システムリニューアルのアセスメント/要件定義/RFPについて

システムリニューアルは、現状分析から要件の優先付け、移行・運用の整理、RFP作成へと順に進めると、目的に合うベンダー選定につながります。

「古いから新しくしたい」という曖昧な動機で発注すると、要件が膨らみ、現場の期待とずれる失敗につながります。全体像はシステムリニューアルの完全ガイドもご覧ください。

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・システムリニューアルの完全ガイド

アセスメント(現状分析)で押さえるべき観点

利用者の体験課題と既存システムの技術上の制約を4つのカードで整理した図解。
体験面と技術面を並べると、現状の見落としを防ぎやすくなります。

新規開発とは異なり、リニューアルは既存システムを出発点とします。そのため、要件定義の前に現状と利用上の課題を把握するアセスメントが欠かせません。

「新しくすること」だけを目的にすると、解決すべき課題を見落とし、刷新後も同じ不満が残る場合があります。アセスメントでは、利用者の体験課題と技術上の制約という2つの観点を明らかにします。この両面が、要件定義の土台になります。

利用者の体験上の課題の洗い出し

改善する対象を決めるには、まず利用者が感じている不便の実態を整理します。

  • 聞き取りとログ分析:操作の分かりにくさ、作業時間、スマートフォンで使えない不便を洗い出す
  • 困りごとの具体化:「使いにくい」を、毎回つまずく画面や操作まで落とし込んだもの
  • 幅広い聞き取り:複数の部署や役割から声を集め、一部の意見への偏りを防ぐ
  • 操作の観察:実際の操作や画面ごとの所要時間、利用者が気づかない課題
  • 優先順位付け:発生頻度と業務への影響度で並べ、要件定義の判断に役立てる

こうして洗い出した体験課題は、リニューアルの目的を裏付ける根拠になります。

既存システムの制約と引き継ぐ資産の整理

体験面の課題と並行して、技術面の状況を把握することも、アセスメントの重要な役割です。両面を一つの資料にまとめておくと、関係者と現状を共有しやすくなります。

蓄積されたデータや連携先、業務上欠かせない機能を把握します。さらに、古い技術では改修が難しい点や、仕様書がなく内部が不明な点も洗い出します。

制約は、リニューアルの方式や費用に影響します。そのため、データや連携の仕様は早い段階で明らかにしておくと、後の手戻りを防げます。

ポイント

迷ったときは、利用者の体験課題と既存システムの技術上の制約の両方が見えているかで判断します。片方だけでは、刷新後も同じ不満が残るおそれがあります。

要件定義での要件の仕分けと目的の明確化

MustとWantを左右に並べ、それぞれの優先度の判断基準を示した図解。
目的達成に欠かせない要件から、予算や期間に応じて検討できます。

現状を把握したら、要件定義で必要な要件を選び出します。部署ごとの要望を積み上げると要件が肥大化するため、この絞り込みが欠かせません。

目的を見失わずに要件を絞ることが、予算と期間を守る鍵になります。ここでは、要件の仕分け方と、目的を数値で示す方法を取り上げます。

MustとWantによる要件の仕分け

要件の優先順位は、リニューアルの目的に照らして明確にします。

  • Must(必須):満たさなければリニューアルの目的を達成できない要件
  • Want(希望):あれば望ましいものの、優先度が低い要件

予算や期間に制約がある場合も、この区分があれば、削る対象を判断しやすくなります。

すべての要望を同列に扱うと、優先度の低い機能が重要な改善より先に進んでしまうことがあります。そこで、各要件は、アセスメントで見つけた体験課題と結び付けて確かめます。課題に結び付かない要望は、Wantまたは対象外の候補です。

要件定義やディレクションの費用は、一般に総予算の10〜30%を占めるとされます。丁寧な仕分けは、後工程の手戻りによる出費を防ぐ投資です。

KGI・KPIによる目的の数値化

リニューアル後の成果を評価できるよう、目的を測定可能な形で示します。

  • KGI・KPI:最終成果の目標と、その達成度を測る中間指標の組み合わせ
  • 数値目標:「使いやすくする」といった表現を、達成度を測れる指標に書き直す
  • 目標の例:ある作業の所要時間を半分にする、問い合わせ件数を3割減らす
  • 予算承認:何にいくら投じ、何を得るかを示せないと、経営層の合意は得にくい
  • 効果測定:自社で要件定義をする際は、アセスメントの現状値と改善目標をセットで記録し、効果を測る

