ホテル管理システムのRFP/要件定義書/提案依頼書について

ホテル管理システムの発注は、現状業務の整理、RFPでの要件明示、提案評価と実運用テストの順に進めると、比較しやすく精度の高い提案につながります。

RFPに盛り込む項目から、費用、連携の責任範囲、SLA、ベンダー評価まで順に見ていきます。全体像はホテル管理システムの完全ガイドもご覧ください。

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ホテル管理システムのRFPに盛り込むべき項目

RFPの記載内容を背景・現状業務、機能要件、非機能要件の3つに分けた図。
現状を起点に、機能と品質の条件を分けて考えられます。

RFP(提案依頼書)は、要望を整理して、各社から提案と見積もりを得るための文書です。内容の精度が提案の精度を左右するため、ホテル管理システムでは宿泊業特有の業務要件を漏れなく言葉にしておく必要があります。そうすれば、ベンダーは必要な提案を組み立てられます。

背景・目的と現状業務フローの記述

RFPには、導入の背景と解決したい課題を具体的に記します。課題が明確であれば、ベンダーは目的に沿って提案できます。

  • 重複予約:OTAのダブルブッキングをなくす
  • 夜間対応:夜間フロントを無人化し、人件費を圧縮する
  • 訪日客対応:インバウンド客への対応を効率化する

課題が曖昧なままだと、ベンダーの提案は無難で汎用的になりがちです。

現状の業務フロー(AsIs)も記載します。利用中のOTAから予約受付、チェックイン、清掃指示までの流れを書き出します。

客室数と客室タイプ、年間宿泊者数も伝えます。繁忙期と閑散期の差も示します。

現状が正確であれば、ベンダーはあるべき業務(ToBe)を設計できます。一方で、現状の記述が不十分だと、実態に合わないシステムになりやすく、後述する失敗につながります。

機能要件と非機能要件の切り分け

RFPでは、機能要件と非機能要件を分けて整理します。優先度や品質条件まで示しておくと、提案内容を比べやすくなります。

  • 機能要件:予約台帳、サイトコントローラー連携、セルフチェックイン、清掃管理など
  • 非機能要件:性能、セキュリティ、可用性、保守性など機能以外の品質

機能要件には「必須・推奨・任意」の優先度を付けます。優先度を示すと提案の力点が伝わり、予算に応じた段階的な提案も得られます。

すべてを必須にすると見積もりが膨らむため、外せない機能を見極めておきます。

非機能要件では、繁忙期のピーク時に何件の同時予約に耐えるか、個人情報をどう保護するか、障害時の復旧時間などを定めます。宿泊業は宿泊者名簿やカード情報を扱うため、セキュリティ要件も丁寧に記述します。要件が甘いままだと、運用後に重大なトラブルに直結します。

ポイント

背景や現状業務、機能と非機能の要件を優先度とともに書き分けておくと、各社の提案を同じ条件で比べられます。現状の整理が曖昧だと、提案は無難になりがちです。

ハードウェアと設置工事を含む総コストの定義

ホテル管理システムの総コストをソフトウェア、機器・設置工事・配線、運用費用の3層で示した図。
機器や工事を含めると、見積もりの対象範囲が広がります。

見落とされやすいのは、ソフト以外の機器や設置工事まで含めた総コストの定義です。機器や工事の費用は、ソフトウェアと同等以上になることもあります。範囲を示さないと、機器代や工事費が別請求になり、予算が膨らむおそれがあります。

機器・設置工事・配線を範囲に含める記述

RFPには、導入する機器の種類、台数、設置場所を書きます。また、工事と既存設備との連動も対象に含めます。

  • 自動チェックイン機:ロビーに2台
  • スマートロック:全40室に設置
  • タブレット型受付機:各フロアに1台
  • カードキー発行機:導入する物理機器の対象に含める

工事では、電源工事、ネットワーク配線、自動ドアやエレベーターとの連動工事も明記します。たとえば、スマートロックは扉への取り付けが必要で、扉の構造によって追加加工が発生します。

範囲を明示すれば、機器調達や工事、ソフトウェアを含む総額を見積もれます。盗難防止、常時給電、停電時のバックアップも、要件として書き込めます。

ソフトウェアの価格だけで判断すると、機器と工事で予算超過することがあります。そのため、RFPでハード、ソフト、工事の総コストを定義します。

隠れコストと総保有コスト(TCO)の確認項目

初期費用に加えて、運用中のランニングコストも確認します。費用の発生源と従量課金の有無を、あらかじめ整理しておきます。

  • 継続費用:クラウド型PMS、OTA連携、サイトコントローラー、決済、SMSやメール配信
  • 独自連携:CRMや外部システムとの連携費用

リサーチノートの予約システム相場では、SMSは1通10〜20円、オンライン決済手数料は2.5〜4.5%です。宿泊規模が大きいほど従量費用が積み上がります。また、独自連携は初期20万〜100万円以上かかる場合があります(リサーチノートより)。

