デリバリーアプリのRFP/要件定義書/提案依頼書について

デリバリーアプリの要件定義書とRFP(提案依頼書)は、配達の現状と目的を整理し、機能・連携・異常系・非機能の要件を書き込んで、ベンダーに正しく伝えるための文書です。

開発の全体像をまだつかんでいない方は、先にデリバリーアプリ開発の完全ガイドを読んでおくと、話が追いやすくなります。

配達オペレーションの現状と目的の言語化

顧客・店舗・配達員の現状把握から目的とKPIへ整理する4つのパネル図。
三者の現場を起点に、測定できる目的へつなげます。

要件定義は、機能を並べるより先に、自社が「いまどう配達を回しているか」と「何のためにアプリを作るか」を言語化するところから始まります。ここが曖昧なまま機能リストだけを作ると、現場の実態と噛み合わないシステムができてしまいます。発注側が最初に取り組むべき土台づくりです。

配達フローのAsIsを三者で可視化するヒアリング

最初に、現状の配達フロー(AsIs)を、顧客・店舗・配達員の三者の視点で書き出します。具体的には、顧客が電話と外部プラットフォームのどちらで注文しているか、店舗がどう受注して調理を進めているか、配達員がどう配達先を知りどんなトラブルに遭っているかを、関係者へのヒアリングで洗い出します。三者それぞれに話を聞き、各立場の困りごとを漏れなく拾うことが出発点です。

外部プラットフォームに依存している場合は、そこで何が不満かも明確にします。不満には、手数料、データが取れない、顧客と直接つながれない、といった点があります。こうして現状が見えると、新しいアプリで何を変えたいかが浮かび上がります。

このヒアリングで特に重要なのは、理想の流れだけでなく現場で実際に起きているトラブルを洗い出すことです。たとえば、配達員が道に迷う、調理が遅れて配達が滞る、配達先に顧客がいない、注文した商品が品切れだったといった「日常的に起きている異常」を書き出しておくと、後の異常系の要件化に直結します。現場の泥臭い実態をすくい上げることが、現場で使えるアプリの要件定義につながります。

目的とKPIの数値による言語化

現状が見えたら、何のためにアプリを作るかを言葉にします。目的には、手数料負担の軽減、顧客データの自社保有によるリピート促進、配達効率の改善などが考えられます。なかでも外部プラットフォームの手数料は注文額の30〜35%が一般的で、これを利益として取り戻す目的を数値で掲げれば、投資判断の根拠にもなります。

そのうえで、目的を測るKPIを数値で決めます。たとえば「自前アプリ経由の注文比率を1年で30%にする」「アプリ会員のリピート率を非会員の1.5倍以上にする」「問い合わせ電話を月50件減らす」といった具体的な目標です。アプリ会員のリピート率が非会員の約1.5〜2倍という一次データもあり、この水準を参考にすると現実的なKPIにしやすくなります。

目的とKPIを明確にすると、ベンダーは目的を達成するために必要な機能を逆算して提案でき、リリース後には効果が出ているかを測る基準にもなります。目的が「とりあえずアプリを作る」のままだと、ベンダーも判断基準を持てず、機能が過剰にも過少にもなります。目的とKPIは、RFPの冒頭に必ず明記すべき項目です。

ポイント

配達の現状を三者の視点で書き出し、目的をKPIの数値で決めてから機能を考えます。迷ったら、その機能が目的のKPIにつながるかで判断します。

機能要件のMust/Want/将来による分類

デリバリーアプリの機能をMust・Want・将来の優先順位で分けた3枚のカード図。
事業成立に必要な機能を先に見極めます。

目的が定まったら、それを実現する機能を洗い出して、優先順位を付けます。機能を「全部入り」で求めると見積りが跳ね上がるため、Must(必須)・Want(あれば良い)・将来(後で追加)に分けて、費用を抑えつつ必要なものを確保します。この優先順位付けこそ、要件定義の中核作業です。

三者の機能のMust/Want/将来への振り分け

機能の優先順位は「それがないと事業が成立しないか」で決め、Mustに置くのは、顧客向けの注文と事前決済、店舗向けの受注管理と調理ステータス更新、配達員向けの配車アサインと配達完了報告です。配達トラブル時の再アサインや部分返金といった異常系も、無いと現場が回らないためMustに入れます。迷ったら、現場が回るかを基準に考えます。

