チャット接客ツールのRFP/要件定義書/提案依頼書について

チャット接客ツールの発注では、目的と必須要件をRFPに固め、各社を同じ条件で比べることが、課題に合う提案につながります。

RFP・要件定義書・提案依頼書は、発注する側が何を決め、何を書くかで仕上がりが変わります。全体像はチャット接客ツールの完全ガイドもご覧ください。

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RFPに書くべき背景と目的の整理

電話の削減3割、資料請求のコンバージョン率1.5倍、夜間の問い合わせからのリード獲得月20件を示す3つのKPIパネル。
目標値を指標ごとに示すと、提案内容を同じ前提で検討できます。

まず、チャット接客ツールをなぜ導入するのかを、背景と目的としてRFPに明確に書きます。目的が曖昧なままだと、提案は機能の羅列になりがちです。

目的が具体的に言語化されていれば、各社は課題に合う提案を出せます。だからこそ、目的の整理は要件定義の出発点になります。

現状課題と達成したいKPIの定義

背景を整理するには、発注側がチャットで解決したい現状の困りごとを具体的に示します。課題の規模が伝わる数字も添えると、提案の精度が上がります。

  • 問い合わせ対応:電話が多く、対応に追われている
  • 資料請求:サイト訪問者数に対して件数が少ない
  • 営業時間外:問い合わせを取りこぼしている

現状値として、月の問い合わせ件数、サイトの離脱率、コンバージョン率などを記載します。

導入後に達成したいKPIは、測定できる目標として定めます。たとえば、電話を3割減らすこと、資料請求のコンバージョン率を1.5倍にすること、夜間の問い合わせから月20件のリードを獲得することが挙げられます。

KPIが明確であれば、ベンダーは必要な機能と運用を逆算できます。さらに、導入後の効果検証にも使えます。一方で、目的とKPIがない要件定義は、機能の足し算になりがちです。

対象範囲・予算・スケジュールの明示

RFPに導入の対象範囲を明記しておくと、ベンダー間で提案にずれが生じにくくなります。そのうえで、まず注力する範囲と、将来広げたい範囲を分けて記載します。

  • 設置先:チャットを置くサイトやページ
  • 顧客層:対象とする顧客
  • 対応方式:自動応答と有人対応のどちらを中心にするか

範囲が広すぎると見積もりが膨らみ、狭すぎると後の拡張で手戻りが起きます。そこで、段階的な提案につなげるために、優先範囲と将来範囲を整理しておきます。

想定予算も、可能な範囲で示しておきます。予算を伏せたままだと、見積もりがばらつき、各社を比べにくくなります。

目安として、SaaS型の月額料金は数千円からです。一方で、カスタム・スクラッチ開発は、受託相場として小規模でも数百万円規模になることがあります。だからこそ、予算感を共有しておくと現実的な提案を得やすくなります。

希望のリリース時期や、繁忙期を避けたい事情も伝えると、無理のない計画につなげられます。情報は出し惜しみせず、各社が踏み込んだ提案をできる材料をRFPにそろえます。

ポイント

背景や目的、KPIが定まっていないなら、機能を並べる前に、各社が同じ前提で提案できる情報がそろっているかを見直すとよいです。予算や対象範囲も、可能な範囲で示すのが目安です。

SaaSとスクラッチの選定基準の要件

要件をSaaSの標準機能、設定やカスタマイズ、個別開発の3段階に分けたレイヤー図。
必要な作り込みの深さに沿って、候補となる方式を整理できます。

要件定義で大きな分かれ目になるのは、既製のSaaSを使うか、自社業務に合わせてカスタム・スクラッチ開発をするかです。そのため、RFPに判断基準を含めておきます。

SaaSで足りる要件とスクラッチが要る要件の切り分け

一般的な接客の要件であれば、既製のSaaS型チャット接客ツールで対応できます。標準的な接客には、次のようなものがあります。

  • 質問への自動応答:よくある質問に自動で答える
  • 訪問者への声かけ:離脱しそうな人に話しかける
  • 有人相談:担当者が訪問者の相談に乗る

SaaSは初期費用を抑えて素早く始められ、機能の更新もベンダーが行います。そこで、まずSaaSで効果を検証し、運用のノウハウを蓄積する進め方は、多くの企業にとって現実的な第一歩になります。

一方で、独自業務への深い組み込みや、基幹システムや独自の顧客データベースとの密な連携が必要な場合は、カスタム開発やスクラッチ開発が候補になります。また、SaaSでは実現できない接客体験が求められる場合も、候補に入ります。

要件を「SaaSの標準機能で実現」「設定やカスタマイズで対応」「個別開発が必要」に分けると、方式の判断材料になります。

riplaはフルスクラッチ受託の立場から、既製SaaSでは届かない要件を実装する選択肢を示しています。

機能要件と非機能要件の書き分け

提案の精度を上げるには、要件を機能要件と非機能要件に分けて書きます。機能要件では、ツールが自動で行う接客と、担当者に切り替える仕組みを機能ごとに書き出します。

  • シナリオ型ボット:設定した流れに沿って接客する
  • AI応答:AIによる応答機能
  • 有人引き継ぎ:担当者へ対応を引き継ぐ
  • 分析レポート:接客状況を分析する

各機能には「必須」「あれば望ましい」「不要」の優先度を付けておきます。そうすると、各社の対応可否が明確になり、過不足なく比べられます。一方で、優先度がないと見積もりが過剰になりがちです。

チャットの遅延や停止は、機会損失に直結します。そのため、非機能要件では品質と運用の条件を定義し、同時アクセス数や表示速度を示します。稼働率(SLA)の保証と、障害時のサポート体制も書きます。

