システム更改で見直す対象は、インフラ・アプリ・データ・周辺連携の四層に分けて捉えると全体像がつかめます。
現行システムをそのまま載せ替えるとは限らず、一律の手法で置き換えるとコストもリスクも膨らみます。領域ごとに手法を選ぶことが、更改の効率と安全性を左右します。詳しくはシステム更改の完全ガイドをご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・システム更改の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
システム更改で見直すべき対象範囲の全体像

対象範囲は、インフラ層とアプリケーション層、データ層と周辺連携の四つに分けて捉えると整理しやすくなります。更改の契機が、ハードウェアの保守期限なのか、ソフトウェアのEOLなのか、契約満了なのかによって、優先して見直す層が変わります。そのため、まずは対象範囲を層ごとに一覧にすることが出発点です。
インフラ・アプリ・データ・連携の四層での対象の捉え方
更改対象は、次の四つの層に分けて確認します。
- インフラ層:サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、OS、ミドルウェアが対象です。保守期限切れやOSのEOLが契機なら、最優先で見直す層になります。
- アプリケーション層:業務ロジックを担うプログラム本体です。開発言語の保守終了や仕様の属人化が、見直しの引き金になります。
- データ層:業務データを蓄積するデータベースやファイルです。更改では、移行の正確さが何より求められます。
- 周辺連携:他システムや外部サービスとのインターフェースです。接続仕様が変わると、影響の及ぶ範囲が広がります。
四層に分けて洗い出すと、保守期限のリスクがどこにあり、どこから更改すべきかが分かります。すべての層を同じ手法で同じ時期に更改する必要はありません。たとえば、インフラ層だけを先に更改し、安定しているアプリケーション層はそのまま載せ替えるといった、層ごとの判断が現実的です。
現状踏襲する機能と見直す機能の切り分け
更改では、現状を踏襲する機能と、この機会に見直す機能を切り分けることになります。長年使われてきた機能には、すでに業務で使われていない不要な機能や、複雑化して保守コストを押し上げている機能が紛れ込んでいます。こうした機能をすべて無条件に載せ替えると、不要な複雑さまで新しい基盤に持ち込んでしまいます。
切り分けの基準は、その機能が現在の業務でどれだけ使われ、どれだけの価値を生んでいるかです。利用頻度が高く業務に欠かせない機能は現状を踏襲し、使われていない機能は思い切って廃止(リタイア)の候補にします。また、保守コストが高くトラブルの温床になっている機能は、更改を機に作り直す対象とします。
この見極めが更改の費用とリスクを大きく左右するため、ログや利用部門へのヒアリングで機能ごとの利用実態を把握し、切り分けを正確に行うことが欠かせません。ただし、「念のため残す」を繰り返すと、結局すべてを引き継ぐことになり、更改の効果が薄れます。そこで、見直すべき機能を勇気を持って選び抜くことが、更改を価値ある投資に変えます。
更改手法の一覧:7Rとその使い分け
対象範囲を整理したら、次は領域ごとにどの手法で置き換えるかを選びます。
AWSが提唱する7Rのうち、Rehost、Relocate、Replatformは基盤を変えて移す手法です。Repurchase以下の4つは、置き換え、作り直し、廃止、現状維持と、取る行動がそれぞれ違います。
- Repurchase(リパーチェス):自社開発を市販パッケージやSaaSに置き換える手法です。
- Refactor(リファクター):コードを作り直す手法です。
- Retire(リタイア):不要になった機能やシステムを廃止する手法です。
- Retain(リテイン):現状を維持する手法です。
これに加えて、IPAによる4分類(リビルド、リライト、リホスト、ハードウェア更改)も実務でよく参照されます。それぞれの手法が向くケースを整理します。
7Rそれぞれの特徴と適用ケース
7Rは、更改の選択肢を網羅的に整理したフレームワークです。その中のRehost(リホスト)は、アプリケーションを変えずに別の基盤へ載せ替える手法で、いわゆる「リフト&シフト」に当たります。Rehostは、保守期限切れのハードウェアからクラウドへ移すケースに向き、改修も最小で済みます。
Relocate(リロケート)は、仮想環境ごと移設する手法で、構成を保ったまま基盤だけを変えます。Replatform(リプラットフォーム)は、基盤を変える際にデータベースやミドルウェアの一部を最適化する手法です。Repurchase(リパーチェス)は、自社開発を市販パッケージやSaaSに置き換える選択肢で、保守負担の大きい独自システムから脱却したい場合に向いています。
Refactor(リファクター)は、コードを作り直す手法で、コストと期間はかかるものの、根本的な刷新が可能です。Retire(リタイア)は不要になった機能やシステムの廃止、Retain(リテイン)は現状維持を指します。更改では、すべてを移すだけでなく、リタイアやリテインも選択肢として扱い、改修の少ないリホストから根本的なリファクターまで、コストとリスクを見て手法を選び分けます。
手法別の費用・期間の目安
手法を選ぶ際は、費用と期間の目安を押さえておくと判断の材料になります。改修を最小限に抑えるクラウド移行型(リホスト等)は、数百万円から1,000万円台の規模で、3〜6ヶ月程度が一つの目安です。基盤を変えるだけで業務ロジックには手を入れないため、比較的短期かつ低コストで収まり、保守期限が迫るなかで素早く脱却したい場合に有効です。
一方で、コードから作り直す再構築型(リビルド等)は、2,000万円から数千万円規模となり、期間も12〜18ヶ月以上に及びます。根本的に刷新できる反面、コストとリスクも大きくなります。また、単一の業務システムの更改は概ね3,000万〜1.5億円、基幹に複数の周辺システムが絡む中〜大規模な更改では1.5億〜5億円が目安とされ、SI費は全体の6〜7割を占める傾向があります。
これらの目安は、対象範囲のどこにどの手法を当てるかで大きく変わります。すべてをリビルドすると費用も期間も膨らみますが、安定領域はリホスト、不要機能はリタイアと使い分ければ、全体のコストを抑えられます。手法ごとの費用と期間を踏まえて、対象範囲に合った組み合わせを設計することが、更改の費用対効果を高めます。
単一手法に頼らないポートフォリオアプローチ

