサイトのHTMLを自動で検出し、翻訳済みのテキストに置き換えて表示します。そのため、システムの大幅な改修を行わずに、比較的短期間で多言語化できます。

初期費用を抑えたい企業や、まずは少数の言語から試験的に多言語展開を始めたい企業に向いています。

ただし、翻訳の品質管理やSEO対策では制約が出る場合もあります。本格的な越境EC展開を見据えるなら、この点に注意が必要です。

第二は「ECプラットフォームの多言語機能活用型」で、Shopify、Magento、Salesforce Commerce Cloudなどを活用する方法です。

Shopifyでは「Shopify Markets」で言語、通貨、ドメインを管理できます。また、現地の決済手段と税率計算にも対応しています。

プラットフォーム側に多言語対応の仕組みが組み込まれているため、翻訳コンテンツの管理やSEO設定を進めやすく、中規模以上の越境EC展開に適しています。

第三は「フルスクラッチ・カスタム開発型」です。自社の業務要件や対象市場の特性に合わせて、ゼロからシステムを構築します。高度なカスタマイズができる一方、商品DB、ロケール別ロジック、現地物流・決済との連携によって期間と費用が増えます。

年商10億円以上の本格的な越境EC事業や、独自の業務フローを持つ企業に適したアプローチです。

対象言語の選定と市場分析の重要性

対象言語は、アクセス、競合、法規制を根拠に絞り込みます。

  • 需要:国別のアクセスと売上の実績
  • 順序:小さく始めて、データを見ながら拡大する方法

多言語対応を進めるときは、まずどの言語と市場を対象にするかを決める必要があります。

「とりあえず英語だけ」や「できるだけ多くの言語に対応したい」といった曖昧な方針では、投資に見合った効果を出しにくくなります。

対象言語を選ぶときは、まず自社ECサイトのアクセスログを分析し、どの国や地域からのアクセスが多いかを把握します。この作業が出発点となります。

自社のGoogle Analyticsの地域別レポートや検索クエリを分析すれば、潜在的な海外需要を数字で把握できます。

たとえば、日本のアパレルECサイトで中国語圏からのアクセスが全体の15%を占めるとします。その場合、中国語ページがないと、大きな機会損失の可能性があります。

対象市場の競合状況やEC利用率も、判断材料になります。東南アジアではタイ語やベトナム語が差別化につながる一方、英語圏では別の切り口が必要です。

対象国の法規制(個人情報保護法、消費者保護法、関税制度など)も、事前に調べておく必要があります。

EU圏に展開する場合はGDPR(一般データ保護規則)への対応が必須で、中国市場ではサイバーセキュリティ法への準拠が求められます。

まずは1〜2言語から始め、売上やアクセスを見ながら広げます。この段階的な進め方(フェーズドアプローチ)は、リスクを抑える現実的な方法です。

ポイント

翻訳だけで済ませず、決済や配送、法規制まで含めて考えられるかが判断の目安です。対象言語は、まず1〜2言語から広げていくと無理がありません。

ECサイト多言語対応開発の進め方

要件定義・企画フェーズから設計・開発フェーズを経て、テスト・リリースフェーズへ進む流れ図。
各工程を順に進め、公開前に言語と購入導線を確認します。

多言語対応開発も、複数のフェーズに分けて進めます。要件定義から本番リリースまでは、フェーズごとに進め方とポイントが異なります。翻訳品質と国際的な法規制への対応は、多言語ならではの論点です。

要件定義・企画フェーズ

企画では、対応言語と事業目標を数字にして、関係者で共有します。

  • 目標:訪問者、CVR、売上の関係
  • 要件:翻訳、通貨、決済などの対応範囲

多言語対応開発の成否を左右するのが、この要件定義・企画フェーズです。まずは「なぜ多言語対応が必要なのか」という事業目的をはっきりさせます。

海外アクセスだけを理由に始めると、翻訳費用ばかりが膨らむことがあります。また、目的が曖昧なままの多言語化は、売上につながらない場合もあります。

成功するプロジェクトは、定量的な目標を立てています。たとえば、中国語圏の月間訪問者3,000人のCVRを0.5%から2.0%に上げ、月間売上を500万円増やす目標です。

要件定義では、英語、繁体字中国語、韓国語などの優先順位を決めます。通貨や翻訳の方法を整理し、決済はクレジットカードやAlipay、PayPal、現地決済のどれを使うかを決めます。配送は、EMS、DHL、現地業者との連携を確認し、各国の法規制も洗い出します。

このフェーズの期間は2〜4週間が一般的です。事業企画やECサイト運営の担当者、開発チーム、翻訳コーディネーターが連携して進めることが理想的です。

設計・開発フェーズ

設計では、URLや翻訳の方式を含めて、画面や決済、配送までを一つの構成にまとめます。

  • 情報設計:言語別のURLとhreflangの定め方
  • 翻訳運用:機械翻訳と人が確認する範囲の分け方

要件定義が終わると、設計・開発に移ります。システム設計と翻訳・コンテンツ整備を進めるほか、UI/UXのローカライズや決済・配送連携の実装も行います。

システム設計では、多言語対応のアーキテクチャを決めます。そのうえで、URLはサブディレクトリ(example.com/en/)、サブドメイン(en.example.com)、ccTLD(example.co.uk)から選びます。DB構造とhreflangの方針も、SEOに直結する設計判断になります。

