介護・福祉システムは、現場の実情を踏まえない導入や、連携・移行の準備不足、運用後の備え不足で、失敗しやすくなります。失敗の型を知ることは、投資を担う事業者の備えになります。
失敗の型は、形骸化から事業継続の備えまで四つあります。全体像は介護・福祉業界のシステムの完全ガイドでも確認できます。
▼全体ガイドの記事
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現場に使われず形骸化するリスク

介護・福祉システムで多い失敗は、導入後に現場で使われなくなり、紙やホワイトボードに戻ってしまう形骸化です。どれほど高機能でも、スタッフが使いこなせなければ定着しません。
介護関係者50名の調査では、ICTについて「知らない」が74%、「聞いたことがある」が20%、「理解がある」は6%でした。こうした実態を無視して導入を進めると、形骸化のリスクが高まります。
現場ヒアリングを欠いた丸投げ導入の失敗
形骸化の根本には、業務の実態を把握しないまま、開発や選定をベンダーに丸投げしてしまうことがあります。ケアには利用者ごとの配慮や、現場で積み重ねた慣行があります。そのため、これらを知らずに設計すると、業務に合わないシステムになります。
現場の動線を無視した理想論の設計では、システムが業務に合わず、使われません。たとえば、他業界では、現場ヒアリングやToBeモデルの検討が不足したまま開発を丸投げした結果、1億円を投じたシステムが2年間放置され、廃止になった事例があります。
現場に合う設計にするには、導入前の段階で、誰の声を、どのように業務に反映させるかを決めておくことが欠かせません。
- 聞き取り先:スタッフ、看護師、ケアマネジャー、事務職員
- 可視化する内容:AsIsの業務と現場の困りごと
- 設計の判断軸:投資額より現場業務への適合
現場が「楽になる」と実感できなければ、システムは飾りになります。導入額が大きくても、それだけで成功するとは限りません。
納品で伴走が終わり利用率が下がる悪循環
導入直後に研修を受けていても、操作に詰まったときに相談できる先がなければ、入力が滞り、紙に戻ってしまうことがあります。介護現場は人の入れ替わりが起きやすいため、新人が使い方を知らないままでは、利用率がさらに下がります。
納品後に利用率を保つには、導入の後も現場の利用状況を見続け、支える体制を運用に組み込んでおく必要があります。
- 利用状況の確認:ログから未利用機能や未入力項目を見つける
- 運用改善:現場への聞き取りを続け、オンボーディングを行う
- 新人教育:マニュアル整備と定期研修を運用に組み込む
- 導入後の伴走:利用率を保ち、使われ続けるまで支援する
多機能を詰め込みすぎて使いこなせない失敗
形骸化の一因は、機能を欲張って詰め込みすぎることにあります。「せっかく導入するなら」と多機能を選んでも、ICTに不慣れな現場では一部の機能しか使われないこともあります。
機能が増えるほど画面は複雑になり、操作を覚えるのが難しくなります。そのため、豊富な機能が現場の負担を増やし、定着を妨げることもあります。
まずは必須機能から始め、慣れてから段階的に広げます。要件定義で優先順位をつけ、使える範囲に絞ることが定着の鍵です。一方で、最初から全機能を展開すると、現場が消化不良を起こします。
安さ優先による連携不全と二重入力のリスク

費用を抑えたいと考えるのは当然ですが、安さだけで選ぶと、かえって高くつくおそれがあります。介護・福祉では、見守りセンサーやナースコール、請求ソフトなど、複数の機器やシステムが連携して動きます。そのため、導入価格だけでなく既存環境との連携を確かめることが、二重入力や業務トラブルの防止につながります。
連携不可で二重入力が発生し投資が全損した失敗
医療分野では、安さを優先したシステムが既存のシステムと連携できず、二重入力が発生しました。現場の負担に加えて、入れ替え費用と移行の負担も重なり、投資はほぼ全損したといいます。
同じリスクは、介護・福祉でも起こり得ます。請求ソフトや見守り機器と連携できなければ、同じ記録を二度入力することになります。効率化どころか負担が増えるため、既存環境とのデータ連携を確かめておく必要があります。連携の可否は、導入後に取り返しのつかない差を生みます。だからこそ、価格だけで決めず、契約の前に連携を検証しておくことが重要です。
