介護・福祉業界のシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

事業者側から見た導入・開発・活用・成功事例では、記録・情報共有・段階導入によって現場の負担を減らし、ケアの質を高めています。汎用システムは現場の動線に合わず使われない場合もあるため、近い事例は投資判断の参考になります。

自施設の着手点を考える際は、介護・福祉業界のシステムの完全ガイドで全体像も確認できます。

▼全体ガイドの記事
・介護・福祉業界のシステムの完全ガイド

介護記録のデジタル化で転記・残業を削減した事例

現場での記録入力から月次請求、削減時間の確認へつなぐ3段の図解
記録の再入力を減らすほど、現場と事務のつながりが見えます。

介護記録は、一度入力したら書き写さなくてよい仕組みにすると、転記と残業を減らせます。入力した記録は、月次の保険請求にも活用できます。

多くの現場では、ケアスタッフがその場でメモを取り、事務所のパソコンや紙の台帳に清書しています。さらに、月次の保険請求用に記録を集計し直す転記作業が日常化し、残業やヒューマンエラーの原因になります。

タブレット入力で転記をゼロにした特養の事例

特別養護老人ホームでは、居室やフロアでタブレットやスマートフォンから記録できる仕組みを導入しました。

職員はタブレットやスマートフォンで移動中に記録でき、事務所での清書が不要になりました。

  • 現場で入力:食事・排泄・入浴・バイタルを記録
  • 請求にも活用:月末に記録を集計し直す手間を省く
  • 小規模から導入:月額の利用料で始められるクラウド型介護ソフトもある

クラウド型の介護ソフトでは、カイポケが月5,000円から、まもる君クラウドが月7,800円から提供されています。

効果は、漠然と効率化されたと捉えるのではなく、自施設の記録件数と残業時間で数字にして確かめます。

まず、1日あたりの記録件数と1件あたりの清書時間を確認します。そのうえで、職員数と日数を掛けると、月間の削減時間をおおまかに概算できます。事例を読む際も、自施設の数字に置き換えて考えます。

記録を職員の書類仕事から解放し、利用者と関わる時間に戻すことが、デジタル化の狙いです。

ICT導入支援補助金を活用して初期負担を抑えた事例

初期費用は、介護事業者が導入をためらう理由の一つです。そこで、ICT導入支援補助金を使えば自己負担を抑え、導入の壁を下げられます。

  • 補助枠:最低でも100万円相当
  • 2019年度実績:107法人・195事業所・406件が活用
  • 対象の例:タブレット、インカム、介護ソフトの導入費用の一部

最小限の自己負担で、効果の検証から始められます。

事業所は、一部のフロアや業務で試し、残業や転記時間を数値で確かめてから全体へ広げます。そうすることで、現場の納得と定着につながります。

補助金の公募時期や対象要件は年度ごとに変わるため、導入を検討する際は、自治体の最新情報を確認します。

ポイント

記録を一度入力したあと、転記や請求にも再び使えるかが判断の目安です。自施設の記録件数と清書時間を数字にして、どれだけ減らせそうかを比べてください。

バイタル・申し送りの一元化でケアの質を高めた事例

多職種を中央に置き、バイタル・服薬・夜勤帯の申し送り・LIFEへの提出を結ぶ図解
申し送りと日々の状態把握を同じ情報共有につなげます。

介護・福祉のシステム化は、事務作業の効率化だけでなく、現場のケアを高めることも目的にします。利用者一人ひとりの状態を多職種でリアルタイムに共有すると、ケアの質を高められます。

バイタルや服薬、夜勤帯の申し送りを一元化すると、情報の分断を防げます。また、事例では、情報共有の質こそ導入の価値だと語る事業所も多くあります。

申し送りの口頭依存をなくし夜勤の負担を軽減した事例

口頭やノートでの申し送りは、伝え漏れや解釈のずれが起きやすく、夜勤帯の負担にもなります。

記録を時系列で共有する方法が取り入れられています。

  • 情報を蓄積:ケア記録、バイタル、特記事項をシステムに記録
  • 交代時に確認:出勤直後に画面で利用者の全体像を把握
  • 引き継ぎを改善:口頭の時間を短縮し、正確性も向上

