化粧品/日用品業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

化粧品・日用品業界のシステム開発は、まずMUST要件とデータの正を決め、商品・在庫・受注・出荷の土台を整えることから始まります。

そのうえで機能を段階的に導入し、業務と顧客体験を支えます。まず企画・要件定義から設計・開発へ進みます。その後、テスト・教育・段階リリースへ移ると、手戻りを減らせます。

化粧品・日用品業界のシステムの全体像

商品情報を中心に、受注・在庫・出荷や顧客・会計・販促、POS・EC、定期通販・OMOがつながる図
商品情報を共有すると、販売から出荷までの仕組みを結びつけて考えられます。

業界向けのシステムは、ECサイトやPOSのように単独で使う仕組みを束ねた全体を指します。商品情報を起点に、受注・在庫・出荷のデータと、顧客・会計・販促のデータをつなぎます。各現場が同じ情報を見られるようにすることが、全体設計の目的です。

膨大なSKUと商品マスタの管理

商品マスタは、商品名・JANコード・SKUを軸に、規格・単価・原価・ブランド・カテゴリも持たせます。こうした情報がそろうことで、在庫分析と発注判断の精度が上がります。

  • 化粧品:シリーズ・容量・色・香り・セット・限定版の区別
  • 日用品:詰め替え・ケース販売・販促セット・店舗専用品の管理
  • 販売・保管情報:販促対象・販売チャネル・保管条件の記録

販売単位と物流単位が一致しない商品もあるため、粒度を分けて持つ必要があります。

WMS・OMO・CRM・会計の連携

商品・在庫・受注を管理する基幹部分に、POSやECなど各システムをつなぐ形が基本です。

  • 基本連携:POS・EC・OMS・WMS・CRM・会計の接続
  • 定期通販:配送日変更・スキップ・商品変更・解約・同梱物の管理
  • OMO:共通在庫に加えて、店舗受取・取り寄せ・接客後のEC購入の設計

OMOでは、実店舗とECの購買履歴や会員ランクを統合する点が設計の要になります。

化粧品・日用品業界のシステム開発の進め方

MUSTとWANTの切り分け、在庫の正と例外処理の決定、テスト・教育・段階リリースへ進む流れ図
各段階で決める内容を先にそろえると、次の工程へつなげやすくなります。

開発に入る前に、業務上の判断とデータの流れを洗い出しておきます。

商品登録から表示審査・ロット入荷・店舗配分・EC出荷・返品まで、一連のシナリオにして通しで確認します。

企画・要件定義でのMUSTとWANTの切り分け

現状の業務フローや事業規模を把握したうえで、販売継続に欠かせないMUSTと、将来の成長に向けたWANTを分けます。

切り分けの材料は、業務の範囲と販売状況に分けて整理します。

  • 業務の洗い出し:業務フロー、商品・SKU・店舗・倉庫数
  • 販売状況:EC比率、定期購入比率、利用中のPOSや会計ソフト
  • MUST:商品・在庫・受注・出荷・顧客の一貫性・ロット追跡・期限管理・基本会計連携
  • WANT:AI肌診断・AR・詳細なパーソナライズ・ライブコマースの高度分析

全機能を初期要件に含めると稟議額が膨らみ、要件も固まりにくくなります。そのため、WANTは段階導入の後半に回すのが現実的です。

設計・開発でのデータ連携と例外処理の決定

まず、各システムがどのデータを正とするかを決めます。そのうえで、反映タイミングも含めて文書に明記します。

  • 在庫の正:WMSとPOSのどちらを基準にするかの決定
  • 反映速度:ECへ在庫情報を何分以内に反映するかの取り決め
  • 例外処理:返品・キャンセル・欠品・重複顧客・ロット切替の扱い

セット商品の一部欠品のような業務上の例外は、先に決めておくと現場の手戻りを減らせます。

OMSとWMSを連携して受注から出荷指示を自動化する場合は、出荷保留や同梱物の条件もテストデータに含めます。

テスト・教育・段階リリースによる定着

テストは、画面が動くかだけでなく、実際の注文を最後まで処理できるかで評価します。

  • 通常・繁忙時:通常日、セール日、ライブ配信後の注文集中
  • 注文条件:店舗受取、定期購入のスキップ、期限が近いロット
  • 商品変更:成分変更後の商品切替のシナリオ

