モダナイゼーションの発注は、現状を把握し、要件とRFPを明文化して、評価基準に沿ってベンダーを選ぶ順に進めると、刷新リスクを抑えられます。
この順に、現状分析、RFPの書き方、ベンダー選定を見ていきます。全体像はモダナイゼーションの完全ガイドもご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・モダナイゼーションの完全ガイド
レガシーシステム刷新の種類・工程・費用・会社選定までの全体像については、無料ホワイトペーパー「レガシーシステム刷新の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
モダナイゼーションにおけるアセスメント(現状分析・AS-IS可視化)の重要性

モダナイゼーションを成功させる最初の関門は、アセスメント、つまり現状分析です。アセスメントでは、刷新の対象となる構成や機能、他システムとの連携を把握します。
新規開発と違い、モダナイゼーションはすでに業務が動いている資産を扱います。現行の挙動を取りこぼすと、刷新後に処理が動かない事態を招きます。
発注側は、資産の棚卸しとAS-IS可視化から始め、業務を止めずに刷新できるよう現状を正確に捉えることが求められます。
仕様書欠如とブラックボックス化が刷新を阻む理由
現行仕様書の欠如や実態との乖離は、刷新失敗の大きな原因の一つです。さらに、ブラックボックス化は刷新の難易度そのものを左右します。刷新を阻む状況は、現行の仕様が見えないことから生まれます。
- 仕様の欠落:長年の改修で設計書が更新されず、実態と乖離するため、コードの処理を説明できないことがあります。
- 暗黙知の喪失:引き継がれてきた仕様が、担当者の退職や世代交代によって失われることがあります。
- 刷新後の不具合:現行処理が要件から漏れると、業務停止やデータ不整合につながりかねません。
- 判断の不確実さ:仕様が見えないままでは、移行方式の選定やリスク評価も推測に頼ることになります。
- 広くある課題:JUASの調査では、約7割の企業が基幹システムのレガシー化を課題に挙げています。
仕様が見えていれば、残す部分と作り替える部分を論理的に判断できます。つまり、アセスメントは見えない仕様を洗い出して抜け漏れを防ぐ工程です。
資産棚卸しとAS-IS可視化を支援するツール
現状分析の中核は、アプリケーション資産の棚卸しです。稼働中の資産を一覧にして把握することで、刷新計画につなげます。棚卸しは、対象の把握から分析、可視化、計画への活用までつながっています。
- 棚卸し対象:稼働プログラムの本数、画面・帳票の数、データベースのテーブル、外部連携インターフェース。
- 分析内容:プログラム間の依存関係と複雑度を調べ、刷新範囲と工数の見積もりに使います。
- 可視化ツール:機械解析によって、資産の複雑度や依存関係を見える形にします。
- 巨大なソースコード:目視では追いきれない構造も客観的なデータで捉え、リスクやコストが集中する箇所を把握できます。
- 計画への活用:複雑な箇所を特定した結果が、移行対象を判断する材料になります。
大規模システムの棚卸しは人手だけでは難しいため、機械解析ツールが役立ちます。たとえば、富士通の「ソフトウェア地図」は、リスクの集中箇所を俯瞰できる形で示せます。
重い部分を事前に特定しておけば、発注側は段階移行の順序や方式を合理的に検討できます。また、アセスメントを行うと、要件定義や移行計画の精度を高められます。
棚卸し・要件定義フェーズの費用感
アセスメントから要件定義までは、本体開発の前に行う準備段階です。費用の目安と、実施時に判断の材料になる点を見ていきます。
- 費用の目安:棚卸しと要件定義のみを外部の専門会社に依頼する場合、200万〜500万円程度です。
- 分析への投資:分析の質が後工程の見積もり精度を左右します。そのため、本体費用より小さく見えても、相応の投資が必要です。
- 省略した場合の影響:開発中に想定外の仕様が判明し、追加要件や手戻りでコストとスケジュールが膨らむことがあります。
- 進め方:アセスメントを後工程のリスクを前倒しで減らす投資と捉え、RFPより前に独立させて進めます。
要件定義で固めるべき項目とRFPの書き方

