介護・福祉業界のシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

介護・福祉業界でシステム導入を検討するとき、多くの現場責任者がまず知りたいのは「同じように手書きの記録や紙の保険請求に追われている事業所が、実際にどうやってシステムを入れ、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。介護・福祉の現場は、利用者一人ひとりの状態が日々変わり、ケア記録・バイタル・服薬・申し送りといった膨大な情報を、いまだに紙やホワイトボード、口頭で回しているケースが少なくありません。一般的な業務システムをそのまま持ち込んでも現場の動線に合わず使われない、という失敗が後を絶たないからこそ、自施設に近い導入事例・活用事例こそが投資判断の精度を高めてくれます。

本記事は、介護・福祉業界のシステムの導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、導入する事業者側の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。介護記録のデジタル化による転記時間の削減、バイタルや申し送りの一元化、国保連請求(保険請求)の自動化、LIFE(科学的介護情報システム)への対応、さらに「ICTを知らない」という現場理解の壁をどう越えたかまで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自施設がどこから着手し、どんな効果を狙うべきかのイメージが描けるはずです。なお、介護・福祉業界のシステムの全体像をまだ把握していない方は、まず介護・福祉業界のシステムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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・介護・福祉業界のシステムの完全ガイド

介護記録のデジタル化で転記・残業を削減した事例

介護記録のデジタル化で転記・残業を削減した介護福祉システム事例のイメージ

介護・福祉の現場で、もっとも分かりやすい成果が出るのが「ケア記録のデジタル化」です。多くの事業所では、ケアスタッフがその場でメモを取り、後で事務所のパソコンや紙の台帳に清書し、さらに月次の保険請求のためにもう一度集計する、という多重の転記作業が日常化しています。この転記こそが、残業とヒューマンエラーの最大の温床になっています。事例を見ると、成功している事業所は例外なく、この「記録を一度入力したら二度と書き写さない」状態をまず実現しています。

タブレット入力で転記をゼロにした特養の事例

ある特別養護老人ホームでは、ケアスタッフが居室やフロアでタブレットやスマートフォンからその場でケア記録を入力できる仕組みを導入しました。食事・排泄・入浴・バイタルといった項目を、移動の合間にその場で記録できるため、事務所に戻って紙から清書する工程が丸ごと消えました。記録した内容はそのまま月次の保険請求データの基礎になるため、月末にまとめて集計し直す手間もなくなります。クラウド型の介護ソフトはカイポケが月5,000円から、まもる君クラウドが月7,800円からといった水準で提供されており、こうした小規模からの導入でも転記削減の効果は明確に表れます。

重要なのは、この削減効果を「漠然とした業務効率化」ではなく、自施設の実際の記録件数と残業時間に当てはめて定量化することです。1日あたり何件の記録があり、1件の清書に何分かかっているか、それを職員数分・日数分で積み上げれば、月間で削減できる時間が概算できます。事例を読むときは、こうした自施設の数字への置き換えを必ず行ってください。記録のデジタル化は、ケアスタッフを書類仕事から解放し、本来の利用者との関わりに時間を戻すための第一歩です。

ICT導入支援補助金を活用して初期負担を抑えた事例

介護事業者がシステム導入に踏み切れない最大の理由の一つが初期費用ですが、事例では補助金の活用がその壁を下げています。介護分野のICT導入支援事業は、職員数に応じて最低でも100万円相当の補助枠が用意されており、2019年度の実績では107法人・195事業所・406件が活用しています。タブレットやインカム、介護ソフトの導入費用の一部を補助でまかなうことで、自己負担を抑えながらデジタル化を始めた事業所は少なくありません。

補助金を活用した事例から学べるのは、「制度をうまく使えば、最小限の自己負担で効果検証を始められる」という点です。まず一部のフロアや一部の記録業務でシステムを試し、残業削減や転記時間の短縮といった効果を数字で確認してから、施設全体へ広げる。この段階的な進め方が、現場の納得感を伴った定着につながります。補助金の公募時期や対象要件は年度ごとに変わるため、導入を検討する段階で自治体の最新情報を確認しておくことが大切です。