一つの手法をシステム全体に当てはめるより、対象範囲ごとに最適な手法を組み合わせる「ポートフォリオアプローチ」が現実的です。
たとえば、保守期限が迫る部分はリホストで素早く退避させ、保守コストの高い独自機能はリパーチェスでパッケージに置き換えます。使われていない機能はリタイアします。こうした使い分けが、全体最適につながります。
領域ごとに手法を組み合わせる理由
システムには、安定して長年使われている領域と、頻繁に変更が入る領域、すでに陳腐化した領域が混在しています。安定領域までリビルドすれば無駄なコストがかかり、逆に、陳腐化した領域をリホストで延命すると、負債を引き継ぐことになります。そのため、これらを同じ手法で更改するのは非効率で、領域の性質に応じて手法を変えるのが合理的です。
ポートフォリオアプローチを実践するには、先ほど整理した四層と機能の切り分けが前提になります。各領域を、保守期限の切迫度、利用頻度、保守コストから評価し、改修ニーズも加味して、リホストからリビルドまでの手法を割り当てていきます。この割り当てがあれば、更改全体のコストと期間を見通せるようになり、優先度の高い領域から段階的に着手できます。
手法を組み合わせると、リスクを分散させることもできます。すべてを一括で作り直すビッグバン型は失敗時の影響が甚大ですが、領域ごとに手法とタイミングを分ければ、問題が起きても影響を局所にとどめられます。こうした見極めと使い分けによって、更改を止めずに安全に進められます。
見直し対象を絞り込むための評価軸

対象範囲と手法を整理しても、限られた予算と期間のなかで、すべてを一度に更改するのは現実的ではありません。そこで必要になるのが、どの機能や領域から優先して見直すかを判断する評価軸です。
保守期限の切迫度、利用頻度、保守コストといった観点に、ビジネス上の重要度を加えて、対象を絞り込んでいきます。
保守期限の切迫度とリスクによる優先度
第一の評価軸は保守期限の切迫度で、ハードウェアの保守終了やOS・ミドルウェアのEOLが目前に迫っている領域は、放置すると障害発生時に復旧できないリスクを抱えます。そのため、期限が近い領域ほど更改の優先度は高くなります。まず各構成要素の保守終了時期を一覧にし、期限から逆算して日程を組むことが、現実的な計画の出発点です。
あわせて、障害が起きたときの業務への影響の大きさも評価します。同じ保守切れでも、停止すれば全社の業務が止まる基幹領域と、影響が限定的な補助的領域とでは、優先度が異なります。そのうえで、切迫度と影響度を掛け合わせて評価すると、限られたリソースをリスクの高い領域へ集中させられます。
古いものから順に更改するよりも、リスクの大きさで優先順位を付けることが肝心です。この評価軸で優先度を整理すれば、更改を複数年の中期計画として段階的に進められます。また、四層に分けた対象の洗い出しや7Rの選択を、優先度の評価軸と組み合わせると、対象範囲・手法・順序を一体で設計できます。
保守コストと利用価値による見直し範囲の判断
同じ機能でも、保守コストと利用価値の組み合わせによって取る対応が分かれます。二つの観点で見ると、見直すべき範囲が浮かび上がります。
- 高コストで価値の小さい機能:統廃合や廃止の候補
- 低コストで価値の高い機能:無理に手を入れず、現状踏襲(リテイン)とする
利用価値の評価には、実際の利用頻度や業務上の重要度を用い、ログ分析で「ほとんど使われていない機能」が見つかれば、更改の対象から外して廃止します。ただし、「念のため残す」を繰り返すと、不要な複雑さを新基盤へ持ち込み、保守コストを再び押し上げてしまいます。データに基づいて利用価値を見極めれば、対象範囲を適切に絞り込めます。
リスクが高くコスト効率の悪い領域から手を入れれば、費用対効果を高められます。対象範囲の見極めと評価を運用に組み込むことが、更改を守りの投資から戦略的な意思決定へ変える第一歩です。利用状況や保守期限は変わるため、昨年は優先度が低かった領域も、今年は保守終了が近づいて最優先になることがあります。
評価は一度きりで終わらせず、優先度が変わるたびに見直して中期計画へ反映させれば、場当たり的な対応を避けられます。
まとめ
ここまで、対象範囲を四層で捉える視点と、現状踏襲する機能と見直す機能の切り分けを見てきました。そのうえで、AWSの7RやIPAの4分類といった更改手法を、特徴や適用ケース、費用と期間の目安とともに示し、領域ごとに手法を組み合わせるポートフォリオアプローチの重要性を伝えました。
システム更改で押さえるべきは、すべてを一律に載せ替えるのではなく、対象範囲を層と機能で洗い出し、保守期限の切迫度や利用頻度に応じて手法を使い分けることです。リホストで素早く退避すべき領域、リビルドで作り直すべき領域、リタイアすべき不要機能を見極めれば、コストとリスクのバランスが取れた更改につながります。
自社の更改を検討する際は、まず対象範囲を一覧にすることから始め、領域ごとに最適な手法を割り当てる設計を進めてください。
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
