勤怠管理システムを選ぶときは、打刻だけでなく、労働時間の集計、法令対応、給与計算との連携まで確認する必要があります。
発注企業の視点から整理するには、まず各機能が何を自動化するのかを押さえ、そのうえで自社の就業ルールに照らせば、外せない機能と追加したい機能を切り分けられます。
- 打刻:働き方に合った手段で、正確な勤務データを取ります。
- 集計・法令対応:就業ルールに沿って集計し、残業の上限や休暇の管理を支えます。
- 連携・保存:給与計算への連携と、退職者データの保存を担います。
導入の全体像から確認したい方は、まず勤怠管理システムの完全ガイドをご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・勤怠管理システムの完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
多様な打刻方法という基本機能の使い分け
勤怠管理システムのもっとも基本的な機能が「打刻」です。ただし一口に打刻といっても、手段は多岐にわたります。
PC上のブラウザからの打刻、スマートフォンアプリやGPS位置情報による打刻、ICカードをかざす方法があり、指紋や顔認証といった生体認証もあります。そのため、自社の働き方に合った手段を選べるかどうかが、システム選定の最初の分岐点になります。
働き方別に打刻手段を選ぶ機能要件
打刻方法は、従業員の働き方によって最適解が変わります。オフィス勤務の事務職ならPC打刻が自然ですが、直行直帰の多い営業職や訪問介護のスタッフにはスマホのGPS打刻が向きます。工場や店舗のように多くの従業員が同じ場所で出退勤する現場では、ICカード打刻が混雑を避けやすく、なりすまし防止を厳格にしたい現場では生体認証が選ばれます。
打刻方法を一つに絞れない企業ほど、複数の打刻手段に対応できる柔軟性が重要になります。市販サービスには、KING OF TIMEが打刻方法20種・多言語に対応すると示すなど、打刻の多様性を売りにするものもあります。ただし、自社の打刻ルールが特殊な場合は、市販の打刻機能では細部が合わないこともあります。
たとえば外国人スタッフの多い現場では多言語の打刻画面が必須になりますし、GPSの打刻範囲を就業先ごとに細かく設定したいといった要件は、自社開発で柔軟に作り込む余地があります。打刻はシステムの入り口で、ここが現場に合わないと定着しません。そのため、機能要件の最優先事項として扱うべきです。
なりすまし・不正打刻を防ぐ機能
打刻機能で見落とされがちなのが、不正打刻の防止です。他人の代わりに打刻する「なりすまし」や、実際の勤務開始前に打刻する「早押し」は、労働時間の正確性を損ない、給与計算の信頼性も揺るがします。生体認証はなりすましを物理的に防ぎ、GPS打刻は所定の場所以外での打刻を弾くことで、不正のリスクを構造的に下げます。
打刻データの正確性は、後続の自動集計や給与計算の精度の前提になります。入り口の打刻が不正確なら、いくら集計を自動化しても誤った結果しか出ません。だからこそ、自社の不正リスクの大きさに応じて、どこまで厳格な打刻機能を備えるかを判断する必要があります。
厳格すぎると現場の手間が増えて打刻漏れを招くため、不正防止と打刻のしやすさのバランスを、現場の実態に合わせて設計することが機能選定のポイントです。
労働時間の自動集計と就業ルール再現機能

打刻データを記録するだけなら、紙のタイムカードと大差ありません。勤怠管理システムの中核的な価値は、打刻データを就業ルールに沿って自動で集計し、労働時間・残業時間・割増賃金の対象時間を正確に算出する点にあります。特にこの自動集計は、月末の手作業をなくし、計算ミスを防ぐうえで効果が大きい部分です。
変形労働・フレックスを再現する集計機能
自動集計機能で最も差が出るのは、自社固有の就業ルールをどこまで正確に再現できるかです。1か月単位や1年単位の変形労働時間制、コアタイムのあるフレックスタイム制、裁量労働制など、企業の労働時間制度は多様です。
これらの制度ごとに残業のカウント方法や割増の起算点が変わるため、システムが正しく再現できなければ、結局は手作業での補正が必要になります。さらに、勤務時間の端数をどう丸めるか(独自の丸め処理)も、企業ごとに異なる繊細な論点です。
市販のSaaSは標準的なルールには対応していても、自社特有の丸め処理や変形労働の設定が細かく合わないことがあります。また、リサーチでも「変形労働・フレックス・独自丸め処理の再現性が成否を分ける」と指摘されています。そのため、自社の就業規則を一字一句、システムの設定に落とし込めるかが、自動集計機能を評価する核心です。
申請・承認ワークフローと有給管理機能
勤怠管理システムには、残業申請、休暇申請、打刻修正の申請といったワークフロー機能が標準的に備わっています。従業員が申請し上長が承認する流れをシステム上で完結させれば、紙の申請書のやり取りがなくなり、申請内容が勤怠データにそのまま反映されます。承認のステータスも見えるため、申請の取りこぼしも防げます。
