スマホアプリ開発の新時代:ローコード&ノーコードツールの活用方法と選び方

スマホアプリ開発は、これまでエンジニアだけの領域とされてきました。ローコードとノーコードは、専門知識がなくてもアプリ開発に加われる手法です。両者の違いを押さえ、導入が広がる背景、対応範囲、ツール選びの順に見ていきます。

本テーマの全体像は、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・アプリ開発の完全ガイド(iOS/Android)

ローコード/ノーコードの定義

ローコードとノーコードは、従来のアプリ開発と異なる点が多くあります。まず、両者の定義と違いを押さえておきましょう。

ノーコードとは:完全な非エンジニア向け開発

ノーコードツールとは、プログラミングを一切せずにアプリを組み立てられる開発環境のことです。ドラッグ&ドロップで画面やロジックを作るため、コードを書けなくてもスマホアプリを開発できるのが特長です。

ローコードとは:一部コードの記述が可能な柔軟型

ローコードは、ノーコードと同じくビジュアルUIで構築できます。また、必要な箇所にはカスタムコードを追加できるのが特徴です。非エンジニアでも使えますが、開発チームと連携すれば、複雑な機能の追加にも対応できます。

両者の違いと使い分け

ノーコードは「最短・最小コスト」での立ち上げに向き、一方で、ローコードは「拡張性・柔軟性」が求められる場面に向いています。どちらを選ぶかは、開発の目的や求める機能によって決まります。

ポイント

開発の自由度と、どこまでコードを書く必要があるかで選び分けます。非エンジニアだけで完結させたいならノーコード、後からカスタムコードを足す見込みがあるならローコードが合います。

ローコード/ノーコードが注目される背景

従来の開発手法に比べて、ローコード/ノーコードが急速に広がっている背景は、開発の速さ、エンジニア不足、コストの面にあります。

開発スピードの圧倒的な速さ

ビジュアルUIで組み立てるため、画面の設計や機能の追加を直感的に進められます。その結果、従来の開発よりも数倍速くアプリを立ち上げられます。特に、MVP(最小限の機能での仮運用)の開発に向いています。

エンジニア不足への対応策

IT人材の不足が深刻化するなか、開発をすべて外注するとコストがかさみ、内製化も難しいという課題があります。そこで、非エンジニアでも開発できるノーコードが、企業に歓迎されています。

コスト削減と運用のしやすさ

初期費用を抑えられるうえ、保守や改修もノーコードツール上で完結するため、長期的な運用コストも下げられます。このため、小規模なスタートアップや中小企業でも導入しやすいのが魅力です。

ポイント

開発の速さ、人材不足、コストのどれを重視するかで、導入の価値は変わります。社内にエンジニアを確保しにくい企業ほど、ノーコードの利点を実感しやすいでしょう。

ローコード/ノーコードでできること・できないこと

実際にアプリを開発する前に、ローコード/ノーコードでどこまで対応できるかを把握しておく必要があります。

対応可能な開発領域

次のような簡易的なアプリや業務支援ツールに対応できます。

  • 簡易的なECアプリ
  • イベント予約アプリ
  • 会員制マイページアプリ
  • 社内業務支援ツール(業務アプリ)
  • アンケート、チャットボット機能の開発

特に「データベース連携」や「ユーザー管理」を必要とする業務系アプリとは相性が良く、一定の範囲であれば実用的な品質を実現できます。

対応が難しい領域と限界

次のような開発は、対応が難しくなります。

  • リアルタイム通信やマルチプレイヤー機能
  • ハードウェア連携(IoT、Bluetoothなど)
  • 独自性が高いUX設計
  • 厳格なセキュリティ要件を伴う業界(医療・金融など)

こうした高度な要件を伴う開発では、従来のスクラッチ開発やネイティブアプリが必要になることが多くあります。

ポイント

ECや予約、社内業務など、データ連携が中心のアプリは任せやすい領域です。リアルタイム通信やハードウェア連携を伴う開発は、従来型の開発も検討します。

スマホアプリ向けノーコード/ローコードツールの代表例

市場には多くのローコード・ノーコードツールがありますが、ここでは、スマホアプリの開発で使いやすい代表的なツールを紹介します。

Adalo(アダロ)

