入出庫管理システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

入出庫管理システムの導入は、記録のデジタル化から始め、AI・RPAによる自動化や荷主別管理、繁忙期対応へと段階的に広げると、現場に合った改善につながります。

在庫精度から繁忙期対応まで、4つの事例を発注側の視点で紹介します。全体像は入出庫管理システムの完全ガイドにまとめています。

▼全体ガイドの記事
・入出庫管理システムの完全ガイド

Excel・紙脱却で在庫精度を改善した事例

入荷検品、棚入れ、ピッキング、出荷検品の順に並ぶバーコード入出庫の図。
記録の抜けを防ぐスキャン箇所が、入荷と出荷にあります。

入出庫は、入荷検品、棚入れ、ピッキング、出荷検品と作業が続きます。一般的な在庫管理ツールは、ハンディ運用に合わない場合もあります。手書き伝票やExcelでは記帳忘れや入力間違いが起きるため、入出庫管理システムへの移行が在庫精度の改善につながります。

記録がリアルタイムに反映されないと、帳簿在庫と実在庫がずれる「情物不一致」が常態化しがちです。このずれは、欠品による販売機会損失や、過剰在庫の保管コストにつながります。

ハンディ端末によるバーコード入出庫で差異が激減した事例

Excelからの脱却の効果を具体的に示すのが、ハンディ端末によるバーコードスキャンです。入荷と出荷は、次のように記録します。

  1. 入荷時に、商品のバーコードを読み取って入庫登録
  2. 出荷時に、ピッキング品をスキャンして商品を照合

この仕組みでは、手入力の打ち間違いや記帳漏れを構造的に防げます。さらに、導入のハードルも下がっています。

iPhoneを端末に使うロジクラのようなクラウド型サービスは、フリープランの0円から使い始められます。専用ハンディを買わずに済むため、小規模事業者も在庫精度の改善に取り組みやすくなっています。

精度改善の効果は、漠然とした業務改善として捉えず、自社の数字で試算します。たとえば月1,000件を出荷し、誤出荷率が1%なら、月10件の誤出荷が発生します。

1件あたりの再出荷・返品対応費が5,000円なら、損失は月5万円、年60万円です。スキャン照合で誤出荷をほぼゼロに近づければ、この損失がそのまま削減効果になります。事例を自社に当てはめる際は、物量とコスト単価を置き換えて効果を確かめてください。

クラウド型サービスは、初期0〜100万円、月額3〜30万円の幅で提供されています。たとえば、zaicoは初期無料・月8,980円から、Air Logiは初期35,000円・月1万円から利用できます。

また、専用ハンディを購入せずスマートフォンで小規模に試し、効果を見て対象範囲を広げる方法もあります。在庫精度の改善を低コストで始められる点が、近年の事例の特徴です。

ロケーション管理で棚卸し工数も削減した事例

ロケーション管理は、作業の場面ごとに効果が出る仕組みです。次の2つの作業で、効率化が見込めます。

  • ピッキング:保管場所を示し、商品を探し回る無駄を減らす
  • 棚卸し:差異のある棚を優先して確認する

フリーロケーション運用でも、入庫時に棚番と数量をスキャンで紐づけておけば、ロケーションごとの在庫を正確に把握できます。さらに、新人の教育コストも抑えられます。

従来は、全商品を人手で数えてExcelと突き合わせる作業に丸一日以上かかる現場もあります。これに対してハンディなら、実在庫を即時に集計できます。

在庫精度が上がれば、棚卸しの頻度を下げられる場合もあります。入出庫管理の第一歩は、記録のデジタル化による在庫精度の底上げです。

ポイント

在庫精度の改善を判断するときは、Excelや紙の記録が実在庫とずれていないかを、まず見直すのが目安です。記録がずれているなら、スキャンによる入出庫記録の導入を先に検討します。

AI検品・RPA自動出荷で生産性を高めた事例

AI画像検品の生産性60%向上と、RPAによる全注文の約90%自動出荷を並べた図。
検品工程と注文処理で、それぞれ自動化の成果が示されています。

在庫精度が整った後は、AIやRPAで入出庫工程そのものを自動化する段階があります。物流現場の人手不足は2024年問題で深刻になり、限られた人員で処理量を増やすことが経営課題になっています。

