Web/ウェブアプリ開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

フルスクラッチ開発(オーダーメイド開発)は、言語やフレームワークに依存せず、自社の業務に沿ってWebアプリをゼロから作る方法です。

選ぶときは、予算とスピード、業務要件の特殊性、将来の拡張性を順に見極めます。そうすれば、過剰な投資を避けながら、事業に合う仕組みを作れます。

▼全体ガイドの記事
・Web/ウェブアプリ開発の完全ガイド

フルスクラッチ開発のメリット

フルスクラッチ開発を中心に、設計の自由、既存業務への適合、拡張性、IP資産化を配置した図。
業務への適合から資産化まで、利点の広がりを示しています。

フルスクラッチ開発では、既存の仕組みに業務を合わせる必要がありません。その代わりに、自社の業務やビジネスモデルに沿って設計できます。Webアプリならではの主な利点は、設計の自由、既存業務への適合、拡張性とIP資産化です。

Webアプリは、フロントエンド、バックエンド、データベースの3層で構成されます。フルスクラッチなら、操作感や処理ロジック、データ構造まで柔軟に設計でき、それが強みになります。

3層構成の自由設計と業務への完全フィット

フルスクラッチでは、想定するトラフィックやデータ量に合わせて、Webアーキテクチャを設計できます。

  • 操作体験を重視:ページ遷移のないSPA(シングルページアプリケーション)が選択肢になります。
  • 初期表示速度やSEOを重視:SSR(サーバーサイドレンダリング)を採用する選択肢があります。
  • 業務との適合を重視:独自フローや基幹システムとのAPI連携を設計できます。

パッケージやSaaSは、提供元が決めた構成に従うため、同じ技術選択の自由は得られません。

企業独自の業務フローや商習慣は、既製システムでは対応しきれないことがあります。その場合は、業務のほうをシステムに合わせる必要が生じます。

第二のメリットは、既存業務への完全フィットです。独自フローや社内基幹システム(ERPなど)との複雑なAPI連携も、実態に合わせて設計できます。そのため、業務を無理に合わせずに済みます。

現場が使いやすい仕組みを作り込めることは、定着率を左右します。さらに、業務効率化のボトルネック解消にもつながります。

無限の拡張性とIP(知的財産)の資産化

第三のメリットは、拡張性とIP(知的財産)の資産化です。既製サービスとの違いは、機能を広げられる余地と、資産の持ち方に表れます。

  • 独自機能の拡張:ノーコードやパッケージSaaSでは、拡張できる機能に上限があります。
  • サービス継続性:仕様変更やサービス終了が、事業継続に影響しかねません。
  • 自社IPの保有:システムを長く持ち続けられ、ユーザーが100万人規模でも自社の判断で拡張できます。

フルスクラッチなら、外部ツールの都合に振り回されず、自社の判断でシステムを運用できます。独自SaaSやプラットフォームのように、Webアプリ自体が競争力の源泉となる事業では、自社IPとして資産にできることが、この手法を選ぶ理由になります。Webアプリは単なる業務ツールにとどまらず、自社が独占的に制御できる、事業の中核を担う資産になり得ます。

初期投資だけでなく、長期的な事業成長を見据えた資産価値も含めて判断することが重要です。

ポイント

利点が自社の事業の強みに直結するかで判断します。操作性や業務への適合に加え、システムを自社IPとして持ち続けられるかも見極めます。

フルスクラッチ開発のデメリットと費用・期間

フルスクラッチの負担を把握せずに選ぶと、予算超過やプロジェクトの頓挫につながることがあります。

大きなメリットの一方で、初期費用と開発期間、継続的な保守運用の負担がかかります。費用と期間の目安は、数値とともに後述します。

高額な初期費用と長期間の開発

要件定義から設計、実装までをゼロから行うため、エンジニアの人件費が費用に反映されます。その結果、初期費用が高く、開発期間も長くなります。

  • 小規模なMVP:100万〜500万円、開発期間は2〜6か月が目安です。
  • 中規模の標準的な業務システム:700万〜1,500万円、4〜8か月が目安です。
  • 大規模なエンタープライズ向け:2,000万〜5,000万円以上、8か月〜1年以上が相場です。

