医療・介護業界のAIエージェント開発は、診断をAIに任せることではなく、記録・検索・申し送り・見守りなどの定型業務を安全に自動化できる開発会社を選ぶことが成功の近道です。
本記事では、医療/介護業界のAIエージェント開発・構築で検討したい企業を、株式会社riplaを最初に、計6社紹介します。各社の得意領域だけでなく、レガシーな電子カルテとの連携、要配慮個人情報の保護、費用対効果、現場定着まで確認できるように解説します。
医療/介護業界のAIエージェント開発でパートナー選びが重要な理由

医療・介護のAIエージェントは、一般的な社内チャットボットよりも導入設計が複雑です。患者情報や介護記録には要配慮個人情報が含まれ、電子カルテ、ナースコール、介護記録ソフト、画像・音声データなど複数のシステムをまたいで動作させる必要があるためです。
人手不足の解決には「診断」より先に業務自動化が必要です
AIエージェント導入の出発点は、診断結果を自律的に確定させることではなく、職員が時間を取られている業務を減らすことです。退院サマリ、診療情報の検索、介護記録の音声入力、申し送りの整理、問い合わせの一次対応などは、最終確認を職員が行う前提で自動化しやすい領域です。
介護人材について、厚生労働省は2026年度に必要な介護職員数を約240万人と示しています(出典: 厚生労働省「介護人材確保に向けた取組について」)。採用だけで不足を埋めることが難しいからこそ、AIを人員削減の道具ではなく、職員が利用者と向き合う時間を取り戻す道具として設計することが重要です。
発注前に業務範囲・データ・責任者を決めておくことが大切です
相談前に、AIに任せたい業務を「入力」「AIの処理」「人による確認」「記録・通知」の4段階に分けて整理します。たとえば、看護師の音声をテキスト化し、申し送りの下書きを生成し、看護師が修正してから記録システムへ保存する流れです。この業務境界が曖昧なままでは、見積もりも安全性評価もできません。
また、既存システムがAPIを提供しているか、CSV連携しかできないか、手書き記録をOCRする必要があるかを確認します。AIモデルの性能だけでなく、データを取り出せるか、誰が誤出力を確認するか、障害時に手作業へ戻せるかまで提案できる会社を候補に入れることが大切です。
株式会社ripla|コンサルから開発まで一気通貫で支援

riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる企業です。IT事業会社として社内DXを推進してきた経験を活かし、ビジネスへの成果創出とシステムの定着支援に強みがあります。営業・顧客・生産・販売管理など、幅広い基幹システムの構築・導入実績があり、企業の業務要件に合わせて柔軟に対応できる体制を整えています。
特徴と強み
riplaの強みは、AIを導入すること自体ではなく、業務上の成果から逆算してシステムを設計できる点です。医療・介護施設では、記録時間を何分短縮するか、申し送りの抜け漏れをどう減らすか、夜間巡視の負担をどう軽くするかをKPIに設定し、必要なAI機能だけを組み合わせます。
要件整理、業務フロー設計、画面や権限の設計、AI連携、テスト、現場への展開までを一つのチームで進めたい場合に向いています。特に、AIエージェント単体ではなく、既存の業務システムや社内DXと一緒に改善したい企業は相談しやすい候補です。
得意領域・実績
幅広い基幹システムの構築・導入経験を活かし、医療・介護現場の業務要件に応じた個別開発を検討できます。たとえば、職員の音声を記録の下書きへ変換する仕組み、施設内規程やマニュアルを検索するエージェント、問い合わせ内容を分類して担当者へ引き継ぐ仕組みなどです。
個人情報を含むデータをどこへ送るか、AIの出力を誰が承認するか、ログを何年間保存するかといった運用設計も含めて相談したい場合に適しています。最初から大規模な自律化を目指さず、個人情報を含まない議事録や規程検索から始め、効果を確認して段階的に拡張する進め方を取りやすい企業です。
富士通Japan株式会社|医療機関の業務データと生成AIを結び付ける

