UI/UXデザインの費用は、30万円程度の小規模な案件から1,000万円を超える大規模な案件まで幅があります。金額を左右するのは、依頼する業務の範囲と開発規模、そして発注先の種類です。
費用感をつかまないまま発注すると、予算オーバーや品質不足といったトラブルにつながりやすくなります。
UI/UXデザインの費用相場とコスト構造

UI/UXデザインの費用は、依頼する業務の範囲と規模、発注先の種類によって大きく変わります。市場では、30万円程度の小規模案件から、大規模なサービスリニューアルで1,000万円を超えるケースまであります。予算を見誤らないために、開発規模ごとの目安と、コストを構成する主な要素を順に見ていきます。
開発規模別の費用目安
規模ごとの費用の目安は、画面数や対象範囲によって次のように分かれます。
- 小規模案件:画面数10枚前後、LP改善、既存UIの部分的な見直しなど(フリーランス30万〜100万円、制作会社80万〜200万円程度)
- 中規模案件:20〜50画面、スマートフォンアプリの新規開発、既存WebサービスのUXリニューアルなど(150万〜500万円が標準的な価格帯)
- 大規模案件:100画面以上、大規模サービスの全面リニューアル、ブランドリデザイン、複数プラットフォーム対応など(500万〜1,500万円以上が目安)
たとえば、スタートアップが最初のアプリ画面を10〜15画面ほど作る場合、ユーザーインタビューや競合調査を含まないシンプルなUIデザインであれば、50万〜80万円で着手できます。
中規模案件で、ユーザーリサーチからプロトタイプ制作まで(ペルソナ設計、ワイヤーフレーム、UIデザインを含む)をセットで依頼すると、制作会社では300万〜500万円と多く見積もられます。同じ業務範囲でも、フリーランスであれば100万〜300万円に抑えられるケースがあります。
大規模案件では、エンタープライズ向けSaaSプロダクト全体のUI/UXを刷新する場合や、ECサイトのコンバージョン改善を含む包括的なリデザインでは、1,000万円を超えることも珍しくありません。デザインシステムの構築(コンポーネントライブラリやスタイルガイドの整備)を含める場合は、200万〜400万円が加算されます。
コストを構成する主な要素
コストの内訳は、主に人件費、業務プロセスの費用、ツール・ライセンス費用に分けられます。
- 人件費:なかでも最大で、全体の70〜80%を占めることが一般的です。
- 業務プロセス費用:UXリサーチや設計、画面制作などフェーズごとの作業にかかる費用です。
- ツール・ライセンス費用:Figma、Sketch、Adobe XD等は月額2,000〜5,000円程度、UserTesting等は月額1万〜5万円程度です。
デザイナーの時給は経験やスキルによって異なり、市場水準はジュニアレベルで3,000〜5,000円、ミドルレベルで5,000〜8,000円、シニアレベルで8,000〜15,000円です。ミドルクラスのUI/UXデザイナー1名を月額に換算すると、60万〜100万円程度になります。
業務プロセスの費用は、UXリサーチ(ユーザーインタビュー・アンケート調査・競合分析)が30万〜150万円、情報設計・ユーザーフロー設計が20万〜80万円、ワイヤーフレーム作成が30万〜100万円です。ビジュアルデザイン(UIデザイン本体)は50万〜300万円、プロトタイプ制作とユーザビリティテストは30万〜120万円となります。依頼時にどのフェーズをどこまで含めるかで、総額は大きく変わります。
UI/UXデザインの見積もり比較のポイント

複数社から見積もりを取ると、見積額が2〜3倍違うことも珍しくありません。大切なのは、その差がなぜ生まれているのかを正しく読み取ることです。見積書の読み方と比較の基準を押さえておくと、価格だけの競争に陥らず、品質とコストのバランスで判断できます。
見積書の読み方と比較の基準
見積書を受け取ったら、まず「デザイン一式〇〇万円」のような大括りの表記に注意してください。信頼できるベンダーの見積書は、業務フェーズごとに項目が分かれています。
たとえば、「UXリサーチ費(ユーザーインタビュー5名・アンケート設計・競合分析含む)」「情報設計費(ユーザーフロー・画面遷移図作成)」「ワイヤーフレーム作成費(20画面分)」のように書かれたものです。残りの「UIデザイン制作費(20画面分・修正3回含む)」「プロトタイプ制作費」「ユーザビリティテスト費」も、フェーズごとに分かれている見積もりが望ましいです。
- 修正回数の上限:格安の見積もりで「無制限」と書かれた場合は後から別途費用が出ることがあり、「各フェーズ2回まで」と明記されていれば条件が明確です。
- 納品物のファイル形式:完成後のファイルが、Figmaの共有データか、すべての画面のPNG書き出しのみかで、後工程の開発コストが変わります。
- デザインシステム・スタイルガイドの有無:含まれていれば長期的なメンテナンスコストを大幅に抑えられ、初期費用が高くても費用対効果が高い選択といえます。
複数社から見積もりを取る方法
