AIエージェント開発/構築の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

AIエージェント開発は、要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3つのフェーズを順に進め、本番リリースに至ります。

全体像は、AIエージェント開発/構築の完全ガイドも参照してください。

AIエージェント開発・構築の全体像

企業でのAIエージェント活用領域として、カスタマーサポート、営業・マーケティング、社内業務効率化、ソフトウェア開発支援を示す図。
顧客対応から社内業務まで、活用先は複数の部門に広がります。

AIエージェントは、企業のDX推進やカスタマーサポートの自動化、業務効率化の文脈で注目されています。2025年にはGartnerが「2028年までに企業のソフトウェアの33%にAIエージェントが組み込まれる」と予測を発表し、国内でも大手SIerやスタートアップが開発サービスを立ち上げています。

AIエージェントとは、ユーザーの指示や環境の変化に応じて自律的に判断・行動するAIシステムです。たとえば、顧客からの問い合わせ内容を分析し、CRMへの登録、担当者へのエスカレーション、回答メールの自動送信までを一連の流れで実行できます。

従来のチャットボットは、質問に回答する仕組みでした。一方で、AIエージェントは複数のツールやAPIを組み合わせて、目的を達成する点に違いがあります。

シングルエージェントとマルチエージェントの違い

AIエージェントは、「シングルエージェント型」と「マルチエージェント型」の2つに大きく分けられます。

  • シングルエージェント型:1つのAIモデルがすべてのタスクを順次処理する方式。
  • マルチエージェント型:複数のAIエージェントが役割を分担し、協調してタスクを遂行する方式。

シングルエージェント型は、問い合わせ対応やデータ入力の自動化など、比較的単純なワークフローに適しています。開発コストも抑えやすく、OpenAIのAssistants APIやAnthropicのClaude Agent SDKを使えば、数週間程度で基本的な構築ができるケースもあります。

一方で、マルチエージェント型では、リサーチ、分析、レポート作成をそれぞれ担当するエージェントが結果を統合する構成などが該当します。MicrosoftのAutoGen、CrewAI、LangGraphなどのフレームワークがありますが、シングルエージェントと比べて設計やデバッグが複雑です。

2025年から2026年にかけて導入が進んでいる領域は、「カスタマーサポート」「営業・マーケティング」「社内業務効率化」「ソフトウェア開発支援」の4つです。IDC Japanの調査では、国内企業のAIエージェント関連投資額が2025年に約4,800億円に達し、前年比で35%以上の成長率を記録しました。

たとえば、カスタマーサポートでは、問い合わせ履歴や契約情報を踏まえた個別対応が可能なAIエージェントが使われ始めています。ある国内EC企業では、問い合わせ対応時間を平均62%削減し、顧客満足度スコアが15ポイント向上した事例が報告されています。

営業・マーケティングでは、リード情報の自動収集・スコアリングから提案資料の作成、スケジュール調整までを処理する例があります。また、社内業務効率化では、経費精算、議事録の作成・要約、プロジェクト管理の自動更新などが代表的です。

ポイント

導入を検討するときは、業務が1つのAIで足りるか、役割分担が要るかを先に見極めることが出発点になります。その結果を、構成と費用の比較に使います。

AIエージェント開発の進め方

AIエージェント開発が要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの順に進む流れ図。
出力の不確実性に備え、開発中も検証と改善を重ねます。

AIエージェント開発は、ウォーターフォール型やアジャイル型で進められます。作業は、要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3つのフェーズに分けて、本番リリースまで順に進めます。ただし、AI特有の不確実性を見込む必要があります。LLMを活用する場合は出力が確率的なため、繰り返しの検証と改善が欠かせません。

要件定義・企画フェーズ

最初に、「なぜAIエージェントが必要なのか」というビジネス課題を明確にします。「AIを使いたい」という手段が先行すると、課題が曖昧なまま開発が進みかねません。成功するプロジェクトでは、たとえば「月間3,000件の問い合わせのうち、定型的な1,800件を自動対応し、オペレーター人件費を年間2,400万円削減する」といった定量的な目標を設定します。

