会員アプリの導入/開発事例や活用/成功事例について

会員アプリを導入した企業では、来店データを蓄積できるようになったほか、売上の伸びや紙コストの削減といった成果が報告されています。だからこそ、自社の業態に近い導入事例や成功事例こそ、投資判断の精度を高めてくれます。

全体像をまだつかめていない方は、まず会員アプリ開発の完全ガイドから読むと、この記事の事例も位置づけやすくなります。

デジタル会員証で来店データを蓄積した事例

デジタル会員証を中心に、会員ID、来店状況、購買履歴、優良顧客向けの施策の関係を示した図。
来店と購買の記録が販促の判断材料につながります。

会員アプリで最も分かりやすい成果が出るのは、紙の会員カードやポイントカードをデジタル会員証に置き換え、これまで取れなかった来店データを蓄積できるようになる点です。

紙のカードでは「誰が・いつ・何回来たか」を記録できません。一方、デジタル会員証なら、来店のたびに会員IDがひもづき、購買履歴とあわせて自社のデータとして残ります。つまり、この「顧客データを自社で持てる」ことこそ、会員アプリ最大の価値です。

顧客データの可視化で売上120%を実現した麺屋一燈の事例

象徴的な事例が、人気ラーメン店の麺屋一燈です。同店は券売機の食券制を採用していたため、注文と会計は効率的に回っていました。一方で、「どのお客様が何回来店しているか」という顧客データは、まったく取れていませんでした。

そこで会員アプリを導入し、来店状況をアプリ上で一元管理できるようにしたところ、想像以上に多くのリピーターがいることが見えてきました。このデータをもとに常連客向けの施策に注力した結果、売上120%・再来店率の向上という成果につながっています。

この事例が示すのは、会員アプリの効果が「新規顧客の獲得」よりも「既存顧客の把握と維持」に表れやすい、という点です。多くの店舗では、売上の大半を一部の優良顧客が支えています。

しかし紙カードのままでは、その事実をデータで把握できず、勘や経験だけで施策を打つことになります。デジタル会員証で来店データが蓄積されると、「誰が優良顧客か」が数字で分かり、限られた販促予算を最も効果の高い層に集中できるようになります。

事例を読むときは、自社にも眠っているはずの「見えていない優良顧客」を想像してみてください。

麺屋一燈の事例で、導入後に変わった点を見ておきます。

  • 見えていなかったリピーター:食券制では把握できなかった来店回数を、会員ごとに数字で追えるようになった。
  • 販促の集中先:限られた予算を、優良顧客や常連向けの施策に振り向けるための判断材料。

紙カードの作成・郵送コストを約30%削減した事例

デジタル会員証は、データの蓄積に加えて、紙の会員証やダイレクトメールの作成・郵送にかかっていたコストそのものを削減できます。

会員証の電子化に取り組んだKOI CAFE JAPANやきらくの事例では、紙の作成・郵送コストを約30%前後削減できたと報告されています。会員数が多い事業者ほど、この紙コストは無視できない固定費になっており、アプリ化による削減効果は経営の面でも分かりやすい数字です。

さらに、紙のクーポンやスタンプカードを発行・回収する手間も省けます。会員証がスマートフォンの中にあれば、「カードを忘れた」「ポイントが貯まらない」といった顧客側の不満も減り、会員登録の継続率が高まります。

紙コストの削減と顧客満足の両立は、会員アプリが単なる販促ツールではなく、業務効率化の手段でもあることを示しています。

会員アプリに具体的にどのような機能を載せるべきかは、『会員アプリの必要機能や標準機能の一覧について』もあわせてご覧ください。

紙に関わる手間とコストが、アプリ化でどう変わるかを整理します。

  • 紙の会員証:作成と郵送に費用がかかり、カードを忘れると顧客の不満にもつながる。
  • デジタル会員証:スマートフォンに入るので印刷や郵送が要らず、紙のクーポンやスタンプカードの手間も省ける。

ポイント

デジタル会員証の導入は、来店データを自社で蓄積できるかと、紙コストを減らせるかの両面で見ると判断材料がそろいます。会員数が多いほど、紙コストの見直し効果は分かりやすくなります。

会員ランク・ステータスでリテンションを高めた事例

会員アプリがポイントアプリと一線を画すのが、会員ランクやステータスによる「優良顧客の育成」という観点です。

来店回数や累計購買金額に応じてランクを設定し、上位会員に特別な体験や特典を提供することで、顧客は「このお店で会員を続ける意味」を感じるようになります。また、自然と再来店の動機も生まれます。

事例を見ると、成功している企業は単なる割引ではなく、ランクという「ステータスの可視化」でロイヤルティを高めています。

登録特典の設計で会員登録を促進した雅狼の事例

会員アプリは、入口である会員登録が進まなければ、いくら機能が優れていても効果を発揮しません。らーめん店の雅狼は、この登録の壁を巧みに乗り越えた事例です。

同店はダウンロード特典を、原価ベースの小さな割引ではなく、お客様にとっての価値が高い特典に設定しました。

この事例の本質は、「会員になる理由」を顧客視点で設計したことにあります。会員ランクやステータスも同じで、上位ランクの特典は原価の高さより、顧客が嬉しいかどうかで設計すべきです。