富士通Japanは、病院向けの基幹システムや医療文章作成支援など、医療機関の業務に近い領域を扱う大手ベンダーです。生成AIを単体で提供するのではなく、電子カルテを含む既存の医療情報システムとの接続や、院内での運用を含めて検討しやすい点が特徴です。
特徴と強み
富士通Japanは、2025年に国立病院機構名古屋医療センターで、生成AIを活用した医療文章作成支援サービスを本格運用しています。退院サマリの作成時間を患者一人あたり7割以上効率化できたと発表しており、AIが作った文章を医師が確認する業務設計が前提になっています(出典: 富士通Japan「生成AIを活用した医療文章作成支援サービス」2025年)。
得意領域・実績
退院サマリや診療文書の作成支援、病床稼働の最適化、電子カルテと周辺システムの連携など、大規模病院の業務改善を進めたい場合に候補になります。既存の富士通製システムを利用している医療機関は、連携方式や保守窓口を含めた提案を受けやすいです。
一方で、施設独自の細かな業務を短期間で試したい場合は、標準サービスで対応できる範囲と個別開発の範囲を確認する必要があります。実証から本番へ移す際の費用、データの保管場所、障害時の代替手段を見積書と契約書に明記してもらうことが大切です。
日本電気株式会社(NEC)|電子カルテと医療文書作成支援を組み合わせる

NECは、医療機関向け電子カルテなどの業務システムと、生成AIを使った文書作成支援を組み合わせて提案できる企業です。医療文書の作成では、必要な情報をカルテから探す作業と、情報を要約して文書へ整える作業が負担になりやすく、ここをAIで支援する考え方が明確です。
特徴と強み
NECの「MegaOak AIメディカルアシスト」は、大規模言語モデルを用いて、医師が負荷を感じやすいカルテ検索と文書要約を支援するクラウドサービスです。MegaOak Cloud Gatewayを介して電子カルテと連動する設計が示されているため、医療現場の導線に沿って導入を検討できます(出典: NEC「MegaOak AIメディカルアシスト」)。
得意領域・実績
電子カルテの検索、退院サマリや診療情報提供書などの文書作成、院内の医療情報活用を優先したい病院に向いています。AIが生成した文章をそのまま確定するのではなく、医師が確認して修正する運用を作りやすい点も医療文書支援との相性がよいです。
導入時は、NEC製以外の電子カルテや部門システムと接続できるか、検索対象の範囲をどのように設定するか、更新前後の原文を追跡できるかを確認します。病院ごとに略語や記録様式が異なるため、PoCでは実際の匿名化データで正答率だけでなく、確認に要する時間も測定すると判断しやすくなります。
株式会社NTTデータ|医療データ基盤とAIガバナンスを含めて支援

NTTデータは、医療・ヘルスケア分野のシステム開発、医療データ連携、生成AI基盤、ガバナンスまでを広く扱う大手ITサービス企業です。AIエージェントを業務の一部へ組み込むだけでなく、複数拠点・複数部門に展開するデータ基盤を整えたい場合に検討しやすい企業です。
特徴と強み
NTTデータは、生成AIの活用とAIガバナンスを両輪で進める方針を公開しています。生成AI人財7万人以上、グローバルの生成AI事例2,000件以上、AI関連特許500件以上という規模を掲げ、業務特化型のAIエージェント開発にも注力しています(出典: NTTデータ「生成AI」)。数字は同社が公開するグローバル実績であり、個別案件の成果を保証するものではない点には注意が必要です。
得意領域・実績
電子カルテ情報やレセプト、治験、地域医療データなど複数の情報源を横断して扱う案件、自治体や大規模医療法人を含む案件で力を発揮しやすいです。閉域環境での生成AI活用を支援するサービスも公開しているため、院外の公開型AIへデータを出したくない組織は相談先の一つになります。
一方で、大規模な構想は要件定義や関係者調整に時間がかかることがあります。まず一つの診療科や一つの施設で、検索・要約・問い合わせ対応など効果を測りやすい業務を選び、全社展開の前にデータ標準化と権限設計を確定させることが成功のポイントです。
日本アイ・ビー・エム株式会社|AIエージェントの統合と業務オーケストレーション

