医療系アプリの必要機能や標準機能の一覧について

医療系アプリの開発を検討するとき、院長や事務長、開発を担当するヘルステック企業の方がまず整理したいのは「自分たちのアプリに、どんな機能を、どの優先順位で載せるべきか」という機能の全体像ではないでしょうか。オンライン診療、予約、電子問診、HealthKit連携など、医療系アプリの機能は多岐にわたりますが、それぞれの機能の裏には薬機法やプログラム医療機器(SaMD)該当性、App Storeの医療審査、電子カルテ・レセコン連携といった、医療領域固有の制約が必ず存在します。機能を「できること」だけで考えると、後から規制や連携の壁にぶつかり、開発が頓挫しかねません。

本記事は、医療系アプリの必要機能・標準機能を一覧で整理しつつ、それぞれの機能の裏にある業界規制と既存システム連携の要件を併記する「機能特化」の解説です。患者向けの予約・オンライン診療・電子問診から、医療従事者向けの情報共有、HealthKit連携、生体認証による本人確認まで、機能ごとに「実装すると何が法的に求められるか」を具体的に示します。読み終えるころには、自社のアプリに載せる機能と、その機能が呼び込む規制・連携の要件をセットで把握できるはずです。なお、医療系アプリ開発の全体像をまだ把握していない方は、まず医療系アプリ開発の完全ガイドから読むことをおすすめします。

患者向けの必須機能とその規制要件

医療系アプリの患者向け必須機能のイメージ

医療系アプリの中核は、患者が直接触れる機能です。予約、オンライン診療、電子問診、服薬管理といった機能は、患者の利便性を高めると同時に、医療機関の業務効率化にも直結します。ただし、これらの機能はいずれも医療行為や機微情報に関わるため、実装にあたっては固有の規制要件を満たす必要があります。

予約・電子問診機能と電子カルテ連携の要件

予約と電子問診は、医療系アプリでもっとも導入効果が見えやすい機能です。患者がスマートフォンから予約を取り、来院前に症状や既往歴を入力しておけば、受付の混雑が緩和され、医師は診察前に必要な情報を整理した状態で受け取れます。生成AI問診の「ユビー」が全国100病院超に広がっている事実は、この領域の実用性を裏づけています。ただし、予約・問診機能の価値は単体では完結しません。入力された問診情報が電子カルテに連携されて初めて、スタッフの二重入力が消え、現場の負担が本当に減ります。

ここで注意すべきは、電子カルテ連携が機能ごとに個別の作り込みを要する点です。電子カルテはベンダーごとに仕様が異なり、連携のたびに固有の開発が発生するため、電子カルテ・レセコン連携の費用は100〜300万円が目安になります。予約・問診機能を企画する段階で、自院の電子カルテと連携可能かを確認しておかないと、せっかくの機能が孤立して二重入力を生むことになります。機能と連携要件をセットで定義することが、医療系アプリ設計の出発点です。導入事例の具体例は、関連記事『医療系アプリの導入/開発事例や活用/成功事例について』もあわせてご覧ください。

オンライン診療・服薬管理機能と医療行為の境界

オンライン診療機能は、ビデオ通話による診察、処方箋の発行、決済までを含む複合的な機能です。患者の利便性は高い一方、医療行為そのものを扱うため、対面診療と同等の本人確認や、通信が途切れた際の処理など、安全管理上の要件が厳格になります。大規模なオンライン診療システムでは、ランニングコストが月50万円以上に達することもあり、機能の充実度と運用コストのバランスを見極める必要があります。服薬管理機能も、単なるリマインドにとどめるか、服薬状況のデータを医師に共有するかで、扱うデータの機微性と規制対応の重さが変わります。

ここで決定的に重要なのが、機能が「医療行為の補助」にとどまるのか「診断的判断」に踏み込むのかという境界です。服薬管理アプリが服用記録を整理するだけならプログラム医療機器には該当しませんが、データから「飲み合わせに危険がある」といった判断を提示し始めると、SaMD該当性が問われます。SaMDは実質的にクラスII以上が対象とされ、クラスI相当は対象外です。機能を設計する段階で、この境界をどこに引くかを決めておかないと、リリース直前に薬機法の壁にぶつかります。機能とSaMD該当性は、必ずセットで検討してください。

医療従事者向け機能と情報共有の設計

医療従事者向け機能と情報共有のイメージ

患者向け機能と並んで重要なのが、医療従事者が使う機能です。医師・看護師・医療事務スタッフの間で情報を共有し、業務を自動化する機能は、慢性的な人手不足に対する直接的な解決策になります。ただし、扱う情報が患者の診療情報である以上、アクセス権限やログ管理といった基盤要件が一段と重くなります。

スタッフ間の情報共有機能と権限・ログ管理

医療従事者向けの情報共有機能では、患者の状態やケア記録をチームで共有することで、引き継ぎ漏れや確認の手戻りを減らせます。しかし、診療情報は最も機微な個人情報であるため、誰がどの情報にアクセスできるかという権限設計と、いつ誰がどの情報を閲覧・変更したかを記録するアクセスログの保存が必須になります。これは利便性のためではなく、安全管理ガイドラインや個人情報保護法を満たすための基盤要件です。情報共有機能を「便利なチャット」程度に捉えて設計すると、後から監査要件を満たせず、作り直しが発生します。

