予実管理システムの必要機能や標準機能の一覧について

予実管理システムを比較検討するとき、製品ごとの機能一覧を眺めても、「どの機能が自社にとって必須で、どこからがあれば便利なオプションなのか」が判断しづらい、と感じている担当者は多いのではないでしょうか。予実管理システムは、予算を作る機能、実績を取り込む機能、差異を分析する機能、レポートを出す機能など、複数の役割を束ねた業務システムです。これらの機能が自社の予実管理プロセスのどこを担い、何を効率化してくれるのかを理解しないまま製品選定に入ると、不要な高機能版を選んでしまったり、逆に必須機能が欠けた製品を選んでしまったりします。

本記事は、予実管理システムに求められる必要機能・標準機能を、その役割と業務上の意味から体系的に解説する「機能特化」の内容です。予算編成機能、実績データ連携機能、差異分析機能、レポート・ダッシュボード機能という4つの柱を軸に、それぞれが予実管理プロセスのどこを担い、選定時に何を確認すべきかを掘り下げます。読み終えるころには、製品の機能一覧を自社の要件に照らして読み解けるようになるはずです。なお、予実管理システムの全体像をまだ把握していない方は、まず予実管理システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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予算編成を支える機能

予算編成を支える予実管理システムの機能イメージ

予実管理システムの出発点となるのが、予算そのものを作る予算編成機能です。予実管理は「予算」があって初めて「実績との差異」が意味を持つため、予算をどう作り、どう取りまとめるかを支える機能は、システムの土台と言えます。各部門からの予算入力、全社での取りまとめ、複数案のシミュレーションといった機能が、この柱に含まれます。

部門別予算入力とワークフロー承認機能

予算編成機能の中核は、各部門が自分の予算を直接システムに入力できる機能です。経営企画がExcelフォームを配って回収する代わりに、各部門長が画面上で売上計画や経費予算を入力します。入力された予算は、上長や経営企画の承認を経て確定する、というワークフローを設定できる製品が一般的です。これにより、誰がまだ未提出か、誰の予算が承認待ちかが一目で分かるようになります。

選定時に確認すべきは、自社の組織階層と承認ルートをシステムの承認フローで表現できるかどうかです。部門が多階層にわたる企業や、事業部と本社で二重に承認が必要な企業では、承認ルートの設定の柔軟性が使い勝手を大きく左右します。また、入力フォーマットを科目体系に沿って統一できるかも重要です。部門ごとにバラバラな粒度で予算が入ってくると、後の集計で苦労するため、入力段階で形式を揃えられる機能が役立ちます。

複数案シミュレーションと予算改訂機能

予算は一度作って終わりではなく、「強気案」「保守案」といった複数のシナリオを比較したり、期中に実績を踏まえて見直したりする必要があります。予算編成機能の中でも、複数の予算案を並行して保持し比較できるシミュレーション機能は、経営判断の質を高める重要な要素です。Excelでは案ごとにファイルを複製していたところを、システムなら同一基盤上でシナリオを切り替えて比較できます。

加えて、期中に予算を見直す「予算改訂」や「見込み(フォーキャスト)」の機能も、実務上は欠かせません。当初予算をそのまま固定して年度末まで使うのではなく、上半期の実績を踏まえて下半期の見込みを立て直す、という運用は多くの企業で行われています。当初予算・改訂予算・見込みを区別して管理でき、それぞれと実績を比較できるかどうかは、選定時に必ず確認すべきポイントです。この柔軟性が、年度途中の経営環境の変化に対応する力を左右します。

実績データを取り込む連携機能

実績データを取り込む予実管理システムの連携機能イメージ

予実管理の「実績」側を支えるのが、会計システムや基幹システムから実績データを取り込む連携機能です。実績の源泉は会計システムにあるため、ここを自動化できるかどうかが、予実管理の手間とスピードを決定づけます。連携機能は地味ですが、日々の運用負荷に直結するため、選定の最重要ポイントの一つです。

