サーバーサイドに強いの必要機能や標準機能の一覧について

サーバーサイドに強い開発体制が提供する機能は、6つの領域に分かれます。中心はAPI設計とデータベース設計で、残りの領域は後の見出しで順に扱います。

「サーバーサイドに強い」と謳う会社は多いものの、その強さが具体的に何を指すのかは、発注側からは見えにくいものです。まず開発全体を押さえたい方は、サーバーサイド開発の完全ガイドからお読みください。

API設計とデータベース設計の機能

REST、GraphQL、gRPCの用途と本文記載のレイテンシを3枚のカードで示した図。
用途に合わせて方式を選び分ける構成です。

サーバーサイドの中核は、データの「届け方」を設計するAPIと、「持ち方」を設計するデータベースです。この二つの設計が雑だと、後からどれだけ機能を足しても、遅くて壊れやすいシステムになってしまいます。

逆に、この二つが堅牢であれば、機能追加や外部連携もスムーズに進みます。発注する側がもっとも注視すべき基礎の領域です。

REST・GraphQL・gRPCを使い分けるAPI設計機能

API設計の強さは、REST・GraphQL・gRPCの主要な方式を、用途に応じて選び分けられるかで決まります。

  • REST:外部公開やキャッシュに向いており、レイテンシの目安は50〜200msです。
  • GraphQL:画面ごとに必要なデータが変わるサービスで柔軟に取得でき、レイテンシは50〜300msです。
  • gRPC:内部通信に特化した方式で、レイテンシは10〜50msと高速です。

強い体制は、これらを一律に使わず、要件に応じて組み合わせます。たとえば、帳票生成のような内部処理はgRPC、マスタ情報の取得はキャッシュの効くRESTといった使い分けです。

RESTは、情報を取りすぎる(オーバーフェッチ)、足りない(アンダーフェッチ)という課題を抱えがちです。GraphQLはこの課題を解消する一方で、関連データを取るたびに問い合わせが増えるN+1問題への対処が必要になります。

発注する側にとっての価値は明快です。API設計が適切であれば応答が速くなり、CDNキャッシュを効かせると、20ms未満の応答も狙えます。

設計を誤ると、サーバーを増強してしのぐしかなくなり、運用コストが膨らみます。「なぜこのAPI方式なのか」を用途とレイテンシで説明できる会社は、API設計に強い体制と言えます。

データの正しさを守るDB設計とORM機能

データベース設計は、サーバーサイドで「データの正しさ」を支える領域です。

具体的には、事業の実態に合わせてテーブルを正規化し、検索を速くするインデックスを適切に設定します。さらに、同時処理でも矛盾が起きないようトランザクションを設計します。

こうした地道な設計力は、決済や在庫のように一円・一個の狂いも許されない業務システムで、決定的に効きます。

  • ORM(オブジェクト関係マッピング):DB操作を効率化します。
  • Laravel、Django、Rails:認証やスキャフォールド(雛形の自動生成)と合わせて、立ち上げ期の開発速度を高めます。
  • N+1問題:ORM任せでは性能劣化が起きやすいので、生成されるクエリの把握が欠かせません。

DB設計は「後から直すのが最も高くつく領域」です。テーブル設計を途中で大きく変えると、関連する処理すべてに影響が及ぶためです。

だからこそ、要件定義の段階でデータの持ち方を丁寧に詰められるかが、会社を見極める目安になります。提案時にデータ構造の図(ER図など)まで踏み込んでくれる会社は、信頼してよいでしょう。

ポイント

迷ったときは、API方式を用途とレイテンシで説明できるか、データの持ち方を要件定義の段階で詰められるかを確かめてください。特にDB設計は後から直すと高くつくため、提案の段階で見極めることが大切です。

インフラ構築と非同期・並行処理の機能

クラウドとコンテナ、デプロイの自動化、非同期・並行処理の3項目をカードで示した図。
土台の運用と重い処理の実行が並んでいます。

優れたアプリでも、インフラ(サーバーやネットワークの土台)がなければ実運用には耐えられません。さらに、重い処理を待たせずにさばく非同期・並行処理も欠かせず、この領域は事業の安定稼働とコストに直結します。

インフラ構築・運用自動化の対応領域

強いサーバーサイド体制は、アプリ開発だけでなく、その土台となるインフラ構築まで担えます。

  • クラウドとコンテナ:AWSなどでクラウド構成を設計し、コンテナによりアプリの可搬性を確保します。
  • デプロイ(本番反映):自動化と監視・ログ収集の整備により、復旧と安全なリリースを支えます。
  • Infrastructure as Code:インフラ構成を手作業ではなくコードで管理します。

サーバー構成が一部の担当者の頭の中だけにある「属人化」の状態は、その人が抜けた途端に保守できなくなるリスクを生みます。構成がコード化・ドキュメント化されていれば、別の会社への引き継ぎも容易で、ベンダーロックインを避けられます。

インフラに対応できるかどうかで、保守・運用フェーズの安心感は大きく変わります。開発だけを行って運用を丸投げする体制では、リリース後のトラブルに迅速に対応しにくいためです。