マルチベンダーの責任分界が曖昧な失敗
複数のベンダーや機器を組み合わせると、障害の原因を切り分けるのが難しくなります。さらに、各社が責任を押し付け合えば、復旧が遅れるおそれがあります。
他分野では、接続エラーのたびに発注側が原因を切り分けることになり、本来の業務に支障が出た実態が報告されています。責任の所在が曖昧な契約では、トラブルが起きたときに支援を受けられないおそれもあります。
そこで、契約時に障害対応の役割を決めておけば、トラブル時の混乱を防げます。
- 責任範囲:各社の担当範囲と責任分界点
- 一次窓口:SLA(サービス品質保証)で一本化
- 切り分け:原因調査を主導する担当者
riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、連携検証や責任分界の設計を含むシステム構築を支援しています。連携と責任分界は、安さと引き換えにできない論点です。
報酬改定への追従が遅れて請求が滞るリスク
介護報酬は3年ごとに改定され、加算の新設や算定要件の変更もあります。安価なシステムでは、こうした改定への対応が遅れたり、高額な追加費用が生じたりする場合があります。
追従が遅れると、最新の加算を算定できない場合や、誤った報酬で請求して返戻が発生する場合があり、収益に影響します。そのため、改定への対応速度は選定の段階で確かめておく必要があります。
改定時の費用や対応状況を比べるときは、契約の前に次の条件を確かめておきます。
- 保守範囲:報酬改定への対応が含まれる範囲
- 対応時期:改定時の対応スケジュール
- 対応実績:LIFEや最新制度への対応状況
令和8年度改定で設定される電子的診療情報連携体制整備加算は、加算1が15点、加算2が9点、加算3が4点です。制度が変わるたびに高額な改修費がかかる構造を避けるため、改定対応の条件を事前に見極めておきます。
データ移行・一斉切り替えと情報漏えいのリスク
切り替え時のデータ移行や移行直後の混乱は、見落とされがちです。また、機微な個人情報を扱う介護・福祉では、情報漏えいも事業継続に大きな打撃を与えます。
移行事故も漏えいも、準備不足から起きる失敗です。だからこそ、事前の対策が欠かせません。
一斉切り替えと研修不足で現場が麻痺した失敗
新システムを一日で一斉に切り替える方法には、大きなリスクがあります。たとえば他業界の医療分野では、電子カルテの一斉移行初日に、外来の待ち時間が平均3倍になり、クレームが殺到した事例があります。
背景には、操作に偏った研修しか行われず、現場が新しい操作に慣れないまま本番を迎えたことがあります。業務が麻痺すると、そのしわ寄せは利用者に及びます。
移行計画には、現場の準備とデータ品質の確認を組み込みます。
- 新旧システムを一定期間並行稼働させ、段階的に切り替える
- 操作だけでなく、実際の業務フローに沿った研修を行う
- データの重複や誤りをクレンジングし、移行後に検証する
他業界では、クレンジングを行わなかったことで、未納データが誤表示された事例があります。準備が足りないと誤表示や請求ミスを招くため、移行を単なるデータの移し替えとして扱わないことが大切です。
設定ミスによる個人情報漏えいのリスク
介護・福祉システムは、病歴、服薬、要介護度など、機微な個人情報を扱います。漏えいが起きると、利用者や家族の信頼を損ない、地域での評判にも影響します。
他業界では、アクセス権限の設定をベンダー任せにした結果、患者情報を外部から閲覧できる状態になった事例があります。設定のミスは、そのまま重大な漏えいにつながります。
導入時のセキュリティ確認では、発注側が自ら次の設定を確かめます。
- 閲覧範囲:職種・役割ごとの権限と公開範囲
- 監査ログ:誰がいつどの情報にアクセスしたか
- 情報保護:暗号化、バックアップ、不正アクセス対策
漏えいが起きてからの対処に頼らず、導入時にセキュリティ設定を検証しておきます。
システム停止時のBCP不備というリスク

システム化を進めるほど見落としやすいのが、停止時のリスクです。介護・福祉のケアは24時間365日続くため、停止時の備えは欠かせません。