バイタル・申し送りの一元化でケアの質を高めた事例

バイタル・申し送りの一元化でケアの質を高めた介護福祉システム事例のイメージ

介護・福祉のシステム化は、事務作業の効率化だけが目的ではありません。利用者一人ひとりの状態を多職種でリアルタイムに共有し、ケアの質そのものを高める効果が、現場では強く実感されています。バイタルの推移、服薬の状況、夜勤帯の申し送りといった情報が一元化されることで、「言った・言わない」「聞いていない」といった情報の分断が解消されます。事例を見ると、システム導入の本当の価値は、この情報共有の質的な向上にあると語る事業所が多くあります。

申し送りの口頭依存をなくし夜勤の負担を軽減した事例

多くの介護施設では、シフトの交代時に口頭やノートで申し送りを行ってきました。しかし口頭の申し送りは、伝え漏れや解釈のズレが起きやすく、特に夜勤帯では一人で多くの利用者を見ながら情報を引き継ぐ負担が大きくなります。ある事例では、その日のケア記録・バイタル・特記事項がシステム上に時系列で蓄積されるため、交代するスタッフは出勤直後に画面で全体像を把握できるようになりました。口頭の申し送り時間が短縮され、引き継ぎの正確性も上がっています。

この一元化の効果は、特に状態変化への早期対応として表れます。バイタルの数値が記録として残り、推移がグラフで見えるようになると、「最近食事量が落ちている」「血圧が下がり気味だ」といった変化に気づきやすくなります。これまでは個々のスタッフの記憶や経験に依存していた異変の察知が、データとして多職種で共有できるようになる。これが、看護師やケアマネジャー、医師との連携を後押しし、結果として利用者の重症化予防やヒヤリハットの減少につながっていきます。

LIFEへのデータ提出を記録から自動化した事例

科学的介護を推進するLIFE(科学的介護情報システム)への対応も、システム活用の重要な事例領域です。LIFEは利用者の状態やケアの内容を国に提出し、フィードバックを受けて科学的根拠に基づくケアの改善につなげる仕組みですが、対応する加算を算定するには定められた様式でのデータ提出が必要になります。これを手作業で行うと相当な負担になりますが、日々のケア記録がLIFEの様式に対応した介護ソフトに蓄積されていれば、提出用データを記録から自動で整形できます。

事例では、LIFE対応を「加算を取るための義務」ではなく「ケアの質を見直すきっかけ」として活用しているケースが目立ちます。提出したデータに対するフィードバックを多職種で読み解き、ケアプランの見直しに反映する。日々の記録がそのまま分析の素材になるからこそ、現場は追加の入力負担なく科学的介護のサイクルを回せます。記録のデジタル化が、単なる省力化を超えて、ケアの質を継続的に高める基盤になる好例だと言えます。

国保連請求の自動化で月末の事務負担を圧縮した事例

国保連請求の自動化で月末の事務負担を圧縮した介護福祉システム事例のイメージ

介護・福祉事業の投資効果を最大化するのが、国保連(国民健康保険団体連合会)への介護報酬請求の自動化です。介護報酬は制度が複雑で、サービス種別・加算・利用者の負担割合などを正しく組み合わせて請求しなければなりません。月末になると事務担当者が膨大な記録を突き合わせ、請求データを作成する作業に追われるのが実情です。日々のケア記録が請求データと連動していれば、この月末の集中作業を大幅に圧縮できます。