Wantに置くのは、リアルタイム位置追跡の高度な演出、配送ルートの最適化、メニューのレコメンド、ポイント・クーポン機能などで、あると価値は高いが無くても運用できる機能です。将来には、多店舗展開時のプラットフォーム化や、AIによる需要予測などを置きます。MVP(最小限の機能セット)から始めてWantを後から足す段階開発は、初期投資を抑える有効な戦略です。

この分類をRFPに明記すると、ベンダーはMustの最小構成とWant追加分の費用を提示でき、発注側は予算と照らして判断できます。注意したいのは、見栄えのする機能(凝った位置追跡演出など)をMustに入れ、地味だが重要な異常系をWantに落とすことです。デリバリーアプリに必要な機能の全体像は、『デリバリーアプリの必要機能や標準機能の一覧について』もあわせてご覧ください。

非機能要件(性能・セキュリティ・可用性)の要件化

機能要件と並んで重要なのが、性能・セキュリティ・可用性といった非機能要件です。ランチ・ディナーのピーク時は注文が集中するため、「同時に何件の注文を処理できるか」「ピーク時にレスポンスが落ちないか」といった性能要件を明示する必要があります。ピークに耐えられない設計だと、最も注文が入る時間帯にアプリが落ちて機会損失を招きます。

そこで、想定する同時注文数や1日あたりの注文件数を要件に書き込んでおくと、ベンダーは適切なインフラ構成を提案できます。特にセキュリティでは決済情報の扱いが最重要で、カード情報を自社で保持しないトークン化、決済代行の利用方針、PCI DSSへの準拠を要件化します。さらに、位置情報を扱うため、配達員と顧客の位置情報の保護やプライバシーポリシーの整備も要件に含めます。

可用性については、24時間稼働が必要か、障害時にどれくらいで復旧すべきか(目標復旧時間)を定めます。これらを曖昧にすると、リリース後に「ピーク時に落ちる」「セキュリティが不十分」といった重大な問題に直面します。機能だけでなく品質要件もRFPに盛り込むことは、発注側の責任です。

ポイント

機能は「それがないと事業が成立しないか」で、Must・Want・将来に分けます。Mustに入れた機能が見栄えだけのものになっていないかも、あわせて見直します。

連携要件と異常系の要件化

RFPを中心に、外部システム連携と配達トラブル時の対応要件を示す4方向の図。
正常時の連携と例外時の動きを一緒に見積もれます。

デリバリーアプリの要件定義で、競合の解説がもっとも薄く、しかし追加費用の発生源になりやすいのが「連携要件」と「異常系の要件化」です。ここを最初に詰めておくかどうかで、見積りの精度と、後の手戻り・追加請求の有無が分かれます。発注側が意識して書き込むべき領域です。

POS・決済代行・地図APIの連携要件の明示

デリバリーアプリは単独では完結せず、複数の外部システムと連携します。代表的なのが、既存POS(受注・売上を一元管理するため)、決済代行サービス(事前決済のため)、地図API(位置追跡・ナビゲーションのため)です。この連携要件をRFPに明記しないと、ベンダーは連携の有無を見積りに織り込めず、後から「POS連携は別費用です」と追加請求される事態になります。

連携先の名称、実現したいこと(例:注文データをPOSへ自動連携して二重入力をなくす)、連携方式(APIがあるか、CSV連携か)を、分かる範囲で書き出します。地図APIでは、Google Mapsは導入が簡単な反面、アクセス増で月数百万円規模の従量課金リスクがあり、Mapboxは安価傾向だが開発難易度がやや高いという違いがあります。

そこで、想定する配達件数を要件に示せば、ベンダーはコストを抑えた地図APIの選定を提案できます。決済代行についても、希望する決済手段(クレジットカード、QRコード決済、電子マネー)を明示します。連携要件は「あとで」と先送りせず、要件定義の段階で洗い出すことが、追加費用を防ぐ最大の防衛策です。

配達トラブルの異常系の要件化

要件定義でもっとも見落とされやすく、しかし現場で最も効くのが、配達中の異常系の要件化です。配達員が配達できなくなったらどうするか、調理が遅れたら顧客にどう伝えるか、配達先に顧客がいなかったらどうするか、売り切れや量り売りで金額が変わったらどう精算するかを、要件として具体的に書き込みます。

