サービス運用保守の必要機能や標準機能の一覧について

Webサービスやクラウドサービスの運用保守を体制化しようとするとき、最初の関門になるのが「サービス運用保守とは、具体的にどんな機能・役割を提供するものなのか」という整理です。運用保守という言葉は広く使われますが、その中身は監視・バックアップ・障害対応・SLA管理・継続的改善といった複数の機能の集合体です。これらを漠然と「保守費」とひとくくりにしてしまうと、いざ委託や内製を検討する段になって「何を依頼すればよいのか」「どこまでが含まれるのか」が分からず、ベンダーとの認識齟齬や想定外費用の温床になります。

本記事は、SaaSやWebサービス全般の運用保守が提供する機能・役割を、監視・予防保全/インシデント対応・障害復旧/SLA管理・レポーティング/AIOps・継続的改善という4つの軸で体系的に解説する「機能特化」の記事です。EC・アプリ・マッチングといった個別領域に限らない、汎用的なWebサービス運用保守の総論として、各機能が何をするものか、なぜ必要かを具体的に整理します。読み終えるころには、自社の運用保守に必要な機能の全体像と、委託・内製の検討に直結する「機能チェックリスト」が頭の中に描けるはずです。なお、サービス運用保守の全体像をまだ把握していない方は、まずサービス運用保守の完全ガイドから読むことをおすすめします。

監視・バックアップなど運用機能

監視・バックアップなどサービス運用保守の運用機能のイメージ

運用機能とは、サービスを止めずに動かし続けるための定常的な機能群です。一般に運用は監視・バックアップ・アクセス制御を指し、保守の障害復旧・改修とは性質が異なります。運用機能の本質は「異常に早く気づく」ことと「いざというときに戻せる備えをしておく」ことにあります。ここが手薄だと、障害の検知が遅れて被害が拡大したり、データ消失から復旧できなかったりという致命的な事態を招きます。

死活監視・リソース監視・ログ監視の機能

監視機能は、運用機能の中核です。サービスが正常に応答しているかを確認する死活監視、CPU・メモリ・ディスクといったリソースの使用状況を見るリソース監視、エラーログや異常なアクセスを検知するログ監視という三つが基本になります。これらを組み合わせ、しきい値を超えたら自動でアラートを発する仕組みを整えることで、障害の予兆を早期に捉えられます。汎用的なWebサービスでは、レスポンスタイムやエラー率といったアプリケーション層の指標も監視対象に含めるのが一般的です。

監視で重要なのは、単にアラートを出すことではなく、「本当に対応すべき異常」と「無視してよいノイズ」を切り分けることです。アラートが鳴りすぎると、現場は次第にそれを無視するようになり、本当に重要な障害を見落とします。SLAの応答3秒以内達成率93%、障害通知30分以内100%といった具体的な目標値から逆算して、何をどのしきい値で監視するかを設計することが、実効性のある監視機能の条件です。監視は「入れて終わり」ではなく、運用しながらしきい値を調整し続ける機能だと理解してください。

バックアップ・アクセス制御・予防保全の機能

バックアップは、データ消失という最悪の事態に備える生命線です。定期的なバックアップの取得だけでなく、いざというときに確実に復元できることを定期的に検証することが、機能として求められます。後述するRPO(目標復旧時点)の設計とも直結し、「どの時点まで戻せるか」を決めるのがバックアップの設計です。あわせて、誰がどのリソースにアクセスできるかを管理するアクセス制御も、運用機能の重要な要素です。不正アクセスや内部からの誤操作を防ぎ、セキュリティと可用性の両面を支えます。

運用機能には、障害が起きる前に手を打つ予防保全も含まれます。OSやミドルウェアのセキュリティパッチ適用、証明書の有効期限管理、ディスク容量の逼迫前の増設といった作業は、放置すれば障害に直結します。予防保全は地味で成果が見えにくい機能ですが、これを怠ると「気づいたら証明書が切れてサービスが止まっていた」といった初歩的な事故が起こります。運用機能は「何も起きていない平常時にこそ価値を発揮する」性質を持つことを理解し、定常業務として確実に回すことが大切です。これらの運用機能をどこまで委託に含めるかは、要件定義の段階で明確にすべき重要事項であり、関連記事もあわせてご覧ください。

インシデント対応・障害復旧の保守機能

インシデント対応・障害復旧などサービス運用保守の保守機能のイメージ

保守機能とは、障害が起きたときに直し、サービスをより良くしていくための機能群です。運用が「止めない・気づく」役割なら、保守は「直す・良くする」役割を担います。インシデント対応・障害復旧・改修という保守機能は、サービスの信頼性を最終的に支える砦であり、ここの体制と手順の質が、障害発生時の被害の大きさを決定づけます。