API連携とCSV取込の機能

実績取込の方式には、大きくAPI連携とCSV取込の2つがあります。API連携は、会計システムと予実管理システムをプログラムで直接つなぎ、実績データを自動で流し込む方式です。手作業がほぼ不要になる反面、対応している会計システムが限られる場合があります。CSV取込は、会計システムから出力したCSVファイルをアップロードする方式で、どんな会計システムにも対応しやすい反面、ファイル出力とアップロードの手間が残ります。

選定時に確認すべきは、自社が使っている会計システムとAPIで連携できるか、できない場合のCSV取込の手間がどの程度かです。API連携を謳う製品でも、対応している会計ソフトのリストに自社のものが含まれていなければ意味がありません。また、CSVのフォーマットがどこまで柔軟に設定できるかも重要です。会計システムの出力形式と予実管理の取込形式が合わないと、間にExcelでの加工が挟まり、自動化の効果が薄れてしまいます。

勘定科目マッピングと配賦の機能

実績を取り込むだけでは、予実比較は成り立ちません。会計システムの勘定科目と、予算の管理区分を対応づける「マッピング」機能が必要です。会計上は細かく分かれている科目を、予実管理では管理しやすい単位にまとめたい、というニーズは多く、この集約と対応づけを柔軟に設定できるかが使い勝手を左右します。マッピングが固定的だと、管理会計の視点で数字を見たいときに融通が利きません。

さらに、共通費を各部門に割り振る「配賦」の機能も、管理会計を重視する企業には重要です。本社管理部門の経費や共通システムの費用を、一定の基準で各事業部に按分して配賦することで、各部門の真の採算が見えるようになります。配賦ルールをシステム上で設定し、実績取込後に自動で配賦計算ができるかどうかは、製品によって対応が分かれます。自社が部門採算をどこまで厳密に見たいかに応じて、配賦機能の有無と柔軟性を確認することが大切です。

差異を分析する機能

差異を分析する予実管理システムの機能イメージ

予実管理システムの本領は、予算と実績の差異を「見える化」し、その原因を掘り下げる差異分析機能にあります。予算と実績をただ並べるだけなら表計算でも可能ですが、差異の中身を素早く追えるかどうかが、システムの価値を決めます。差異分析機能は、予実管理を「報告作業」から「経営支援」へと引き上げる中核機能です。

ドリルダウンと多軸分析の機能

差異分析の中心となるのが、全社の差異から事業部別、部門別、勘定科目別へとクリックして掘り下げられるドリルダウン機能です。「全社で販管費が予算超過」という大きな数字から、「どの部門の」「どの科目が」原因かを画面上で即座に追えることが、原因究明のスピードを決めます。Excelでは元データに戻って集計し直す必要があった作業が、システムでは数クリックで完了します。

あわせて確認したいのが、どんな軸で数字を切れるかという多軸分析の柔軟性です。組織別だけでなく、製品別、得意先別、プロジェクト別など、自社が見たい切り口で予実を分析できるかは、製品によって大きく差が出ます。会計システムの仕訳に付与された補助科目やセグメント情報を、予実管理側でも分析軸として使えるかどうかが鍵になります。自社が経営判断のためにどんな切り口で数字を見たいかを整理し、それに対応できる分析軸を持つ製品を選ぶことが重要です。

差異アラートと着地見込み予測の機能

分析を待つだけでなく、差異が一定の閾値を超えたら自動で知らせてくれるアラート機能も、運用を支える便利な機能です。予算超過が大きい部門や科目を自動で抽出して通知することで、担当者が全項目を目視で確認する手間が省けます。問題のある項目に注意を集中できるため、限られた時間で効率的に異常を捉えられます。

さらに高度な製品では、これまでの実績ペースから年度末の着地見込みを予測する機能を備えるものもあります。「このペースで進むと、年度末には予算をこれだけ超過する見込み」という予測が見えれば、早めに手を打てます。ただし、こうした予測機能は使いこなしに前提知識が要る場合もあるため、自社の運用体制で活かせるかを見極めることが大切です。アラートや予測は、あれば便利な一方で、まずは基本の差異分析を確実に回せることが優先だという順序を忘れないでください。