既製のパッケージやSaaSは月額数万円から導入でき、最短で数日〜数週間で使い始められます。

新規事業や予算に限りがある計画では、初期投資と立ち上げ期間が制約になります。さらに、市場投入が遅れると、機会損失につながることもあります。

自由度のために時間と費用をかける価値があるかは、自社の状況に照らして判断する必要があります。

継続的な保守運用負担

見逃せないデメリットは、継続的な保守運用の負担です。保守は自社か委託先が担うため、運用費用と継続作業をあらかじめ見積もっておく必要があります。

  • 継続作業:バグ修正、セキュリティ対応、バージョンアップが必要です。
  • インフラと更新対応:クラウド費用は月額数万〜数十万円で、OSやブラウザの更新にも追従します。
  • 年間保守費:初期開発費の15〜20%が相場で、初期費1,500万円なら年間225万〜300万円です。

公開したあとも、継続的なメンテナンスが続きます。そのため、開発手法を選ぶ段階で、作った後も自社の責任で保守し続けることを織り込んでおきます。

社内に保守体制がない場合は、外部委託費も含めて、長期コストを試算しておきます。

すべてを自社で担う責任範囲の広さ

見落とされがちなデメリットは、システムを動かし続ける責任範囲の広さです。自社か委託先が責任を担い、自由度と引き換えに運用範囲が広がります。

  • セキュリティと障害:脆弱性が公表されたら影響を調べ、修正を当てることになります。
  • 法改正:個人情報保護法などへの対応を判断し、システムに組み込みます。
  • 環境の変化:ブラウザの仕様変更などに追従します。

パッケージやSaaSでは、こうした対応の多くを提供元が担います。利用者は月額料金を払い、運用の裏側を提供元に委ねているとも言えます。

開発手法を決める段階で、自社に責任を担う体制があるか、信頼できる委託先を確保できるかを確かめておきます。

ポイント

初期費用や開発期間だけでなく、保守運用と責任範囲まで含めた長期のコストで比べます。その負担を事業の価値で埋められるかが、判断の目安です。

パッケージ・SaaS・ノーコードとの判断フロー

ノーコード、SaaS/パッケージ、既製品で要件を満たせるかの確認を経て、フルスクラッチへ進む判断フロー。
既製品で要件を満たせるかが、次の選択肢へ進む分岐点です。

まず自社の要件と制約を整理し、選択肢を段階的に比べることで、フルスクラッチが適するかを見極められます。判断フローは、予算・速度と、要件の特殊性・将来性という2つの観点で見ていきます。既製品から検討し、要件を満たせない場合にフルスクラッチを考えます。

予算・スピード重視ならノーコードやSaaS

判断フローの第一段階では、予算と市場投入の速さを確かめます。そのうえで、既製品で要件を満たせるかを見ます。

  1. ノーコードで市場検証:予算と速度を重視する場合に検討します。
  2. 既製品の標準機能を確認:業務を既製品に合わせられるか見ます。
  3. 要件への適合を確かめる:標準機能で要件を満たせるか判断します。

予算300万円以下で1〜3か月以内にMVPを作るなら、Bubble等が候補になります。プログラミングが要らず、フルスクラッチの約1/3にあたる100万〜300万円で構築できます。

ノーコードは立ち上げが速い一方で、利用規模が広がるとライセンス課金が高額になることがあります。複雑な外部連携に対応できない制約もあるため、素早い市場検証に使います。

業務フローをSaaSやCMS(WordPress等)、パッケージに合わせられ、標準機能で十分なら、初期費用と開発期間を抑えられます。さらに、提供元の保守も受けられます。

既製品で要件を満たせれば、総所有コスト(TCO)の面でも有利になります。特殊に見える業務でも、一般的な流れに収まることがあります。そのため、丁寧に確認することが過剰な投資を避けることにつながります。

特に、多くの業務系Webアプリは、この段階で既製品で十分と判断できる場合があります。

要件の特殊性と将来性ならフルスクラッチ

判断フローの第二段階では、要件の特殊性と将来性を確かめます。既製品で要件を満たせない場合は、独自性や拡張性から判断します。

  • 独自業務:独自の業務フローへの完全対応が必須です。
  • 大規模化:将来的に大規模なスケールが見込まれます。
  • 独自の価値:独自UI/UXが事業の競争力に直結します。

これらに当てはまる場合は、フルスクラッチが適した選択肢になります。ただし、初期コストと期間はかかります。その分、成長のボトルネックを避け、事業の競争力になり得ます。