翻訳対象には、商品名や説明文のほか、カテゴリ名、ボタン、エラー文が含まれます。また、利用規約とプライバシーポリシーも洗い出し、対象リストを作ります。

商品数が数千点を超える場合、全件をプロ翻訳にすると高コストになります。そのため、商品名と主要な文はプロ翻訳にし、補足は機械翻訳とネイティブチェックを組み合わせます。

UI/UXでは、言語ごとのテキスト長の違いを確認します。英語から日本語にすると約30%増える傾向があり、アラビア語はRTL対応も必要です。さらに、画像とカラースキームも文化に合わせて選びます。

設計・開発フェーズの期間は、プラグイン導入型で1〜2ヶ月、プラットフォーム活用型で2〜4ヶ月、フルスクラッチ型で4〜8ヶ月が目安です。

テスト・リリースフェーズ

公開前には、言語ごとの表現と購入導線を、通しで確認します。

  • 言語品質:用語、文字切れ、誤訳
  • 機能品質:通貨と決済の動作、配送とSEOの設定

多言語対応ECサイトのテストでは、通常のECサイトテストに加えて、言語や地域に固有の検証項目が多く加わるのが特徴です。

翻訳品質では、機械翻訳の誤訳や不自然な表現を確認します。専門用語やブランド名、文字化けや文字切れは、ネイティブがレビューします。

特に購入フローに関わる部分(カート・注文確認・決済・注文完了メール)は、誤訳が売上損失やクレームに直結します。そのため、重点的なチェックが欠かせません。

機能テストでは、言語と通貨の切り替えを確認します。加えて、国別の住所入力、決済の完了、国際配送料の計算も検証します。

SEOテストでは、hreflangタグとcanonical URLを確認します。さらに、各言語版がGoogleにインデックスされるかも見ておきます。

リリースでは、まず1言語だけを先行して公開します。アクセスとコンバージョン率を見ながら、残りの言語を順に展開します。

公開後も、翻訳品質を継続的に改善していく必要があります。また、新商品や季節、キャンペーンに対応できる運用体制も整えます。

ポイント

要件定義で目的と対応範囲を数字にしておけば、設計以降の判断でぶれが少なくなります。迷ったときは、購入の流れを通しで確認できているかを基準にしてください。

多言語対応開発の費用相場と内訳

翻訳プラグイン・SaaS型、ECプラットフォーム活用型、フルスクラッチ・カスタム開発型の初期費用を3枚のパネルで示した図。
方式の選択に応じて初期投資の幅が変わります。

開発規模別の初期費用

初期費用は、方式、言語数、翻訳対象の量で変わります。

  • 開発費:SaaS型、活用型、独自開発ごとの違い
  • 翻訳費:文字数、商品点数、言語数に基づく計算

ECサイトの多言語対応にかかる費用は、採用するアプローチと対応言語数によって大きく変わります。

翻訳プラグイン・SaaS型の場合、初期費用は50万〜200万円程度で、月額利用料として3万〜20万円程度が発生します。既存サイトへのタグ設置と翻訳データの初期投入が中心のため、工数は比較的少なく済みます。

ECプラットフォーム活用型の初期費用は、200万〜800万円程度です。Shopifyの場合は、Shopify Plusの月額約2,000ドル〜が前提になります。さらに、テーマの多言語化や翻訳、決済と配送の設定にかかる費用も加わります。

フルスクラッチ・カスタム開発型になると、初期費用は800万〜3,000万円以上に達することも珍しくありません。その理由は、多言語データベースの設計やロケール別ビジネスロジックの実装が必要になり、開発工数が大きく増えるためです。加えて、各国の決済・物流システムとの個別連携や、管理画面の多言語対応も求められます。

翻訳費用は別途必要で、プロ翻訳の場合は1文字あたり8〜20円(言語によって異なります)が相場です。

たとえば、商品説明文が平均500文字の商品を1,000点、3言語で翻訳する場合は、翻訳費用だけで1,200万〜3,000万円が必要になる計算です。

機械翻訳とプロ翻訳のハイブリッド方式を採用すれば、翻訳費用を50〜70%削減できる可能性があります。

初期投資以外のランニングコスト

運用費は、翻訳の更新と保守、広告、サポートに分けて考えます。

  • 更新:翻訳を追加する費用
  • 総額:初期費用と運用費を合わせた金額

多言語ECの運用には、初期費用とは別に継続費がかかります。たとえば、新商品やキャンペーンの翻訳更新費は、月額5万〜30万円程度です。

商品の入れ替えが多いアパレルや食品のECサイトでは、月間数百件の翻訳が発生することもあります。その場合、翻訳管理システム(TMS)の導入を検討する価値があります。

