医療系アプリの必要機能や標準機能の一覧について

医療系アプリの必要機能・標準機能は、患者向け、医療従事者向け、基盤の三層に分けられます。どの機能にも、薬機法などの業界規制と、電子カルテ・レセコンなど既存システムとの連携の要件が伴います。

各節では、機能ごとの規制と連携の要件も併せて示します。全体像は医療系アプリ開発の完全ガイドをご覧ください。

患者向けの必須機能と規制要件

患者向けの必須機能として、予約、オンライン診療、電子問診、服薬管理を並べた図解
機能の選定とあわせて、医療行為や連携の要件も確認します。

医療系アプリの中核は、患者が直接触れる機能です。予約、オンライン診療、電子問診、服薬管理といった機能は、患者の利便性を高めると同時に、医療機関の業務効率化にも直結します。

ただし、これらの機能はいずれも医療行為や機微情報に関わります。そのため、実装にあたっては固有の規制要件を満たす必要があります。

予約・電子問診機能と電子カルテ連携の要件

予約・電子問診では、患者情報を診療の現場へ正しくつなぐ設計が欠かせません。

  • 来院前の情報整理:予約と電子問診で、症状や既往歴を事前に集める
  • 電子カルテへの連携:問診情報を渡し、二重入力を避ける
  • 連携費用の目安:電子カルテ・レセコン連携で100〜300万円

予約と電子問診は、医療系アプリのなかでもっとも導入効果が見えやすい機能です。患者がスマートフォンから予約を取り、来院前に症状や既往歴を入力しておくと、受付の混雑が緩和され、医師は診察前に必要な情報を整理した状態で受け取れます。

生成AI問診の「ユビー」が全国100病院超に広がっている事実は、この領域の実用性を裏づけています。ただし、予約・問診機能の価値は単体では完結しません。問診情報が電子カルテに連携されて初めて、スタッフの二重入力がなくなり、現場の負担が本当に減ります。

注意したいのは、電子カルテとの連携が機能ごとの個別の作り込みになる点です。電子カルテはベンダーごとに仕様が異なり、連携のたびに固有の開発が発生するためです。

予約・問診機能を企画する段階で、自院の電子カルテと連携できるかを確認しておかないと、せっかくの機能が孤立し、二重入力を生むことになります。機能と連携要件をセットで定義することが、医療系アプリ設計の出発点です。導入事例の具体例は、関連記事『医療系アプリの導入/開発事例や活用/成功事例について』もあわせてご覧ください。

オンライン診療・服薬管理機能と医療行為の境界

オンライン診療と服薬管理では、安全性の要件と、医療行為との境界を先に確かめておく必要があります。

  • 本人確認と通信断時の対応:安全管理上、設計段階で決めておく要件
  • 服薬データの扱い:リマインドにとどめるか、医師と共有するか
  • SaMD該当性:診断的判断に踏み込む機能かどうか

オンライン診療機能は、ビデオ通話による診察、処方箋の発行、決済までを含む複合的な機能です。

患者の利便性は高い一方で、医療行為そのものを扱います。そのため、安全管理上の要件が厳格になり、本人確認は対面診療と同等の水準が求められます。

大規模なオンライン診療システムでは、ランニングコストが月50万円以上に達することもあります。そのため、機能の充実度と運用コストのバランスを見極める必要があります。

服薬管理機能は、単なるリマインドにとどめるか、服薬状況のデータを医師に共有するかで、扱うデータの機微性と規制対応の重さが変わります。

ここで決め手になるのは、機能が「医療行為の補助」にとどまるか、「診断的判断」に踏み込むかという境界です。

服用記録を整理するだけなら、服薬管理アプリはプログラム医療機器に該当しません。一方で、データから「飲み合わせに危険がある」と判断を示すと、SaMD該当性が問われます。

SaMDは実質的にクラスII以上が対象とされ、クラスI相当は対象外です。機能を設計する段階で、この境界をどこに引くかを決めておかないと、リリース直前に薬機法の壁にぶつかります。

