アプリ更改で見直すべき機能・対象範囲の一覧について

アプリ更改で見直す機能は、利用者が触れる画面から配信・監視までの4つの領域に分けて洗い出します。そのうえで、更改の契機と影響に応じて、作り替える範囲と残す範囲を決めます。

更改の進め方や費用感を含む全体像は、アプリ更改の完全ガイドもあわせてご覧ください。

アプリ更改で見直すべき対象範囲の全体像

アプリ更改で見直すべき対象範囲の全体像

アプリ更改の対象範囲を、ひとくくりに「アプリ」と捉えると見落としが生じます。実際のアプリは、利用者が触れる画面層と、その下で動くアプリ基盤・SDK層から成ります。さらに、サーバーや外部サービスとつながる連携層と、配信・監視を担う運用層も加わり、これらが重なって一つのアプリを構成しています。

更改で何を見直すかは、この領域ごとに切り分けて考えると整理できます。作り替えの深さは、領域ごとに変えて構いません。たとえば、OSサポート終了の影響を強く受けるのは基盤・SDK層で、ストア要件変更が直撃するのは権限まわりや配信設定です。

一方で、利用者に好評な画面や安定して動いている連携部分は、無理に作り替えないほうが安全な場合もあります。そのため、領域ごとに「見直す必要があるか」「どの手法で扱うか」を判断することが、過不足のない更改につながります。

画面・基盤・連携・運用の4領域による切り分け

アプリ更改の機能は、利用者が触れる画面から配信・監視まで、4つの領域に分けて整理します。

  • 画面・UI:入力、ナビゲーション、画面サイズ、アクセシビリティ
  • 基盤・SDK:開発言語、ライブラリ、SDK、OS APIの対応状況
  • 連携:サーバーAPI、決済・地図・通知など外部サービス
  • 運用:ビルド・配信、ストア申請、クラッシュ監視、利用計測

現状をこの4領域ごとに一覧にすると、今回の更改で本当に手を入れるべき範囲が見えてきます。たとえば、OSサポート終了が契機なら基盤・SDK層が中心になり、ストア要件変更が契機なら運用層と連携層が主役になります。

「アプリを更改する」と漠然と捉えるより、領域ごとに対象範囲を切り分けたほうが、見積もりの精度とリスク管理の両面に効いてきます。

契機ごとに変わる優先の見直し範囲

更改の契機によって、優先して見直す領域は変わります。OS・SDKのサポート終了が契機であれば、まず基盤・SDK層の依存ライブラリと非推奨APIを洗い出すことが最優先です。さらに、古いライブラリに依存した画面が新OSで崩れている場合は、画面層の一部も連動して見直す必要が出てきます。

端末更新が契機であれば、新端末の画面サイズや入力方式に合わせた画面層と、端末固有機能を呼び出す連携層が中心になります。一方で、ストア要件変更が契機の場合は、運用層と連携層の見直しが先に立ちます。その理由は、プライバシー表示の義務化やターゲットAPIレベルの引き上げ、権限取得方法の変更などが、配信設定とOS APIの呼び出し部分に直結するためです。

契機から逆算して優先領域を定めると、限られた予算と期間を無駄なく配分できます。また、契機に直接関係しない領域も「ついでに点検する」価値はあり、長年放置されていた使いにくい画面の見直しや、計測できていなかった利用状況の把握を同時に行うと、更改全体の費用対効果が高まります。契機を起点にしつつ、隣接する領域まで視野を広げるのが、賢い対象範囲の決め方です。

ポイント

迷ったときは、更改の契機に直接かかわる領域から見直す範囲を決め、利用者に定着した画面や安定して動く連携は、無理に作り替えない候補として残しておくとよいでしょう。

領域別に見直すべき機能の一覧

領域別に見直すべき機能の一覧

4つの領域ごとに、アプリ更改で見直すべき機能を一覧にまとめます。一覧の項目は、契機と優先度に応じて取捨選択するのが前提で、すべてを一度に作り替える想定ではありません。自社のアプリと照らし合わせて、どの機能が対象になりそうかを確かめてください。