日本IBMは、watsonxを中心に、生成AI、データ基盤、AIエージェント、業務コンサルティングを組み合わせて提案できる企業です。医療組織の優先ワークフローの生産性向上を支援するヘルスケア向けサービスを展開しており、複数のAIアシスタントやエージェントを管理・連携させたい組織に適しています。
特徴と強み
IBM watsonxは、業務向けのAIを構築し、データ、モデル、ガバナンスを管理するための製品群です。watsonx OrchestrateではAIアシスタントやエージェントを作成・展開・管理し、複数の業務プロセスを自動化する方向性が示されています(出典: IBM「watsonx」「ヘルスケア」)。医療データを扱う場合も、モデルの回答精度だけでなく、利用権限や監査ログを含めて評価できます。
得意領域・実績
病院のバックオフィス、問い合わせ対応、職員向けナレッジ検索など、複数の業務エージェントを統合して管理したい場合に向いています。既存のデータ基盤やクラウド方針がIBM中心であれば、セキュリティ・監査・運用の標準化まで含めた構想を作りやすいです。
ただし、製品を導入すれば自動的に業務が変わるわけではありません。職員が使う画面、承認フロー、誤回答時のエスカレーション、エージェントが実行してよい操作の上限を先に定め、段階的に権限を広げることが重要です。
Google Cloud Japan|医療データ検索と生成AI基盤を組み合わせる

Google Cloudは、医療データの検索、FHIR形式のデータ連携、医療向けモデル、生成AIアプリケーションを組み合わせられるクラウドベンダーです。特に、複数の記録や文書を横断して検索し、職員の質問に根拠となる情報を添えて回答するAIエージェントを構築したい場合に候補となります。
特徴と強み
Google Cloudの医療向けVertex AI Searchは、医療記録や文書を検索し、組織内データを根拠として生成AIの回答を作る考え方を採用しています。元の情報源を示すことで、回答を確認しやすくし、ハルシネーションや不正確な回答のリスクを抑える設計が紹介されています(出典: Google Cloud公式ブログ「AIによる医療の変革はすでに進んでいる」)。
得意領域・実績
院内規程やマニュアル、患者記録、検査結果などを一つの検索体験へまとめたいケースに適しています。FHIR R4データを取り込む手順も公開されているため、将来のデータ標準化を見据えてクラウド基盤を整えたい医療法人に向いています。
Google Cloudは基盤サービスを提供するため、実際の導入では医療業務を理解したSIerや開発会社と組むことが一般的です。構築会社を選ぶ際は、モデルの説明だけでなく、データマッピング、アクセス権限、ログ監査、バックアップ、クラウド費用の上限管理まで提案できるかを確認します。
医療/介護業界のAIエージェント開発会社を選ぶポイント