相見積もりで金額の差を読むには、各社に同じ内容を渡して条件をそろえておく必要があります。見積書の条件が揃い、横並びで比べやすくなるため、依頼内容は事前に1〜2ページのRFP(提案依頼書)にまとめ、項目ごとに書いておくことが欠かせません。
- 何を作りたいか(サービスやアプリの概要、対象ユーザー像)
- 必要な画面・機能の概要
- 希望する納期
- 予算の目安(幅でも構わない)
- 重視する品質ポイント(デザインクオリティ・スピード・コスト)
相見積もりの組み合わせとしては、「大手制作会社1社・中規模制作会社1〜2社・フリーランス1〜2名」が推奨されます。大手制作会社の見積もりは市場の上限価格の基準に、フリーランスの見積もりは下限価格の基準になります。中規模制作会社は、その中間に位置することが多く、品質・スピード・コストのバランスが取れた選択肢になりやすいです。
見積もりの返答期限は「1週間〜10日」を設定するのが一般的です。短すぎると、十分に検討できないベンダーも出てきます。価格に加えて、「提案内容の質」「担当者のコミュニケーションの丁寧さ」「過去実績のポートフォリオ」も、判断の重要な材料になります。
UI/UXデザインのランニングコストと隠れた費用

UI/UXデザインは、初期費用だけでは終わりません。リリース後も、継続的な改善や保守、アップデートのためのコストがかかります。初期費用だけで予算を組むと、リリース後に予算が足りなくなり、デザイン改善が止まってしまうケースがあります。隠れた費用も含めた総コストを把握したうえで、発注を判断しましょう。
初期費用以外に発生するコスト
リリース後も続く費用は、初期費用とは別の項目として見積もっておく必要があります。改善と保守、調査やツールに関わる費用が、その代表です。
- 継続的なUX改善費用:データ分析、改善の仮説立て、A/Bテスト、デザイン修正を繰り返すための費用です。
- デザインシステムの保守費用:新機能を追加するたびに必要になる、コンポーネントの追加や更新の費用です。
- 調査・ツールのライセンス費用:ユーザー調査の実施費用と、リサーチツールやデザインツールの利用料です。
UX改善費用は月額20万〜80万円程度が一般的です。アプリの場合は、OSアップデートへの対応も定期的に発生し、iOSとAndroidそれぞれの新バージョン対応に1回あたり10万〜50万円かかるケースがあります。
見落とされがちなのはデザインシステムの保守で、月額10万〜30万円程度の保守契約を結ぶケースが多くなります。ユーザビリティテストやユーザーインタビューを定期的に実施する場合は、1回の調査あたり20万〜80万円かかります。外部リサーチツール(UserTesting、Maze、Hotjarなど)の月額費用も含めると、年間で50万〜200万円になることがあります。
デザインツール(Figma、Adobe Creative Cloudなど)のライセンス費用は、1ユーザーあたり月額2,000〜5,000円で、チームで複数人が使用する場合は年間20万〜50万円になります。
コストを抑えるための実践的アプローチ
コストの抑え方は、一度に作る範囲、既製の素材の使い方、体制の作り方の3つの面から考えられます。
- スコープの段階的拡張:最小限の画面・機能に絞ったMVP(最小限の価値あるプロダクト)から始め、段階的に広げる方法です。
- UIキットやデザインテンプレートの活用:ゼロから作らずに使うと、UIデザイン費用を30〜50%削減できるケースがあります。
- 内製化:社内でデザイナーを採用する方法で、案件が継続的に発生する場合は費用対効果が高くなります。
全画面を最初から作り込むと初期費用が膨らみます。そのため、「フェーズ1:コア機能の10画面・80万円」「フェーズ2:追加機能の15画面・60万円」と分けて発注すれば、リスクを分散しながらコストを管理できます。
Figma CommunityやUI kitライブラリには無料・有料のテンプレートが多数あります。ただし、ブランドの独自性が重要なプロダクトでは、テンプレートをそのまま使うとコモディティ感が出やすいため、カスタマイズの費用対効果を慎重に判断する必要があります。
外注の場合、デザイナー1名分の年間費用が200万〜600万円になることがある一方、正社員デザイナーを採用すると年収は400万〜700万円程度(経験によって異なる)です。
UI/UXデザインの見積もり事例と費用シミュレーション
実際のプロジェクト事例をもとに、費用のシミュレーションを見ていきます。「自社の案件では、おおよそいくらかかるのか」というイメージを持っておくと、発注前の予算設定の精度が上がります。ここでは、スマートフォンアプリ、Webサービス、既存サービスのリニューアルという3つの典型的なケースを取り上げます。
ケース別の費用シミュレーション
各ケースの費用は、フェーズごとの内訳を積み上げた合計で示しています。
- ケース1:スタートアップのスマートフォンアプリ新規開発
- ケース2:中規模企業のWebサービス新規構築
- ケース3:大手ECサイトの全面リニューアル