画面・UI層で見直す機能

画面層では、端末サイズやアクセシビリティへの対応が、画面の使いやすさを左右します。

  • レイアウト:画面サイズ、ノッチ、折りたたみ端末への対応
  • UI部品:最新OSのデザインガイドラインに沿った置換
  • アクセシビリティ:ダークモードや大きな文字サイズへの対応
  • 画面・導線:新OSで崩れる画面や未使用の導線の整理・統廃合

この層は、技術的な追従と同時に「使い勝手の見直し」を行える点に大きな価値があります。特に、長年の追加開発で操作手順が煩雑になったアプリは少なくありません。

そのため、更改のタイミングで本当に必要な操作だけを残す形に再設計すると、利用者の満足度と更改後の保守性の両方が高まります。ただし、利用者に定着している画面を大きく変えると混乱を招くため、変更の範囲は慎重に見極める必要があります。

基盤・SDK層で見直す機能

基盤・SDK層は、OS・SDKのサポート終了を契機とするアプリ更改で、見直しの中心になる領域です。見直すべき機能は、主に5つです。

  • 開発言語・フレームワーク:サポート終了したものの更新
  • OS API:非推奨となった呼び出しの置換
  • 外部ライブラリ・SDK:更新が止まったものの更新、または代替
  • 実行要件:64ビットなど端末・OSが求める要件への適合
  • 全体構成:複雑な依存関係の整理とアーキテクチャの見直し

この層の見直しは、現行システムの依存関係を把握するところから始まります。システムモダナイゼーションの分野でも、資産の複雑度や依存関係の整理は重視されています。富士通が提供する「ソフトウェア地図」のように、資産を地図の形で示す手法が知られています。

同様に、アプリ更改でも、どのライブラリがどの機能に紐づくかを地図のように整理してから着手すると、影響範囲の見落としを防げます。

基盤・SDK層をどこまで作り替えるかは、後述する7Rの手法選定とも直結します。というのも、古い基盤の上に新しいライブラリだけを載せ替えるのか、土台ごと作り直すのかで、必要な工数と将来の保守性が大きく変わるためです。

連携層・運用層で見直す機能

連携層では、外部サービスやサーバーとのつながりを見直します。主な対象は4つです。

  • 認証・通信:サーバーAPIの認証方式と通信のセキュリティ要件
  • 外部SDK:決済・地図・SNSなどの仕様変更への対応
  • プッシュ通知:権限の取得方法と配信基盤の更新
  • 端末機能:カメラ、位置情報、生体認証などの権限の見直し

運用層では、配信と監視の仕組みを点検します。対象は、ストア申請に必要なプライバシー表示やターゲットAPIレベルの設定、クラッシュを検知する監視、利用状況を把握する計測の整備などです。また、更改後にどこで不具合が起きているか、どの機能が使われているかが分かる状態を作っておくと、次の更改サイクルの判断材料になります。

連携層と運用層は、ストア要件変更を契機とする更改で特に重要になります。プラットフォーマーの要件は今後も増えていくため、場当たり的に対応すると、毎回の改修負担が膨らみます。そこで、共通化できる部分は一本化し、要件変更に追従しやすい構成に整えておくことが、長期的な保守コストの抑制につながります。

ポイント

項目は契機と優先度で取捨選択し、利用者に定着した画面の変更は混乱を招くおそれがあるため、影響の大きさを見て範囲を決めます。

見直し範囲と7Rの手法の対応づけ

見直し範囲を7Rの手法に対応づける

見直すべき機能を一覧にしたら、次は機能ごとに「どの手法で扱うか」を対応づけます。そこで参考になるのが、システムモダナイゼーションの分野で広く使われるAWSの「7R」というフレームワークです。アプリ更改の対象範囲の扱い方を考えるうえでも有用です。