先進事例では、検品や出荷指示などの定型作業をAI・RPAに任せています。そのため、人は例外処理や判断業務に集中する体制へと移っています。

AI画像検品で生産性が60%向上した事例

検品を目視に頼ると、人によって精度がばらつき、繁忙期にはボトルネックになりがちです。一方で、NTTロジスコは、AIによる検品で生産性を60%向上させました。

カメラで撮影した商品画像をAIが判定し、人が一つずつ目視していた工程を短縮します。そのため、同じ人員でより多くの入荷・出荷を処理できるようになります。AI検品は、次の2つを同時に目指せます。

  • 検品ミス:不良品の流出や正常品の誤廃棄を減らす
  • 処理速度:入荷から棚入れ、出荷準備までを早める

誤検品が減れば、品質コストも下がります。また、生産性60%向上は複合効果として捉え、自社の工数とミス率で試算します。

RPAで全注文の約90%を自動出荷した事例

LOGILESSは、RPAにより全注文の約90%を自動出荷しました。ECの受注データを取り込み、在庫を引き当て、出荷指示書を発行するまでを自動で処理します。

出荷担当者は、残り約10%の例外注文に専念できます。同梱指示やギフト対応、在庫不足などが例外にあたります。

注文件数が伸びても、出荷人員を比例して増やさずに済みます。そのため、成長企業ほど効果が大きくなります。

入出庫業務には例外があり、ゼロにしようと作り込むと開発費が膨らみます。そのため、出荷データを分析して定型と例外を切り分け、自動化の範囲を決めます。

  • 定型注文:RPAで処理し、出荷人員の増加を抑える
  • 例外注文:人が対応し、個別の指示や不足に対処する

約90%を自動化し残りを人がフォローする設計は、投資対効果のバランスを取りやすくします。在庫精度の改善を土台に、AI・RPAへ段階的に進めます。

市場全体でも、自動化の流れは加速しています。グローバルのWMS市場は、2025年の約33.8億ドルから2026年に約39.9億ドルへ拡大し、2033年までCAGR21.9%で成長すると見込まれています。

2024年時点でクラウド型は市場の約55.6%を占め、CAGR約19.7%で市場を牽引しています。初期投資を抑えながら自動化機能を取り込めるため、クラウド型は省人化ニーズの受け皿になっています。

AI検品やRPA自動出荷の事例も、市場の追い風を受けて増えています。技術の成熟と選択肢の広がりは、導入を検討する際の環境にも影響します。

ポイント

自動化の範囲は、出荷データから定型と例外を切り分けて決めます。定型は自動化し、例外は人が受け持つ前提で、投資対効果を試算します。

3PLが複数荷主の入出庫を一元化した事例

荷主コードによる在庫区分、月次の入出庫実績、保管料・作業料の請求を示す3PL管理の図。
荷主ごとの情報が、在庫管理から請求の根拠までつながります。

物流を請け負う3PL事業者には、複数荷主の在庫と入出庫を正確に分けて一元管理する要件があります。一つの倉庫に複数荷主の商品が混在するためです。

荷主ごとの在庫区分や入出庫実績の集計に加えて、保管料や作業料の請求までシステムで処理します。対応事例では、荷主管理の作り込みに丁寧に向き合っています。

荷主別在庫の分離と実績集計を実現した事例

3PL向け入出庫管理の要は、荷主別の在庫分離です。同じ倉庫やエリアに商品が置かれていても、システム上で荷主コードを使って区分します。この区分があれば、A社の在庫をB社の出荷に引き当てる事故を防げます。

  • 在庫:荷主コードで区分し、誤出荷を防ぐ
  • 実績:月次の入庫数・出庫数を集計する

荷主ごとの状況は、すぐ把握できます。請求の根拠データも手作業で作る必要がありません。

はぴロジは2,000社超の利用実績があり、連携倉庫200拠点超、累計出荷1.5億件規模を扱います。料金は月1万円+従量で、複数荷主の物流を支えています。

柔軟なシステムは、業務効率化にとどまらず新規荷主獲得に向けた営業の武器にもなります。荷主に入出庫の可視化方法を提案できることが、受託の競争力に直結します。

荷主基幹と3PL倉庫をAPI同期した事例

荷主側の基幹システムと3PL側の倉庫システムを、APIで同期する事例もあります。荷主の受注データを倉庫へ自動連携し、出荷完了後に実績を荷主の基幹へ返します。荷主と3PLのシステム連携では、入出庫管理でも専門性が問われます。