店舗スタッフには、EC注文を自分の売上にするかどうかや、接客起点の購入を評価に反映する方法を説明します。また、インセンティブのルールは、運用を始める前に合意しておきます。

まず商品・在庫・出荷を安定させ、次にCRMや高度な販促を加える段階導入が現実的です。

ポイント

迷ったときは、販売継続に欠かせないMUSTと、各システムのデータの正を先に決めてから次の段階へ進みます。段階ごとの例外処理やテストも、この順で確かめます。

薬機法に配慮した商品マスタ・ロット管理の設計

化粧品のシステム開発では、商品マスタを販売用のデータとしてだけ扱うと、表示や品質の記録を後から追えなくなります。そのため、法務や品質保証、商品企画、物流の担当者を要件定義に加えます。

商品マスタには、法令上の表示に必要な情報も持たせる必要があります。たとえば、薬機法では、化粧品の容器などに製造販売業者、名称、製造番号または製造記号の記載が求められます。

指定成分や指定品目については、使用期限の管理も対象になります(出典: 厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)。

成分変更とロット履歴の切り分け

成分変更や容器変更の際は、同じ商品コードのまま上書きしません。

変更の時期と内容は、次のとおり残します。

  • 変更履歴:適用開始日・旧版と新版・対象ロット・承認者の記録
  • 表示履歴:商品表示データの変更記録
  • 出荷記録:出荷時点のロットの記録と、対象注文の検索

販売ページの表示と倉庫の現物が一致しない場合に備え、問い合わせや回収の際にどの注文がどのロットかをたどれることが必要です。

商品マスタの変更権限は限定し、公開前に承認を通す流れも作ります。そうすると、誤表示のまま販売するリスクを下げられます。

広告・商品ページの表現確認

2025年3月の厚生労働省通知では、特定成分を表示する場合、配合目的の併記が必要とされています。さらに、効能や安全性について誤認を生じさせないことも求められています(出典: 厚生労働省「化粧品における特定成分の特記表示について」2025年)。

  • 登録項目:成分名に加えて、配合目的と使用可能な表現
  • 確認記録:確認者・確認日・掲載媒体

成分表示だけでなく、確認状況も商品マスタで管理します。

ECページや広告素材に出す文言は、この記録をもとに追えるようにします。

ポイント

迷ったときは、表示に必要な情報を商品マスタに持たせ、変更の履歴と出荷ロットをたどれる状態を先に作ります。広告文言の確認記録も、同じ考え方で扱います。

D2C・定期通販・OMOを支えるシステムの作り方

ECを広げるときは、販売チャネルの追加に加えて、顧客体験の設計が欠かせません。化粧品・日用品企業では、購入後の継続利用や店舗での接客まで含めて、顧客体験を組み立てます。

経済産業省の令和5年度調査では、日本のBtoC-EC市場規模は24.8兆円、EC化率は9.38%でした(出典:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」2024年)。

定期通販でのLTVと解約率の業務組み込み

定期購入システムには、受注を繰り返す機能に加えて、顧客自身が変更手続きを行える機能が必要です。

  • マイページ:次回配送日の変更・商品変更・スキップ・解約
  • 顧客情報:購入回数・肌悩み・購入間隔・問い合わせ履歴のCRMへの受け渡し
  • 同梱物:顧客層に応じたサンプル・チラシ・お礼状の指定