完全ノーコードでスマホアプリを作れるツールです。直感的なインターフェースと豊富なテンプレートが特長で、小規模なアプリの立ち上げに適しています。

Glide(グライド)

Googleスプレッドシートと連携すると、データベース機能を持ったアプリを簡単に組み立てられます。業務支援アプリや社内ツールとの相性が良いのが特徴です。

Bubble(バブル)

ローコード寄りの機能を持ち、Webアプリにも強いツールです。自由度が高いため、複雑なロジックや外部API連携にも対応できます。エンジニアと連携しながら開発したい場合に向いています。

Thunkable(サンカブル)

iOSとAndroidの両方に対応したモバイルアプリを開発でき、初心者向けのビジュアルエディタも充実しています。さらに、教育用途にも適しています。

ツール選定時に確認すべき5つのポイント

適切なツールを選ぶには、自社の目的や制約条件に合っているかを、項目ごとに確かめる必要があります。

対応OSとデバイスの種類

ツールによっては、iOSのみ、またはAndroidのみにしか対応していない場合もあります。そのため、両OSに対応しているか、Webアプリとのクロス展開ができるかを、事前に確認しておく必要があります。

拡張性とカスタマイズ性

後から機能を追加できるか、外部サービスとのAPI連携ができるかは、長く運用するうえで欠かせない確認事項です。

利用料金と課金体系

無料プランの範囲、商用利用の制限、ユーザー数やストレージ量による料金の変動を把握し、自社の予算に見合うかを検討する必要があります。

日本語対応とサポート体制

特にノーコードを初めて使う人にとっては、マニュアルやサポートの充実度も重要な判断材料になります。国内ベンダーや日本語のチュートリアルが用意されているツールなら、導入時の不安を減らせます。

実績や導入事例

業界内での導入実績や成功事例を調べれば、自社の業種や目的と合っているかを判断できます。また、開発会社に相談する方法もあります。

ポイント

対応OS、拡張性、料金、日本語サポート、導入実績を、自社の目的と照らして比べます。どれか1点でも条件に合わない候補は、早めに外すとよいでしょう。

ローコード/ノーコード導入時の注意点と成功のコツ

導入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、いくつかの落とし穴を避ける必要があります。ここでは、成功につながる実践のポイントを解説します。

最初から全機能を詰め込まない方針

ノーコードで開発できる範囲には限界があるため、初期段階ではMVP(最小限の製品)に絞るのが理想的です。そのうえで、ユーザーの声を聞きながら段階的に改善していきます。

データ管理とセキュリティ対策の検討

データベースやユーザー情報を扱うアプリでは、外部クラウドの利用に伴うセキュリティリスクにも目を配る必要があります。そのため、情報管理のルールを整備しておくことが大切です。

ポイント

導入後の失敗を防ぐには、最初から全機能を求めず、MVPに絞ることが目安になります。あわせて、データとセキュリティのルールを先に決めておくと、稼働後の手戻りを減らせます。

まとめ

スマホアプリ開発は、もはやエンジニアだけの領域ではありません。ローコード/ノーコードツールの登場によって、ビジネスサイドが自らアプリを開発・改善できる時代になりました。特に、次のような場面で導入の効果が大きくなります。

・MVPで素早くサービスを立ち上げたい
・限られた予算でアプリを構築したい
・社内業務をデジタル化したい場面に向いています。

ただし、向いているアプリには一定の範囲があるため、開発目的や拡張性を見据えてツールを選ぶことが重要です。今後さらに進化が見込まれるノーコード/ローコードを、事業成長のための手段として活用してみるとよいでしょう。

アプリ開発全般については、以下の全体ガイドもあわせてご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・アプリ開発の完全ガイド(iOS/Android)

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。