双方向同期により、荷主は在庫をリアルタイムに把握でき、3PLは指示を手入力せずに済みます。連携先の数や同期頻度は、要件定義で詰めます。

  • 重要な在庫:リアルタイムで連携する
  • その他の在庫:バッチ連携を使う

数時間に一度の同期では、売れた商品をECで再販売する「売り越し」が起きる可能性があります。そのため、出荷件数や欠品リスクに応じて頻度を調整します。

取引先独自システムとの接続費用は、50〜500万円以上が目安です。出荷件数の多い荷主ほど、投資を回収しやすくなります。

ポイント

荷主ごとに在庫を区分し、請求の根拠になる実績を集計できるかを、導入前に確かめます。連携の頻度は、出荷件数と欠品リスクに応じて決めます。

繁忙期の出荷急増にスケール対応した事例

入出庫管理システムの真価は、セール期や年末年始など、出荷が平常時の数倍になる繁忙期に問われます。処理が詰まって出荷が遅れれば、得意先や利用者の信頼を失いかねません。

スケール対応の事例では、システムの処理能力だけでなく、臨時スタッフの即戦力化や従量課金のコスト管理まで設計しています。

臨時スタッフが即日ハンディを使えたUIの事例

臨時スタッフがすぐに入出庫作業をこなせるかは、システムのUI/UXに左右されます。スキャンと数量入力だけで完結する操作なら、半日程度の教育で戦力になります。

画面の指示どおりに棚を回れる設計も、操作を覚えやすくします。反対に操作が複雑だと、教育に時間がかかり、経験者が新人指導に取られて全体の生産性が落ちます。

成功事例では、教育コストの低さを導入時の重要な評価軸にしています。現場操作性は導入前のデモで検証し、次の2つの点を見ます。

  • 操作の簡潔さ:臨時スタッフが覚えやすいか
  • 教育負担:経験者が指導に取られないか

同じシステムでも、機能を詰め込んだものと簡潔な操作を優先したものでは、繁忙期の現場対応力が異なります。たとえば、臨時スタッフの多い事業者では、覚えやすさが決め手になった事例もあります。

ROI回収1.5年・398%を実現した投資判断の事例

投資判断には、ROI実績を伴う事例が参考になります。セミスクラッチ型のインターストックは、年商200億円規模の製造業へ初期約3,800万円で導入されました。

この事例は3年でROI 398%、回収期間1.5年です。一方で、一般的な入出庫・倉庫管理システムの回収期間は3〜7年とされます。

自社に当てはめる際は、構築形態ごとの費用感を押さえます。方式ごとに初期費用や5年TCO、回収期間が異なるため、費用と回収期間の両方を確かめます。

  • クラウド型:初期0〜100万円、月額3〜30万円、5年TCO180〜1,800万円
  • フルスクラッチ:初期3,000万〜1億円超
  • 回収期間:クラウド型1〜3年、スクラッチ5年以上

繁忙期のピークに合わせた過剰投資を避け、平常時の物量で回収できる規模から始めます。そのうえで、効果を見ながら広げる進め方が、成功事例に共通します。

ポイント

繁忙期の対応力は、臨時スタッフが覚えやすい操作かどうかで見ます。投資は平常時の物量で回収できる規模から始め、効果を見ながら広げます。

まとめ

事例の成果は、在庫精度の改善を土台に、AI・RPAの自動化、複数荷主の一元化、繁忙期対応へと段階的に投資を広げる流れにまとめられます。Excel・紙からの移行は、スキャンによる情物一致や棚卸し省力化につながります。

AI画像検品では生産性60%向上、RPA自動出荷では全注文の約90%自動化というデータがあります。また、3PLの荷主別管理は新規受注の武器になり、インターストックは回収1.5年・ROI 398%を示しています。

事例を読む際は、システムの機能より、自社の物量と現場運用に合うかを見ます。まず入出庫記録をデジタル化し、現場で使える一歩から始めてください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、現場の入出庫業務から逆算した要件整理と、繁忙期にも定着するシステムづくりを一貫して支援します。詳しい流れは完全ガイドにまとめています。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。