レポートとダッシュボードの機能

レポートとダッシュボードを担う予実管理システムの機能イメージ

予実管理の成果を関係者に届けるのが、レポート機能とダッシュボード機能です。どれだけ精緻に差異を分析しても、それが経営層や現場に分かりやすく伝わらなければ意味がありません。誰に、どんな粒度で、どう見せるかを支えるこれらの機能は、予実管理を組織に浸透させる出口を担います。

定型レポートの自動生成機能

月次の予実報告書は、毎月決まった形式で作る定型業務です。レポート機能では、この月次報告のテンプレートをあらかじめ設定しておき、実績が確定したらボタン一つで最新の数字に差し替えたレポートを生成できます。これにより、毎月Excelでグラフを更新し、表を整形する手間が消えます。経営会議用の資料作成に毎月数日かけていた企業にとって、この自動生成は大きな工数削減になります。

選定時に確認すべきは、自社が経営層に提出している報告フォーマットを、システムのレポート機能でどこまで再現できるかです。既存の報告書の見た目や項目構成を大きく変えると、経営層の理解の妨げになることがあります。テンプレートのカスタマイズ性が高い製品ほど、既存の報告スタイルを踏襲しやすくなります。レポート機能は、新しいやり方を押し付けるのではなく、これまでの報告を楽にする方向で評価するのがコツです。

ダッシュボードと権限管理の機能

ダッシュボード機能は、予実状況をグラフや指標でひと目で把握できる画面です。各部門長が自部門の予算消化状況をいつでも確認できるようにすれば、月末を待たずに自律的なコスト意識が芽生えます。経営層には全社サマリを、部門長には自部門の詳細を、というように、見る人の役割に応じた画面を用意できることが、ダッシュボードを活かす鍵です。

そこで重要になるのが、権限管理機能です。予実データは経営の根幹に関わる機密情報を含むため、誰がどの範囲の数字を見られるかを厳密に制御する必要があります。ある部門長には自部門の数字だけを見せ、他部門の数字は見せない、といった制御ができなければ、情報統制の観点で問題が生じます。役職や所属に応じた閲覧・編集権限を細かく設定できるかは、予実管理システム選定の見落とされがちな、しかし極めて重要なチェックポイントです。可視化の範囲と権限設計は、運用の安全性を左右します。

運用を支える付帯機能と機能の見極め方

運用を支える予実管理システムの付帯機能のイメージ

4つの柱となる主要機能のほかにも、予実管理を日々運用するうえで効いてくる付帯機能があります。また、機能一覧を眺めて自社に必要な機能を見極めるには、評価の視点を持つことが欠かせません。機能の数ではなく、自社のプロセスにどう効くかという軸で機能を読み解く力が、製品選定の精度を高めます。

見込み管理とローリングフォーキャスト機能

予実管理を経営に活かす企業ほど重視するのが、見込み(フォーキャスト)管理の機能です。当初予算と実績を比べるだけでなく、現時点までの実績を踏まえて「年度末にどこへ着地しそうか」という見込みを立て、それと予算を比較します。見込みを毎月更新していくローリングフォーキャストに対応した製品なら、経営環境の変化に応じて常に最新の着地予測を持ちながら経営判断ができます。

選定時には、当初予算・改訂予算・実績・見込みという複数の数字を区別して持てるか、それらを並べて比較できるかを確認します。これらを区別できない製品では、期中の経営管理が当初予算との比較に縛られ、現実とのギャップが大きくなったときに役立ちません。見込み管理は、予実管理を「過去の振り返り」から「未来への舵取り」へと広げる機能であり、経営の意思決定にどこまで踏み込みたいかに応じて、その必要性を判断するとよいでしょう。

必須機能とオプション機能を見極める視点

製品の機能一覧を読み解くときは、すべての機能を同列に見るのではなく、自社にとっての必須機能と、あれば便利なオプション機能を仕分ける視点が大切です。たとえば、会計システムからの実績取込や基本的な差異分析は、ほとんどの企業にとって必須機能です。一方、高度な予測機能や複雑な配賦計算は、自社の管理会計の成熟度によっては、当面は使わないオプションかもしれません。

