モバイルオーダーシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

モバイルオーダーは、注文待ちの短縮、事前決済、POS連携で現場を改善します。ただし、対面の注文が長く続く飲食・小売・施設運営では、完成形を一度に入れても定着しない場合があります。

発注企業の担当者向けに事例へ絞り、導入・開発・活用の事例から、自社の着手点と狙う効果を考えていきます。全体像はモバイルオーダーシステムの完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・モバイルオーダーシステムの完全ガイド

テーブルオーダーで回転率を改善した事例

テーブルオーダーの効果を、待ち時間の短縮、追加注文の促進、工数の再配分、ミスと顧客不満の抑制に分けた図。
注文取りの時間を、接客や料理提供へ振り向けられます。

飲食店のモバイルオーダーで最も分かりやすい成果が出るのは、テーブルオーダーです。従来は、ホールスタッフが各卓で注文を取り、伝票を厨房へ通していました。テーブルオーダーにすると、注文の取りこぼしや伝達ミスが減り、ピーク時にさばける注文の量が増えます。

注文待ちと提供までの時間が短くなれば、1卓あたりの滞在時間も圧縮できます。

注文待ち時間の短縮が回転率と客単価を押し上げた事例

テーブルオーダーの効果は、回転率と客単価に表れます。

  • 待ち時間の短縮:来店客は店員を呼ぶ順番を待たず、着席後すぐに注文を始められます。
  • 追加注文の促進:写真やおすすめを見ながら、追加のドリンクやサイドメニューを自分のペースで選べます。

注文待ちと提供時間が短くなった店舗は、ピーク時に同じ席数でより多くの組数を受け入れ、事例では客数の増加が繁忙時間帯の売上を押し上げました。

効果は、自社の客単価と回転数に当てはめると数字で確かめられます。たとえば、滞在時間が10分短縮され、ピーク2時間で席が1.2回転増えるなら、その分の売上が上乗せされます。

人手不足下でホール工数を再配分した活用事例

テーブルオーダーは、回転率や客単価の改善に加えて、注文をセルフ化することで現場と接客を効率化できます。

  • 工数の再配分:注文取りをセルフ化し、料理提供や片付け、接客の質向上に時間を回します。
  • 人手不足への対応:限られた人数でも席を回しやすくなり、慢性的な人手不足や採用難への打ち手になります。
  • ミスと顧客不満の抑制:注文を厨房へ直接送るため、聞き違いや伝票ミスが減り、注文違いや再調理も抑えられます。
  • 接客と満足度の向上:スタッフが接客に時間を割けるようになり、省力化だけでなく顧客満足にもつながります。

注文をセルフ化することで店側と客側の双方が効率化されることが、モバイルオーダー導入の第一歩です。

ポイント

テーブルオーダーの効果は、回転率と客単価に加え、ホールの工数を接客に回せるかで測るのが目安です。ミスの減少も含めて、自社の数字に当てはめて見積もります。

テイクアウト事前注文・事前決済で機会損失を減らした事例

主要な決済手段、損失の試算、事前注文による需要回収の順に示した流れ図。
購入を諦める人数を把握すると、導入効果を見積もれます。

テイクアウトと事前注文も、モバイルオーダーの主な活用領域です。来店客はスマホで注文と決済を済ませ、指定した時間に店舗で受け取ります。

テイクアウト需要の高い業態ほど、事前注文の効果は大きくなります。そのうえで、支払い手段とピーク時の注文の集中を踏まえ、機会損失を見積もることが大切です。

支払い手段の不足が招く機会損失を防いだ事例

支払い手段に関する調査は、事前注文・事前決済の価値を考える材料になります。SBペイメントの調査では、希望する支払手段がない場合、60%超が「他店で購入する」と回答しています。

購入の取りこぼしを抑えるには、どこで売り逃しているかを先に確かめる必要があります。

  • 主要な決済手段を用意:クレジットカード、QRコード決済、電子マネーを揃えます。
  • 損失を試算:客単価と購入を諦める人数から、逃している売上を見積もります。
  • 事前注文で需要を回収:損失の一部を取り戻せれば増収になり、逃した需要も導線に取り込めます。

たとえば、客単価680円の店舗で、行列や決済の不便さから1日15人が購入を諦めるとします。この場合、680円×15人×30日で月306,000円の損失になります。

事前決済でレジ業務とピーク混雑を解消した事例

事前決済の効果は、主にレジ業務の負担と注文後のロスに表れます。

  • レジ業務の軽減:受け取り時は会計が要らず、ランチピークも列が滞留しにくくなります。
  • 注文時決済:注文時点で支払いを済ませ、受け取り時は商品を渡します。

レジ担当の人員配置を見直せる一方で、決済手数料はかかります。EC・モバイル決済では、手数料率の「3.0〜3.4%」が約4割を占めるという調査結果です。

決済済みの注文は、作り置きのロスや無断キャンセルを抑えます。特に、自社のテイクアウト比率が高いほど、事前注文から始める価値があります。

事前注文は、行列を解消して顧客体験を改善し、機会損失とロスも減らします。発注側は、これらの効果を決済手数料と比べて導入を判断します。

ポイント

事前注文は、支払い手段の不足で逃す売上を試算してから、導入効果を判断するのが目安です。レジ混雑の解消は、決済手数料を差し引いても残る効果かどうかで見ます。

POS・在庫・会計連携で受注から精算まで自動化した事例

スマホで受けた注文を中心に、POSレジ、在庫管理、売上集計、精算・記帳へつなぐ図。
在庫表示から売上計上まで、注文データを業務間で共有します。

POS・在庫・会計などの基幹システムと連携すると、スマホで受けた注文をPOSレジ、在庫管理、売上集計へリアルタイムに送れます。その結果、受注から精算・記帳までがつながり、二重入力やデータの不整合を防げます。