機能の設計とSaMD該当性は、必ずセットで検討してください。

ポイント

予約・問診では電子カルテ連携の要否を、オンライン診療や服薬管理では診断的判断に踏み込むかどうかを、企画段階で決めておくのが判断の目安になります。

医療従事者向け機能と情報共有の設計

情報共有機能の設計要件として、職種ごとの権限、アクセスログ、操作ログの長期保存、不正アクセスの検知を示す図解
アクセス範囲と記録方法を先にそろえる構成です。

患者向け機能と並んで、医療従事者が使う機能も欠かせません。医師・看護師・医療事務スタッフの間で情報を共有し、業務を自動化する機能は、慢性的な人手不足への直接的な解決策になります。

扱う情報が患者の診療情報である以上、アクセス権限やログ管理といった基盤要件は一段と重くなります。

スタッフ間の情報共有機能と権限・ログ管理

情報共有機能では、権限と記録の要件を先に定義しておく必要があります。

  • 職種ごとの権限:患者情報を閲覧・変更できる範囲
  • アクセスログ:誰がいつ閲覧・変更したかを残す
  • 安全管理と個人情報保護:ガイドラインと法令を満たす要件

情報共有機能では、患者の状態やケア記録をチームで共有できます。その結果、引き継ぎ漏れや確認の手戻りを減らせます。

診療情報は機微な個人情報です。そのため、誰がどの情報にアクセスできるかの権限を設計しておく必要があります。

ログの記録は、利便性のためではなく、安全管理ガイドラインや個人情報保護法を満たすための基盤要件です。情報共有機能を「便利なチャット」程度に捉えて設計すると、後から監査要件を満たせず、作り直しが発生します。

権限・ログ管理を機能の前提に組み込むことは、開発コストにも影響します。役割ごとのアクセス制御、操作ログの長期保存、不正アクセスの検知といった仕組みは、目に見える機能の裏で相応の工数を要します。

だからこそ、情報共有機能を企画する段階で、「どの職種が、どの患者の、どの情報に、どの操作でアクセスできるか」を要件として詳しく定めておく必要があります。

この定義が曖昧なまま開発に進むと、リリース後のセキュリティ監査で指摘を受け、改修費用がかさみます。便利さと監査要件を両立させる設計が、医療従事者向け機能の要になります。

会計・事務の自動化機能とレセコン連携

会計・事務の自動化では、まず現行のレセコンと連携できるかを確かめます。

  • NOMOCaシリーズの導入実績:レセコン連携まで含めた実績かどうか
  • 業務の自動化:RPA「BizRobo!」による、請求準備や帳票作成の自動化
  • レセコンとの連携可否:自院のレセコンで連携できるかを事前に確認する

会計・事務の自動化機能は、医療従事者の負担を直接減らす機能です。

自動精算機「NOMOCaシリーズ」は全国2,430台に導入され、レセコン連携率96.6%を達成しています。

RPA「BizRobo!」は、大学病院で病床数×10時間(年)の業務削減を実現しました。診療報酬の請求準備や帳票作成を自動化し、限られた人員で診療体制を維持する手段です。

会計・事務の自動化で欠かせないのが、レセコンとの連携です。診療報酬の計算結果が精算機やアプリに正しく流れて初めて、スタッフの二重入力がなくなります。

連携が中途半端だと、自動化したはずの業務でかえって確認作業が増え、効果が相殺されます。

会計自動化の機能を載せるなら、まず自院のレセコンと連携できるかを最優先で確かめ、連携を機能要件の中心に置くことが欠かせません。機能の追加と連携の確認は、常に一体で進める必要があります。

医療系アプリの要件定義の進め方については、関連記事『医療系アプリのRFP/要件定義書/提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

ポイント

医療従事者向け機能は、職種ごとの権限とアクセスログの要件を先に定めてあるか、会計機能なら自院のレセコンと連携できるかが、判断の分かれ目になります。

基盤機能(連携・本人確認・データ保護)

医療系アプリの基盤機能として、ヘルスデータ連携、生体認証による本人確認、機微情報のデータ保護を3層に示す図解
機能の土台には、連携・本人確認・データ保護が並びます。