一次対応から復旧・原因分析までの機能

インシデント対応の機能は、検知から復旧までの一連の流れを定型化することにあります。アラートを受けて状況を確認する一次対応、影響範囲を切り分けてサービスを暫定復旧させる対応、そして根本原因を突き止める調査・分析という段階を、手順として整備します。SLAでは復旧6時間以内・4時間以内の遵守率95%、24時間以内の解決率95%といった目標が示されており、これを満たすには、誰がどう動くかを事前に決めておく体制が不可欠です。場当たり的な対応では、復旧時間の目標を安定して守れません。

とくに重要なのが、復旧後の原因分析の機能です。一次データでは、保守作業全体の約30%が調査・分析に費やされるとされます。これは無駄ではなく、同じ障害を二度と起こさないための投資です。障害を暫定復旧させて終わりにせず、なぜ起きたのかを掘り下げ、設計や監視の不備を恒久対策で潰す。この調査・分析の機能が回っているかどうかが、障害が減る運用と、障害が繰り返される運用の分かれ目になります。インシデント対応は「速さ」と「再発防止」の両輪で評価すべき機能です。

改修・機能改善とドキュメント整備の機能

保守機能には、障害対応だけでなく、サービスを継続的に良くしていく改修・機能改善も含まれます。OSやライブラリのバージョンアップへの追従、法令改正への対応、業務部門からの改善要望の実装といった作業は、サービスを陳腐化させないために欠かせません。この改修の機能を運用保守の範囲に含めるかどうかは、契約形態や見積りに大きく影響します。改修を都度別見積りにするのか、月額の保守費に一定枠を含めるのかは、事前にベンダーと取り決めておくべき重要な論点です。

改修の機能を支えるのが、ドキュメント整備です。一次データでは、見積りの変動要因として「理解容易性」や「ドキュメント整備度」が挙げられています。ドキュメントが整っていれば改修は速く安く済み、整っていなければ調査に時間がかかって高くつきます。つまりドキュメント整備は、それ自体が将来の保守コストを下げる投資です。保守機能を評価するときは、目先の障害対応だけでなく、「改修しやすい状態を維持する機能」まで含めて見ることが大切です。

SLA管理・レポーティング機能

SLA管理・レポーティングなどサービス運用保守の機能のイメージ

ここが、サービス運用保守を「なんとなくの保守」から「定量管理された運用」へ引き上げる中核機能です。SLA(サービス品質保証)管理とレポーティングは、運用品質を数値で約束し、その達成状況を見える化する機能です。これがあるかどうかで、運用保守の品質を客観的に評価できるかが決まります。感覚で「最近は安定している」と言うのではなく、指標で語れる状態をつくるのがSLA管理の役割です。

稼働率・応答時間など具体的SLA指標の管理

SLA管理の機能は、具体的な指標を設定し、達成状況を継続的に測定することにあります。大阪市のガイドラインに示されるSLA実値を参考にすると、稼働率99.8%以上、応答3秒以内の達成率93%、障害通知30分以内100%、重大障害は年2回まで、復旧6時間以内・4時間以内の遵守率95%、電話応答20秒以内、24時間以内の解決率95%といった指標が並びます。これらをサービスの特性に合わせて設定し、月次で実績を測ることが、SLA管理機能の実体です。汎用的なWebサービスでは、稼働率と応答時間が特に重視される指標になります。

SLAには努力目標型と目標保証型があり、後者は未達時にペナルティ(保守費の減額など)を伴います。どちらを選ぶかで、機能として求められる管理の厳密さが変わります。目標保証型を採用するなら、達成状況を一切の曖昧さなく記録・集計する仕組みが必要です。JIS Q 20000のようなITサービスマネジメントの国際標準を参照しながら、自社のサービスにふさわしいSLA水準を定めることが、過剰品質によるコスト増と、品質不足によるトラブルの両方を避ける鍵になります。

RTO・RPO設計と定例レポートの機能

SaaSやクラウドサービスの運用保守で欠かせないのが、RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)の設計機能です。RTOは「障害発生からどれだけ早く復旧させるか」、RPOは「障害時にどの時点までデータを戻せるか」を定める指標です。たとえばRPOを1時間とするなら、最低でも1時間ごとにバックアップを取る必要があり、これが前述のバックアップ機能の設計に直結します。RTO・RPOは事業上の許容範囲から逆算して決めるもので、厳しくするほど運用機能への投資が必要になります。

