データモダナイゼーションの対象範囲は、基盤の載せ替え、データの集約、品質・ガバナンスの整備の3領域です。手法は、AWSの「7R」で整理できます。
範囲と手法は、データがどこで詰まっているかで決まります。組み合わせ方は、データモダナイゼーションの完全ガイドで体系的に解説しています。
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データモダナイゼーションがカバーする対象範囲

データモダナイゼーションは、データベースを新しくする作業にとどまらず、複数の対象領域にまたがる取り組みです。大きく分けると、データを格納する基盤の刷新、分析のためにデータを集める基盤の構築、データの定義・品質・管理ルールの整備という3つの領域があります。
どこに課題があるかによって、手をつけるべき範囲は変わります。そのため、3つの領域すべてに手をつけると決めつけず、自社のデータがどこで詰まっているかを見極めて、効果の大きい範囲から着手するのが現実的です。
データ基盤そのものの刷新(DBとインフラ)
第一の対象範囲は、データを格納している基盤そのもの、つまりデータベースやそれを支えるインフラの刷新です。オンプレミスのサーバー上で動く古いデータベースや、メーカー独自の形式に依存したストレージは、保守費が高く、拡張も難しく、データの取り出しにも専門知識が要ります。そのため、これらをクラウド上のデータベースやマネージドサービスへ移すと、運用負荷とコストを下げ、データへのアクセス性を高められます。
この範囲では、現行のデータをそのまま新環境に移すのか、構造を見直しながら移すのかを選ぶことになります。クラウド移行型なら数百万円から1,000万円台、期間は3〜6ヶ月程度が目安です。一方、データ構造から作り直す再構築型になると、2,000万円以上、12〜18ヶ月以上を要するケースもあります。
まずは「基盤を載せ替えるだけで足りるのか、構造から見直すべきか」を見極めることが出発点になります。
分析基盤への集約(DWH・データレイク移行)
第二の対象範囲は、分析・活用のためにデータを一箇所に集める基盤、いわばデータウェアハウス(DWH)やデータレイクへの移行です。基幹システム、販売管理、顧客管理など、複数のシステムに散在するデータを、分析しやすい形で集約します。DWHは整理・構造化されたデータを高速に集計するのに、データレイクはログや画像、文書などの非構造データも含めて大量に蓄積するのに適しています。
この範囲の刷新は、前章で見たユニリタの取り組みが典型です。ユニリタは、200種・約30,000台の機器と約10,000台のサーバーから、1日10億件のログを集約・集計しました。データレイク的な発想で、散在するデータを一箇所に集め、見える形につなげた取り組みです。
各システムからどうデータを抽出し、どう整形して集約基盤に流し込むか(データパイプラインの設計)が、この範囲の中核になります。基盤を作るだけでなく、データが継続的に流れ込み続ける仕組みまで設計する必要があります。
データ品質・ガバナンスの整備
第三の対象範囲は、目に見えにくいものの成果を最も左右する「データ品質・ガバナンスの整備」です。どれだけ立派な基盤を作っても、データの定義がバラバラだったり、誤りや重複が多かったり、誰がどのデータを使ってよいかが曖昧だったりすると、活用は進みません。
データガバナンスでは、データの定義を統一し、入力ルールを整え、品質を継続的にチェックして、アクセス権限や管理責任を明確にします。前章のイオングループの事例では、自動化や活用を進める前にデータと業務の流れを整理したことが、月700時間の業務削減につながりました。品質・ガバナンスの整備が効果を生んだ例といえます。
この範囲だけを切り出した「データの棚卸しと整備」であれば、200万〜500万円規模から着手することも可能で、基盤刷新の前段として取り組む価値があります。また、基盤・集約・品質の3領域は、それぞれ単独で効果を出すこともあれば、組み合わせてこそ威力を発揮することもあります。
