受発注管理システムのリニューアルのアセスメント/要件定義/RFPについて

受発注管理システムのリニューアルは、アセスメントで現状を把握し、要件定義で目的と範囲を固め、RFPでベンダーに要件を伝える順に進めると、手戻りを抑えられます。

各工程の全体像は、受発注管理システムのリニューアルの完全ガイドもあわせてご覧ください。

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現状を可視化するアセスメント

アセスメントの対象である業務フロー、移行データ、外部連携、データ品質を4枚のパネルで示した図。
4項目をそろえて見ると、現状把握の抜けを見つけやすくなります。

リニューアルの第一歩は、現状を客観的に把握するアセスメント(現状分析)です。感覚的に感じている課題も、画面・業務・連携のどこに起因するかを整理すれば、課題の所在が見えてきます。

現行システムの資産や業務フロー、データ、連携先を一覧にすると、対象範囲と優先順位を決める材料がそろいます。この段階を丁寧に行うことが、後の要件定義の精度を大きく左右します。

業務フロー・データ・連携先の棚卸し

アセスメントでは、まず現行の受発注業務フローを洗い出します。システムで対応できず人手で補っている作業や、二重入力の箇所も明らかにします。

  • 業務フロー:発注から確認・承認、在庫引き当て、出荷指示、請求までの流れ
  • 移行データ:取引先・商品マスタ、発注履歴、価格・掛率の量と品質
  • 外部連携:基幹・在庫管理・EDI・決済など、連携先とデータの流れ
  • データ品質:重複や表記揺れ、取引のない取引先、廃番商品の有無

表面上は業務が回っていても、現場の手作業に課題が隠れていることがあります。そうした部分こそ、刷新で解消すべき本質的な対象です。

連携先を洗い出さないまま進めると、刷新後に想定外のデータ不整合が起きる可能性があります。そこで、移行前にデータの汚れ具合を把握しておくと、要件定義の段階でクレンジング方針を決められます。

現状のデータ品質を確かめる作業は地味ですが、後工程の成否を左右します。不要なデータをそのまま移すと刷新後のトラブルにつながるため、確認結果を移行方針に反映すると、移行段階の手戻りを防げます。

取引先と現場の声の聞き取り

取引先と社内現場の声を聞くと、画面や業務の改善要件を具体化できます。さらに、定量データとも組み合わせて、課題がどこにあるかを確かめます。

  • 取引先:使いにくい画面や時間のかかる操作、電話・FAXに頼る場面の声
  • 社内現場:受注確認・承認・在庫引き当て・出荷指示の工数とミス
  • 定量データ:発注完了率、受注処理時間、入力ミス件数、問い合わせ件数
  • 維持する価値:長年の運用で定着した便利な機能や、取引先ごとの発注ルール

取引先へのヒアリングが難しい場合は、営業担当者に届いている不満や要望を代わりに集めます。定性的な声と定量データを合わせると、課題の優先順位の裏づけになります。

声を聞く際は、不満だけでなく、いまの運用で守りたい良い点も拾っておきます。そして、課題一覧と刷新後に目指す姿を一つの資料にまとめると、次の要件定義につながります。

改善課題と維持すべき価値の両方を明らかにしておくことが、現場と取引先が納得できる刷新の前提です。

ポイント

業務フロー、移行データ、外部連携、データ品質のどれかが一覧にできていない場合は、要件定義に進む前に補うのが目安です。

刷新の目的と範囲を固める要件定義

受発注システムの刷新範囲を、フロント層、業務処理層、連携層の3層に分けて示した図。
層ごとに範囲を定めると、検討対象を整理できます。

現状と課題が見えたら、次は要件定義に進みます。リニューアルの目的とゴールを明確にし、必要な要件を仕分けて、対象範囲を絞ります。

受発注システムは要件が膨らみやすいため、目的に立ち返って範囲を絞れるかどうかが成否を分けます。

要件定義・ディレクション費用の相場は、総予算の10%から30%を占めると言われます。ここを削ると手戻りで費用がかさむため、上流工程への投資は欠かせません。

目的とKGI・KPIの設定

要件定義では、なぜ刷新するのか(Why)と、何を達成したいのか(What)を言葉にしておきます。

  • 目指すゴール:満足度向上、処理時間短縮、二重入力の解消、取引額の拡大など
  • KGI・KPI:発注操作時間の半減、受注工数の月◯時間削減などの数値目標
  • 問い合わせの目標:取引先からの問い合わせ件数を◯%減らす例
  • 必要な機能範囲:「このゴールに必要か」を問い、目的に沿って吟味した機能
  • 対象層:UI・UXのフロント層、承認フローの業務処理層、EDIや基幹連携の連携層