そしてSLA管理を実効的にするのが、定例レポーティングの機能です。月次でSLAの達成状況、障害の発生件数と内訳、対応時間の実績、改善提案をまとめたレポートを発注側に提示する。このレポートがあることで、発注側は運用保守の品質を客観的に把握でき、ベンダーとの建設的な改善議論が可能になります。レポーティングのないブラックボックスな運用は、品質が悪化しても気づけず、いざ問題が表面化したときには手遅れになりがちです。SLA管理・レポーティング機能は、運用保守を「見える化」する不可欠な仕組みだと言えます。

AIOps・継続的改善の機能

AIOps・継続的改善などサービス運用保守の機能のイメージ

運用保守の機能は、近年AIの活用によって大きく進化しています。AIOps(AIを活用した運用自動化)と継続的改善は、人手に頼った従来の運用を省力化し、サービスを継続的に良くしていく機能です。少人数で高い品質を維持したい企業ほど、この自動化と改善の機能が効果を発揮します。運用保守を単なるコストではなく、価値を生み続ける活動へ変えるのが、この層の役割です。

AIOpsによる異常検知・自動対応の機能

AIOpsの中核は、大量のログやメトリクスをAIが分析し、人間では気づきにくい異常の予兆を検知する機能です。従来のしきい値ベースの監視では「閾値を超えたら通知」という単純な検知しかできませんが、AIOpsは過去のパターンを学習し、平常とは異なる挙動を早期に捉えます。さらに、過去の障害との類似性から原因候補を提示したり、定型的な復旧手順を自動実行したりすることで、対応時間を短縮します。一次データでも、AIOpsや生成AIによって運用保守の省力化が進む流れが示されています。

とくにドキュメントが整備されていない古いシステムでは、生成AIによるリバースエンジニアリングが、コードの読み解きを助けます。「作った本人しか分からない」ブラックボックス化した処理を、AIの支援で可視化することで、調査・分析の工数を削減できます。前述のとおり保守作業の約30%は調査・分析が占めるため、ここをAIで効率化できる意義は大きいのです。AIOpsは、人手を増やさずに運用品質を上げる、現代の運用保守に欠かせない機能になりつつあります。

必須機能と「あれば便利」を切り分ける考え方

機能を網羅的に把握したうえで、最後に大切なのが「必須機能」と「あれば便利な機能」を切り分ける作業です。運用保守も機能を盛り込むほど費用が膨らみます。死活監視・バックアップ・インシデント対応・SLA管理といった、サービスが止まる・データが消えるといった致命的事態を防ぐ機能は必須です。一方、高度なAIOpsによる予測や、凝った分析ダッシュボードなどは、サービスの規模や重要度に応じて後から追加できる「あれば便利」に分類できます。

この切り分けは、機能一覧を眺めるだけでは決まりません。自社のサービスがどれだけの可用性を求められるか、障害時の事業インパクトはどれほどか、という観点から、「これがないと事業が止まる」機能を見極める必要があります。だからこそ、機能の検討は要件定義のプロセスと一体で進めるべきです。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、機能の網羅的な洗い出しと、必須・優先・将来追加の三段階での取捨選択を支援しています。機能要件をどうRFPや要件定義書に落とし込むかは、後述の関連記事で詳しく解説しています。

まとめ

サービス運用保守の機能のまとめイメージ

サービス運用保守が提供する機能は、監視・予防保全の運用機能、インシデント対応・障害復旧の保守機能、SLA管理・レポーティング機能、AIOps・継続的改善機能の4層で整理すると漏れがありません。運用は「止めない・気づく」、保守は「直す・良くする」と性質が異なり、SLA管理とRTO・RPO設計が品質を数値で担保する中核です。保守費用はソフトウェア全体コストの40〜80%を占めるからこそ、どの機能にいくら払うのかを構造的に把握し、必須と便利を切り分けることが、限られた予算で最大の品質を出す鍵になります。

機能の検討は、一覧を眺めるだけでは完結しません。自社のサービスが求める可用性と、障害時の事業インパクトに照らして「事業が止まる機能はどれか」を見極め、機能ごとに内製・外注を切り分け、要件定義へと落とし込むことが不可欠です。riplaはフルスクラッチ受託と国内運用保守を組み合わせ、機能の網羅的な洗い出しと、自社のサービスに合わせた機能設計・SLA設計を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。