この見極めを誤ると、多機能だが使いこなせない高価な製品を選んでしまったり、逆に必須の連携機能が欠けた製品を選んで運用が破綻したりします。自社の予実管理プロセスを書き出し、各工程でどの機能が要るかを整理してから機能一覧と突き合わせると、必須とオプションの境界が見えてきます。価格非公開の製品が多く、19サービス中15社が価格を公開していないという調査もあるため、機能と費用のバランスは、自社の要件に即した見積りを取って初めて判断できます。機能は「多いほど良い」のではなく「自社のプロセスに合うほど良い」という原則を忘れないでください。

連携性と拡張性という土台の機能

個別の機能の充実度に目が行きがちですが、長く使うシステムでは、連携性と拡張性という土台の機能も見落とせません。連携性とは、会計システムだけでなく、将来的に販売管理や人事給与といった他のシステムともデータをやり取りできる柔軟さを指します。予実管理は、売上や原価、人件費など多様なデータと結びつくため、必要に応じて連携先を広げられるかが、長期的な価値を左右します。

拡張性とは、組織変更や事業拡大に応じて、部門や分析軸、ユーザー数を増やしていけるかという余地です。導入時の規模で最適でも、数年後に事業が成長して使いものにならなくなっては困ります。選定時には、現在の機能だけでなく、自社の成長に合わせてシステムが育っていけるかという視点を持つことが大切です。連携性と拡張性は、カタログの機能一覧では目立ちませんが、システムを長く使い続けられるかを決める基盤の機能だと言えます。

法令対応と監査証跡の機能

予実管理は会計データと密接に結びつくため、法令対応の機能も確認しておきたいポイントです。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応は、連携元の会計システムが担う部分が大きいものの、予実管理側でもデータの整合性を保てるかが問われます。一次データによると、クラウド型やサブスク型は定額保守の範囲で法改正対応が無償で行われる製品が多い一方、オンプレ型は都度高額な追加開発が必要になることがあります。法対応をシステム側が自動で吸収してくれるかは、長期の運用コストに直結します。

あわせて、内部統制を支える監査証跡(誰がいつ何を変更したかの記録)の機能も重要です。予実データは経営の根幹に関わるため、変更履歴が残り、後から追跡できることが、ガバナンスの観点で欠かせません。承認を経ずに数字が書き換えられない仕組みや、操作ログの保全機能があるかを確認します。法令対応と監査証跡は、日々の予実管理では目立ちませんが、決算や監査の場面、そして法改正のたびに、その有無が大きな差となって現れる機能です。選定時には、これらの土台機能まで視野に入れることをおすすめします。

まとめ

予実管理システムの機能まとめイメージ

予実管理システムの必要機能を整理すると、予算編成を支える機能、実績データを取り込む連携機能、差異を分析する機能、レポートとダッシュボードの機能という4つの柱に集約されます。予算編成では部門別入力とワークフロー承認・複数案シミュレーションが、連携では会計システムとのAPI/CSV取込と勘定科目マッピングが、分析ではドリルダウンと多軸分析が、出力では定型レポートの自動生成とダッシュボード・権限管理が、それぞれの柱の中核を担います。製品の機能一覧を読むときは、この4つの役割のどこに当たる機能かを意識すると、自社にとっての必須機能が見えてきます。

機能を比較するときに大切なのは、機能の多さではなく、自社の予実管理プロセスのどこを楽にしてくれるかという視点です。多機能版を選んでも使いこなせなければ意味がなく、逆に必須の連携機能が欠ければ運用が成り立ちません。riplaはフルスクラッチ受託の立場から、自社の業務プロセスに必要な機能を見極める要件整理と、既存の会計システムとの連携設計を一貫して支援します。各機能の詳しい役割や選定の考え方は、あらためて完全ガイドもあわせてご確認ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。