シフト管理システムの発注では、自社の要件を具体化したRFP(提案依頼書)を作ることが、見積りの妥当性と開発の成功につながります。
RFPに書く内容は、就業規則、勤怠・給与の連携、月額以外の費用、移行と並行運用の4つに分けて整理できます。全体像はシフト管理システムの完全ガイドもご覧ください。
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独自就業規則の要件化とRFPの記載方法

シフト管理システムでは、自社の就業規則を正確に要件化することが欠かせません。変形労働時間制や独自の丸め処理、休憩の扱いをベンダーが再現できないと、リリース後に手戻りが起きます。
変形労働と丸め処理のルールの明文化
ベンダーが自社の勤務制度と計算方法を再現できるよう、RFPには労働時間制や丸め処理の根拠を具体的に書きます。
- 労働時間制:1か月・1年単位の変形労働時間制、フレックスのコアタイム
- 計算ルール:時間の丸め単位、深夜・休日割増の計算ロジック
- 根拠資料:就業規則の該当条文と具体的な計算例を、RFPに記載
丸め処理は、発注側とベンダーの認識がずれやすい論点です。たとえば、「15分未満切り捨て」というルールでも、出勤打刻と退勤打刻のどちらをどの方向に丸めるかで残業代が変わります。
一次データでは、連携の不具合や設定ミスによる残業代の差異が月10万円規模に達した事例もあります。そのため、RFPに複数の打刻テストケースを添えると、見積りの段階でベンダーの理解度を確かめられます。
必要な配置・スキル要件と上限規制の定義
シフト自動作成の品質は、配置ルールをどれだけ正確に要件化できるかで決まります。現場で回るシフトにするため、次の条件をRFPに記します。
- 配置人数:各時間帯に必要な最低人数
- 資格・スキル:必ず配置する保有者と、新人だけの時間帯の可否
- 勤務上限:連続勤務日数の上限
- 法令要件:36協定の時間外労働上限、年5日の有給取得義務、学生アルバイトの扶養範囲
配置条件が抜けると、人数は合っていても現場で回らず、手直しが必要なシフトになり得ます。あわせて、法令上の制約をシステムが警告できるかも確認します。
たとえば、2026年4月公布・10月施行の同一労働同一賃金ガイドライン改正のように、法改正への対応も検討の対象になります。RFPに確認したい法令要件を明記しておけば、コンプライアンスリスクを先に抑えられます。
機能要件と非機能要件の切り分けと記述
希望シフトの収集といった機能だけでなく、繁忙期の性能やセキュリティも含めて要件を整理します。
- 機能要件:希望シフトの収集、自動作成、給与計算への連携
- 非機能要件:同時アクセス数、応答速度、可用性、セキュリティ、対応デバイス
機能の要件だけを見ていると、繁忙期の動作やスマホでの使いやすさを見落とすことがあります。全従業員がスマホから一斉に提出するため、ピーク時の同時アクセスに耐える性能が欠かせません。たとえば、締切直前に全員がアクセスして画面が固まれば、現場からの信頼を大きく損ないます。
RFPには、想定ユーザー数、拠点数、ピーク時の同時利用数を記したうえで、必要な性能を求めます。勤怠や給与の情報を扱うため、権限管理、アクセスログ、データ暗号化も要件に含めます。
勤怠・給与計算との連携要件の定義

勤怠管理や給与計算との連携要件をRFPで具体化すると、二重入力やデータ不整合を防げます。一方で、連携先や方式、項目、頻度が曖昧なままだと、想定した連携ができない事態につながります。
連携先システムと方式(API/CSV)の特定
まず、現在または今後使う勤怠・給与・会計システムを一覧にします。ベンダーが連携の実現可否と工数を見積もれるよう、方式や仕様も表にまとめます。
- 対象システム:現在または今後利用する勤怠・給与・会計システム
- 連携仕様:方向、項目、頻度と、APIまたはCSVの方式
API連携はリアルタイム性が高くミスも少ない一方で、対応している製品が限られます。CSV連携は汎用性が高いものの、項目の対応づけや手作業での出力が残ることがあります。
連携費用は、見落とされやすい隠れコストになることがあります。一次データでは給与計算連携に10万〜50万円かかる例があり、「無料」のサービスでも費用が発生し得ます。
連携先が複数あると、開発とテストの工数も積み上がります。そのため、RFPで要件を明示し、費用を含む見積りを求めます。また、連携の有無も、月額だけを比べると見落としやすい評価軸です。
打刻方法と複雑な雇用要件の盛り込み
打刻方法も、連携・運用の要件として定義しておきます。汎用SaaSでは確認が必要になりやすい雇用要件は、先にRFPへ明記します。
- 打刻手段:PC、スマホ、ICカード、生体認証、GPSの利用や併用
- 雇用要件:外国人労働者向けの多言語対応、複数法人をまとめて管理
- 特殊な勤怠:単発・日雇い派遣などへの対応
ICカードリーダーなどの機器が必要な場合、一次データでは費用が5万〜50万円とされています。なりすまし防止や直行直帰への対応も含めて、見積りの前提にしておきます。
特殊な雇用要件は、RFPで実現可否を尋ねておくと、導入後に未対応が見つかる事態を防げます。雇用の特殊性は要件定義で丁寧に扱い、汎用SaaSと自社開発のどちらを選ぶかの判断材料にします。
月額だけで選ばないTCO評価軸の設計

