アプリケーションのモダナイゼーションの事例/成功事例について

モダナイゼーションの事例は、費用・速度・継続性の3つの面から見ると効果が具体的に分かります。成果につなげるには、適切な手法を選び、段階的に移行することが欠かせません。

まず必要性を押さえ、成功・失敗事例、自社で活かす手順へと進みます。ここで扱う事例は、自社の刷新に役立つ実践的なヒントとしてお役立てください。各テーマの詳細は関連記事もご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・アプリケーションのモダナイゼーションの完全ガイド

事例から学ぶ前に:今モダナイゼーションが必要な理由

個別の事例を見る前に、モダナイゼーションが注目される背景を押さえておきます。成功事例と失敗事例の出発点には、老朽化・属人化・ブラックボックス化という構造的な課題があります。

これらを放置した影響を理解すると、後で見る事例の意味がより明確になります。また、経済産業省のDXレポートも、レガシーシステム放置による経営への影響を警告しています(出典:経済産業省)。

2025年の崖とレガシー放置のリスク

経産省のDXレポートは、複雑・老朽化・ブラックボックス化したシステムが残れば、2025年以降に年最大12兆円(現在の約3倍)の損失が出る可能性を示しています(出典:経済産業省)。

レガシーシステムの問題には、動作の遅さや古さに加えて、内部の見えにくさもあります。長年の改修で内部構造が複雑になり、仕様を知る担当者の退職や高齢化が重なると、全体像を把握できなくなることがあります。

業界団体であるJUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査では、約7割の企業がレガシー化の課題を抱えています。放置すると、経営には次のようなリスクが表れます。

  • 市場の変化に素早く対応できなくなる
  • 保守費が高騰する
  • セキュリティリスクが増大する
  • 災害時の事業継続性が低下する

そのため、モダナイゼーションは「2025年の崖」から企業を救い出すための取り組みです。

成功事例を評価する3つの観点

投資判断や経営上のリスクを踏まえると、事例の効果は次の観点で評価できます。

  • コスト削減:サーバーやライセンスの保守費、運用人件費を定量的に評価し、投資回収の根拠にします。
  • 業務スピード:夜間バッチや新機能のリリースまでの時間短縮が、ビジネスの俊敏性に直結します。
  • 継続性とリスク:属人化の解消、災害時の復旧性、セキュリティ強化など、見えにくい経営効果も含みます。

後で見る事例では、選んだ手法と得られた成果を、これらの観点で確認します。また、アプリケーション層をクラウドネイティブに作り変えることで、多面的な効果が生まれています。

ポイント

刷新の必要性は、放置した場合の経営リスクまで含めて判断すると見落としが減ります。事例はコスト・スピード・継続性の3つの観点で比べると、効果の違いが分かります。

アプリケーションのモダナイゼーション成功事例

製造業、イオングループ、大規模ログ解析の3事例について、保守費65%削減、月間約700時間削減、運用作業負担5分の1を並べた図解。
事例ごとに、保守費・業務時間・運用負担の成果が表れています。

成功事例では、課題に応じてリビルドやリファクタリング、自動化基盤を選び、数値目標を達成しています。各社の手法と効果を見比べて、自社に近い事例を探してください。

製造業:COBOL基幹系刷新で保守費65%削減

従業員約1,200名の製造業では、数十年稼働してきたCOBOL基幹系が課題でした。特に負担になっていたのは、次の点です。

  • 保守体制:COBOL技術者の高齢化で逼迫していました。
  • 処理時間:夜間バッチが8時間に達していました。

同社は、メインフレームの資産を最新のオープン環境へ作り変えるリビルドを選び、約16ヶ月で刷新しました。その結果、バッチ処理は8時間から90分へ約80%短縮されました。

年間2,400万円の保守費は850万円となり、約65%削減されました。さらに、COBOL依存も解消され、一般的な技術者が保守できます。このように、リビルドはコスト削減・速度向上・属人化解消を同時にもたらしました。

イオングループ:業務プロセス分析で月700時間削減

イオングループは、システム刷新と並行して、RPA(業務自動化ツール)の導入前に業務プロセスを分析しました。業務を次のように分けてから着手しています。

  • 自動化する業務:RPAを適用する対象です。
  • 廃止する業務:自動化せず、業務そのものをなくします。

業務プロセス分析により、月間約700時間を削減しました。業務を洗い出して標準化しておくと、刷新後の効果が高まります。さらに、クラウドネイティブな業務基盤でも、業務の流れを見える形にしてムダを減らすことが有効です。

この事例は特に、モダナイゼーションが技術の置き換えだけでは完結しないことを示しています。

大規模ログ解析:可視化で数億円のコスト効果

通信ログの規模は、解析対象となった機器とサーバーの数から把握できます。

  • ネットワーク機器:200種・30,000台
  • サーバー:10,000台

この規模のもとで、1日あたり10億件の通信ログを集計・解析しました。ログをデータ基盤で見える化し、保守費の高い機器や稼働率の低い機器を特定しました。その結果、運用担当者の作業負担は従来の5分の1になり、数億円規模の投資対効果が生まれました。

手作業のログ確認をクラウド解析基盤に替え、人手では難しい改善を実現しました。さらに、運用をデータドリブンに変えるとともに、アプリケーション層のクラウド化でコスト構造も変えています。

ポイント

事例を選ぶときは、課題の種類、採った手法、数値目標の達成状況を並べて比べると、自社に近い事例を見つけやすくなります。

失敗事例から学ぶ:江崎グリコの出荷停止トラブル

移行トラブルへの備えとして、段階的な切り替え、移行リハーサル、切り戻しの準備を示す3項目のチェックリスト。
切り替え前の準備が、障害の影響を抑える助けになります。