記録や情報共有をシステムに頼りきると、停電、ネットワーク障害、サイバー攻撃などで使えなくなった際に、ケアが滞ります。便利になるほど、停止時の打撃も大きくなります。
紙運用への切り替え手順を用意していない失敗
停止時に紙やアナログでケアを続ける手順がないと、現場は何を記録し、どこで情報を確認すればよいか分からず、混乱します。バイタルや服薬情報に触れられなくなると、利用者の安全に直結します。
デジタル化を進めるからこそ、停止を前提にしたうえで、最低限のケアを続けられる備えを整えておく必要があります。
- 紙の記録様式と手作業の運用フローを用意する
- 停電や通信障害時の切り替え手順を明文化する
- 定期的にアナログ訓練を行う
- 重要情報を紙へ出力し、バックアップを取る
BCP(業務継続計画)は、システム導入と合わせて整備すべき項目です。
運用コスト肥大化という見えにくいリスク
導入後に運用コストが膨らむことにも、注意が必要です。たとえば公共分野のシステム標準化では、運用経費が移行前後で平均2.3倍、最大5.7倍になった事例があります。
中核市59市の調査では、移行前の平均3億3,800万円から、移行後は6億8,400万円へ増加しました。同様に、介護・福祉でも機能の追加や利用規模の拡大、保守費用の上昇によって、想定を超える可能性があります。
運用費の膨張を抑えるには、契約時と導入後に、次の点を確かめておく必要があります。
- 改修費:改修ごとの単価の取り決め
- 規模拡大時の料金:利用規模が広がったときの料金体系
- 投資と運用費:TCO(総保有コスト)での評価と、定期点検による無駄の見直し
初期費用が安くても、改修のたびに高額になる構造では、運用の負担が積み重なります。
riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、形骸化から連携不全、移行事故、漏えい、BCP不備、コスト肥大まで、ここまで見てきた失敗を見据えた、現実的な構築と運用の伴走を支援しています。
ベンダーロックインで身動きが取れなくなるリスク
特定ベンダーへの過度な依存は、運用コストの肥大化にも関係します。独自形式のデータを持ち出せず、改修先も限られていると、不満があっても乗り換えられず、提示された価格を受け入れることになります。
長く使うシステムだからこそ、依存のリスクは導入時に確かめておく必要があります。契約時には、データの所有権やエクスポート(外部出力)の可否を見ておくことが欠かせません。
乗り換えに備えるには、契約時にデータの出口条件を決めておくことが大切です。
- 出力形式:標準的なデータ形式に対応するか
- 契約終了時:データ引き渡しの条件
乗り換えの自由は、健全な関係を保つことにもつながり、不当なコスト増を抑える歯止めにもなります。便利さの裏で身動きが取れなくならないよう、出口の戦略まで考えておきます。
ここまで見てきた失敗は、導入後に表面化します。機能や安さだけに目を向けて運用中の備えを怠ると、後から大きな代償を払うことになります。
システム選びでは、順調なときだけでなく、問題が起きたときにどのような支援を受けられるかも、確かめておく必要があります。リスクを見据えて備えのあるベンダーと組むことが、失敗を避ける防御策になります。
まとめ
失敗やリスクは、次の四つの領域に分けて整理できます。
- 現場ヒアリング不足の丸投げや伴走不足による形骸化
- 安さ優先の連携不全・二重入力、責任分界の曖昧さ
- 一斉切り替えやクレンジング不足による移行事故、設定ミスによる漏えい
- システム停止時のBCP不備と運用コストの肥大化
他業界の具体的な失敗が示すとおり、いずれも準備不足から起きる「防げたはずの失敗」です。
成否を分けるのは、投資額や機能数ではなく、現場業務に合っているかどうかと、連携や移行、運用後の備えを整えているかどうかです。また、ICTを「知らない」が74%という調査や、運用経費が平均2.3倍になった事例もあります。
riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、現場起点の設計から運用の伴走、リスク対策まで支援しています。全体像を確かめるときは、完全ガイドをご活用ください。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