RFPでは、初期費用と運用費用を合算し、3年や5年でTCOを算出するよう求めます。初期の安さに惑わされず、運用を含めた費用対効果を比べることが大切です。隠れコストを事前に洗い出しておけば、予算超過を防げます。

ポイント

ソフトの価格だけでなく、機器、設置工事、配線、運用費を含めた総コストで各社を比べます。範囲を決めずに見積もりを取ると、後から機器代や工事費が加わるおそれがあります。

連携の責任分界を契約で担保する要件

ホテル管理システムは、PMSを中心に、サイトコントローラー、スマートロック、決済、POS、CRMなどと連携します。連携先が多いため、複数システムの障害は原因の特定が難しく、ベンダー間で責任を押し付け合うことがあります。そこで、RFPと契約で責任分界点を決めておきます。

API連携トラブル時の原因切り分けと窓口の規定

連携トラブルに備えるには、事業者ごとの役割を先に決めておく必要があります。複数システムを束ねる窓口を一つにまとめることも求められます。

  • 窓口:連携障害の一次対応を担う事業者
  • 原因切り分け:原因の特定を担う事業者

スマートロックで入室できない場合、原因がPMS、ロックのSaaS、API連携のどこにあるかは、すぐには分からないことがあります。窓口が分かれていると、発注側が各社へ連絡して回ることになり、責任の押し付け合いに巻き込まれます。さらに、緊急時には宿泊客を待たせる事態にもなります。

riplaのようなフルスクラッチ受託会社に構築と保守を一括で任せる場合、連携部分も含めて責任の所在をひとつにまとめやすくなります。「連携障害時の原因切り分けと一次対応をベンダーが担う」とRFPに記せば、責任の空白を防げます。

多言語・高齢者UDなどユーザー要件の明記

RFPでは、誰がシステムを使うかを定義します。利用者ごとの言語や操作上の配慮も、具体的に書きます。

  • インバウンド客:対応言語と海外決済
  • 高齢者や機器に不慣れな人:文字、案内、有人対応への配慮

訪日客が多い施設では、英語・中国語・韓国語などの対応言語と、WeChat PayやAlipayへの対応を記します。加えて、対応範囲は画面の翻訳にとどめず、案内フローと問い合わせ対応まで含めて示します。

また、ユニバーサルデザインには、文字サイズ調整、直感的なアイコン、音声案内、有人対応への導線があります。セルフチェックイン機で操作に迷う客が多いと、フロントが付きっきりになることもあります。

このため、使う人と状況を示せば、無人化と使いやすさを両立する提案を引き出せます。

ポイント

連携の障害時に、一次対応をどの事業者が担い、原因をどこが切り分けるかを決めておけば、責任の押し付け合いを避けられます。

稼働率・対応時間などSLAの決め方

ホテルは24時間365日稼働し、システムが止まると入室不能や予約受付停止につながります。

そのため、SLA(サービスレベルアグリーメント=サービス品質保証)をRFPと契約で定めることは、宿泊業のシステム発注で欠かせません。SLAは、ベンダーが保証する品質を数値で約束する仕組みです。