判断は「ノーコード→SaaS/パッケージ→フルスクラッチ」の順で進めます。まず安価で速い選択肢を確認し、限界があるときに次へ進みます。この順序なら、SaaSで足りるのに過剰な開発をする失敗を避けやすくなります。

独自性やスケールが事業の成否を左右するなら、IP資産を築く価値があり、これが開発手法選定の核心です。

ポイント

まずノーコードやSaaSで要件を満たせるかを見て、満たせないときだけフルスクラッチを選びます。特殊な業務や大規模化の見込みがあるかも、判断材料になります。

フルスクラッチを成功させるポイント

MVPによるスコープ管理、総所有コストと隠れ費用の確保、外注先の見極めと役割分担を並べたチェックリスト。
範囲・予算・依頼体制の3方向から実践策を整理しています。

投資を成果につなげるには、MVPで範囲を管理し、TCOと隠れ費用を確保し、外注先と役割を分けることが大切です。費用と期間の数値も踏まえて、3つの実践策を整理します。

MVPによるスコープ管理とTCOの確保

第一のポイントは、MVPによるスコープ管理です。要望を詰め込みすぎると予算が破綻するため、最初に作る範囲を絞ります。

  • MVPで範囲を絞る
  • 見積もりを圧縮する
  • 複数年のTCOを確保する
  • 追加開発費を見込む

MVP(実用最小限の製品)は、たとえばコア機能を10機能程度に絞ってリリースします。そのうえで、ユーザーの反応を見ながら、段階的に機能を追加していきます。

この進め方なら、3,000万円の見積もりを900万〜1,500万円に圧縮でき、削減幅は50〜70%です。

第二のポイントは、総所有コスト(TCO)と隠れ費用の確保です。初期開発費だけで予算を使い切らないよう、継続費用も見込んでおきます。

機能追加やアップデートの費用は、初年度に初期開発費の30〜50%程度かかります。たとえば初期費が1,500万円なら、450万〜750万円になります。

フルスクラッチの投資を成功させる前提として、複数年のTCOで判断することが大切です。

外注先の見極めと役割分担によるコスト最適化

第三のポイントは、外注先の見極めと役割分担です。依頼先によって人月単価が異なるため、実績や得意領域を確かめます。

  • フリーランス:人月単価は60万〜80万円が相場です。
  • 中小開発会社:人月単価は80万〜160万円が相場です。
  • 大手SIer:人月単価は150万〜300万円が相場です。

1社に丸投げすると、中間マージンで費用が膨らみやすくなります。さらに、開発内容が見えにくくなり、自社で制御できないリスクもあります。

また、安価なフリーランスへの丸投げにも注意が必要です。属人化や品質の不安定さが起きやすく、担当者が離れると保守できなくなることがあります。

業務範囲を分け、要件定義や中核設計は信頼できる中小専門会社に依頼して、一部の実装をフリーランスに切り出す方法があります。

この役割分担なら、相場700万〜1,500万円の開発を500万円程度に抑えられます。さらに、設計の主導権を自社に残し、属人化リスクも避けられます。

誰に、どこまで、どう任せるかという発注の設計が、成功とコストを左右します。そのため、自社が主導権を握れる体制を整えておきます。

ポイント

最初の範囲をMVPで絞り、継続費用を含む複数年のTCOで予算を見ます。外注は、主導権を自社に残せる役割分担になっているかで判断します。

まとめ

フルスクラッチは、3層構成を自由に設計し、独自の業務に合わせ、システムをIP資産として拡張できます。一方で、初期費用と保守費用はかかります。

費用の目安は、小規模が100万〜500万円、中規模が700万〜1,500万円、大規模が2,000万〜5,000万円以上です。年間保守費は、初期費の15〜20%が相場です。

まずノーコードやSaaS、パッケージを検討します。そして、既製品で満たせない独自性やスケールが事業の成否を左右する場合に、フルスクラッチを選びます。

MVPで範囲を絞り、初年度の追加開発費(初期開発費の30〜50%)を含むTCOを確保します。分割して発注し、自社の主導権を保つことも、成功につながります。

自社の要件と将来像に照らして、自由度に投資する価値を見極めることが、Webアプリ開発の判断につながります。

▼全体ガイドの記事
・Web/ウェブアプリ開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。