機能ごとに適した手法を割り当てる「ポートフォリオアプローチ」が、過不足のない更改の鍵になります。

7R(リホスト・リプラットフォーム他)の内容

7Rは、既存システムをどのように移行・刷新するかを7つの選択肢で整理したフレームワークです。Rehost(そのまま載せ替え)とRelocate(環境間の移設)は、既存システムを別の環境へ移す手法です。アプリ更改に置き換えると、Replatform(一部を最適化して載せ替え)は、古いSDKを最新のものに差し替えて土台を整えるイメージです。

Refactor(内部構造の作り替え)は、複雑化した部分を作り直してアーキテクチャを刷新するイメージです。Repurchase(既製品への置き換え)は、独自開発していた機能を成熟した外部SDKや既製サービスに切り替えることです。さらに、Retireは使われなくなった機能の廃止、Retainは安定して動いている部分をあえて触らない判断に対応します。

なお、費用や期間の目安として、最小限の載せ替えに近いクラウド移行型は数百万〜1,000万円台で3〜6ヶ月、内部構造を作り直す再構築型は2,000万円以上で12〜18ヶ月以上と幅があります。重要なのは、これらの手法に優劣はなく、アプリ全体に単一の手法を当てはめるより、機能ごとに選ぶほうがコストとリスクのバランスを取りやすい点です。

機能ごとに手法を割り当てるポートフォリオの考え方

4領域で洗い出した機能一覧に7Rの手法を書き込んでいくと、更改計画の全体像が見えてきます。具体的には、サポート終了を迎えた開発言語のバージョンアップはReplatform、複雑に絡み合った基盤部分はRefactorに対応づけます。さらに、独自実装していた決済処理は成熟した外部SDKへのRepurchase、使われていない画面はRetire、利用者に定着し安定動作している画面はRetainとします。

このポートフォリオの本質は、「全面作り直し」と「最小改修」の二択に陥らない点にあります。たとえば、すべてをRefactorで作り直すと費用も期間も膨らみ、すべてをRehost相当の最小改修で済ませると将来の更改負担が残ります。そのため、作り替えが必要な箇所にはRefactorで投資し、触らない箇所はRetainで残すことで、限られた予算を集中できます。

手法を割り当てる際は、目先の契機だけでなく次の更改サイクルまで見据えることが大切です。今回はReplatformで最小限に留めるとしても、複雑化した基盤を放置すれば次回はさらに大きなRefactorが必要になります。そのうえで、どこに今投資し、どこを次回に回すかを、機能一覧と7Rの対応表で決めれば、場当たり的でない更改計画を組み立てられます。

ポイント

機能ごとに手法を割り当てるときは、目先の契機だけで決めず、次の更改サイクルまで見据えて、全面作り直しと最小改修の両極端を避けます。

まとめ

アプリ更改で見直すべき機能のまとめ

ここまで、アプリ更改で見直すべき機能と対象範囲の一覧を見てきました。アプリは4つの領域が重なって構成されており、更改の契機がOSサポート終了か、端末更新か、ストア要件変更かによって、優先して見直す領域が変わります。

各領域で見直す機能を一覧にしたうえで、それぞれをReplatform、Refactor、Repurchaseなどの7Rの手法に対応づけると、過不足のない更改計画が組み立てられます。対象範囲を決めるうえで最も避けたいのは、「目の前の不具合だけ直す最小改修」と「この機会に全部作り直す全面刷新」という両極端です。

前者は翌年も同じ作業を繰り返すことになり、後者は費用と稼働中アプリのリスクを膨らませます。そこで、この両極端を避ける鍵は、機能ごとに適した手法を割り当てるポートフォリオアプローチと、依存関係を把握してから着手する姿勢です。

自社のアプリ更改を検討するときは、まず4つの領域に沿って現状の機能を洗い出し、どこを作り替え、どこを残すかを一覧にすることから始めてください。そのうえで、更改の進め方や費用感、手法選定の詳細を体系的に押さえたい場合は、完全ガイドもあわせて活用すると、対象範囲の判断を全体像の中で確かめられます。

見直す範囲を正しく切り分けることが、アプリ更改を成功へ導く出発点になります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。