バイタルの推移をグラフで見られると、食事量や血圧の変化に気づきやすくなります。

一元化は、状態変化への早期対応にも役立ちます。これまでスタッフの記憶や経験に頼っていた異変の察知も、データとして多職種で共有できます。

一元化は、看護師やケアマネジャー、医師との連携を後押しし、利用者の重症化予防やヒヤリハットの減少につながります。

LIFEへのデータ提出を記録から自動化した事例

LIFE(科学的介護情報システム)は、利用者の状態やケア内容を国に提出し、そのフィードバックをケアの改善に生かす仕組みです。

  • 加算への対応:算定には定められた様式でのデータ提出が必要
  • 記録を活用:対応ソフトなら提出用データを自動で整形
  • 改善に反映:提出データのフィードバックを多職種で確認

手作業での提出は、現場にとって負担になります。一方で、日々の記録が分析の素材になるため、追加の入力負担なしで科学的介護のサイクルを回せます。

事例では、LIFEを加算取得のための義務にとどめず、ケアの質を見直す機会として使っています。記録のデジタル化は、省力化にとどまらず、ケアの質を継続して高める基盤になります。

ポイント

申し送りやバイタルを多職種でどこまで共有できるかを、導入の判断材料にします。どの情報を誰と共有するかを先に決め、情報の分断が残らないか確かめてください。

国保連請求の自動化で月末の事務負担を圧縮した事例

投資効果を高めるのが、国保連(国民健康保険団体連合会)への介護報酬請求の自動化です。

請求では、サービス種別や加算、利用者の負担割合を正しく組み合わせる必要があります。

月末は事務担当者が膨大な記録を突き合わせ、請求データの作成に追われます。日々のケア記録と連動させれば、この集中作業を圧縮できます。

記録連動で請求の返戻・査定減点を減らした事例

記録と請求が合わなかったり、加算の要件を満たす記録が不足していたりすると、国保連から差し戻されます。その場合、修正と再請求が必要です。

  • 要件を確認:システムが算定に必要な記録をチェック
  • 返戻を抑制:記録から請求データを生成し、不整合を減らす
  • 加算漏れを防ぐ:記録とマスタを連携し、要件を満たす加算を提示

記録と請求データが連動すると、不整合による返戻を抑えられます。その結果、月末の請求に加えて、翌月の返戻対応の負担も軽くなります。

加算体系は複雑化しており、手作業での管理は難しくなっています。算定漏れは収益機会を損なうため、記録とマスタを連携させて加算を提示すれば、事務負担を軽くし収益を適正化できます。

請求の自動化は、コスト削減に加えて、経営を安定させる収益基盤にもなります。

多サービス併設の法人が情報連携で効率化した事例

通所介護・訪問介護・居宅介護支援・グループホームを併設する法人では、サービスごとに記録や請求の様式が異なります。

  • 利用者情報を一元化:サービス間の重複入力をなくす
  • ケアプランを共有:各サービスの記録や請求の前提にする
  • 法人全体で設計:本部の管理・請求業務まで効率化する

サービスごとに別々の仕組みを導入すると、本部で情報を集計し直す手間が残ります。そのため、利用者を軸に、法人全体の情報の流れを設計する必要があります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、法人の業務全体を見据えた情報設計を大切にしています。

居宅介護支援とサービス間でケアプランを共有した事例

居宅介護支援事業所を併設する法人では、ケアマネジャーのケアプランを各サービスがシステム上で参照できるようにしました。

  • 最新計画を共有:通所介護や訪問介護が同じ情報を参照
  • 伝達手段を集約:電話・ファクス・紙による連絡を減らす
  • 資料作成を支援:記録や実績をモニタリング・会議に活用