記録連動で請求の返戻・査定減点を減らした事例

介護報酬請求でやっかいなのが「返戻」です。記録と請求内容に不整合があったり、加算の算定要件を満たす記録が残っていなかったりすると、国保連から請求が差し戻され、修正して再請求する手間が発生します。記録から請求データが自動生成される仕組みでは、算定要件に必要な記録が揃っているかをシステムがチェックできるため、こうした不整合に起因する返戻が構造的に減ります。月末の請求作業だけでなく、翌月の返戻対応という二次的な負担も同時に軽くなるのが大きな利点です。

事例では、請求の正確性が上がることで、本来算定できるはずの加算の取りこぼしも減っています。複雑化する一方の加算体系を手作業で完璧に管理するのは現実的ではなく、算定漏れは収益の機会損失に直結します。記録とマスタが連動し、要件を満たす加算を提示してくれる仕組みは、事務負担の軽減と収益の適正化を同時に実現します。請求の自動化は、コスト削減策であると同時に、経営を安定させる収益基盤でもあるのです。

多サービス併設の法人が情報連携で効率化した事例

通所介護・訪問介護・居宅介護支援・グループホームなど、複数のサービスを併設する法人では、サービスごとに記録や請求の様式が異なるため、システム化の効果がより大きく出ます。ある法人の事例では、利用者の情報を法人全体で一元管理し、サービス間で必要な情報を連携できるようにしたことで、同じ利用者の情報を各サービスで重複入力する無駄を解消しました。ケアマネジャーが作成したケアプランの情報が、各サービスの記録や請求の前提として共有される設計です。

多サービス併設の事例から学べるのは、「点」のシステム化ではなく「法人全体の情報の流れ」として設計することの重要性です。サービスごとにばらばらの仕組みを入れると、結局は法人本部で集計し直す手間が残ります。利用者を軸に情報を統合する発想で設計すれば、本部の管理業務や請求業務まで含めて効率化できます。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、こうした「法人の業務全体を見据えた情報設計」を起点にシステムを組み立てることを重視しています。

居宅介護支援とサービス間でケアプランを共有した事例

居宅介護支援事業所を併設する法人の事例では、ケアマネジャーが作成したケアプランを、通所介護や訪問介護といった各サービスがシステム上で参照できる仕組みを整えました。これまでは、ケアプランの内容を電話やファクス、紙のやり取りで各サービスへ伝えており、伝達漏れや古い計画のまま提供してしまう事故が起きやすい状態でした。計画と実績がひとつのシステムでつながったことで、各サービスは常に最新のケアプランに沿った提供を行えるようになっています。

この連携は、モニタリングや担当者会議の準備負担も軽くしました。利用者の状態やサービス提供実績がシステムに集約されているため、ケアマネジャーは各サービスから情報を集め直す手間なく、モニタリング記録や会議資料を作成できます。事例が示すのは、サービス単体の効率化にとどまらず、ケアマネジメントのサイクル全体をシステムで支えることで、法人としてのケアの一貫性と質が高まるという点です。情報の分断をなくすことが、利用者にとっての安心にも直結します。

現場理解の壁を越えて定着させた成功事例

現場理解の壁を越えて定着させた介護福祉システム成功事例のイメージ

事例の価値は、成功談の華やかさだけにあるのではありません。むしろ介護・福祉の現場では、システムを入れる以前に「ICTそのものへの理解の薄さ」という壁が立ちはだかります。介護関係者50名を対象にした調査では、ICTを「知らない」が74%、「聞いたことがある」が20%、「理解がある」はわずか6%という結果でした。この現実を直視し、どう乗り越えて定着させたかこそ、これから導入する事業者がもっとも学ぶべき経験です。

一部業務から小さく始めて成功体験を積んだ事例

ICTに不慣れなスタッフが多い現場で定着に成功した事業所は、ほぼ例外なく「小さく始めて成功体験を積む」アプローチを取っています。いきなり全業務をシステムに置き換えるのではなく、まずバイタル入力だけ、あるいは申し送りだけをデジタル化し、「これは確かに楽になる」とスタッフが実感する小さな成功を作る。その納得感が広がってから、記録全体、そして請求へと範囲を広げていきます。ベテラン職員ほど慣れた紙のやり方を変えたがらないため、この順序を間違えると現場の抵抗で頓挫します。