開発から運用、自動化までを一貫して担える体制は、それ自体がサーバーサイドの強さの証と言えます。

非同期・並行処理とGoの並行処理機能

非同期・並行処理は、重い処理や大量の同時アクセスを、ユーザーを待たせずにさばく機能です。

  • 非同期で実行できる処理:メール一斉送信、帳票の一括生成、外部APIへの問い合わせは、画面を待たせずに実行できます。
  • 並行処理:限られたサーバー資源で多くのユーザーをさばくために欠かせません。
  • Go:軽量なgoroutineを言語レベルで備え、高い実行性能と合わせて、BFFやAPIゲートウェイ層に適しています。

ウォンテッドリーは、Amazon SNSとGoを組み合わせてお知らせ機能の耐障害性を高めた事例を公開しています(媒体:Findy Engineer Lab)。一方で、Goには関数型のfilter/mapのような記法がなく、記述量が増えるという実体験も同じ媒体で語られています。Goも万能ではありません。

「同時アクセスが多いサービス」や「重いバッチ処理があるサービス」では、この並行処理の設計力が応答速度とコストを直接左右します。トラフィックが集中するキャンペーンや、大量データの定期処理を抱えるなら、並行処理に強い言語選定と設計ができる体制を選ぶべきです。

事業要件を機能要件にどう落とし込むかは、後述の関連記事もあわせてご覧ください。

ポイント

迷ったときは、開発から運用、自動化まで一貫して担えるか、同時アクセスや重い処理を待たせずにさばく設計力があるかを確かめてください。

スケーラビリティとAPIセキュリティの機能

APIセキュリティの周囲に、BOLA、認証情報の使い回し、未管理API、GraphQLへのDoS攻撃を配置した図。
認可・認証情報・API管理・クエリが守りの観点です。

サービスが成長すると求められるのは、「増えても遅くならない」スケーラビリティと、「狙われても守れる」セキュリティです。

この二つは、ユーザーが少ないうちは目立ちにくいものの、事業が伸びた瞬間に欠落が表面化し、機会損失や重大事故につながります。特に、成熟フェーズの事業ほど重視すべき機能です。

成長に耐えるスケーラビリティ設計の機能

スケーラビリティとは、アクセスやデータが増えても性能を保てる設計能力です。

  • ステートレス設計:状態を持たせず、サーバーを増やした際の負荷分散に備えます。
  • キャッシュ:データベースの負荷を抑えるために使います。
  • 非同期化と分割:重い処理を非同期にし、必要に応じてマイクロサービスをサービス単位で独立して拡張します。

発注する側が知っておきたいのは、「最初から過剰にスケーラブルに作る必要はない」という点です。ユーザーが数百人の段階で大規模分散を前提に作ると、開発コストと運用の複雑さが増すばかりになります。

クックパッドやメルカリのような大手も、最初はモノリスで作り、成長してから分割しています。強い体制は、現在の規模と将来の見込みを踏まえて、過不足のないスケーラビリティを設計します。

発注時に見極めたいのは、「将来こうスケールできる余地を残しつつ、今は身軽に作る」という段階的な設計を提案できるかどうかです。

いきなり過剰設計を勧める会社も、逆にスケールをまったく考えない会社も、事業の成長とは噛み合いません。現実的な拡張余地を語れる会社が、スケーラビリティに強い体制と言えます。

BOLA・シャドーAPIに備えるセキュリティ機能

APIセキュリティは、サーバーサイドの守りを担う領域です。

  • BOLA:本来アクセスできない他人のデータを操作できてしまう、オブジェクトレベル認可の不備です。
  • クレデンシャルスタッフィング:流出した認証情報を使い回す攻撃です。
  • シャドーAPI/ゾンビAPI:未管理の放置APIです(媒体:Akamai)。

GraphQLでは、複雑なクエリによるDoS攻撃やインジェクション攻撃にも備える必要があります。

機械学習による検知研究では、高い精度が報告されています。具体的には、SQLインジェクション検知のAccuracyが0.9678、XSS検知のAccuracyが0.9938です(媒体:arXiv)。

静的チェックなら応答は数十msで済みます。一方で、機械学習の推論を挟むと、数千msに跳ね上がるボトルネックも指摘されています。守りと速度を両立させるには、設計上の工夫が要ります。

セキュリティは、機能を作った後に足す追加作業ではなく、設計の最初から織り込むべき機能です。認可設計、APIの洗い出し、ログ監視といった守りの機能を、提案の段階でどう組み込むかを語れる会社を選ぶべきです。サーバーサイドの強さは、攻めの機能だけでなく、こうした守りの機能の厚さにも表れます。

ポイント

迷ったときは、現在の規模に合った段階的な拡張の余地を語れるか、APIの認可やログ監視といった守りの機能を提案時に示せるかを確かめてください。

まとめ

サーバーサイドに強い体制の機能は、6つの領域にわたる総合力として表れます。各領域の効き方は、ここまでの見出しで見たとおりです。

API設計は、レイテンシ(REST 50〜200ms、gRPC 10〜50ms)と応答速度に直結します。DB設計は、データの正しさと保守性を支えます。また、インフラと並行処理は安定稼働とコストを、スケーラビリティとセキュリティは成長フェーズの耐久力を左右します。

大切なのは、自社の事業フェーズに必要な領域を厚く確保することです。すべてを最高水準で揃えようとしなくて構いません。

立ち上げ期は開発生産性、成長期は並行処理とスケーラビリティを優先し、成熟期はセキュリティと保守性を重視します。技術を事業価値に置き換えて語れる会社を選んでください。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、必要な機能を見極めた設計と体制づくりを一貫して支援します。全体像を確認したい場合は、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。