複数店舗を展開する事業者にとって、こうした連携は本格投資に踏み切る理由の一つになります。また、連携の範囲に応じて、既製サービスで試すか、個別開発を選ぶかを決められます。

POS・在庫連携で品切れ表示と自動精算を実現した事例

多店舗で多くのメニューを扱う場合は、モバイルオーダーとPOS・在庫情報をリアルタイムで同期させることが欠かせません。在庫と連携しないと、品切れでも注文できてしまい、客の信頼を損ないます。

成功事例では、モバイルオーダーを注文受付の窓口にとどめず、POS・基幹システムのフロントエンドとして位置づけています。

  • 在庫表示:実在庫と連動し、品切れのメニューは自動で「売り切れ」と表示されます。
  • 受注と精算:注文データをPOSへ送り、精算処理やレジ締めの手間を減らします。
  • 一連の業務連携:POSから厨房への調理指示、決済、売上計上までを一つの流れでつなぎます。

こうした連携を全体で進めれば、注文1件ごとの人手はほぼゼロに近づきます。なお、スクラッチ開発による中規模の構築費用は150〜400万円が目安です。

複数店舗で間接業務を構造的に減らせれば、投資を回収できる可能性があります。そのうえで、発注側は導入効果と構築費用を照らし合わせて判断します。

既製サービスでスモールスタートした事例

最初から数百万円のスクラッチ連携には踏み切れない店舗もあります。一方で、既製のモバイルオーダーSaaSで始め、効果を確かめてから本格投資に進む事例もあります。

決済代行を含むSaaSは、初期数万円、月額数千円から利用できます。また、テーブルオーダーや事前注文に対応しており、最小限の投資でデジタル化を始められます。

導入費用のアンケートでは、「5万〜10万円未満」が18.8%で最多でした。小規模なら、現実的な投資で始められます。

  1. まず1店舗または一部機能で試し、現場と来店客が使うか検証して、運用のノウハウと現場の納得感を蓄えます。
  2. 店舗数や注文量が増え、既製品で要件を満たせなくなった段階で、POS連携を含むスクラッチ開発へ移行します。

発注側は、自社の規模と注文量に応じて入口を選びます。この段階的な拡大は、後述する失敗事例とは対照的な堅実な進め方です。

ポイント

POS・在庫連携は、品切れ表示と精算の手間をどこまで減らせるかで見ます。最初は既製サービスで小さく始め、注文量が増えてから連携を広げる進め方も選べます。

失敗から軌道修正したモバイルオーダー導入事例

発注側は、なぜ失敗したのか、どう立て直したのかという経験から、成功の要因と並んで多くを学べます。

こうした失敗から得られる教訓は、これから投資する企業の判断材料になります。特に、現場に合う運用を設計し、段階的に定着させることが大切です。

現場に使われず放置されたシステムの教訓

象徴的な失敗は、現場の業務を十分に確かめないまま、ベンダーに開発を任せたケースです。

  • 業務把握の不足:注文や料理提供、現場の困りごとを聞かず、ToBeモデルも描かないまま開発が進みました。
  • 現場との不一致:飲食・小売の店舗ごとの段取りを無視して理想論を進めた結果、厨房業務や接客動線に合わない設計になりました。

スタッフはレジ打ちに戻り、来店客にも案内されないまま、高価なシステムは飾りになりました。さらに、導入費用と月額費用も、ほぼ丸ごと無駄になりました。

システムの成否を左右するのは、技術力や予算、投資額よりも、現場の業務にどれだけ寄り添ったかです。

現場ヒアリングと段階導入で立て直した事例

現場に定着する導入へ立て直すには、業務の把握から機能の段階導入まで、順を追って進めます。

  1. 開発前にホール、厨房、レジ担当へ注文の受け方や無駄、手戻りを聞き、現状の業務(AsIs)を洗い出します。
  2. モバイルオーダーでどう改善するかを設計し、あるべき業務の姿(ToBeモデル)を描きます。
  3. 全機能を一斉に展開せず、テーブルオーダーやテイクアウト事前注文から試し、現場が効果を実感できる成功を重ねます。
  4. 現場と来店客に定着してから、POS連携などの大きな投資へ進みます。

この手順の有無が、現場に使われるシステムと使われないシステムを分けます。なお、riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、この進め方を重視しています。

事例は、華やかな成果だけでなく、なぜ現場で使われたのかという視点で読むと、失敗を避ける近道になります。

ポイント

導入前に現場の業務を聞き取り、あるべき業務の姿を描けているかを発注側で確かめておくことが目安です。機能は一斉ではなく、現場が効果を実感できる範囲から段階的に広げます。

まとめ

成功した事例も、失敗から立て直した事例も、現場業務を起点に設計し、回転率や機会損失の改善を基準に段階的に投資している点で共通しています。

テーブル注文は、待ち時間の短縮から回転率と客単価を測れます。事前注文・決済は機会損失とレジ混雑を抑え、POS・在庫・会計連携は受注から精算までをつなぎます。

一方、現場ヒアリングを怠ると、導入したシステムが使われず放置される場合があります。自社の業態と注文量に照らして、テーブル注文やテイクアウト事前注文から一歩を踏み出してください。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、現場業務から逆算した要件整理と、店舗に定着するシステムづくりを支援しています。全体像は完全ガイドをご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。