非機能要件を要件定義で明示しておくと、運用段階のトラブルを防ぎやすくなります。

ポイント

要件が標準的な接客に収まるならSaaS、独自業務や基幹システムとの密な連携が要るならスクラッチを候補にします。機能の優先度と非機能の条件も書くと、各社を同じ土台で比べられます。

接客シナリオと運用体制の要件

チャット接客ツールの成果は、導入後の運用で決まります。シナリオや担当者を設計しないままだと、ツールが放置されて形骸化することがあります。チャット接客では、この失敗が多く見られます。

だからこそ、運用を見据えた要件を固めておくことが、導入の成否を分けます。

初期シナリオと改善体制の要件定義

初期シナリオでは、質問ごとの回答と、有人対応へ引き継ぐ基準を決めます。その材料として、過去の問い合わせログや営業現場でよくある質問を洗い出します。

  • 初期シナリオの作成者:ベンダー支援か自社作成か
  • ログ分析の担当:会話を定期的に分析する人
  • シナリオ更新:更新担当とベンダーの伴走支援の範囲

シナリオ設計の良し悪しは、自動応答の成果を左右します。そこで、実際の会話を見ながら継続的に改善する体制も、要件に含めておきます。

riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走を通じて、導入後のシナリオ改善まで支援する進め方を重視しています。改善体制を要件に組み込んでおくことは、形骸化を防ぐ備えになります。

有人対応の体制とサポート要件

有人チャットを使う場合は、対応できる人員に合わせて運用体制を決める必要があります。有人対応の要件では、人員がどこまで受けられるかを、担当、時間、件数の3側面から見ます。

  • 対応担当:専任か他業務との兼任か
  • 対応時間:有人で対応できる時間帯
  • 対応可能件数:人員が処理できる問い合わせ数

体制に合わせて、自動応答でカバーする時間と範囲を設計します。人員の実態に即した要件にしておくことが大切です。

ベンダーの導入支援やサポートも明記し、シナリオ設計の支援、オペレーター向けの操作研修、運用開始後の窓口を、どこまで含むかを確認します。加えて、定例の改善ミーティングが含まれるかも確認します。

ツールの提供だけで運用を任されると、社内にノウハウがない企業は立ち上げに苦労しがちです。そこで、各社の支援内容を比べておくと、安定した運用につながります。

ポイント

シナリオの作成と改善の担当、有人対応の時間や人員は、導入後の成果を左右する要件です。担当が決まっていないなら、要件定義の段階で固めておきます。

外部連携とセキュリティの要件

中央の個人情報を、データ保護、アクセス管理、保持と法令の3要素で囲む盾の図解。
保護・権限・保持の観点をそろえて、RFPに条件をまとめられます。

チャットを他システムと連携するかどうかで、要件定義の難しさが変わります。チャットは個人情報を扱うため、連携とセキュリティの条件をRFPに記載しておきます。そうすると、後から連携できないことや基準を満たさないことが判明する事態を防げます。

CRM・基幹システム連携の要件

顧客情報を活用するには、CRM(顧客管理システム)やMA(マーケティングオートメーション)、基幹システムとの連携要件を定義しておきます。

  • 連携先:どのシステムに情報を渡すか
  • データ形式:どの形式で情報を連携するか
  • 連携タイミング:いつ情報を連携するか

チャットで取得した連絡先や関心情報は、渡し先と渡し方を明記しておきます。連携先のAPI仕様やデータ項目の対応も整理しないと、開発時に仕様の食い違いが起き、手戻りにつながります。

既製SaaSは、標準の連携先には簡単につなげます。ただし、独自システムや古い基幹システムには制約がある場合があります。深い連携が必須であれば、APIの柔軟性が高いツールか、カスタム・スクラッチ開発を検討します。

連携要件は後から加えると費用がかさみやすいので、早い段階で連携するデータと範囲を洗い出しておきます。

個人情報保護とセキュリティの要件

チャット接客では、訪問者の名前や連絡先、相談内容などの個人情報を扱います。そのため、保護方法をRFPに明記し、各社に対策を提案してもらいます。

  • データ保護:通信暗号化とデータの保管場所
  • アクセス管理:利用者ごとのアクセス権限
  • 保持と法令:ログの保持期間と個人情報保護法への対応

情報漏えいは企業の信頼を損ないます。そこで、サーバーの所在、データの取り扱い方針、第三者認証の取得状況も確認します。

業界固有のセキュリティ基準やコンプライアンス要件があれば、満たせるかどうかを明示します。SaaSはベンダーの水準に左右されるため、その内容を精査しておきます。

機密性の高いデータを扱う場合は、データの所在を管理しやすいスクラッチ開発も選択肢に入ります。特に、セキュリティ要件を明確にしておくことが、安心して運用するための前提になります。

ポイント

連携先と個人情報の扱いは、後から変えると手戻りが大きくなりやすい項目です。連携の範囲と保護の条件を、早い段階でRFPに書いておくのが目安です。

まとめ

現状の課題とKPIを数値で示すと、提案の精度が上がります。そのうえで、SaaSで足りる要件と個別開発が要る要件を分け、構築方式を判断します。

運用と改善の体制を要件に含めると、形骸化を防ぎやすくなります。また、連携とセキュリティを明確にすれば、後の手戻りやリスクを避けられます。

自社の目的に必要な要件を、優先度とともに示しておきます。各社が提案できる情報をそろえ、既製ツールで足りる範囲と作り込む範囲を分けます。

riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走を組み合わせ、要件定義の段階から自社業務に合わせた整理を支援しています。全体像を確認するときは、完全ガイドもあわせてご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。