サーバーサイドに強い開発会社の導入・成功事例は、モノリスの分割、言語の使い分け、API設計の3領域に集まります。
発注の良し悪しは保守コストや拡張性に表れるため、実名と数値の事例で課題と改善の中身を確かめるのが近道です。全体像をつかみたい方は、サーバーサイド開発の完全ガイドからお読みください。
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モノリスからマイクロサービスへの移行事例

サーバーサイドに強い開発事例として、もっとも多く参照されるのが、肥大化したモノリス(一枚岩のアプリケーション)をマイクロサービスへ分割する取り組みです。サービスが成長すると、一つの巨大なコードベースが改修のボトルネックになり、デプロイのたびに全体が止まるリスクも高まります。そこで、国内事業会社の実名事例から、何が成功要因になったのかを確かめます。
クックパッドの100万行Rails分割に学ぶ進め方
レシピサービスを運営するクックパッドは、100万行を超えるモノリシックなRailsアプリケーションをマイクロサービス化しました(媒体:AMBI)。規模がここまで大きくなると、一つの修正が予期せぬ箇所に波及し、新機能の追加速度が目に見えて落ちていきます。また、同社の事例は、巨大なサーバーサイド資産をどう解きほぐすかという点で特に示唆に富みます。
100万行を一度に新言語へ書き換えれば、移行が完了するまで新機能を止めることになりかねません。そのため、発注企業にとっての教訓は「一気にすべてを作り変えない」という原則になります。
- 段階的な切り出し:サービス単位や機能単位で切り出し、独立してデプロイできる形に分けていきます。
- 境界線の引き方:技術の都合ではなく事業ドメインで区切り、組織やビジネスの単位に沿わせるほど運用が安定します。
サーバーサイドに強い会社かどうかは、「止めずに変える」設計を描けるかで見極められます。発注時には、「なぜそこで分けるのか」を事業の言葉で説明できるベンダーを選ぶことが、後の保守性を左右します。
メルカリWebの4年がかり移行と二重運用の現実
メルカリWebのマイクロサービス化は、移行の「期間」と「隠れコスト」を直視させてくれる事例です(媒体:Mercari Engineering)。Web領域の刷新は4年がかりで進められ、その過程では新旧のシステムを数年にわたり並行して稼働させました。
この事実は、発注企業が見落としがちな移行期の負担を生々しく示しています。「移行すれば安くなる」という期待だけで予算を組むと、並行稼働の期間に計画が破綻しかねません。
- 二重運用の費用:旧システムを動かし続けるため、サーバー費用や運用工数は一時的に倍近くまで膨らみます。
- つなぎ込みの開発:新旧の両方を矛盾なく動かすため、追加の開発が要ります。
サーバーサイドに強い会社は、こうした移行期の総コストを最初から見積もりに織り込みます。発注企業にとっては、移行を「数年単位の事業投資」として捉える姿勢が欠かせません。
提案を受ける際は、移行完了までのロードマップと、並行稼働のコストをどう抑えるかまで説明できるかを確認すると、実力のあるパートナーを選ぶ材料になります。
言語の使い分け事例(Rails→Go・Spring併用)

サーバーサイドに強い体制の本質は、事業フェーズに応じて言語を使い分けられる点にあります。初速が要る立ち上げ期と、性能や並行処理が要る成長期では、最適な技術が変わります。
言語を切り替えたり併用したりした実名事例からは、発注判断のヒントが得られます。
Baseconnect(Musubu)のRails→Go移行事例
企業情報データベース「Musubu」を運営するBaseconnectは、RailsからGoへサーバーサイドを移行した事例として注目されます(媒体:Baseconnect Tech blog)。Railsで素早く立ち上げたサービスが成長し、性能や並行処理、型による堅牢性が求められる段階になったタイミングで、BFF(バックエンド・フォー・フロントエンド)層をGoで構築しました。
これは「初速のRails、成長期のGo」という王道の使い分けを地で行く事例です。同社が示したのは、移行を成功させるための体制づくりの工夫です。たとえば、Response Layerでは、APIレスポンスのHashをプレーンなクラスへマッピングし、データの受け渡しを型で守る設計を採りました。
- DIコンテナ「dicon」:GoのBFFで独自に開発し、依存関係を整理して保守性を高めました。
- テスト用モックの自動生成:impast/mockerを内製し、テストの効率を引き上げています。
言語の移行では、テストやDIといった開発を支える土台まで整えてはじめて、移行後の保守性が担保されます。サーバーサイドに強い会社を選ぶ際は、言語の知識に加えて、こうした基盤づくりの引き出しを持っているかを確かめることが大切です。
STORES・リクルートに見るRailsとSpring併用
STORESは、Ruby on RailsとSpring(Java)の双方を実務で扱い、その特性を比較した知見を公開しています(媒体:STORES Product Blog)。Railsは規約に沿えば素早く作れる一方、Spring/Javaは型安全とエンタープライズ向けの堅牢さに優れます。
両方を使い分けられる体制は、サービスの性質に合わせて最適なサーバーサイドを選べる強みになります。
リクルートも、SpringとRailsでサービスを分けつつ、Go言語の本格導入を進めた事例を「Go言語を使って1年」という形で振り返っています(媒体:リクルート テックブログ)。
大規模組織では、すべてを一つの言語に統一するよりも、サービスの要件に合わせて複数言語を共存させるほうが現実的です。これは、サーバーサイドに強い大手の標準的な戦略と言えます。
- 単一言語への固執:「うちはRails専門です」「Javaしかやりません」と単一言語だけを推す会社は、必ずしも自社に最適とは限りません。
- 中立的な提案:複数言語の長所と短所を理解し、自社の事業フェーズに合わせて提案できる体制が求められます。
こうした体制を持つ会社は、長期的に頼れるパートナーになります。言語別の使い分けの詳細は、この後の早見でも触れます。
API設計・GraphQL運用の実践事例