要件定義では、データソース(CRM、ナレッジベース、外部APIなど)とLLM(GPT-4o、Claude 3.5 Sonnet、Gemini 1.5 Proなど)を洗い出します。ツールは、Web検索、データベース操作、メール送信などを想定します。入力パターン、期待される出力、セキュリティ要件も整理します。

この段階は通常2〜4週間かけ、プロジェクトマネージャー、ビジネスサイドの担当者、AIエンジニアの3者が連携して、PoCを実施するかどうかも判断します。導入実績がない企業は、2〜4週間程度のPoCで技術的な実現可能性と効果の見込みを検証することが推奨されます。PoCの費用相場は100万〜300万円程度です。

設計・開発フェーズ

要件定義の後は、次の4工程で設計と開発を進めます。設計・開発の期間は、シンプルなシングルエージェントで1〜2ヶ月、複数システム連携を含むマルチエージェントで3〜6ヶ月が目安です。

  1. アーキテクチャ設計:シングルかマルチか、RAGを組み合わせるか、どのツールを持たせるかを決める。
  2. プロンプト設計:システムプロンプトで役割・制約・行動指針を定義する。
  3. インテグレーション開発:CRMやERPなどとの連携を実装する。
  4. UI/UX開発:ユーザーが継続して使える画面と操作体験を作る。

LangChain、LlamaIndex、Semantic Kernelなどのフレームワークを使うと、期間を短縮できるケースもあります。連携では、APIや認証・認可に加え、エラーハンドリングとリトライ処理まで作り込みます。また、金融領域では、「投資助言に該当する発言は行わない」「必ず免責事項を付記する」といったルールを組み込んで制御します。

テスト・リリースフェーズ

LLMベースのAIエージェントは、同じ入力でも異なる出力が生成される可能性があります。そのため、評価指標として正確性、関連性、安全性を定め、一貫性も評価の対象にします。数百〜数千パターンのテストケースで、品質を測定します。

自動評価(LLM-as-a-Judge方式)と人手評価を組み合わせるのが一般的です。品質基準を満たしたら限定ユーザーへベータリリースして、実際の利用データを収集します。ベータ期間は通常2〜4週間で、リリース後も品質ダッシュボードとアラートによるモニタリングを続けます。

ポイント

各フェーズは、PoCの結果や品質基準の達成状況を見て次へ進む形で区切ると、AI特有の不確実性に対応しやすくなります。

費用相場とコストの内訳

月間ランニングコストの内訳として、API利用料、クラウドインフラ費用、ベクトルデータベース、監視・ログ管理ツールの月額を4つのパネルで示した図。
費目ごとの幅を見比べると、運用費の構成を把握できます。

AIエージェント開発の費用は、プロジェクトの規模や複雑さによって変わります。内訳は、「人件費と工数」と「ランニングコスト」の2つに分けられます。

人件費と工数

標準的な体制は、プロジェクトマネージャー1名、AIエンジニア(プロンプトエンジニアを含む)1〜3名、バックエンドエンジニア1〜2名です。そのほか、フロントエンドエンジニア1名とQAエンジニア1名が入ります。国内のAI開発企業の相場は、AIエンジニアが月額120万〜200万円、バックエンドエンジニアが月額80万〜150万円、プロジェクトマネージャーが月額100万〜160万円です。

シンプルなシングルエージェントの開発(3ヶ月程度)は500万〜1,500万円、複数システム連携を含むマルチエージェントの開発(6ヶ月程度)は1,500万〜5,000万円が初期開発費用の目安です。金額は、既存システム連携、セキュリティ要件、対応言語数によって変動します。なお、金融機関向けでは通常の1.5〜2倍になることもあります。

ベトナムやインドのAI開発チームを活用した場合、国内開発の50〜70%程度のコストで実現できるケースもあります。たとえば、ドメイン知識が必要な工程は国内チームが担い、実装やテストはオフショアに任せるハイブリッド体制が考えられます。