たとえば、「配達員のキャンセル時は最も近い手すきの配達員へ自動再アサインする」「不在時は置き配と再配達を顧客が選べるようにする」「金額変動時は差額を自動で部分返金・追加請求する」といった粒度です。異常系を要件に書き込まないと、ベンダーは正常系だけを見積もり、リリース後に「トラブル対応の機能がない」と判明して、そこから追加開発すると当初予算を大きく超える追加費用が発生します。

AsIsのヒアリングで洗い出した「現場で日常的に起きているトラブル」を一つひとつ要件に変換していくことで、この問題を防げます。さらに、要件定義書には、正常系のフローと同じだけのページ数を異常系に割く、くらいの意識が必要です。特に、異常系の要件化こそ、デリバリーアプリの要件定義における最大の差別化ポイントだと言えます。

ポイント

連携先と異常時の挙動を、見積りを頼む前にRFPへ書き込んでおきます。書かれていない連携や異常系は、見積りに含まれていないと考えるのが安全です。

RFPに盛り込む項目と見積りの判断軸

ここまでの要件をベンダーに伝えるための文書が、RFP(提案依頼書)です。その完成度で、集まる提案と見積りの質が決まります。

RFPに必ず盛り込むべき項目

RFPには、次の項目を盛り込みます。

  1. プロジェクトの目的とKPIを、手数料削減やリピート率向上など数値で示します。
  2. 配達オペレーションのAsIsと、目指すToBeを並べます。
  3. 機能要件は、Must/Want/将来で分類した一覧にします。
  4. 連携要件として、POS・決済代行・地図APIなどを挙げて明記します。
  5. 異常系の要件として、再アサイン・部分返金・遅延通知の挙動を書き込みます。
  6. 非機能要件は、同時注文数・セキュリティ・可用性を含めます。
  7. 想定予算とスケジュールに加え、保守・運用の範囲も記載します。

これらを揃えたRFPを複数のベンダーに示せば、同じ前提で比較できる提案が集まります。

RFPで特に効くのは、保守・運用の範囲を最初から含めることです。デリバリーアプリは作って終わりではなく、障害対応、地図APIや決済の料金、OSアップデートへの追従といった運用費が継続的に発生します。

これを見積りに含めず初期費用だけで判断すると、運用フェーズで予算が破綻します。RFPに「リリース後の保守・障害対応フローと、その費用も提示してほしい」と明記して、初期費用と運用費の両面で比較します。

見積りの妥当性を判断する軸

返ってきた見積りの評価には、相場観が役立ちます。アプリ開発費の70〜80%は人件費で、エンジニア単価は1人月70〜120万円が目安です。デリバリーのスクラッチ開発は機能が多いほど膨らみますが、MVPであれば基本機能を絞ることで費用を抑えられます。

ノーコードやLINEミニアプリのMVPは50〜150万円(従来の約1/3)という相場もあり、まずミニアプリで検証してからネイティブに移行する段階戦略は、見積りの観点でも合理的です。見積りが極端に安いベンダーは、異常系や連携、運用費が抜けていて後から追加請求されることが多いです。要件を一緒に詰めてくれるパートナーを選ぶことが、追加費用と炎上を避ける近道です。

見積書では、異常系の対応、POS・決済・地図APIの連携費、運用・保守費が含まれているか、別建てになっていないかを確認します。各社の見積りが大きくばらつくときは、要件の解釈がずれているので、内訳を質問して埋めます。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、要件を発注側と協働で詰め、見積りの透明性を高める進め方を重視しています。

ポイント

見積りは、異常系・連携費・運用費が含まれているかで比べます。極端に安い見積りは、これらが抜けていないか内訳を質問して確かめます。

まとめ

発注側が押さえるべきは、AsIs可視化、目的とKPIの数値化、機能要件のMust/Want/将来分類、POS・決済代行・地図APIとの連携要件、配達中の異常系の要件化、非機能要件の6点です。

とくに連携要件と異常系・運用費は、追加費用が発生する三大要因なので、RFPの段階で先に潰しておくと予算超過を防げます。見積りは一次データの相場で検証し、極端に安い見積りには異常系や連携・運用が抜けていないかを確認することが大切です。

要件定義は発注側だけで完璧に書く必要はなく、自社の業務の実態を正確に伝えたうえで、システム化の方法をベンダーと協働で詰めるのが現実的です。要件定義を一つの工程として切り出し、AsIs可視化から連携・異常系の洗い出しまでを固めてから開発を見積もる二段階で進めると、炎上のリスクを大きく減らせます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、配達オペレーションから逆算した要件整理を発注側と協働で支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。