勤怠管理システムの必要機能や標準機能の一覧について

勤怠管理システムを比較検討するとき、各社のサービスサイトに並ぶ「打刻」「自動集計」「シフト管理」といった機能名を眺めても、自社にとって本当に必要な機能がどれなのか、判断に迷う担当者は少なくありません。勤怠管理システムは、単に出退勤を記録するだけのツールではなく、就業ルールに沿った労働時間の計算、法令に対応したアラート、給与計算システムへのデータ連携まで、幅広い役割を担います。機能の意味を正しく理解しないまま導入すると、せっかくの機能を使いこなせなかったり、必要な機能が足りずに手作業が残ったりします。

本記事は、勤怠管理システムが提供する必要機能・標準機能を、発注企業の視点から体系的に整理する「機能特化」の解説です。多様な打刻方法、労働時間の自動集計、36協定や有給管理といった法令対応のアラート機能、給与計算をはじめとする他システム連携、そして退職者データの保存まで、それぞれの機能が「なぜ必要で、何を自動化するのか」を一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社の要件に照らして「外せない機能」と「あれば便利な機能」を切り分けられるようになるはずです。なお、勤怠管理システム導入の全体像をまだ把握していない方は、まず勤怠管理システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。

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多様な打刻方法という基本機能の使い分け

勤怠管理システムの多様な打刻方法という基本機能のイメージ

勤怠管理システムのもっとも基本的な機能が「打刻」です。ただし一口に打刻といっても、PC上のブラウザから打刻する方法、スマートフォンのアプリやGPS位置情報を使った打刻、ICカードをかざす打刻、指紋や顔認証といった生体認証の打刻まで、その手段は多岐にわたります。重要なのは、自社の働き方に合った打刻方法を選べるかどうかであり、ここがシステム選定の最初の分岐点になります。

働き方別に打刻手段を選ぶ機能要件

打刻方法は、従業員の働き方によって最適解が変わります。オフィス勤務の事務職ならPC打刻が自然ですが、直行直帰の多い営業職や訪問介護のスタッフにはスマホのGPS打刻が向きます。工場や店舗のように多くの従業員が同じ場所で出退勤する現場では、ICカード打刻が混雑を避けやすく、なりすまし防止を厳格にしたい現場では生体認証が選ばれます。打刻方法を一つに絞れない企業ほど、複数の打刻手段に対応できる柔軟性が重要になります。

市販サービスでは、KING OF TIMEが打刻方法20種・多言語に対応すると示すなど、打刻の多様性を売りにするものがあります。一方で、自社の打刻ルールが特殊な場合、市販の打刻機能では細部が合わないこともあります。たとえば外国人スタッフの多い現場では多言語の打刻画面が必須になりますし、GPSの打刻範囲を就業先ごとに細かく設定したいといった要件は、自社開発で柔軟に作り込む余地があります。打刻はシステムの入り口であり、ここが現場に合わないと定着しないため、機能要件の最優先事項として扱うべきです。

なりすまし・不正打刻を防ぐ機能

打刻機能で見落とされがちなのが、不正打刻の防止です。他人の代わりに打刻する「なりすまし」や、実際の勤務開始前に打刻する「早押し」は、労働時間の正確性を損ない、給与計算の信頼性を揺るがします。生体認証はなりすましを物理的に防ぎ、GPS打刻は所定の場所以外での打刻を弾くことで、不正のリスクを構造的に下げます。

打刻データの正確性は、後続の自動集計や給与計算の精度の土台になります。入り口の打刻が不正確なら、いくら集計を自動化しても誤った結果しか出ません。だからこそ、自社の不正リスクの大きさに応じて、どこまで厳格な打刻機能を備えるかを判断する必要があります。厳格すぎると現場の手間が増えて打刻漏れを招くため、不正防止と打刻のしやすさのバランスを、現場の実態に合わせて設計することが機能選定のポイントです。