来店回数に応じて優先予約や限定メニュー、特別な誕生日特典などを付与すれば、顧客は次のランクを目指して通うようになります。割引の連発は利益を削るだけですが、ステータス設計はコストを抑えながらロイヤルティを高められる、会員アプリならではの打ち手です。

雅狼の登録特典を、顧客側と店舗側の両面から見ておきます。

  • 顧客側:売り値400円分の「トッピング全部のせ」が付き、登録する理由がはっきりする。
  • 店舗側:原価の負担を抑えながら、登録を強く促せる。

会員限定の取り置き・事前決済で常連を囲い込んだ嵜本の事例

高級食パンの嵜本は、電話予約に集中していた負荷を、会員向けの取り置き予約と事前決済で解消しました。

また、コロナ禍にはドライブスルー型の受け取りまで構築しました。こうした工夫が、強力な再来店の動機になっています。

この事例が示すのは、会員ステータスの価値を「割引」ではなく「優先される体験」で提供する有効性です。人気店ほど、「並ばずに買える」ことそのものが特典になります。

会員アプリにこうした優先体験を実装すると、顧客は会員であり続けるメリットを実感し、離脱しにくくなります。リテンション(再来店・継続利用)を高めたい事業者は、自社の商品・サービスのどの体験を会員限定にすれば喜ばれるかを、事例から逆算して考えると効果的です。

嵜本の事例で、会員に提供した体験の中身を見ます。

  • 取り置き予約と事前決済:人気商品を確実に買える体験を、会員だけに用意する仕組み。
  • ドライブスルー型の受け取り:受取日時に加えて車両のナンバーやカラーを入力する方式。

ポイント

会員ランクの特典は、原価の高さより顧客が嬉しいかを基準に設計すると、方向を決めやすくなります。割引を重ねるより、ステータスの見せ方を先に考えるとよいでしょう。

プッシュ通知で再来店を生んだ事例

行動データに基づくプッシュ通知を、休眠会員への復帰特典と近隣会員への昼前配信に分けた図。
対象と配信場面を分けると通知の狙いが見えます。

会員アプリが蓄積した顧客データを「再来店」に変える最後のひと押しが、プッシュ通知です。メルマガの開封率が5〜10%程度にとどまるのに対し、プッシュ通知の開封率はその3〜4倍に達します。

また、LINEメッセージの開封率もメール比で20%以上高いとされています。せっかく蓄積した会員データも、適切なタイミングで届けられなければ売上にはつながりません。届く確率の高いプッシュ通知は、会員アプリの収益に直結する手段と言えます。

LINEミニアプリ会員証でEC売上3倍を実現したストライプの事例

アパレルブランドearth music&ecologyを展開するストライプインターナショナルは、LINEミニアプリを会員証として活用した代表的な事例です。会員証提示の約8〜9割がミニアプリ経由となり、導入から半年で友だち登録は10倍、LINE経由のEC売上は約3倍に伸びました。

すでに多くの人が使っている連絡アプリを土台にしたことで、登録のハードルを下げました。また、通知到達率の高さを売上に直結させています。

この事例から分かるのは、会員アプリの形態には「専用ネイティブアプリ」以外の選択肢もあるという点です。

まず会員基盤を一気に広げたい事業者には、LINEミニアプリが向いています。事例から学べるのは、自社の顧客層がどのチャネルにいるかを見極め、最も「使われる」形態を選ぶことの大切さです。

ストライプの事例から、会員アプリの形態の違いを整理します。

  • LINEミニアプリ:ダウンロード不要で、開封率の高いLINE上に会員証を置ける。
  • 専用のネイティブアプリ:作り込んだ会員体験やオフライン連携を求める場合に適する形態。

行動データに基づく通知タイミングで来店を促した事例

プッシュ通知の効果は、どう送るかで大きく変わります。成功事例に共通するのは、会員一人ひとりの行動データに基づいて、通知のタイミングと内容を最適化している点です。

行動起点の配信は、全員一斉のメルマガとは比べものにならない反応率を生みます。蓄積した来店・購買データがあるからこそ、行動に合わせた精緻な配信が可能になります。

逆に、頻度や内容を考えずに通知を乱発すると、顧客は通知をオフにしたり、アプリを削除したりして、せっかく築いた会員基盤を失います。

事例を読むときは、「どんな通知を、誰に、いつ送ったか」という運用設計まで含めて学ぶことが大切です。プッシュ通知は効果が大きい一方、使い方を誤ると会員離脱の原因にもなります。

失敗のパターンについては『会員アプリ開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて』もあわせてご覧ください。