標準的な手法の一覧:7Rによる分類

対象範囲が見えたら、移行・刷新の手法を選びます。その際の代表的な枠組みが、AWSの「7R」です。7Rは、データ基盤の移行方針を考えるときの共通言語として使われており、移行の深さや対象によって3つのグループに分けられます。
- 移行・最適化:リホスト、リロケート、リプラットフォームで、現行基盤を大きく変えずに移す方法です。
- 置き換え・作り替え:リパーチェスはSaaSなどへの置き換え、リファクタリングはデータ構造や設計の見直しです。
- 廃止・現状維持:リタイアは不要な仕組みを廃止すること、リテインは移さずに維持することです。
リホスト・リプラットフォーム(載せ替え型)
リホスト(Rehost)は、現行のデータベースやアプリケーションを大きく作り替えず、そのままクラウド環境などへ移す手法です。「リフト&シフト」とも呼ばれ、移行のスピードが速く、初期費用も抑えやすいのが特徴です。オンプレミスのデータ基盤をまずクラウドへ移して、コストと運用負荷を下げ、その後に段階的な改善を進めたい場合に向きます。
クラウド移行型として、費用は数百万〜1,000万円台、期間は3〜6ヶ月が目安です。リプラットフォーム(Replatform)は、基本構造は維持しつつ、データベースをクラウド向けのマネージドサービスに置き換えるなど、一部を最適化しながら移す手法です。
リプラットフォームは、リホストより踏み込んだ最適化を、過大なコストをかけずに進めたい場合の選択肢です。たとえば、自前で運用していたデータベースをクラウドのマネージドDBに切り替えると、バックアップやスケーリングの運用が自動化され、保守の手間が大きく減ります。なお、リロケート(Relocate)は、仮想化環境をそのまま別のクラウド基盤へ移す手法で、これらと近い「載せ替え型」に分類できます。
リファクタリング・リパーチェス(作り替え・置き換え型)
リファクタリング(Refactor)は、データの構造やデータベース設計を、クラウドネイティブな形に作り替える手法です。古い設計のまま移すと活用しにくいデータを、分析しやすい構造へ再設計したい場合に選びます。前章の製造業の事例は、データ資産の棚卸しを起点に古い処理形式を新基盤に作り替え、夜間のデータ集計を8時間から90分へ短縮したもので、この作り替え型に近いアプローチです。
効果が大きい一方、再構築型として2,000万円以上・12〜18ヶ月以上を要することもあり、相応の投資判断が必要です。リパーチェス(Repurchase)は、自社で抱えている仕組みを捨て、SaaSやパッケージ製品に置き換える手法です。たとえば、データウェアハウスをクラウドのDWHサービスに乗り換えることや、データ管理をSaaSに切り替えることが、これにあたります。
自前で持ち続ける必然性が低い領域では、置き換えによって運用負荷を一気に下げられます。ただし、パッケージへのデータ移行では「データマッピングの複雑さ」や「ユーザー部門の参画不足」がつまずきの原因になりやすく、移行設計を軽視できません。
リタイア・リテイン(廃止・現状維持の判断)
7Rには「移さない」という選択肢も含まれ、見落とされがちです。リタイア(Retire)は、すでに役割を終えたデータや使われていないシステムを思い切って廃止する判断です。たとえば、前章のユニリタの事例では、ログ分析から役割を終えつつある機器を特定できたように、棚卸しの過程で「もう不要なデータ・基盤」が見えてきます。
すべてを移行対象にせず、廃止できるものを見極めれば、刷新の範囲と費用を大きく圧縮できます。一方、リテイン(Retain)は、現時点では移行せず、あえて現状を維持する判断です。法令上の制約や、移行のリスクとコストが効果に見合わない場合には、無理に動かさないほうが賢明なこともあります。
そこで大切なのは、これらの判断を含む7R全体を「ポートフォリオ」として捉えることです。つまり、データ基盤全体に単一の手法を当てはめず、領域ごとに最適な手法を組み合わせる発想が、データモダナイゼーションの標準的な進め方になります。