権限・ログ管理を機能の前提として組み込むことは、開発コストにも影響します。役割ごとのアクセス制御、操作ログの長期保存、不正アクセスの検知といった仕組みは、目に見える機能の裏で相応の工数を要します。だからこそ、情報共有機能を企画する段階で「どの職種が、どの患者の、どの情報に、どの操作でアクセスできるか」を要件として詳細に定義しておくことが重要です。この定義が曖昧なまま開発に進むと、リリース後にセキュリティ監査で指摘を受け、改修費用がかさみます。機能の便利さと監査要件を両立させる設計が、医療従事者向け機能の肝になります。

会計・事務の自動化機能とレセコン連携

医療従事者の負担を直接減らすのが、会計・事務の自動化機能です。自動精算機「NOMOCaシリーズ」が全国2,430台に導入され、レセコン連携率96.6%を達成している事実は、この領域の効果の大きさを示しています。RPA「BizRobo!」が大学病院で病床数×10時間(年)の業務削減を実現しているように、診療報酬の請求準備や帳票作成といった定型業務を自動化する機能は、限られた人員で診療体制を維持するための現実的な手段です。

会計・事務の自動化機能で決定的に重要なのが、レセコンとの連携です。診療報酬の計算結果が精算機やアプリに正しく流れて初めて、スタッフの二重入力が消えます。連携が中途半端だと、自動化したはずの業務でかえって確認作業が増え、効果が相殺されます。会計自動化の機能を載せるなら、自院のレセコンと連携可能かを最優先で確認し、連携を機能要件の中心に据えることが欠かせません。機能の追加と連携の確認は、常に一体で進める必要があります。医療系アプリの要件定義の進め方については、関連記事『医療系アプリのRFP/要件定義書/提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

基盤機能(連携・本人確認・データ保護)

医療系アプリの基盤機能のイメージ

患者向け・医療従事者向けの機能を支えるのが、目立たないものの不可欠な基盤機能です。HealthKitなどヘルスデータとの連携、生体認証による本人確認、機微情報のデータ保護といった機能は、医療系アプリの信頼性そのものを左右します。これらは規制との結びつきが最も強く、設計を誤るとApp Store審査の却下や法令違反に直結します。

HealthKit連携機能とApp Store審査の要件

スマートフォンに蓄積された歩数、心拍数、睡眠などのヘルスデータと連携する機能を載せる場合、AppleのHealthKitを利用することになります。HealthKitは、データの読み取りと書き込みで個別に権限を取得する必要があり、取得したデータを広告ターゲティングに利用することはガイドライン5.1.3で明確に禁止されています。この制約を知らずにHealthKit連携機能を実装すると、App Storeの審査で却下され、リリースが大幅に遅れます。医療系アプリは、機能を作る前に「審査でどこを見られるか」を逆算する必要があるという点で、一般的なアプリと根本的に異なります。

収益化の観点では、App Storeの手数料が原則30%(小規模事業者やサブスクリプションの2年目以降は15%)である点も、機能設計と無関係ではありません。アプリ内課金やサブスクリプションで収益を得る機能を載せるなら、この手数料を前提に価格や課金導線を設計する必要があります。HealthKit連携や課金といった基盤機能は、機能としての作り込みだけでなく、プラットフォームのルールを満たす設計が求められるため、企画段階での審査要件の織り込みが欠かせません。

生体認証・データ保護機能と改正個人情報保護法

医療系アプリの本人確認には、顔認証や指紋認証といった生体認証機能が用いられることがあります。利便性は高い一方、2026年改正個人情報保護法では、顔認証や歩容解析などの「特定生体個人情報」について、オプトアウトによる第三者提供が全面的に禁止されます。生体認証機能を載せるなら、取得した生体情報をどこに保存し、どう同意を取得し、第三者に渡さないことをどう担保するかを、機能の設計に組み込まなければなりません。便利な認証機能のつもりが、運用次第で法令違反のリスクを抱えることになります。

同じ改正では、16歳未満の保護も厳格化され、法定代理人の同意取得や子どもの最善の利益を優先する原則が導入されます。小児を対象とする医療系アプリでは、保護者同意を取得するUIを機能として組み込む必要があります。データ保護機能は、暗号化やアクセス制御といった技術的な仕組みだけでなく、こうした同意取得のフローまで含めて設計することが求められます。基盤機能は地味ですが、ここを規制と一体で作り込めるかどうかが、医療系アプリが安全にリリースできるかを決める分かれ目になります。

まとめ

医療系アプリの機能まとめイメージ

医療系アプリの必要機能・標準機能を整理すると、患者向け(予約・オンライン診療・電子問診・服薬管理)、医療従事者向け(情報共有・会計自動化)、基盤(HealthKit連携・本人確認・データ保護)の三層に分けられます。そして、どの機能も実装すると固有の規制・連携要件を呼び込みます。診断的判断に踏み込めばSaMD該当性が、HealthKit連携にはApp Store審査が、生体認証には改正個人情報保護法が、会計自動化にはレセコン連携(100〜300万円目安)が、それぞれ条件として付いてきます。機能を「できること」だけで考えず、規制と連携を併記して定義することが、医療系アプリ設計の核心です。

機能は数を揃えることが目的ではありません。MVPの発想で効果の大きい機能から段階的に実装し、ノーコードや補助金(最大450万円)でコストを抑えながら、規制対応の重い機能へ拡張していく進め方が、限られた予算で形にする現実的な道筋です。自社のアプリに載せる機能の横に「呼び込む規制・連携」を書き添えることから始めてください。riplaはフルスクラッチ受託とノーコードを組み合わせ、機能と規制・連携要件を一体で設計する支援を行います。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。