稼働率と障害復旧時間の目標設定

SLAに入れる数値と対応範囲は、RFPの段階で具体的に示しておきます。

  • 稼働率:月間99.9%以上などの目標
  • 復旧目標時間:障害発生から復旧までの目標
  • 夜間・休日対応:緊急時の対応範囲

稼働率が高いほど停止時間は短くなります。深夜にチェックインシステムが止まると入室できないため、夜間・休日の対応は欠かせません。

施設の運営実態に合う稼働率と復旧時間を提示し、ベンダーが達成できるかを確かめます。24時間対応にするか翌朝対応にするかは、施設規模やフロント体制で異なります。

過剰なSLAは保守費用を押し上げます。一方で、曖昧なまま契約すると夜間対応が対象外になりかねないため、必要な保証水準を見極めます。

保守・サポート体制と問い合わせ対応時間の規定

障害対応に加えて、日常の保守やサポート体制もSLAに含めます。週末や連休は繁忙期にあたるため、土日祝の対応も確認します。

  • 問い合わせ:受付時間と一次回答までの目標時間
  • 保守:定期更新とセキュリティパッチの適用方針
  • 認証:ISMSなど第三者認証の有無

受付時間が平日日中だけか24時間かで、停止時の初動は大きく変わります。土日祝のサポートは、実務上欠かせません。

宿泊者の個人情報やカード情報を扱うため、情報セキュリティは事業者の信用に直結します。RFPに体制と認証を盛り込めば、運用品質を比べられます。

要件定義書とRFPは、開発前の設計図であり、運用開始後のトラブルから施設を守る契約の土台です。ここを丁寧に作り込むことが、後悔のないシステム導入の出発点です。

ポイント

稼働率と復旧時間は、施設の運営実態に合わせて設定します。過剰なSLAは保守費用を押し上げ、曖昧なままでは夜間対応が対象外になりかねません。

ベンダー選定と提案評価のプロセス設計

ベンダーの提案を要件と実績、費用、運用、責任と安全の4観点で確認する図。
複数の観点をそろえると、価格以外も評価に含められます。

RFPを作っても、選定と評価が甘いと要件を活かせません。そこで、提案を比べる基準を事前に設計しておきます。

RFPと評価プロセスをそろえておくと、納得感のある発注につながります。

提案を比較するための評価基準の設定

価格だけで決めず、複数の観点を点数化して総合評価します。評価軸に重みを付けておくと、社内の合意形成も図りやすくなります。

  • 要件と実績:機能要件の充足度、宿泊業や同業態での実績
  • 費用:ハードと工事を含む総額、総保有コスト
  • 運用:保守・サポート体制と保証水準
  • 責任と安全:連携時の責任の明確さとセキュリティ体制

評価基準は、あらかじめ評価表にまとめ、提案を総合的に比べられるようにします。他社より極端に安い見積もりには、機器や工事、連携費が対象外になっている場合や、保守時間が限られている場合があります。

また、TCOと保証水準も確認します。基準を文書にしておけば、安さに引きずられず、自施設に合うベンダーを選べます。

無料トライアルと実運用テストでの検証

可能であれば、無料トライアルや実運用テストを要件定義の段階から計画しておきます。提案書の記載では見えない使い勝手や連携を、実際に確かめられます。

  • 操作性:フロントスタッフが迷わず使えるか
  • 連携と性能:OTAの在庫反映や繁忙時の性能に問題がないか

提案書では魅力的に見えても、使ってみて初めて分かることがあります。リサーチノートも、無料トライアルで実運用に近いテストをすることを選定の重要点に挙げています。

現場のスタッフに実際に操作してもらい、その反応を評価に反映します。また、機器に不慣れな人が迷わないか、繁忙時のピークに耐えるかも見ておきます。

RFPにトライアル環境を求めておくと、検証を進めやすくなります。提案評価と実証まで設計すれば、後悔のない発注につながります。

データ移行と稼働スケジュールの要件化

RFPには、データ移行の範囲と稼働スケジュールを記します。範囲を決めておくと、見積もりの漏れや移行の遅れを防げます。

  • 移行データ:予約データ、顧客情報、料金設定
  • 移行作業:担当者と検証範囲
  • 稼働計画:希望稼働日と並行稼働期間

既存システムや手書き台帳から何を移すかを決めます。対象データの項目と件数は、事前に整理してRFPに記します。

宿泊業では、繁忙期を避けて余裕を持って切り替えます。ピークシーズン直前では、不具合対応と繁忙対応が重なり、現場が混乱します。

そのうえで、希望稼働日と並行稼働の期間を示し、無理のない予定を提案してもらいます。移行の責任と日程を固めておくと、立ち上げを円滑に進められます。

ポイント

提案は価格だけで決めず、要件の充足度、総コスト、運用体制、責任の所在で点数化して比べます。評価の前に、無料トライアルや実運用テストで使い勝手を確かめておくと判断の材料がそろいます。

まとめ

ホテル管理システムのRFPでは、目的と業務フロー、機能・非機能要件を具体的に書き込みます。あわせて、総コストや連携の責任、SLAも示します。

とくに宿泊業では、機器や工事費、連携時の責任、24時間稼働を支える保守体制が、汎用的なシステム発注より重い判断材料になります。

発注側は、誰がどう使い、障害時に誰が責任を負い、何を保証するかまで言葉にしておけば、比較しやすい提案を得られます。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、宿泊業務に即した要件整理と、ハード・連携・保守を含めた責任の所在をひとつにまとめる支援を行っています。全体像の確認には、完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。