申請ワークフローに加えて、有給休暇の管理機能も現場の利便性と法令遵守を支える標準機能で、ここが弱いと運用が回りません。なかでも有給休暇は、働き方改革関連法で年5日の取得が義務付けられており、システムが各従業員の有給付与日数・取得日数・残日数を自動で管理し、取得が進んでいない従業員を抽出できます。これにより、人事担当者が一人ひとりの有給残を手計算で追う必要がなくなります。
さらに、申請ワークフローも代理承認や多段階承認に対応できると、企業ごとの組織構造に沿った運用が可能になります。有給の付与ルールも企業ごとに細かく違い、入社日を基準にする方式、全社で一斉に付与する方式、半日や時間単位の有給を認める方式などがあります。そのため、標準機能で自社の有給ルールを再現できるか、できない場合はカスタマイズが必要かを、導入前に必ず検証しておくことが大切です。
36協定・法令対応のアラート機能

勤怠管理システムは、単なる集計ツールを超えて経営の守りを担います。その中心にあるのが、法令対応のアラート機能です。
働き方改革関連法により、時間外労働には罰則付きの上限規制が設けられ、36協定で定めた上限を超えると企業が法的リスクを負います。そこで、システムが残業時間をリアルタイムで監視し、上限に近づいた従業員を自動でアラートできれば、違反を未然に防げます。
残業上限・勤務間インターバルの監視機能
36協定の時間外上限を超えそうな従業員を月の途中で検知し、本人と上長に通知する機能は、長時間労働の抑制に直結します。月末に「上限を超えていた」と気づいても手遅れです。リアルタイムで残業が積み上がる様子が見えれば、管理職は早めに業務を調整できます。
こうしたアラートは、単なる知らせにとどまらず、企業の労務リスク管理の中核です。違反が発覚すれば罰則だけでなく社会的信用も失われるため、上限管理を人手に頼らずシステムで自動化する価値は大きいといえます。
勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息時間)の確保状況を示す機能も、働き方改革推進支援助成金の「9〜11時間未満」「11時間以上」といった区分に対応する形で重要性を増しています。また、自社の36協定の特別条項や、部署ごとに異なる上限設定をどこまで柔軟に反映できるかが、アラート機能を評価する際の着眼点になります。
法改正への自動アップデート対応機能
労働関連の法令は頻繁に改正されますが、クラウド型の勤怠管理システムなら、ベンダーが改正に合わせて自動でアップデートしてくれます。自社で法改正を追いかける手間を考えると、その価値の大きさが見えてきます。設定を直す必要がなく、常に最新の法令に沿った計算を保てる安心感があります。
一方で、自社開発(フルスクラッチやノーコード受託)の場合は、法改正対応を自社の責任で行う必要があり、保守体制をどう確保するかが論点になります。クラウドSaaSの明確な優位性はこの点にありますが、自社開発でも保守契約で法改正対応を組み込めば対応可能です。
法改正は今後も続き、2026年4月28日公布・10月1日施行の同一労働同一賃金ガイドラインの改正のように、勤怠や手当の扱いに影響する変更が定期的に生じます。そのため、自社の就業ルールの特殊性と、法改正対応の負担をどちらが担うかというトレードオフを踏まえて、機能と提供形態を選ぶことが重要です。自社固有のルールが少なく、法令追従の安心を重視する企業ほど、この機能の恩恵を受けられます。
給与計算連携と退職者データ保存の機能

勤怠管理システムは単体では完結せず、給与計算をはじめとする周辺システムと連携してこそ真価を発揮します。集計した労働時間を給与計算システムに渡す連携機能と、退職者のデータを法定期間保存する機能は、運用の効率と法令遵守を左右する重要な要素です。ここが整っていないと、せっかく自動集計しても、人手でデータを移す手間が残ります。
給与計算へのAPI・CSV連携で二重管理を防ぐ機能
勤怠データの行き先は、最終的に給与計算になります。勤怠管理システムが集計した労働時間・残業時間・割増対象時間を、給与計算システムへAPIやCSVで連携できれば、データを手入力し直す必要がなくなり、二重管理や転記ミスを防げます。
連携の形は、オールインワン型(勤怠と給与が一体)、シリーズ連携型(同じベンダーの勤怠と給与を連携)、異なるベンダー間をCSVでつなぐ方式から選べます。たとえばfreee人事労務は、勤怠300円〜・人事労務2,000円〜(最小5名)といった料金で、勤怠から給与まで一気通貫の連携を提供します。
また、給与奉行クラウドのように給与計算側で大きなシェアを持つサービスとの連携可否も、選定の決め手になります。連携費用は隠れコストになりがちで、給与計算連携の構築に10万〜50万円かかる場合があるため、機能の有無だけでなく連携にかかる費用まで含めて評価することが大切です。
退職者データ保存と勤怠データ活用の機能