従来は計画を電話やファクス、紙で伝えていたため、伝達漏れや、古い計画のままサービスを提供するリスクがありました。

状態や提供実績が集約されると、ケアマネジャーは情報を集め直さずにモニタリング記録や会議資料を作れます。

サービス単体にとどまらず、ケアマネジメント全体を支えることで、法人のケアの一貫性と質が高まります。さらに、情報の分断をなくすことは、利用者の安心にもつながります。

ポイント

請求の自動化は、記録と請求データがどこまでつながるかで効果が変わります。返戻や加算漏れの現状を、今の事務作業と比べて確かめてください。

現場理解の壁を越えて定着させた成功事例

一拠点での試行から成功体験の共有、他事業所への横展開へ広がる3段階の図解
先行する現場の実感が、次の拠点へ進む足場になります。

事例から学べるのは、成功談の華やかさよりも、導入前の壁をどう越えたかです。ICTへの理解が薄いことは、導入前の大きな壁になります。

介護関係者50名の調査では、「知らない」が74%、「聞いたことがある」が20%、「理解がある」は6%でした。この壁を越えた経験が、導入事業者の学びになります。

一部業務から小さく始めて成功体験を積んだ事例

ICTに不慣れなスタッフが多い現場では、一度に全業務を置き換えず、小さな成功を積み重ねる進め方が定着につながります。

  • 対象を絞る:バイタル入力、または申し送りから始める
  • 効果を実感する:スタッフが業務の楽さを確かめる
  • 範囲を広げる:記録全体、次に請求へ進める

ベテラン職員ほど、慣れた紙の方法を変えたがらない場合があります。そのため、導入範囲を広げる順序を誤ると、現場の抵抗で頓挫します。

現場で使える人を育て、周囲に教える体制を作ります。また、ベンダー任せにせず施設内に推進役を置けば、日々の疑問にすぐ答えられます。

導入後も使われ続けるまで支えるという認識が、現場理解の壁を越える鍵になります。

導入後の伴走で利用率を維持した事例

納品時にベンダーの伴走が終わると、現場が使いこなせず、利用率が下がることがあります。これは、介護・福祉に限らず起きる失敗です。

  • 利用状況を確認:ログから未入力項目や未使用機能を探す
  • 現場に聞く:使われない理由を掘り下げる
  • 運用を調整:画面やルールを少しずつ改善する

継続的な支援は、システム投資を飾りで終わらせないための要です。職員が入れ替わったあとに新人が使い方を教わらないと、紙に戻ることがあります。

定期研修や新人向けマニュアルを運用に組み込めば、交代後も利用率を保ちやすくなります。事例を読むときは、「なぜ使われ続けたか」に注目すると、定着の失敗を避ける参考になります。

段階的拡大で全社展開につなげた事例

定着した事業所に共通するのは、一気に全社展開せず、段階的に範囲を広げる進め方です。たとえば、一事業所や一フロアで試してから広げます。

  • 一拠点で試す:運用のコツと現場の声を集める
  • 成功体験を伝える:先行職員が後続の現場に共有する
  • 横展開する:推進役を育てながら他事業所へ広げる

先行職員が自分たちの実感を伝えることは、机上の説明よりICTに不慣れな現場の納得につながります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、段階導入と組織内の定着を見据えた設計と伴走を大切にしています。

ポイント

導入の成否は、現場が使い続けられるかで決まります。一部業務から始められるか、導入後も伴走してもらえる体制があるかを見て判断してください。

まとめ

介護・福祉システムの事例では、記録を一度入力したうえで、その記録を申し送りやLIFE、国保連請求にも活用していました。

タブレット入力は転記を減らし、情報共有はケアの質を支えます。また、請求との連動は返戻を抑え、多サービス法人の情報統合にも役立ちます。

ICT導入支援補助金は、職員数に応じて最低100万円相当の枠が用意されています。クラウド型ソフトには月5,000円台からの例もあり、小規模な導入も可能です。

介護関係者50名の調査では、ICTを「知らない」が74%でした。小さく始めて成功体験を積み、導入後も伴走して利用率を保つことが、定着を支えます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、現場の業務から情報を設計し、定着まで一貫して支援します。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。