労働時間の自動集計と就業ルール再現機能

勤怠管理システムの労働時間自動集計と就業ルール再現機能のイメージ

打刻データを単に記録するだけなら、紙のタイムカードと大差ありません。勤怠管理システムの中核的な価値は、打刻データを就業ルールに沿って自動で集計し、労働時間・残業時間・割増賃金の対象時間を正確に算出する機能にあります。この自動集計こそが、月末の手作業を消し、計算ミスを防ぐ最大のエンジンです。

変形労働・フレックスを再現する集計機能

自動集計機能で最も差が出るのが、自社固有の就業ルールをどこまで正確に再現できるかです。1か月単位や1年単位の変形労働時間制、コアタイムのあるフレックスタイム制、裁量労働制など、企業の労働時間制度は多様です。これらの制度ごとに、残業のカウント方法や割増の起算点が変わるため、システムがこれらを正しく再現できなければ、結局は手作業での補正が必要になります。

さらに、勤務時間の端数をどう丸めるか(独自の丸め処理)も、企業ごとに異なる繊細な論点です。市販のSaaSは標準的なルールには対応していても、自社特有の丸め処理や変形労働の設定が細かく合わないことがあります。リサーチでも、打刻方法の柔軟性と並んで「変形労働・フレックス・独自丸め処理の再現性が成否を分ける」と指摘されています。自社の就業規則を一字一句、システムの設定に落とし込めるかが、自動集計機能を評価する核心です。

申請・承認ワークフローと有給管理機能

勤怠管理システムには、残業申請、休暇申請、打刻修正の申請といったワークフロー機能が標準的に備わっています。従業員が申請し、上長が承認する流れをシステム上で完結させることで、紙の申請書のやり取りがなくなり、申請内容がそのまま勤怠データに反映されます。承認のステータスが可視化されるため、申請の取りこぼしも防げます。

あわせて重要なのが、有給休暇の管理機能です。働き方改革関連法では年5日の有給取得が義務付けられており、システムは各従業員の有給付与日数・取得日数・残日数を自動で管理し、取得が進んでいない従業員を抽出できます。これにより、人事担当者が一人ひとりの有給残を手計算で追う必要がなくなります。申請ワークフローと有給管理は、現場の利便性と法令遵守の両方を支える標準機能であり、ここが弱いと運用が回りません。

有給の付与ルールも、企業ごとに細かな違いがあります。入社日を基準に付与する方式、全社で一斉に付与する方式、半日や時間単位の有給を認める方式など、自社の運用に合わせた付与・取得の管理ができるかを確認します。さらに、申請ワークフローは代理承認や多段階承認といった企業ごとの組織構造に対応できると、現場の実態に沿った運用が可能になります。標準機能の範囲で自社の有給ルールが再現できるか、できない場合はカスタマイズが必要かを、導入前に必ず検証しておくことが大切です。

36協定・法令対応のアラート機能

勤怠管理システムの36協定・法令対応アラート機能のイメージ

勤怠管理システムが単なる集計ツールを超えて経営の守りを担うのが、法令対応のアラート機能です。働き方改革関連法により、時間外労働には罰則付きの上限規制が設けられ、36協定で定めた上限を超えると企業が法的リスクを負います。システムが残業時間をリアルタイムで監視し、上限に近づいた従業員を自動でアラートできれば、違反を未然に防げます。

残業上限・勤務間インターバルの監視機能

36協定の時間外上限を超えそうな従業員を月の途中で検知し、本人と上長にアラートを飛ばす機能は、長時間労働の抑制に直結します。月末になって「上限を超えていた」と気づくのでは手遅れですが、リアルタイムで残業が積み上がる様子が見えれば、管理職が早めに業務を調整できます。勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息時間)の確保状況を可視化する機能も、働き方改革推進支援助成金の「9〜11時間未満」「11時間以上」といった区分に対応する形で重要性を増しています。