勤怠データには法定の保存義務があり、退職者の記録も一定期間残す必要があります。ここで問題になるのが、SaaSの多くが退職者アカウントを残すと課金が続く点です。一方で、自社開発であれば、退職者データを課金とは切り離して自社のデータベースに保存でき、無料系サービスのように保存期間が数か月〜1年で切れる心配もありません。
退職者データの保存方法は、機能要件として最初に確認すべき項目の一つです。さらに進んだ活用として、蓄積した勤怠データを人的資本経営に役立てる機能もあります。それは、打刻データから残業の偏りやコンディションの変化を読み取り、離職リスクの兆候を検知したり、ハイパフォーマーの働き方を分析したりする「攻めのDX」です。
多くの市販システムはこの領域が手薄ですが、自社のデータを自由に分析できる仕組みを持てば、勤怠を守りのコストから攻めの経営資源へ転換できます。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託の立場から、給与連携や退職者データ保存はもちろん、自社のデータ活用まで見据えた機能設計を支援します。機能は「いま使うもの」だけでなく「将来データをどう活かすか」まで含めて選ぶことが大切です。
シフト管理・複雑雇用に対応する拡張機能
基本機能に加えて、業種や雇用形態によっては、シフト管理や複雑な雇用要件への対応といった拡張機能が必要になります。店舗・施設・派遣業などでは、これが「ないと運用できない」必須機能になることがあります。そのため、自社の業態に応じて、どこまでの拡張機能が必要かを見極めることが大切です。
シフト作成と勤怠を連動させる機能
シフト勤務が中心の小売・飲食・介護・医療などでは、シフト管理機能が勤怠と一体になっていることが大きな価値を持ちます。希望シフトの収集から、必要人数を満たすシフトの作成、実際の打刻とのずれの把握までを一つのシステムで扱えれば、Excelでシフト表を作って勤怠と突き合わせる二重作業がなくなります。予定と実績の差が見えれば、人員配置の見直しにもつながります。
シフトと勤怠の連動で重要なのは、シフト上の予定時間と実際の打刻時間のずれを自動で検知し、早退・遅刻・予定外残業として正しく集計に反映できることです。加えて、シフト勤務では変形労働時間制を採用することも多く、シフトの組み方が残業の計算に直結します。自社のシフトルールが複雑な場合は、市販システムの標準機能で足りるか、自社開発で作り込むかを、シフトの実態に照らして判断する必要があります。
多言語・複数法人に対応する機能
拡張機能は、自社の業種と雇用形態を起点に「必須か否か」を切り分けて選びます。たとえば外国人スタッフの多い現場では、打刻画面や申請画面の多言語対応が必須の機能になります。日本語が読めないスタッフに正しく打刻してもらうには、母国語で操作できる画面が欠かせません。
市販システムには、KING OF TIMEのように多言語対応をうたうものがあります。多言語対応の有無は、外国人雇用が前提の企業にとって選定の決定的な要素です。
- 対応言語の範囲:どの言語に対応しているかを、事前に確認します。
- 翻訳の精度:導入前に確認が必要です。
- 複数法人の労働時間:兼務従業員の労働時間を合算して上限を判定する機能は、市販では「要確認」となりがちです。
複数法人をグループで運営する企業では、法人ごとに就業ルールを切り替えつつ、グループ全体を横断して管理できる機能が求められます。こうした部分は、自社開発で組織構造に合わせて設計する余地が大きい領域です。riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託の立場から、シフト連動・多言語・複数法人といった拡張機能を、自社の業態に合わせて作り込む設計を支援しています。
まとめ
勤怠管理システムの役割は、多様な打刻で正確にデータを取り、就業ルールに沿って自動で集計し、法令違反をアラートで防ぎ、給与計算へ連携して退職後まで保存する一連の流れにまとめられます。
機能評価で見たいのは、まず打刻方法を働き方別に選び、不正防止と打刻のしやすさのバランスを取れているかです。次に、自動集計が変形労働・フレックス・独自丸め処理を正確に再現できるかを確かめます。さらに、36協定アラートと法改正対応で守りを固められるか、給与連携と退職者データ保存で運用と法令遵守を両立できるかも問われます。
機能を比較するときに大切なのは、機能名の多さではなく「自社の就業ルールをどこまで正確に再現できるか」という視点です。
標準機能で足りる部分はSaaSを活かします。一方で、自社固有の就業ルール、退職者データ保存、データ活用といった作り込みが必要な部分は、自社開発を検討します。こうしたハイブリッドな見極めが現実的です。
riplaはフルスクラッチ・ノーコード受託と国内開発を組み合わせ、就業規則から逆算した機能設計を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