初期費用以外のランニングコスト

リリース後も、LLMのAPI利用料やクラウドインフラ、ベクトルデータベースなどの費用が継続します。このほか、監視・ログ管理や運用保守の費用もかかります。たとえば、OpenAIのGPT-4oを利用する場合、入力トークンあたり$2.50/100万トークン、出力トークンあたり$10.00/100万トークンが課金されます(2025年時点)。

月間10万件、1件あたり入力2,000トークン・出力1,000トークンと仮定すると、月間API利用料は約15万〜20万円程度です。また、クラウドインフラ費用(AWSやGCPのサーバー、データベース、ストレージ)は月額5万〜30万円程度です。ベクトルデータベース(Pinecone、Weaviate、Qdrantなど)は月額3万〜15万円程度、監視・ログ管理ツールは月額2万〜10万円程度です。

運用保守費用は月額30万〜100万円程度を確保することが望ましく、プロンプトのチューニング、新しいナレッジの追加、LLMのバージョンアップ対応のほか、障害対応も含みます。ランニングコストは月額50万〜200万円程度で、年間では600万〜2,400万円です。そのうえで、最低でも3年分のランニングコストを含めたTCO(総保有コスト)で投資判断します。

ポイント

初期開発費だけで比べると、月々の運用費が見落とされやすくなります。初期費用と運用費を合わせて、最低3年分の総額で見ると判断しやすくなります。

見積もりを取る際のポイント

外部委託では、見積もりの精度がプロジェクトの成功を左右します。そこで、要件、比較、リスクの3つの観点から見積もりを確認します。

要件明確化と仕様書の準備

「AIで問い合わせ対応を自動化したい」という依頼だけでは、前提条件が揃わないため、見積もり金額に数倍の開きが出ることがあります。そこで、RFP(提案依頼書)には、プロジェクトの背景と目的、対象業務の現状フロー、機能と非機能要件を整理します。

データの種類と量、セキュリティ・コンプライアンス要件も示します。また、予算の上限と希望スケジュールも伝えます。

複数社比較と発注先の選び方

最低でも3社以上から見積もりを取ります。その際に確認するのは、AIエージェント開発の実績、プロンプトエンジニアリングやLLMの特性理解、評価手法の設計です。技術スタックの適合性と運用保守体制も見ます。

AI開発の実績がない企業に発注して失敗したプロジェクトの割合は約40%に上るという調査結果もあります。また、クラウド環境では、AWS、GCP、Azureなどとの適合性を見ます。LLMプロバイダーでは、OpenAI、Anthropic、Googleなどとの適合性も比べます。

契約形態は、準委任契約と請負契約でリスク分担が変わるため、金額に加えて比べます。

注意すべきリスクと対策

回答の誤り、範囲の膨張、LLMの提供元への依存、データの扱いの4点には、それぞれ対策を決めておく必要があります。

  • ハルシネーション:RAGで根拠を引用し、確信度が低い場合は人間へエスカレーションする仕組み。
  • スコープクリープ:MVP(最小実用製品)の範囲を決め、追加機能はフェーズ2以降へ回す。
  • LLMプロバイダー依存:抽象化レイヤーを設け、LiteLLMやOpenRouterで複数プロバイダーを統一的なインターフェースで扱える状態。
  • データセキュリティ:LLMプロバイダーのデータ利用ポリシー、学習データへの利用設定、データ送受信の暗号化の確認。

ポイント

見積もりは、同じ要件と前提で依頼してから比べます。そのうえでリスクへの対策も含めて判断すると、金額の差が何によるものかを読み取りやすくなります。

まとめ

AIエージェント開発は、要件定義でビジネス課題と定量的な目標を明確にし、PoCで技術的な実現可能性を検証してから本格開発へ進みます。プロンプト設計やガードレール、LLM特有のテストも重要です。

費用相場は、シンプルなシングルエージェントで500万〜1,500万円、マルチエージェントで1,500万〜5,000万円が初期開発の目安です。ランニングコストは月額50万〜200万円程度で、最低3年分を含めたTCOで投資判断します。発注先は、最低3社以上を比較します。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。