システム保守費用は月額10万〜50万円程度が相場です。この費用には、プラグインの更新やバージョンアップ、セキュリティパッチが含まれます。

マーケティング費用も、見落としがちなコストです。海外向けの広告やSNS運用では、言語ごとの制作と管理が必要になります。そのため、月額20万〜100万円程度の追加予算が必要な場合もあります。

また、カスタマーサポートの費用も見積もりに含めます。自社で対応する場合はバイリンガルの人件費、外部に委託する場合はBPOサービス料がかかります。

これらを含めた3年間のTCO(総保有コスト)で比べると、アプローチごとの差が分かります。

ポイント

費用は方式と言語数、翻訳量で変わるため、初期費用と運用費を合わせて比べるのが目安です。翻訳費が大きくなる場合は、機械翻訳とプロ翻訳の組み合わせも候補に入れてください。

見積もりを取る際のポイント

要件の明確化と優先順位の設定

要件は、対象言語や市場、品質の基準をそろえておきます。決済や配送、リリース時期も、あわせて伝えます。

  • 優先順位:最低限の機能と追加候補の区別
  • 段階導入:英語、中国語、東南アジア言語の順番

見積もりの精度を高めるには、開発会社に相談する前に、自社の要件をできる限り具体化しておくことが大切です。

見積もり前には、対象言語と優先順位、市場規模を整理しておきます。加えて、プラットフォームやカスタマイズの範囲、商品点数、翻訳品質も共有します。決済や配送、リリース時期まで伝えると、より正確な見積もりを受け取れます。

特に、「最低限必要な機能」と「あれば望ましい機能」は、はっきり分けておきます。たとえば、第1フェーズを英語、第2フェーズを中国語とする方法があります。第3フェーズで東南アジア言語に広げると、費用を段階ごとに把握できます。

複数社への相見積もりと比較のコツ

相見積もりでは、同じ範囲(スコープ)で内訳と総額を比べます。

  • 内訳:翻訳、決済、保守が含まれる範囲
  • 経験:越境ECとhreflangの実績

多言語対応開発の見積もりは、最低でも3社以上から取ることをすすめます。

比較では、総額だけでなく内訳の粒度と透明性も見ます。翻訳費やランニングコストに加えて、方式や技術スタックも確認します。また、プロジェクトマネジメント費用の計上方法もそろえて比べます。

A社が500万円、B社が700万円でも、単純には比べられません。A社に翻訳費や決済連携費が含まれていない場合、追加後にB社を超えることがあります。

見積もりを比べるときは、「同じスコープで比較できているか」を必ず確認してください。加えて、開発会社の越境EC支援の実績や、多言語対応の経験値も、重要な比較軸です。

多言語対応には、通常のEC開発とは異なる知見が必要です。翻訳ワークフローや国際決済の実績が、品質と速度に影響します。

リスク管理と契約時の注意点

契約では、翻訳品質、変更、法規制について、責任の範囲を明確にします。

  • 変更管理:追加言語と費用に関する手順
  • 法令対応:GDPRなどの更新を担う担当者

多言語対応開発は、通常のシステム開発以上にリスク管理に気を配る必要があります。

翻訳品質のリスクとして、機械翻訳に頼りすぎると、不自然な翻訳文がそのまま公開されてしまい、ブランドイメージを損なうケースがあります。

そのため、翻訳品質の基準と、基準に届かなかった場合の対応を契約で決めておきます。また、スコープクリープも、多言語プロジェクトで頻発するリスクです。

途中で言語や国別決済を追加すると、費用と日程が膨らみます。当初の見積もりから大きく外れる可能性もあります。

このため、契約段階で変更管理の手順を定め、追加のたびに費用と期間への影響を確認します。

さらに、対象国の法規制の変更も、重要なリスク要因です。EU域内で販売する場合は、GDPRへの対応が必要です。Cookie同意バナーや個人データ移転のルールは更新されます。

発注側は、法令遵守を続けられるメンテナンス体制を、契約時に確認しておきます。

ポイント

見積もりは、要件をそろえたうえで3社以上から取るのが目安です。総額の大小だけでなく、翻訳費や決済連携費が内訳に含まれているかで比べてください。

まとめ

多言語対応開発は、翻訳作業をこえた幅広いプロジェクトです。市場の選定や設計、品質管理を、国際決済や配送、法令への対応と合わせて、体系的に進めます。

成功の要点は、事業目的と方式を先に決めることです。そのうえで、段階導入と、翻訳費を含むコスト計画も大切です。

初期費用は、翻訳プラグイン型で50万〜200万円です。また、プラットフォーム活用型は200万〜800万円、フルスクラッチ型は800万〜3,000万円以上です。いずれの方式も、ランニングコストを含めて判断します。

見積もりは、要件を具体化したうえで3社以上から取ります。翻訳費とランニングコストを含む総額で比べます。

越境EC市場は今後も拡大が見込まれており、多言語対応への投資は、中長期的に大きなリターンをもたらす可能性が高い施策です。

本記事の内容を参考に、自社に合った進め方を見つけていただければ幸いです。

▼全体ガイドの記事
・ECサイトの多言語対応開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。