手法を組み合わせるポートフォリオの考え方

7Rの各手法と3つの対象範囲を理解したら、最後は自社にどう当てはめるかです。実際のデータモダナイゼーションでは、ひとつの手法だけで全部を片づけることはほとんどありません。そのため、データの種類や重要度ごとに手法を変える、いわばポートフォリオの設計が現実的です。
費用・期間の目安からの手法の逆算
手法の選定では、費用と期間の目安を先に確認すると、判断の見通しが立ちます。データの棚卸しや現状分析だけなら、費用は200万〜500万円が目安です。クラウド移行型のリホスト・リプラットフォームは、数百万〜1,000万円台で、期間は3〜6ヶ月ほどです。
一方、構造から作り直す再構築型のリファクタリングは、2,000万円以上、12〜18ヶ月以上を要することがあります。さらに、小〜中規模で単一のデータ基盤を刷新する場合は3,000万〜1.5億円、基幹と複数の周辺システムにまたがる中〜大規模では1.5億〜5億円規模になることもあります。
費用感から手法を逆算すると、どこまでを予算内でやれるかが見えてきて、過大な投資も中途半端な刷新も避けられます。たとえば予算が限られるなら、まず棚卸しと品質整備に絞り、効果の大きいデータからクラウドへ載せ替えます。反対に、投資余力があり中長期で活用基盤を作りたいなら、再構築とDWH・データレイクへの集約まで踏み込みます。
段階的移行による範囲の区切り
ポートフォリオを組んだら、一度に実行するよりも、対象を区切って段階的に進めるのが定石です。データ基盤を全社一括で切り替える「ビッグバンアプローチ」は、データの整合が崩れたときの影響が全社に及び、リスクが極めて高くなります。
これに対し、機能やデータ領域を区切って新旧を並行稼働させながら少しずつ移していく「ストラングラーパターン」であれば、問題が起きても影響を局所化でき、切り戻しにも対応できます。また、段階的に進めると、最初の対象範囲で得た知見を次の範囲に活かせるという利点もあります。
たとえば、1つ目のデータ移行でデータマッピングの勘所や品質整備の進め方を学び、2つ目以降の精度とスピードを高めていきます。手法を組み合わせるポートフォリオの発想と、対象を区切る段階的移行の発想は、セットで機能します。どの手法をどの順序で適用するかまで設計して、はじめてデータモダナイゼーションの全体像が固まります。
まとめ
データモダナイゼーションの対象範囲と標準的な手法の一覧を見てきました。対象範囲は、データベースとインフラの刷新、DWH・データレイクへの集約、データ品質・ガバナンスの整備という3領域に整理できます。
手法は、AWSの7Rを共通言語にすると、載せ替え型、作り替え型、廃止/維持の判断に大別できます。載せ替え型はリホスト、リロケート、リプラットフォームで、作り替え型はリファクタリングとリパーチェスです。廃止/維持に当たるのは、リタイアとリテインです。
費用と期間の目安は、棚卸しのみなら200万〜500万円、クラウド移行型なら数百万〜1,000万円台で3〜6ヶ月、再構築型なら2,000万円以上で12〜18ヶ月以上が一つの基準になります。
重要なのは、データ基盤全体に単一の手法を当てはめず、データの種類や重要度ごとに手法を組み合わせるポートフォリオの発想を持つことと、対象を区切って段階的に移行することです。その結果、投資が過大になることも、刷新が中途半端に終わることも防げます。
自社にどの範囲・どの手法が適しているかを判断するには、まずデータの棚卸しで現状を把握し、費用感から逆算してポートフォリオを描くところから始めるのがおすすめです。各手法の位置づけや進め方の全体像をさらに体系的に確認したい場合は、完全ガイドもあわせて活用してください。対象範囲と手法を正しく組み合わせることが、活用できるデータ基盤への確かな第一歩になります。
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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