サーバーサイドの強さは、API設計の巧拙にも色濃く表れます。REST・GraphQL・gRPCはそれぞれ得意分野が異なり、どれを選ぶかで開発効率も性能も変わります。
API設計を要件で使い分けた事例と、GraphQLを本番運用する企業の知見からは、発注判断に効くポイントが読み取れます。
用途で使い分けるAPIプロトコル選定の事例
マネーフォワードの事例は、API設計を要件で使い分ける好例です(媒体:Findy Engineer Lab)。同社は帳票APIにgRPC、マスタAPIにRESTを採り、内部通信の効率が要る部分とキャッシュを重視する部分でプロトコルを分けています。
実際、APIプロトコルのレイテンシは、REST 50〜200ms、GraphQL 50〜300ms、gRPC 10〜50msと差があります。
一方で、キャッシュの効きやすさを最重視して、あえてRESTを選ぶ判断もあります。あるサービスでは150以上のエンドポイントでRESTを採用しており、CDNキャッシュを効かせて20ms未満の応答を実現した事例も報告されています(媒体:Botoi)。
- REST:外部公開やキャッシュを重視する場面で選ばれる方式です。
- gRPCとGraphQL:内部の高速通信にはgRPC、複雑なデータ取得を一度で済ませたい場面にはGraphQLを選びます。
この事例からは、「最新だからGraphQL」「速いからgRPC」と一律に決めない姿勢が読み取れます。サーバーサイドに強い会社は、自社サービスのアクセス特性に合わせてプロトコルを選び分けます。
提案を受ける際は、「なぜこのAPI方式なのか」を用途とレイテンシの観点で説明できるかを確認するとよいでしょう。
enechainのGraphQL本番運用に学ぶ設計規律
エネルギー取引プラットフォームのenechainは、GraphQLを本番運用する中で得た実践知を公開しています(媒体:enechain Tech Blog)。GraphQLは便利な反面、設計を放置すると保守不能になりやすい技術です。同社の事例で印象的なのは、運用を支える「規律」を仕組みで担保している点です。
- エラー応答の設計:4XX系のクライアントエラーは専用スキーマで型補完を効かせ、5XX系のサーバーエラーは仕様どおりに扱います。
- Resolverの説明文:各Resolver(データ取得処理)にdescriptionの記述を義務づけ、ESLintプラグインで機械的に強制しています。
個人の注意に頼らず、仕組みで品質を守る発想がここにあります。さらに、発注企業がこの事例から押さえたいのは、「動くものを作る」だけでなく「壊れにくく、引き継ぎやすい仕組み」まで整えるという点です。
ドキュメントやエラー設計、静的チェックの自動化は、納品後の保守性を直接左右します。こうした規律を当たり前に実践しているかどうかは、強い会社とそうでない会社を見分ける確かな手がかりになります。
サーバーサイド開発で生じやすい失敗・課題・リスクの詳細は、後述の関連記事もあわせてご覧ください。
まとめ
サーバーサイドに強い開発事例を振り返ると、成功も移行も、事業フェーズから技術を選び、小さく切り出してから段階的に広げるという一点に集約されます。クックパッドの100万行Rails分割やメルカリの4年がかりの移行は、止めずに変える設計と、移行期の二重運用コストを織り込む現実主義の理想形です。
Baseconnectのテスト基盤づくりやenechainのエラー設計・ドキュメント強制は、納品後の保守性を仕組みで守る重要性を教えてくれます。また、マネーフォワードやSTORESの事例は、単一言語に固執せず、要件でREST・GraphQL・gRPCや言語を使い分ける中立的な姿勢の強さを示します。
自社が「新規でモダンに作れる立場」か「既存を活かして段階的に改善する立場」かを見極め、まずは一部から検証する一歩を踏み出してください。
riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、事業から逆算したサーバーサイド設計と体制づくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