行動データを使った通知の例を、配信の場面ごとに見ておきます。

  • 休眠会員への復帰特典:前回来店から一定期間が空いた会員に限って送る。
  • 近隣会員への昼前配信:ランチタイム直前に、近隣の会員へクーポンを届ける。

ポイント

プッシュ通知は、会員の行動データに基づいて、誰に何をいつ送るかを決めてから使うと効果が出やすくなります。頻度を抑えないと、会員の離脱を招くおそれがあります。

CRM・顧客データ統合で全体最適した事例

POS・EC・アプリの会員データを名寄せし、CRM基盤からチャネル横断の施策につなげる層構造の図。
異なる会員データを束ねる工程が施策の土台になります。

会員アプリの投資効果を最大化するのが、POS・EC・アプリそれぞれに散らばっていた顧客データを統合し、一人の会員として一元管理するCRMの構築です。

実店舗のPOS会員、ネット通販のEC会員、アプリ会員がバラバラに管理されていると、同じ顧客を別人として扱ってしまい、的外れな施策につながります。そのため、複数チャネルの顧客データを名寄せして統合することこそ、会員アプリを「顧客基盤」へと育てる鍵です。

店舗とECの会員を統合してLTVを高めた事例

店舗とECの会員データを統合した事例では、これまで別々に把握していた「店舗でよく買う顧客」と「ネットでよく買う顧客」が、実は同一人物であるケースが数多く見つかります。

店舗とECを一人の顧客として見られるようになると、優良顧客の定義の精度が上がります。店舗で試着してネットで買う、ネットで見て店舗で受け取る、といった行動を一人の会員として追えることが、的確な施策の土台になります。

会員アプリをCRMの中核に据えると、誕生日や前回購入からの経過、購買ジャンルといった属性をもとに、チャネルをまたいだ一貫したコミュニケーションが可能になります。ポイント付与だけを目的とするポイントアプリとは異なり、会員アプリは「顧客を深く理解して関係を育てる」ための統合基盤です。

事例を読むときは、自社に顧客データベースがいくつ分散しているかを洗い出し、それを一人の会員に束ねたら何が見えるかを想像してみてください。

店舗とECの会員を統合したときに見えてくる効果を整理します。

  • LTVの算出:両チャネルの購買を横断して、顧客一人あたりの生涯価値を正しく見積もれる。
  • チャネル横断の施策:誕生日や前回購入からの経過などをもとに、店舗とECをまたいで一貫したコミュニケーションを送る。

会員IDの名寄せでデータ統合を成功させた事例

データ統合を成功させた事例の裏には、地道な「名寄せ」の作業があります。名寄せとは、レガシーな各種の会員記録を突き合わせるデータクレンジングの工程です。

電話番号やメールアドレスの表記ゆれ、旧姓と新姓、同一人物が複数登録しているケースなどを丁寧に整理しなければ、統合後のデータはかえって混乱します。成功事例では、この名寄せの仕様を最初の要件定義段階で詰め、移行計画に十分な期間を確保しています。

逆に、名寄せを軽視してデータをそのまま流し込んだ事例では、同一顧客が複数会員として残り、ランク判定やプッシュ配信が正しく機能しないトラブルが起きています。会員アプリのデータ統合は、華やかな機能の裏にある「泥臭い統合作業」の質で成否が決まります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、この名寄せ・データ移行の設計を要件定義の最重要項目として扱い、現場で使えるCRM基盤づくりを支援しています。

要件定義の進め方は『会員アプリのRFP/要件定義書/提案依頼書について』で詳しく解説しています。

名寄せでは、統合の対象とトラブルの両方を見ておく必要があります。

  • 統合の対象:POS会員ID、アプリ会員ID、EC会員IDを、同じ顧客ごとに一つにまとめる。
  • 起きやすいトラブル:同一顧客が複数会員として残り、ランク判定やプッシュ配信が正しく機能しなくなる。

ポイント

POS・EC・アプリの会員データを名寄せできるかが、施策の精度を左右します。名寄せの仕様は要件定義の段階で詰めると、統合後の混乱を防ぎやすくなります。

まとめ

会員アプリの事例を振り返ると、成功の鍵は「デジタル会員証で来店データを蓄積し、会員ランク・プッシュ通知・CRMを連動させて再来店を仕組み化する」という一点にまとめられます。

麺屋一燈は顧客データの可視化で売上120%を、ストライプはLINEミニアプリ会員証でEC売上3倍を、嵜本は会員限定の優先体験で常連の囲い込みを実現しました。

アプリ会員のリピート率が非会員の約1.5〜2倍にのぼることを踏まえれば、会員アプリは既存顧客の維持という、最も費用対効果の高い領域に直接効く投資だと言えます。

事例を読むときに大切なのは、「どんな機能を載せたか」ではなく「なぜ顧客が使い続けたのか」という視点です。

自社の優良顧客像と既存のデータ資産に照らし、まずはデジタル会員証によるデータ蓄積から、再来店につながる一歩を踏み出してください。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、顧客データの統合から再来店設計まで、現場に定着する会員アプリづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。