フルスクラッチ・オーダーメイド開発は、業務に合わせて作れる一方で、保守の負担が長く続きます。その重さは、独自仕様、保守体制、契約条件によって変わります。
保守の重さ、ロックイン、設計と費用の順に、保守不安や移管、パッケージとの長期比較を踏まえた判断材料を見ていきます。
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フルスクラッチ・オーダーメイドと保守開発の結びつき
検討の段階では、機能や費用、納期といった初期開発に目が向きがちです。
初期開発は数か月から1年程度ですが、運用・保守は5年、10年と続きます。そのため、保守開発の累計が初期開発費を上回ることも珍しくありません。
フルスクラッチを選ぶ企業は、独自システムを長く保守する責任も引き受けることになります。保守のしやすさは初期設計に左右されます。
保守を考えずに作ると、改修に膨大な費用がかかるブラックボックスになりかねません。
完全フィットの裏にある保守の負担と、それを生む構造を順に見ていきます。
フルスクラッチ=完全フィットの裏にある保守の重さ
費用感の目安は、CMSも顧客管理システムも200万円程度からです。
- 業務への適合:市販品にない要件を実現でき、競争力の源泉にもなり得ます。
- 保守の個別対応:共通基盤がなく、バグ修正やセキュリティ対応、機能改善を個別に担います。
パッケージでは、ベンダーが世界中の利用者向けに更新やセキュリティ修正を継続して提供します。一方、フルスクラッチでは、保守を担う人や会社を自社で確保し続けなければなりません。
フルスクラッチの自由度は、保守を自分たちで背負う覚悟とセットになります。独自性を保つ保守体制と費用は、発注の段階で見込んでおくことが前提です。
オーダーメイドの独自仕様による保守コストの増加
保守費用の相場は、年間で初期開発費の5〜15%程度です。独自仕様を作り込むと、最大20%程度まで高くなる傾向があります。
- 調査工数が増える:複雑なコードを安全に改修できる人材は限られ、一件ごとに多くの時間がかかります。
- 影響調査が増える:外部API連携や長年の改修では、一箇所の変更が他へ波及しやすく、回帰テストの負担も重くなります。
汎用的な技術や一般的な設計なら、多くのエンジニアが理解できるため、保守の担い手を見つけやすくなります。一方、特殊な仕様は、開発者本人や同じチームでなければ解読が難しい状態を招くことがあります。
初期費用だけでなく、独自仕様が将来の保守費をどれだけ押し上げるかも見ておく必要があります。総保有コストで判断することが、後悔しない投資の鍵になります。
フルスクラッチ保守の最大リスク「ベンダーロックイン」

ベンダーロックインとは、特定の開発会社に保守を依存し、他社へ移ることが事実上難しくなる状態です。
独自システムは開発した会社だけが内部構造を熟知しているため、保守や改修をその会社に頼らざるを得ない場合があります。
費用が割高でも、対応が遅くても、品質に不満があっても、企業は離れにくくなります。保守の悩みの多くは、ベンダーロックインに根本原因があります。
ここでは、独自コードの引き継ぎが難しい理由と、費用が高騰する仕組みを順に見ていきます。
独自コードを他社が引き継ぎにくい理由
独自に作ったコードは、他社にとって解読に手間のかかるものです。移管では、コードの調査と資料の有無が負担を左右します。
- コードの調査:新しい会社は膨大なコードを一行ずつ読み、構造や処理の意図を一から把握することになります。
- 資料不足:仕様書がなければ、手がかりはコードだけになり、解読に膨大な時間がかかります。
- 情報の非対称性:開発元は即座に対応できる一方、他社は一から解読しなければなりません。
移管時には、ソースコードから設計を逆算する「リバースエンジニアリング」が必要になります。その初期コストは相当な金額に膨らみます。既存コードを一から解読するより、最初から作り直した方が安いと言われることもあります。
独自性を追求するほど解読の壁は高まり、乗り換えの自由が失われます。
保守費用が相場の最大20%まで高騰する構造
保守費用は年間で初期開発費の5〜15%程度が相場です。複雑な独自仕様では最大20%程度まで上がります。
たとえば、初期開発に2,000万円かかったシステムなら、通常の保守費用は年間100万〜300万円程度です。ロックインに陥ると、年間400万円に達することもあり得ます。
- 競争原理が働かない:特定の会社しか構造を知らないと相見積もりが取りにくく、条件や費用の主導権を握られてしまいます。
- 契約上の制約:「2年縛り」などの最低期間や途中解約の違約金があり、期間中は身動きがとれません。
こうした制約があると、運用開始後に安く速い会社へ変えたいと思っても、手遅れになりかねません。そのため、契約前に保守移管の可能性まで交渉しておく必要があります。
保守開発しやすいフルスクラッチの作り方