数値目標を置いておくと、刷新の成否を後から客観的に評価できます。さらに、目的から逆算して範囲を決めることが、投資対効果を高める要件定義の基本です。

Must・Wantの仕分けによる肥大化の防止

要件を必須(Must)と希望(Want)に分けることは、要件定義の重要な実務です。要望をすべて盛り込むと、費用と期間が想定を超えることがあります。

  • Must:目的に照らし、なくては成り立たない機能
  • Want:あれば望ましい機能として整理し、次のフェーズに回す

Must・Wantの仕分けは、段階的なリニューアル計画と結びつきます。最初のフェーズを必須機能に絞れば、初期投資を抑えながら、効果の見込める範囲から刷新を始められます。また、希望機能を次のフェーズに回す前提を関係部署と共有しておくと、納得を得やすくなります。

データ移行の方針や、現行システムを一定期間並行稼働させるかも検討します。仕分けと移行方針をまとめた要件定義書が、RFPの元になります。

機能要件だけでなく、非機能要件も定めておく必要があります。機能要件とは、発注画面でできることや承認フローの動きを指します。

非機能要件には、表示速度、スマートフォンの操作性、セキュリティ水準、繁忙期の性能が含まれます。これらは、満足度や信頼性を左右する要素です。

受発注が止まったときの影響を踏まえ、可用性と障害時の復旧方針も決めておきます。

ポイント

機能が必須か希望かで迷うときは、先に定めた目的とKGI・KPIに照らし、そのゴールに必要かどうかで判断するのが目安です。

ベンダーに渡すRFPの作り方

RFPの提案を比べる要件と実績、設計力、運用・費用の3つの評価観点を示したチェックリスト図。
価格以外の観点も並べることで、評価の偏りを抑えられます。

要件定義がまとまったら、ベンダーへ伝えるRFP(提案依頼書)を作成します。RFPは、的確な提案と精度の高い見積もりを引き出すための文書です。

要件が曖昧なままだと、提案と見積もりにばらつきが出て、比較検討が難しくなります。そこで、リニューアルに特化したRFPには、受発注業務に必要な項目を盛り込みます。

RFPに盛り込むべき必須項目

RFPに欠かせない情報は、刷新の目的から予算・納期まで、ベンダーが工数を見積もれるものです。項目ごとに、書く中身を具体的にしておきます。

  • 背景・目的:現状の課題、ゴール、KGI・KPI
  • 対象範囲・機能:フロント層・業務処理層・連携層のどこを刷新するかと、機能のMust・Wantの区分
  • 連携・データ移行:基幹・在庫・EDI・決済など、連携先と方式、移行データの種類・量・品質
  • 非機能要件:性能、スマートフォン対応、セキュリティ、可用性
  • 予算・納期:想定予算の範囲と希望スケジュール

特に、連携先のシステム名や連携方式、想定データ量を明示すると、連携開発や移行の工数を見積もりやすくなります。非機能要件では、発注画面の表示速度やスマートフォン操作性、取引先情報を扱う前提のセキュリティ水準を、具体的に記します。曖昧な記載のままだと、提案後に「想定外の追加費用」につながることがあります。そのため、RFP段階で要件を過不足なく伝えます。

提案を比較する評価観点

価格だけで選ぶと、要件を満たせなかったり、保守体制が弱かったりする場合があります。提案を比べる評価観点は、事前に用意しておきます。

  • 要件と実績:要件への対応度、受発注やBtoB領域での実績
  • 設計力:連携・データ移行への理解と、UI・UX設計の提案力
  • 運用・費用:保守体制と、初期費用に運用後の保守費を加えた費用感

各観点に重みを付けた評価シートを作り、複数の関係者で採点すると、判断がぶれにくくなります。

移行や並行稼働の提案が現実的かどうかも丁寧に見極めます。取引先の取引を止めない移行設計になっているかは、重要な確認点です。

評価観点は、社内決裁の根拠にもなります。なぜそのベンダーを選んだのかを客観的な基準で説明できれば、稟議もスムーズに進みます。

上流工程を丁寧に進めることは、手戻りを抑え、納得感のある意思決定を支えます。

ポイント

RFPで連携先や非機能要件を具体的に書けているかが、提案のばらつきを抑える目安です。評価観点は、社内決裁の説明にも使えます。

まとめ

受発注管理システムのリニューアルでは、アセスメント、要件定義、RFPの順に上流工程を進めます。現状把握では業務・データ・連携先を一覧にし、取引先と現場の声から課題を確かめます。

要件定義では、目的とKGI・KPIを定め、Must・Wantを仕分けます。そのうえで、RFPには、背景・対象範囲・機能・連携・データ移行・非機能の要件と、予算・納期を記し、提案を客観的に比べます。

要件定義・ディレクション費用は総予算の10%から30%を占めると言われます。ここを削ると後工程の手戻りで高くつくため、上流工程に時間と費用を投じます。

現状を把握し、目的から範囲を絞り、ベンダーに要件を伝えることが大切です。この流れが、取引先の満足度と業務効率を高める刷新につながります。

上流工程の進め方に不安がある場合は、アセスメントから要件定義、RFP作成まで一貫して支援できるパートナーへの相談も選択肢です。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。