こうしたアラートは、単なる通知にとどまらず、企業の労務リスク管理の中核です。違反が発覚すれば罰則だけでなく社会的信用も失われるため、上限管理を人手に頼らずシステムで自動化する価値は大きいといえます。自社の36協定の特別条項や、部署ごとに異なる上限設定をどこまで柔軟に反映できるかが、アラート機能を評価する際の着眼点になります。

法改正への自動アップデート対応機能

労働関連の法令は頻繁に改正されます。クラウド型の勤怠管理システムの強みは、こうした法改正に合わせてベンダーが自動でアップデートしてくれる点です。自社で法改正を追いかけて設定を直す必要がなく、常に最新の法令に沿った計算ができる安心感は、コンプライアンスを重視する企業にとって大きな価値です。

一方で、自社開発(フルスクラッチやノーコード受託)の場合は、法改正対応を自社の責任で行う必要があり、保守体制をどう確保するかが論点になります。この点はクラウドSaaSの明確な優位性ですが、自社開発でも保守契約で法改正対応を組み込めば対応可能です。自社の就業ルールの特殊性と、法改正対応の負担をどちらが担うか、というトレードオフを踏まえて機能と提供形態を選ぶことが重要です。

法改正は今後も続きます。2026年4月28日公布・10月1日施行の同一労働同一賃金ガイドラインの改正のように、勤怠や手当の扱いに影響する変更が定期的に生じます。クラウドSaaSはこうした変更にベンダーが追従し、利用企業は設定を直す手間なく最新の計算を維持できます。法改正対応を「自社で追いかけるコスト」として捉えると、SaaSの自動アップデートが持つ価値の大きさが見えてきます。自社固有のルールが少なく、法令追従の安心を重視する企業ほど、この機能の恩恵を受けられます。

給与計算連携と退職者データ保存の機能

勤怠管理システムの給与計算連携と退職者データ保存機能のイメージ

勤怠管理システムは単体で完結するものではなく、給与計算をはじめとする周辺システムと連携してこそ真価を発揮します。集計した労働時間を給与計算システムに渡す連携機能、そして退職者のデータを法定期間保存する機能は、運用の効率と法令遵守を左右する重要な要素です。ここが整っていないと、せっかく自動集計しても結局は人手でデータを移す手間が残ります。

給与計算へのAPI・CSV連携で二重管理を防ぐ機能

勤怠データの最終的な行き先は、給与計算です。勤怠管理システムが集計した労働時間・残業時間・割増対象時間を、給与計算システムへAPIやCSVで連携できれば、データを手入力し直す必要がなくなり、二重管理や転記ミスを防げます。オールインワン型(勤怠と給与が一体)か、シリーズ連携型(同じベンダーの勤怠と給与を連携)か、異なるベンダー間をCSVでつなぐか、という選択肢があります。

たとえばfreee人事労務は勤怠300円〜・人事労務2,000円〜(最小5名)といった料金で、勤怠から給与まで一気通貫の連携を提供します。給与奉行クラウドのように給与計算側で大きなシェアを持つサービスとの連携可否も、選定の決め手になります。連携費用は隠れコストになりがちで、給与計算連携の構築に10万〜50万円かかる場合があるため、機能の有無だけでなく連携にかかる費用まで含めて評価することが大切です。

退職者データ保存と勤怠データ活用の機能

勤怠データには法定の保存義務があり、退職者の記録も一定期間残す必要があります。ここで問題になるのが、SaaSの多くが退職者アカウントを残すと課金が続く点です。自社開発であれば、退職者データを課金とは切り離して自社のデータベースに保存でき、無料系サービスのように保存期間が数か月〜1年で切れる心配もありません。退職者データの保存方法は、機能要件として最初に確認すべき項目の一つです。