保守の重さやロックインが不安でも、自由度と保守のしやすさは両立できます。その鍵は、初期設計の段階から、将来の保守担当と進め方を考えておくことです。
保守を後回しにすると、ロックインや高コストを招きかねません。
保守性を要件に含めておけば、複数社で保守できる状態を維持できます。
具体策は、アーキテクチャ分割によるマルチベンダー化、OSSの活用、ドキュメントの自社管理です。こうした方針は、発注前にベンダーと合意しておく必要があります。
マイクロサービス化によるマルチベンダー保守
アーキテクチャを工夫することは、ロックインを防ぐ有効な手立てになります。機能同士が密接につながっていると、一部だけを別の会社に任せることが難しくなります。
- モノリシック:全機能を一つのプログラムにまとめた構成です。
- マイクロサービス:機能を独立したモジュールに分けた構成です。
マイクロサービスなら、たとえば決済はA社、在庫管理はB社に任せるように、機能単位でマルチベンダーの体制を組めます。各サービスが明確なインターフェースで疎結合に連携するため、改修の影響が広がりにくく、影響調査の範囲も限定できます。また、特定の一社に依存する状況も避けられます。
ただし、設計の複雑さや運用の手間も増えるため、すべてのシステムに合うとは限りません。長期の保守を見据えた中・大規模システムでは、ロックイン回避と保守性向上の効果が期待できます。発注時には、ベンダーと選定の方針を話し合っておく必要があります。
OSS活用とドキュメントの自社管理による属人化の防止
保守の引き継ぎやすさには、技術の選び方と資料の管理の両方が関わります。
- OSSの活用:広く使われているOSSのフレームワークやライブラリは理解者が多いため、別の会社でも引き継ぎを進められます。
- 利用条件の確認:OSSのライセンスや著作権の帰属を確かめておく必要があります。
- 最も重要な備え:設計書を納品物に含め、改修のたびに最新の資料を自社で保管する体制です。
独自技術や特許を多用すると、担い手が限られてしまいます。さらに、仕様書がなければ移管時にリバースエンジニアリングが必要になり、膨大な初期コストがかかります。
別の会社がいつでも保守を引き継げる状態を保つことは、フルスクラッチの自由とベンダーからの独立を両立させる備えになります。
フルスクラッチ対パッケージと保守開発の費用設計

フルスクラッチとパッケージは保守の仕組みが異なるため、長期の総コストも変わってきます。初期費用が高めでも自由度が高いフルスクラッチに対し、パッケージは費用を抑えやすい反面、独自要件への対応に限界があります。
フルスクラッチでは自社が保守を担い、パッケージではベンダー提供の更新を利用します。そのため、運用年数を踏まえて費用を設計する必要があります。
初期費用と保守ランニングコストの総額による比較
比較するときは、初期開発費に加え、5年・10年にわたる保守費用を含めた総保有コストで考えます。
- フルスクラッチ:独自要件に応えられますが、保守は自社で担うことになります。
- パッケージ:月額・年額のライセンスで、保守・更新の費用が平準化されます。
たとえば、顧客管理システムをフルスクラッチで200万円程度から構築した場合、年間の保守費は初期費の5〜15%です。独自仕様が複雑なら最大20%になり、年間10万〜40万円ほどかかります。5年間の保守費だけで、初期費用に匹敵するか、上回る場合もあります。
パッケージでは、ベンダーがセキュリティ対応や機能更新を共通基盤で提供します。どちらの方式が合うかは、独自要件、利用年数、自社の保守体制で変わります。
利用年数、毎年の保守費、機能追加の頻度を試算して、総額で比べていきます。保守を含めて考えれば、独自開発が合理的になる場合もあります。
準委任・ラボ型による継続的な改修体制の確保
独自システムを長く育てるには、リリース後も改修できる体制を契約で確保する必要があります。
- 準委任契約:作業時間や体制に応じて対価を支払う契約です。
- ラボ型開発:チーム単位でエンジニアを毎月定額で確保する形です。
仕様変更や機能追加が続く保守開発を請負契約に頼り続けると、変更のたびに追加費用の交渉が必要になります。その結果、改善も機動的に進めにくくなります。
ラボ型は、月額10万円程度から、最低契約期間1か月といった条件で開発リソースを確保できます。また、優先順位が変わったときにも柔軟に対応できます。
初期開発は請負契約で行い、その後の保守は準委任やラボ型で続ける方法が、継続運用の現実的な形です。
契約時には、ドキュメント納品、ソースコードの権利帰属、他社へ移管する可能性も条件に含めておくと、ロックインのリスクを抑えられます。
まとめ
フルスクラッチは業務に合うシステムを作れる一方で、独自性によって担い手が限られ、保守費が最大20%まで上がる場合があります。
他社へ移管するときは、リバースエンジニアリングに大きな費用がかかります。さらに、ベンダーロックインに陥るリスクもあります。
対策としては、マイクロサービスによる分割、OSSの活用、設計書を含むドキュメントの自社管理によって、属人化を防ぎます。
費用は、5年・10年の保守費を含めた総保有コストで比べ、準委任やラボ型の契約で改修体制を確保します。
作る段階から保守の担当と方法を見据え、保守性とベンダーからの独立性を要件に含めて、パートナーと相談してください。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