【ケース1:スタートアップのスマートフォンアプリ新規開発】画面数20〜25枚程度のシンプルなBtoCアプリを想定します。費用は、UXリサーチ(ユーザーインタビュー5名・競合分析)が30万円、情報設計・ユーザーフロー設計が20万円、ワイヤーフレーム作成(20画面)が30万円です。UIデザイン制作(20画面・修正3回込み)が80万円、プロトタイプ制作が20万円で、合計約180万円が相場です。
フリーランスに依頼すれば同等のスコープで120万〜150万円に抑えられる可能性があり、リリース後の継続改善費用も月額15万〜30万円を別途見込む必要があります。
【ケース2:中規模企業のWebサービス新規構築】BtoBのSaaSダッシュボードを50画面規模で構築する場合を想定します。UXリサーチ(ユーザーインタビュー10名・業務フロー分析)が60万円、情報設計・ユーザーフロー・画面遷移図作成が40万円、ワイヤーフレーム(50画面)が60万円です。
UIデザイン(50画面・デザインシステム構築込み)が200万円、プロトタイプ・ユーザビリティテストが50万円で、合計約410万円となります。デザインシステムの構築が含まれているため、その後の開発・保守コストを大幅に下げられます。リリース後の保守は、月額20万〜40万円を想定してください。
【ケース3:大手ECサイトの全面リニューアル】月間PV数百万規模のECサイトをリニューアルするケースでは、ユーザーリサーチ(定量・定性調査、既存ユーザー分析)が100万円、情報アーキテクチャ設計が80万円です。
ワイヤーフレーム(PC・スマホ両対応・100画面以上)が150万円、UIデザイン制作が350万円、デザインシステム整備が200万円、A/Bテスト設計・実施が80万円で、合計約960万円となります。大規模案件では、複数のUI/UXデザイナー、UXリサーチャー、プロジェクトマネージャーがチームに加わるため、人件費が大部分を占めます。
見積もり依頼時の注意点とリスク回避
見積もりを依頼する段階で確認しておくと、後からの追加費用を抑えやすくなります。確認の観点は、要件の整理、安すぎる見積もりの理由、契約前の条件の3点です。
- 要件の整理:最低限必要な機能・画面と、あれば望ましい機能・画面をMust/Wantに分けて整理する。
- 安すぎる見積もりの確認:UXリサーチの省略、修正回数が実質0回に近い条件、テンプレートの流用、サポートの不在がないかを見る。
- 契約前の条件確認:修正回数、対応範囲、納品物の形式、サポート期間を、契約前に必ず確かめる。
見積もりを依頼する際に多くの企業が陥るリスクの1つは、「要件が曖昧なまま発注してしまう」ことです。「なんとなくいい感じのデザインにしてほしい」という依頼では、ベンダー側も正確な見積もりを出せません。その結果、後から「こんな機能も必要だった」「もっと画面が多かった」といった追加発注が相次ぎ、当初見積もりの1.5〜2倍に膨らむことも珍しくありません。
相場より著しく安い(相場の50%以下)見積もりには、必ず理由があります。初期費用の安さで発注したものの、仕様変更のたびに追加費用が発生し、結果的に割高になった事例は非常に多いです。
契約形態の選び方も判断を分けるポイントで、固定費用(固定報酬型)は予算管理が明確ですが、要件変更時に追加費用が発生します。一方、時間単価型(準委任契約)は要件変更に柔軟ですが、工数管理が甘いと費用が青天井になるリスクがあります。プロジェクトの要件が固まっている場合は固定費用型、アジャイル的に進化させる場合は時間単価型が適しています。
まとめ
UI/UXデザインの費用相場は、小規模案件で30万〜200万円、中規模案件で150万〜500万円、大規模案件で500万〜1,500万円以上が目安です。コストの大部分を占めるのはデザイナーの人件費で、シニアレベルのUI/UXデザイナーの時給は8,000〜15,000円に達します。
見積もりを比べるときは、「デザイン一式」のような大括りの表記ではなく、業務フェーズごとの内訳を必ず確認しましょう。修正回数や納品物の形式、サポート期間といった条件も、見積書で明確にされているかを確かめます。そのうえで条件を揃えて複数社を比べると、価格と品質の適切なバランスを見極めやすくなります。
初期費用に加えて、リリース後のUX改善費用(月額20万〜80万円)、デザインシステム保守費用(月額10万〜30万円)、ツールライセンス費用(年間20万〜50万円)といったランニングコストがあります。予算は、これらも含めて組むことが欠かせません。安すぎる見積もりには必ず理由があり、追加発注が相次いで結果的に割高になるおそれもあります。
UI/UXデザインへの投資は、コンバージョン改善・ユーザー定着・ブランド価値向上という形で、ビジネス成果に直結します。費用対効果を正しく評価し、自社の目標に合ったパートナー選定と適切な予算配分で、UI/UXデザインプロジェクトを成功に導いてください。
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