現状を把握したら、その情報をもとに要件を固め、RFPに記載します。RFPは、各ベンダーに共通の前提で提案を求めるための文書です。
記載が曖昧だと提案の前提がばらつき、横並びで比較できなくなります。そのため、発注側はRFPに何をどの粒度で書くかを、事前に決めておく必要があります。
RFPに盛り込むべき必須項目
モダナイゼーションのRFPでは、新規開発と違って、現状を正確に示すことが欠かせません。情報の細かさが提案の精度に直結するため、RFPに入れたい代表的な項目を挙げます。
- 現行構成・性能:ハードウェア、ミドルウェア、連携先を含む構成図と、応答時間・同時接続数・バッチ許容時間
- 移行後のKPI:刷新によって達成したい数値目標
- 対象範囲・移行方式:刷新する機能と据え置く機能の線引き、段階移行やストラングラーパターンなどの進め方
- 保守体制・スケジュール:運用時のサポート水準、マイルストーン、希望する完了時期
- 予算レンジ:投資可能な金額の幅
特に現行構成図と対象範囲は、モダナイゼーション特有の重要項目です。対象範囲の解釈が分かれると、見積もりもぶれてしまいます。
発注側が、アセスメントで把握した資産情報を具体的な図表で示せば、提案の前提がそろい、各社の提案の質を高められます。
移行方式とKPIの要件化
移行方式は刷新のリスクとコストを左右します。そのため、RFPでは現状分析を踏まえた方式の提案と、達成したいKPIを具体的に求めます。移行方式ごとの違いと、RFPで押さえたい点を整理します。
- ビッグバン方式:一度にすべてを切り替えるため影響範囲が大きく、問題が起きたときに後戻りしにくい方式です。
- 段階移行とストラングラーパターン:機能を順に置き換えて影響を局所化します。新旧システムを並行稼働させる方式は、業務を止めにくくリスクも抑えられます。
- 提案論点:「段階移行を希望し、並行稼働期間と切替判断基準を含めること」のように、検討事項を具体的な文言で示します。
- KPIの明文化:処理時間の短縮率や運用人員の削減幅など、刷新後に達成したい数値目標を書き出します。
- 曖昧さによるリスク:目標の定まらないまま進めると、システムが動いても期待した効果が出ず、投資対効果を評価できないことがあります。
発注側が移行方式を決め打ちせず、現状分析に基づく最適な案を求めると、リスクの低い計画につながります。また、RFPで目標値を示し、その達成方法を提案に含めてもらうと、刷新後の達成状況から成否を客観的に評価できます。
失敗しないベンダー選定の評価観点

提案が出そろったら、ベンダーを選定します。既存資産を扱う難度の高い刷新では、価格や提案書の見栄えだけで選ぶのは危険です。
失敗を避けるには、刷新を完遂できる実力を客観的な基準で見極める必要があります。まず評価項目を定め、各社を同じ基準で比較します。
ベンダー評価の5つのチェックポイント
提案書や面談の内容を5つの観点で見ると、ベンダーを客観的に比べられます。
- 同業界・同規模の実績:自社に近い業務要件や規模の刷新経験
- 段階移行の設計力:機能を分け、移行順序を設計する力
- 停止時間の見積もり:切替時のダウンタイムを具体的に試算する精度
- 保守体制:24時間365日のサポート対応
- 品質・セキュリティ認証:ISO9001やISO27001などの取得状況
同業界の実績は、固有の業務要件や落とし穴への理解につながります。停止時間の試算からは、現実的な移行計画を描けているかを確かめられます。
基幹システムの停止は業務に直結するため、運用フェーズのサポート水準も確認しておく必要があります。
ISOなどの第三者認証は、組織の品質管理と情報セキュリティを裏づける材料になります。こうした観点は、提案の見栄えでは測れない実力を映します。
段階移行の設計力と停止時間の見積もり精度は、刷新特有の難所に関わるため、特に重点的に確認します。さらに、項目ごとに重みを付けて点数化すれば、複数社を数字で比べる選定シートを作れます。
客観基準で比較するための提案依頼の工夫
5つのチェックポイントを選定で機能させるには、各観点の情報を引き出す質問をRFPに用意しておきます。
- 実績:「直近3年以内の同規模刷新案件を、移行方式とともに提示してください」と尋ね、具体例から判断します。
- 停止時間:「切替時の想定停止時間と短縮の工夫を提案に含めること」と指定し、見積もりの精度を比べます。
- 保守・認証:障害時の一次対応時間、夜間休日の対応可否、認証の種類と取得年を定型様式で尋ねます。
回答の形式がそろっていれば、各社を横並びで評価できます。一方で、自由記述だけに頼ると、各社は得意な点を強調する形になり、弱点が見えにくくなります。
安い提案に飛びつくと、移行に失敗してかえって高くつくケースは少なくありません。そのため、5項目で一定の水準を満たしたうえで、総保有コストと刷新後の運用負荷も含めて総合的に判断すると、失敗を防げます。
客観的な基準で比べることが、刷新プロジェクトを確かなものにします。
まとめ
ここまでは、アセスメント、要件定義、RFP、ベンダー選定の順に、発注側が押さえる要点を見てきました。
仕様書の欠如やブラックボックス化は、刷新後の業務停止やデータ不整合を招く要因です。そのため、まず資産を棚卸しし、AS-ISを書き出して現状を把握します。
富士通の「ソフトウェア地図」などを使うと、資産の可視化を進められます。また、棚卸しと要件定義のみを外部に依頼する場合の費用は、200万〜500万円程度が目安です。
RFPには、現行構成図や性能要件、移行後のKPI、対象範囲、移行方式などを具体的に記載します。各社が共通の前提で提案できる粒度まで、詰めておく必要があります。
ベンダーは、実績、段階移行の設計力、停止時間の見積もりを中心に比べます。保守体制や認証も含めて5つの観点で評価し、総保有コストと運用負荷も判断材料にします。
経済産業省は「2025年の崖」で、レガシーシステムを放置すると年間最大12兆円の経済損失が生じるリスクを警告しています。刷新は先送りできない経営課題です。
時間をかけて現状分析を固め、質の高いRFPと客観的なベンダー評価に臨むことが、刷新成功への近道です。
アセスメントから要件定義、RFP、ベンダー選定へと順に進めることが、モダナイゼーション成功への出発点です。
▼開発を相談する前に読みたい無料ホワイトペーパー
・レガシーシステム刷新の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