適切な時期に使い方や関連商品を案内することで、LTVの向上とチャーンレートの低減を目指します。

また、顧客セグメントに応じた指定を自動化すると、物流現場の作業指示ミスを減らせます。

店舗スタッフの接客とEC売上の連携

OMOでは、店舗で相談した顧客が後日ECで購入するケースがあります。この売上を店舗の売上から切り離すと、スタッフがEC送客に協力しにくくなります。

  • 接客記録:スタッフIDと店舗IDの記録
  • 売上集計:一定期間内のEC購入を、接客起点で集計
  • 評価条件:集計方法・対象期間・返品時の扱い

集計した売上をもとに、現場の活動を評価できます。

評価ルールはシステム要件だけでなく人事制度にも関わるため、店舗責任者と事前に合意しておきます。

AI肌診断とライブコマースの段階的な連携

AI診断データの扱いとライブ配信時の負荷について、次を決めます。

  • データ管理:取得内容・利用目的・削除時期の明確化
  • 利用統制:本人同意・権限・外部送信範囲の設計
  • 負荷対策:注文時の在庫引当と、処理の平準化

診断結果は、そのまま顧客属性として蓄積しないようにします。

また、ライブコマースでは、短時間に注文が集中する場面に備えて在庫引当を設計します。最初は限定SKUで負荷試験を行い、全商品へ広げる進め方が安全です。

ポイント

迷ったときは、定期購入の顧客情報とCRMへの受け渡しを先に決め、店舗の接客記録とEC売上を結びつけて扱います。AI連携は、利用条件と在庫引当が安定してから段階的に加えます。

化粧品・日用品業界のシステム開発費用相場

化粧品・日用品向けの開発費は、連携するチャネル、SKU数、店舗数によって大きく変わります。また、ロット管理の厳密さや定期通販の有無でも変わります。

  • 小規模:商品・在庫・受注管理の目安は300万〜700万円
  • 中規模:POS、会員管理、基本EC連携の目安は700万〜1,800万円
  • 大規模:多店舗、高度な会員販促、EC統合の目安は1,800万〜4,000万円以上

実際の金額は、要件・既存システム・移行データ量・運用支援の範囲によっても変わります。

機能・連携・データ移行による初期費用の違い

見積もりでは、開発から導入までに必要な作業の範囲を確認します。

  • 開発作業:要件定義・画面設計・バックエンド開発・外部API連携・テストを含む範囲
  • 導入作業:データ移行・マニュアル作成・利用者教育
  • 追加要件:テスターやサンプルを別管理する場合の原価区分と会計連携

ECとWMSの連携では、在庫・受注・出荷・返品・キャンセル・同梱物のデータも確認します。

ランニングコストと契約形態の比較

初期費用だけでなく、毎月かかる費用も含めて見ると、契約形態による違いが分かります。月額費に加え、変更や保守の対応費がどこで発生するかを並べて見ます。

  • 月額費:毎月発生する、クラウド利用料・ユーザー数や注文数に応じた従量料金・保守・セキュリティ・監視・外部サービス料
  • スクラッチ:OS・ミドルウェア・API仕様変更への対応費
  • 請負契約:仕様を固めるため、変更費用が出やすい点
  • 準委任契約:柔軟な反面、発注側の判断と優先順位付けが必要な点

リサーチ上の目安では、同じ開発内容でも請負は準委任より1.3〜1.5倍程度になる場合があります。そのため、契約条件と費用内訳を一緒に確認することが大切です。

ポイント

迷ったときは、見積もりを合計額だけで比べず、機能・連携・データ移行と契約形態ごとの内訳を並べて見ます。実際の金額は要件や既存システムで変わるため、同じ条件で複数社に依頼します。

見積もりを取る際のポイント

見積もり比較の確認項目として、業務シナリオとデータ項目、機能・体制・運用、失敗リスクと責任分界を並べた図
3つの観点をそろえると、価格差の背景を読み取りやすくなります。

見積もりは合計額だけでなく、標準機能と追加開発の境界まで確認します。

業界を理解している会社は、SKU・ロット・同梱物・店舗在庫・定期購入についても質問します。

RFPの業務シナリオとデータ項目

RFPには会社概要に加えて、商品登録から出荷までの業務シナリオを記載します。そのうえで、事業規模や販売・システムの状況、必須要件を次のとおり整理します。

  • 事業規模:商品・SKU、店舗・倉庫、月間と繁忙期の受注数
  • 販売・システム:定期購入比率、EC・POS・会計の製品名、移行データ件数
  • 必須要件:ロット・期限・成分変更・テスター・サンプル・同梱物
  • 店舗要件:店舗受取とスタッフ評価

業務シナリオとデータ項目をそろえておくと、各社が同じ条件で見積もれます。前提がそろえば、価格差の理由も比べやすくなります。

複数社の提案の機能・体制・運用による比較

提案は、機能や導入期間だけでなく、データ移行の責任範囲とテスト計画まで比べます。導入後の保守体制も、あわせて見ます。

  • 提案内容:機能・連携方式・導入期間・移行責任・テスト計画
  • 導入後:保守体制と、提案から開発への要件引継ぎ
  • デモ:色違いSKU・期限間近のロット・セット一部欠品の実演
  • 運用デモ:定期便のスキップと、接客後のEC購入の試行