患者向け・医療従事者向けの機能を支えるのが、目立ちにくいものの欠かせない基盤機能です。

HealthKitなどのヘルスデータとの連携、生体認証による本人確認、機微情報のデータ保護といった機能は、医療系アプリの信頼性そのものを左右します。

こうした機能は規制との結びつきがもっとも強く、設計を誤ると、App Store審査での却下や法令違反に直結します。

HealthKit連携機能とApp Store審査の要件

HealthKit連携では、データ権限とApp Store審査の条件を先に確かめておく必要があります。

  • データ権限:HealthKitの読み取りと書き込みで、それぞれ個別に権限を取得する
  • 広告ターゲティング:取得データの利用は、ガイドライン5.1.3で禁止されている
  • 課金価格の設計:App Store手数料30%を前提に決める

スマートフォンに蓄積された歩数、心拍数、睡眠などのヘルスデータと連携する機能を載せる場合は、AppleのHealthKitを利用することになります。

審査の条件を知らずに実装すると、App Storeの審査で却下され、リリースが大幅に遅れます。

医療系アプリは、機能を作る前に「審査でどこを見られるか」を逆算する必要があります。この点で、一般的なアプリと根本的に異なります。

収益化の面では、App Storeの手数料が原則30%です。ただし、小規模事業者やサブスクリプションの2年目以降は15%になり、この手数料は機能設計にも関わります。

HealthKit連携や課金機能では、作り込みに加えてプラットフォームのルールも満たす必要があります。そのため、企画段階で審査要件を織り込んでおくことが求められます。

生体認証・データ保護機能と改正個人情報保護法

生体認証とデータ保護は、同意の取得と法令の要件を合わせて考える必要があります。

  • 保存先と同意取得:生体情報の保存先と、同意の取り方を機能設計に含める
  • 2026年改正法の第三者提供:特定生体個人情報の提供条件を確かめる
  • 16歳未満の同意:法定代理人による同意取得を設計に含める

医療系アプリの本人確認には、顔認証や指紋認証といった生体認証機能が用いられることがあります。

利便性は高い一方で、2026年改正個人情報保護法では、顔認証や歩容解析などの「特定生体個人情報」について、オプトアウトによる第三者提供が全面的に禁止されます。

便利な認証機能のつもりでも、運用次第では法令違反のリスクを抱えることになります。

同じ改正では、16歳未満の保護も厳格化されます。さらに、法定代理人の同意取得や、子どもの最善の利益を優先する原則が導入されます。

小児を対象とする医療系アプリでは、保護者の同意を取得するUIを、機能として組み込む必要があります。

データ保護機能は、暗号化やアクセス制御といった技術的な仕組みに加えて、同意取得の流れまで含めて設計することが求められます。

規制と一体で作り込めるかどうかが、医療系アプリを安全にリリースできるかを決める分かれ目になります。

ポイント

HealthKit連携ならApp Store審査の条件を、生体認証やデータ保護なら改正個人情報保護法の要件を、企画段階で設計に含められるかが判断の要点です。

まとめ

必要機能は、患者向け、医療従事者向け、基盤の三層で捉えられます。患者向けは予約・オンライン診療・電子問診・服薬管理、医療従事者向けは情報共有・会計自動化、基盤はHealthKit連携・本人確認・データ保護です。

どの機能も、実装すると固有の規制・連携要件を呼び込みます。そのため、機能を「できること」だけで考えず、規制と連携を併記して定義することが、医療系アプリ設計の核心です。

たとえば、診断的判断にはSaMD該当性が、HealthKit連携にはApp Store審査が関わります。また、生体認証には改正個人情報保護法が、会計自動化にはレセコン連携が関わります。なお、電子カルテ・レセコン連携の費用の目安は100〜300万円です。

機能は数を揃えるより、MVPの発想で効果の大きい機能から段階的に実装するほうが適しています。ノーコードや補助金(最大450万円)を使えば、コストを抑えられます。規制対応の重い機能へ後から広げていく進め方が、限られた予算で形にするための現実的な道筋です。

自社のアプリに載せる機能の横に「呼び込む規制・連携」を書き添えることから始めてください。riplaは、フルスクラッチ受託とノーコードを組み合わせ、機能と規制・連携要件を一体で設計する支援を行います。

全体像は、あらためて医療系アプリ開発の完全ガイドで確かめられます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。