さらに進んだ活用として、蓄積した勤怠データを人的資本経営に役立てる機能があります。打刻データから残業の偏りやコンディションの変化を読み取り、離職リスクの兆候を検知したり、ハイパフォーマーの働き方を分析したりする「攻めのDX」です。多くの市販システムはこの領域が手薄ですが、自社のデータを自由に分析できる仕組みを持てば、勤怠を守りのコストから攻めの経営資源へ転換できます。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託の立場から、給与連携や退職者データ保存はもちろん、自社のデータ活用まで見据えた機能設計を支援します。機能は「いま使うもの」だけでなく「将来データをどう活かすか」まで含めて選ぶことが大切です。

シフト管理・複雑雇用に対応する拡張機能

勤怠管理システムのシフト管理・複雑雇用に対応する拡張機能のイメージ

基本的な打刻・集計・法令対応・連携に加えて、業種や雇用形態によっては、シフト管理や複雑な雇用要件への対応といった拡張機能が必要になります。これらは「あれば便利」ではなく、店舗・施設・派遣業などでは「ないと運用できない」必須機能になることがあります。自社の業態に応じて、どこまでの拡張機能が必要かを見極めることが重要です。

シフト作成と勤怠を連動させる機能

小売・飲食・介護・医療などのシフト勤務が中心の業種では、シフト管理機能が勤怠と一体になっていることが大きな価値を持ちます。希望シフトの収集、必要人数を満たすシフトの作成、シフトと実際の打刻のずれの把握までを一つのシステムで扱えれば、シフト表をExcelで作って勤怠と突き合わせるという二重作業がなくなります。予定と実績の差が見えることで、人員配置の最適化にもつながります。

シフトと勤怠の連動で重要なのは、シフト上の予定時間と実際の打刻時間のずれを自動で検知し、早退・遅刻・予定外残業として正しく集計に反映できることです。シフト勤務では変形労働時間制を採用することも多く、シフトの組み方が残業の計算に直結します。自社のシフトルールが複雑な場合は、市販システムの標準機能で足りるか、自社開発で作り込むかを、シフトの実態に照らして判断する必要があります。

多言語・複数法人に対応する機能

外国人スタッフの多い現場では、打刻画面や申請画面の多言語対応が必須の機能になります。日本語が読めないスタッフに正しく打刻してもらうには、母国語で操作できる画面が欠かせません。市販システムではKING OF TIMEのように多言語対応をうたうものがありますが、対応言語の範囲や翻訳の精度は事前に確認が必要です。多言語対応の有無は、外国人雇用が前提の企業にとって選定の決定的な要素です。

複数法人をグループで運営する企業では、法人ごとに就業ルールを切り替えつつ、グループ全体を横断して管理できる機能が求められます。複数法人を兼務する従業員の労働時間を合算して上限を判定する機能は、市販システムでは「要確認」となりがちで、自社開発で組織構造に合わせて設計する余地が大きい領域です。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託の立場から、シフト連動・多言語・複数法人といった拡張機能を、自社の業態に合わせて作り込む設計を支援しています。拡張機能は、自社の業種と雇用形態を起点に「必須か否か」を切り分けて選ぶことが大切です。

まとめ

勤怠管理システム機能のまとめイメージ

勤怠管理システムの機能を整理すると、その役割は「多様な打刻で正確にデータを取り、就業ルールに沿って自動集計し、法令違反をアラートで防ぎ、給与計算へ連携して退職後まで保存する」という一連の流れに集約されます。打刻方法は働き方別に選び、不正防止と打刻のしやすさのバランスを取ること、自動集計は変形労働・フレックス・独自丸め処理を正確に再現できること、36協定アラートと法改正対応で守りを固めること、そして給与連携と退職者データ保存で運用と法令遵守を両立することが、機能評価の柱になります。

機能を比較するときに大切なのは、機能名の多さではなく「自社の就業ルールをどこまで正確に再現できるか」という視点です。標準機能で足りる部分はSaaSを活かし、自社固有の就業ルールや退職者データ保存、データ活用といった作り込みが必要な部分は自社開発を検討する、というハイブリッドな見極めが現実的です。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託と国内開発を組み合わせ、就業規則から逆算した機能設計を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。