ポイント

要件は、Mustかどうかと、目的を数値で示せているかで判断します。数値で示せない目的は、経営層の合意を得にくくなります。

RFP(提案依頼書)に盛り込むべき項目

RFPのベンダー提案を比べる4つの評価観点をカードで示した図解。
同じ観点を使うことで、提案の違いを整理しやすくなります。

RFP(提案依頼書)は、要件定義の成果をベンダーに伝える文書です。その完成度が、提案の質と選定の精度を左右します。

ここでは、RFPに盛り込む項目と、提案を正しく比べるための評価観点を取り上げます。依頼内容と評価方法を明記しておくと、各社の提案を同じ前提で比べられます。

背景・目的・予算・納期の明記

ベンダーが提案を組み立てられるよう、RFPには必要な前提情報を記しておきます。

  • 背景と目的:背景・課題(Why)と、達成したい目的・KGI・KPI(What)
  • 予算と納期:予算の範囲と希望納期。予算を伏せると、提案の規模がばらつき、比較しにくくなります。
  • 移行・連携の前提:引き継ぐデータや外部システムを記し、調査・要件定義で分かった内容も伝えます。
  • 社内制約:大企業ではシステム標準やセキュリティ要件も記します。後から伝えると、提案や見積もりを変えることになります。

発注側が必要な情報を揃えると、各社は同じ前提で提案できます。こうした前提が、質の高い提案を得るための土台になります。

提案を比べるための評価観点

各社の提案を公平に比べるため、RFPを送る前に評価観点を決めておきます。費用の安さだけで選ぶと、体験改善という目的を達成できない場合があります。

  • 要件への適合度:定義した要件をどこまで満たすか
  • 実績:リニューアル実績や類似事例の有無
  • 移行・引き継ぎ:既存システムからの移行を具体的に示しているか
  • 保守体制と費用:運用後の体制と総額を示しているか

各観点には重みを付けて、総合的に判断します。特に、移行の説明が薄い提案は、実装段階でつまずくリスクがあります。

評価観点を表にまとめ、同じ基準で採点します。そのため、属人的な印象に流されず、客観的に選定できます。

ポイント

RFPは、前提情報がそろっているかと、評価観点を事前に決めてあるかで判断します。前提が抜けたままだと、各社の提案を同じ条件で比べられません。

要件定義に含めるべき移行・運用の前提整理

要件定義では、新しい画面や機能に加え、既存システムからの移行とリリース後の運用も整理します。移行や運用を後回しにすると、開発中に制約が見つかり、手戻りにつながります。ここでは、移行の前提整理と運用要件の言語化を取り上げます。

移行するデータの範囲と方法の要件化

移行は要件定義の重要な構成要素です。範囲と方法を明確にするため、次の観点ごとに決める内容を整理します。

  • 対象データ:新システムへ移すデータと、参照のみにする過去データ
  • 実施時期:移行をいつ行うか
  • 業務への影響:移行中に業務を止められるかどうか

旧システムのデータ形式を把握し、新システムの形式との差異を確認します。両者が大きく異なるときは変換作業が必要になるため、その工数も要件に含めます。

データの範囲が曖昧なままだと、終盤に移行の方法をめぐって議論が紛糾し、リリースが遅れることがあります。自社で要件定義を進める場合は、移行対象を一覧にし、データごとの引き継ぎ方針を明記しておくと、混乱を防げます。

リリース後の運用・保守要件の言語化

機能だけでなく、リリース後の運用と保守も要件に含めます。開発が終わってから考え始めると、運用開始後の対応が滞る原因になります。

  • 担当と障害対応:誰が保守し、不具合にどの体制で対応するか
  • 追加・改善:機能の追加や変更を、どの手順で進めるか
  • 運用項目:可用性、バックアップ方針、問い合わせ窓口
  • 改善サイクル:要望を受け付ける頻度と反映までの期間

運用要件は、RFPにも反映します。そうすることで、提案に運用フェーズを見据えた体制が含まれているかを確認できます。

開発を運用の始まりと捉え、リリース後までの要件について関係者と合意しておきます。こうすれば、運用開始後のすれ違いを防げます。運用を見据えた要件定義は、リニューアルを長く価値を生むシステムへ育てる出発点です。

ポイント

移行と運用は、データの範囲と保守体制が要件に含まれているかで判断します。終盤で決めようとすると、手戻りやリリースの遅れにつながります。

まとめ

アセスメントから要件定義、RFP作成までの流れを見てきました。アセスメントでは体験課題と技術上の制約を把握し、要件定義ではMustとWantを分けて、目的をKGI・KPIで数値化します。

RFPには背景・目的や予算・納期などの前提を記し、公平に比べる評価観点を定めておきます。この流れで進めると、目的に合うベンダーを選定できます。

上流工程は地味ですが、リニューアルの成否を分ける最も重要な工程です。現状を起点に進めると、要件の肥大化や手戻りを防ぎ、投資に見合う成果につながります。

自社で進める際は、体験課題を起点にアセスメントを行い、要件とRFPを組み立てます。現状分析からRFP作成まで体系的に進めたい場合は、上流工程を支援するパートナーへの相談から始める方法もあります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。