月額単価だけで選ぶと、判断を誤ることがあります。そのため、要件定義の段階で5年TCO(総保有コスト)を設計し、初期費用や隠れコスト、運用工数も含めて比べます。
5つの隠れコストの見積り項目化
シフト・勤怠システムには、月額以外にも費用がかかります。見積りでは、次の項目ごとに費用を確認します。
- 機器・移行:ICカードリーダー等は5万〜50万円、データ移行は5万〜30万円
- 開発・連携:カスタマイズは20万〜100万円超、給与連携は10万〜50万円
- 運用工数:年20万〜100万円換算
初期費用が無料のサービスでも、初期設定代行やデータ移行に5万〜20万円を払う企業が多いとされます。そのため、「無料」の範囲と設定作業の担当を、RFPで確認しておきます。
各社の見積りは、初期費用の項目をそろえてこそ公平に比べられます。費用の内訳を各社に求めておけば、後から発生する請求を防げます。
SaaSと自社開発の損益分岐点の試算
従業員数が変わると費用構造も変わるため、SaaSの従量課金と自社開発の固定費を比べ、損益分岐点を試算します。
- クラウドSaaS:1ユーザー月額300〜500円がボリュームゾーン
- 企業規模別の例:100〜199名で月額29,000〜57,710円
- ノーコード受託:初期100万〜300万円、月額1万〜3万円でユーザー数無制限の固定費
この試算では、50名以上の場合に5年TCOが約160万〜500万円となり、自社開発側が有利になります。また、従業員数が増える見込みがある企業は、従量課金の積み上がりも比較します。
さらに、オンプレ・パッケージは初期30万〜100万円以上、年間保守30万〜100万円です。ERP連携型は初期500万円〜、5年総額1,700万〜6,500万円が相場感です。
月額だけでなく、規模が広がった後の総額と、自社固有の要件を実現できるかを比べます。RFPには現在と将来の従業員数を示し、方式別に5年総額の見積りを求めます。
データ移行・並行運用の要件定義
データ移行と並行運用は、導入が失敗しやすい領域の上位に挙がります。要件定義で具体化しておかないと、稼働直前につまずくおそれがあります。そのため、移行データの形式と期限、旧システムとの並行運用期間をRFPで定めておくことが、安定稼働への近道です。
移行対象データと法定保存の要件化
移行対象の漏れや費用超過を防ぐため、RFPで条件を定め、各社に移行方法と費用を提示してもらいます。
- 対象データ:従業員マスタ、過去のシフト・勤怠実績、スキル・資格情報
- 移行条件:形式、件数、期限
- 退職者情報:法定保存を踏まえた保管方法と課金対象の扱い
一次データによれば、導入失敗の1位はデータ移行です。移行費は5万〜30万円が相場で、見落とすと予算超過の原因になりかねません。
労働基準法では勤怠データに保存義務があり、退職者のデータも一定期間保持する必要があります。ただし、クラウドSaaSではユーザー課金が続く場合があるため、課金対象から外せるかを確認します。
自社開発なら法令要件に合わせて保存の設計を組めるため、課金の問題を根本から避けられます。RFPでは、各社に退職者データへの対応方針を尋ねます。
並行運用期間とサポート体制の取り決め
新旧システムの切替えを安全に進めるには、並行運用の計画と、稼働前後の支援内容をあらかじめ定めておく必要があります。
- 並行運用:期間、運用体制、切替え判定の基準
- 導入・稼働後:初期設定代行、伴走支援、専任担当の有無
- 保守条件:法改正時の更新方法、サポート範囲、SLA(サービス品質保証)
一次データには、移行や初期設定が難航した結果、スケジュールが1か月遅れ、安定稼働まで2か月かかった調査結果があります。さらに、一発切替えでは、トラブル時に給与計算が止まるリスクがあります。
クラウドは法改正への自動アップデートが優位とされますが、自社開発も保守契約で同等の追従を担保できます。サポート条件を明文化しておけば、運用時の認識違いを防げます。
要件定義は、機能だけでなく、移行・運用・サポートまで含めて完成します。
提案評価表とベンダー選定基準の設計
各社の提案を公平に比べるため、RFPの配布前に評価表を用意しておきます。評価軸には次の項目を含め、それぞれに重みを付けて点数化します。
- 要件・費用:機能充足度、5年TCO、自社ルールの実現性
- 連携・運用:連携対応、移行・サポート体制
- 実績:開発・運用実績
価格や機能だけで比べると、総合的に最適なベンダーを取りこぼすことがあります。そのため、自社の業界や規模に近い導入実績と、要件整理から伴走する姿勢も確かめます。
一次データでは、ジョブカン勤怠の累計導入は25万〜30万社、KING OF TIMEは60,000社です。ただし、こうした数字は安心材料の一つにすぎません。
汎用SaaSで満たせない要件が多ければ、フルスクラッチやノーコード受託にも提案を求めます。評価表を使えば、営業トークに流されず、根拠をもとに選定できます。
まとめ
RFP・要件定義書で押さえる柱は、独自就業規則、勤怠・給与連携、TCO、移行・並行運用の四つです。
計算例とテストケースを示し、連携対象・方式・項目・頻度を表にまとめます。TCOは5つの隠れコストと損益分岐点を含め、5年総額で比べます。
移行と並行運用も、具体的に設計します。データ移行は導入失敗の1位に挙がる領域で、準備が安定稼働を左右します。
自社の就業規則、連携先、雇用の特殊性、移行対象を洗い出し、ベンダーが実現の可否と工数を判断できる細かさにします。
大切なのは、自社固有のルールや制約を書き出すことです。汎用SaaSで満たせない要件が多ければ、フルスクラッチやノーコード受託も選択肢になります。
riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、要件整理とRFP作成の段階から伴走します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