モダナイゼーションは大規模で複雑なため、計画の不備が業務停止を招くことがあります。江崎グリコの事例からは、障害の原因と、回避に必要だった備えを確認できます。また、成功事例だけでなく、失敗事例からも多くの教訓を得られます。

移行計画の不備が招いた全品出荷停止

江崎グリコでは、基幹システムの切り替え後に障害が連鎖し、チルド商品の全品出荷が長期間停止しました。受注から出荷までの業務が回らず、移行計画の不備が原因の中心とされています。

移行上の問題は、切り替え方式と本番前の検証にありました。

  • 一括切り替え:ビッグバン型では、問題時に旧システムへ戻す退避策が機能しにくい状況でした。
  • 事前検証:テストや移行検証で本番の業務量・データ量を再現できなかった可能性があります。

動くシステムを作るだけでなく、安全に切り替えるための計画も欠かせません。

失敗から導く成功の条件

失敗事例を踏まえると、成功の条件は、段階的な切り替え、移行リハーサル、切り戻しの準備になります。

  1. 全社一括を避け、ストラングラーパターン(段階的置き換え)で機能単位に進めます。
  2. 本番に近いデータ量・業務量で、移行リハーサルを繰り返します。
  3. 切り戻しの手順を事前に用意し、障害時に機能するかをテストします。

一部の機能から始めて次へ進むのは、障害の影響範囲を限定するためです。

製造業は16ヶ月かけて刷新した一方で、グリコでは切り替えに無理がありました。移行の設計は、技術の選定と並んで成否を左右します。

ポイント

段階的な切り替え、移行リハーサル、切り戻しの準備を計画に組み込み、本番に近い条件で確かめておくと、障害時の影響範囲を限定しやすくなります。

事例を自社に活かすための実践ステップ

現行資産の棚卸しから効果目標と手法の選定、段階的な移行設計へ進む、アプリケーション刷新の3段階の流れ図。
現状把握を起点に、選定と移行の設計へ進みます。

事例をそのまま真似ても、同じ成果が出るとは限りません。適切な手法と進め方を選ぶには、まず自社の現状を診断する必要があります。そのうえで、自社で実践する手順を順に見ていきます。

現状資産の棚卸しと効果目標の設定

まず、現行のアプリケーション資産を洗い出し、各システムが支える業務と保守費を一覧にします。たとえば、製造業の事例では、夜間バッチが8時間、年間保守費が2,400万円でした。

現状の数値が明確だったため、刷新後の処理時間を約80%短縮し、保守費を約65%削減したと示せました。改善目標を数値で置くには、現状をしっかりつかんでおく必要があります。

発注側と開発会社は、刷新後に目指す効果を、コスト削減・業務スピード・事業継続性の観点から決めておきます。

  • 保守費:3年で半減を目指す
  • リリースリードタイム:2週間から3日への短縮

具体的な目標は、手法の選定や投資判断の基準になります。目標があいまいだと成功の定義が定まらず、プロジェクトが迷走する原因になります。

手法選定と段階的移行の設計

現状把握の後は、刷新の手法を選びます。手法によって、かかる費用や期間、向いている場面が異なります。

  1. 短期のクラウド移行では、リホスト型が候補です。
  2. 抜本的な刷新では、リビルド型を候補にします。
  3. 手法を決めたら、段階的な移行を計画し、機能ごとにリハーサルと検証を重ねます。

費用と期間の目安は、リホスト型が数百万〜1,000万円台・3〜6ヶ月、リビルド型が2,000万円以上・12〜18ヶ月以上です。

なお、単一業務システムの刷新費用は3,000万〜1.5億円、大規模な刷新は1.5億〜5億円程度が一般的な目安です。大規模な刷新では、基幹システムに加えて複数の周辺システムも含まれます。

江崎グリコの失敗を踏まえると、切り替えの範囲と順序を最初に決めておく必要があります。影響の小さい機能から移せば、問題が起きても影響を限られた範囲に留められます。

社内に経験者が少ないときは、現状分析から手法選定、移行設計まで一貫して支援できるパートナーに相談すると、失敗の回避につながることがあります。また、大切なのは、事例の成果だけでなく、その背景にある慎重な進め方を自社で再現することです。

ポイント

現状の数値を押さえたうえで手法を選ぶときは、費用と期間の目安を並べて比べ、社内に経験者が少なければ、一貫して支援できるパートナーへの相談も候補に入れるとよいでしょう。

まとめ

ここまで、アプリケーションのモダナイゼーションの成功事例と失敗事例を、定量的な効果データとともに見てきました。成功事例では、製造業がCOBOL基幹系の刷新でバッチを8時間から90分へ短縮し、保守費を65%削減しました。

イオングループは業務プロセス分析で月700時間を削減しており、大規模ログの見える化では数億円の効果が生まれました。江崎グリコの出荷停止事例からは、段階的移行と移行リハーサルの重要性が分かります。

成果を再現するには、現行資産を洗い出して目標を数値で示し、状況に合う手法を選びます。リホストやリビルドを選択肢として、段階的な移行を計画します。事例に共通するのは、適切な手法選定と慎重な移行設計が成否を分ける点です。

モダナイゼーションは、アプリケーション層をクラウドネイティブに作り変え、経営の俊敏性を取り戻す投資です。現状分析から移行まで支援できる専門パートナーへの相談も検討できます。

▼全体ガイドの記事
・アプリケーションのモダナイゼーションの完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。