6社は、それぞれ得意な規模や製品、データ基盤が異なります。知名度だけで決めず、自社の業務とデータを安全に本番運用できるかという視点で、提案内容を比較することが重要です。
実績と経験は「類似業務」で確認します
「AI導入実績がある」という表現だけでは不十分です。退院サマリ、介護記録、夜間見守り、患者向け対話など、自社が自動化したい業務と近い事例があるかを確認します。可能であれば、導入前後の作業時間、利用率、修正率、事故・インシデントの扱いまで聞きます。
実績が公開できない場合でも、匿名化した画面例や評価方法、PoCの検証項目は提示できるはずです。医療機関名だけが並び、どの業務をどの範囲で改善したか分からない提案は、費用対効果を判断しにくいです。
技術力はAIモデルより連携・データ整備を見ます
AIエージェントの品質は、LLMの名前だけで決まりません。古い電子カルテからデータを出せるか、手書き記録やPDFをどのように取り込むか、部署ごとの略語をどう辞書化するか、検索結果の根拠を表示できるかが重要です。提案書に、データ連携方式、マスキング、評価用データ、誤回答の検知方法が書かれているかを確認します。
費用は案件差が大きいですが、業務整理と小規模PoCで数百万円、本番向けの個別開発・連携・セキュリティ設計を含めると1,000万円を超える計画もあります。さらに、クラウド利用料、音声認識やOCRの従量課金、監視・保守、モデル評価の更新費用が発生します。金額だけでなく、何が含まれ、何が別料金かを確認することが大切です。
管理体制と契約上の責任分界を確認します
医療事故や誤記録につながる可能性がある業務では、AIの出力を誰が最終承認するかを決めます。診断や治療の判断を補助するプログラムは、目的や機能によってプログラム医療機器に該当し得ます。厚生労働省は、AIを使う診断・治療支援でも診断や治療を行う主体は医師であり、最終判断の責任を医師が負う考え方を示しています(出典: 厚生労働省「AIを用いた診断、治療等の支援を行うプログラム」)。
契約では、AIの誤出力、連携システムの障害、データ漏えい、モデル更新による性能変化の責任を分けます。SLAには稼働率だけでなく、障害通知の時間、復旧目標、ログの保存、再学習やモデル変更の承認、インシデント発生時の報告手順を盛り込みます。ベンダーと医療機関のどちらが何を確認するかが曖昧な提案は避けるべきです。
よくある質問

医療/介護業界でAIエージェントを導入する際に、特に多い質問へ回答します。導入前の不安は、費用、個人情報、AIの責任範囲に分けて整理すると、相談先へ具体的に伝えやすくなります。
医療・介護向けAIエージェントの開発費用はいくらですか?
小規模な業務検証なら数百万円、本番向けに電子カルテや介護記録システムを連携し、権限・監査・保守まで整える場合は1,000万円を超えることがあります。これは市場全体の固定相場ではなく、データ連携数、画面開発、セキュリティ要件、利用人数によって変わる計画上の目安です。
患者情報や介護記録を生成AIへ入力しても安全ですか?
公開型の生成AIへ、施設の許可なく患者情報を入力してはいけません。個人情報保護委員会の医療・介護向けガイダンスを確認し、入力前のマスキング、匿名加工または仮名加工、閉じた環境、アクセス権限、ログ管理、委託先との契約を設計してください。
IT担当者がいない介護施設でも導入できますか?
導入できますが、施設側の責任者を一人決める必要があります。最初は、個人情報を含まない議事録作成、社内規程検索、採用問い合わせの分類など低リスクの業務から始め、「入力してよい情報」「入力してはいけない情報」「困ったときの相談先」をA4一枚にまとめると、現場へ定着しやすくなります。
まとめ

医療/介護業界のAIエージェント開発会社を選ぶときは、AIの性能や会社の知名度だけでなく、業務改善の設計、既存システムとの連携、個人情報保護、Human in the Loop、導入後の教育・保守まで確認することが重要です。
今回紹介した6社では、業務要件に合わせた個別開発を一気通貫で相談したい場合はripla、病院基幹システムとの連携や医療文書支援を重視する場合は富士通Japan・NEC、広域の医療データ基盤やガバナンスまで整えたい場合はNTTデータ、エージェント統合を重視する場合はIBM、クラウド上の医療検索やFHIR連携を進めたい場合はGoogle Cloudが候補になります。
最初から診断や治療の自動化を目指すのではなく、記録・検索・問い合わせなど効果を測りやすい業務で小さく始めてください。削減時間を人件費へ換算し、月額のAI利用料・保守費用を含めたROIを試算しながら、現場の負担軽減とケアの質向上につながるAIエージェントへ段階的に育てることが成功への近道です。
参考にした公式情報: 富士通Japanの名古屋医療センター向け発表、NEC MegaOak AIメディカルアシスト、NTTデータ 生成AI、IBM ヘルスケア、Google Cloud 医療向け生成AI、厚生労働省 介護人材確保に向けた取組、個人情報保護委員会 医療・介護ガイダンスを参照しています。
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