安価な提案でも、後からの追加費用と社内作業を加えると、総額が逆転することがあります。

失敗リスクと責任分界の契約前確認

よくある失敗は、現場へのヒアリングをせず、経営層の要望だけで開発を始めることです。ほかにも、商品コードを統一しないまま連携したり、負荷試験なしにキャンペーンを実施したりすると、失敗につながります。

  • 社内体制:業務・データ責任者と店舗・物流代表の配置、決裁者一人の決定
  • 責任分界:障害復旧・データ不整合・法令確認・外部サービス停止の取り決め
  • 費用負担:追加要件の負担を、契約書と運用設計書に記載

ポイント

迷ったときは、合計額の前に、標準機能と追加開発の境界と、提案の前提がそろっているかを見ます。前提がそろえば、価格差が何から生じるかも見分けられます。

よくある質問(FAQ)

化粧品・日用品業界のシステム開発で相談されやすい質問に答えます。費用だけで判断せず、自社のSKU・チャネル・法規制・物流・顧客体験に照らして検討してください。

化粧品・日用品業界のシステム開発費用はいくらですか?

費用の目安は、小規模300万〜700万円、中規模700万〜1,800万円、大規模1,800万〜4,000万円以上です。ロット管理・定期通販・OMO・AI連携・データ移行によって変わるため、業務シナリオ付きのRFPで複数社に依頼します。

パッケージとフルスクラッチはどちらがよいですか?

標準業務が多く早期導入を目指す場合は、パッケージを基礎に個別部分を拡張します。

独自の販売モデルや、複雑なロット・表示審査、独自のOMO評価が競争力に直結する場合は、部分的なスクラッチを検討します。

全部を独自開発するより、クラウドの標準機能とAPIを使い、差別化の部分へ投資するのが現実的です。

最初にどの機能から開発すればよいですか?

まず商品マスタ・在庫・受注・出荷を整え、店舗とECの販売可能数を一致させます。

次に、定期通販・CRM・同梱物・スタッフ評価など、売上や継続率に関わる機能を加えます。AI肌診断やライブコマースは、同意管理と在庫引当が安定してから限定的に導入し、効果を検証します。

システム開発会社はどのように選べばよいですか?

候補各社は、業務経験・法規制・提案内容・導入体制の4点で見比べます。

  • 業務経験:化粧品・日用品、D2C・定期通販、WMS・POS連携の経験
  • 法規制:薬機法に配慮した商品管理の経験
  • 提案内容:機能一覧に加えて、SKU設計・ロット追跡・同梱物(開発後の認識違いを減らすため)
  • 導入体制:ピーク時の在庫引当と導入後の保守体制

まとめ

販売チャネルに加えて、商品マスタ・ロット・使用期限・在庫を、一つの業務設計として考えます。顧客・物流・会計も、同じ設計の中で扱います。成分変更や表示確認の履歴、出荷ロットの追跡は、品質と事業継続を支えます。

MUST要件とデータの正の決定

2025年に公表されたIPAのDX動向では、データ利活用、レガシー刷新、AI活用などが主要な論点として整理されています(出典: IPA「DX動向2025」)。こうした論点を踏まえ、まずMUST要件とデータの正を決めます。

  • 初期導入:全機能を一度に開発せず、商品・在庫・受注・出荷を先に安定させる
  • 段階導入:定期通販・CRM・OMO・AI連携を、業務成果を測れる順に加える

業務とシステムを一緒に設計できる会社への相談

業務要件に合う支援を相談するときは、まず自社の条件を具体的に伝えることが出発点です。

  • 見積もりの前提:SKU・店舗・月間受注数・定期購入比率・既存システム・ロット・同梱物・スタッフ評価・将来のAI連携の情報
  • 支援範囲:riplaによるコンサルティングから開発までの一貫支援と、IT事業会社として社内DXを進めてきた経験
  • 導入実績:営業・顧客・生産・販売管理などの基幹システムの構築実績をもとにした、業務要件への柔軟な対応

参考にした公的情報は、厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、厚生労働省「化粧品における特定成分の特記表示について」です。そのほかに参照した公的情報は、経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」、IPA「DX動向2025」です。

制度やサービス仕様は更新されるため、導入時点の最新情報を確認してください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。