成功事例では、現場の中に「使える人」を育て、その人が周囲に教える体制を作っています。外部のベンダー任せにせず、施設内に推進役を置くことで、日常の小さな疑問にその場で答えられる環境が生まれます。操作に詰まったときにすぐ聞ける相手がいるかどうかが、定着の分かれ目になります。導入は「入れて終わり」ではなく「使われ続けるまで伴走する」ものだという認識が、現場理解の壁を越える鍵です。

導入後の伴走で利用率を維持した事例

システムを導入したものの、納品時点でベンダーの伴走が終わり、現場が使いこなせないまま利用率が下がっていく——これは介護・福祉に限らずよくある失敗パターンです。定着に成功した事例では、導入後も利用状況のログを定期的に確認し、入力されていない項目や使われていない機能を見つけて、現場にヒアリングしながら運用を改善し続けています。「なぜこの機能が使われないのか」を現場目線で掘り下げ、画面や運用ルールを少しずつ調整することで、利用率を維持しています。

この継続的なオンボーディングこそ、システム投資を「飾り」で終わらせないための要です。介護現場は人の入れ替わりが起きやすく、新しく入った職員が使い方を教わらないまま放置されると、徐々に紙のやり方に戻ってしまいます。定期的な操作研修や、新人向けのマニュアル整備を運用に組み込んでおくことで、人が入れ替わっても利用率が下がらない体制が作れます。事例は華やかな成果ではなく、「なぜ使われ続けたのか」という視点で読むことが、定着失敗を避ける最大の近道です。

段階的拡大で全社展開につなげた事例

定着に成功した事業所に共通するのが、一気に全社展開するのではなく、段階的に範囲を広げた進め方です。まず一つの事業所、一つのフロアでシステムを試し、そこで得た運用のコツや現場の声を蓄積してから、他の事業所へ横展開していきます。最初の現場で「これは使える」という実感が生まれていれば、次の現場への導入はスムーズになり、推進役となる職員も育っています。この段階主義が、無理のない全社展開を可能にします。

段階的拡大の事例から学べるのは、成功体験を組織内で伝播させる仕組みの大切さです。先行して導入した現場の職員が、後続の現場に「自分たちはこう使って楽になった」と語ることが、何よりの説得材料になります。机上の説明よりも、同じ立場の仲間の実感のほうが、ICTに不慣れな現場の心を動かします。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、こうした段階的な導入と組織内への定着の伝播を見据えた設計・伴走を重視しています。焦らず、現場の納得を積み重ねることが、結果としてもっとも早い全社定着への道になります。

まとめ

介護福祉業界のシステム導入事例のまとめイメージ

介護・福祉業界のシステム導入事例を振り返ると、成功の鍵は「記録を一度入力したら二度と書き写さない状態を作り、その記録を申し送り・LIFE・国保連請求まで一気通貫で活かす」という一点に集約されます。タブレット入力による転記ゼロ化、バイタル・申し送りの一元化によるケアの質向上、記録連動による請求の返戻削減、そして多サービス法人での情報統合まで、成果はすべて「記録を起点にした情報の流れ」から生まれています。ICT導入支援補助金は職員数に応じ最低100万円相当が用意され、クラウド型ソフトは月5,000円台から始められるため、小規模からの導入も十分に現実的です。

一方で、ICTを「知らない」現場が74%という調査結果が示すとおり、介護・福祉のシステム化は技術以上に「現場理解の壁」を越えられるかが成否を分けます。小さく始めて成功体験を積み、導入後も伴走で利用率を維持する——この地道なプロセスこそが、投資を飾りにしないための本質です。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、現場の業務から逆算した情報設計と、定着まで伴走する開発を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。